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よん。
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カポリと容器を抜かれ、また激しく咳き込む。
青年は、空になった容器を後ろで控えていた女性に渡し、何かを告げている。
出て行く女性を横目に見ながら、私は息を整えた。
「どう?体調は?」
そう言って覗き込んでくる青年に、お前がそれを聞くか!と思うが、謎の液体を飲んでから、なぜか体の調子がすこぶる良いのだ。
釈然としないまま、体調は凄く良いです。と告げると、良かった。と笑う。
その笑みに今の恨みを忘れそうになるが、ブルブルと首を振って邪念を追い出した。
しばらくの間無言の空間が続き、そろそろ耐えきれないなと思った時、先程の女性が戻ってきた。
「団長、準備が整いました。」
「ありがとう、パドマ。」
それじゃあ行こうか。と未だ座り込んでいる私に手を差し出す。
あ、私も行くのか。とおずおずとその手を掴めば、優しく引き起こされた。
イケメンかよ?…イケメンか。
立ち上がったしと、手を離そうとすると、強い力で握り返される。
いやいや、離したいんですって!と思い青年を見れば、綺麗な笑みを浮かべ歩き出した。
その笑みに顔を赤くし、え?と戸惑う私を引っ張り建物の外に出る。
入り口の布らしき物を開けた先は、星空が綺麗な夜で、20人ほどの人達が焚き火の近くで食事を取っていた。
なるほど、そちらに向かうのか。と思っていた私は、真逆の方向に向かう青年に着いて行く事しかできない。
ズンズンと進み、焚き火の灯りも薄くなってきた時、一つの大きなテントの前で立ち止まった。
その入り口を開け、私を引っ張ったまま中に入る。
え?…え?と戸惑うことしか出来ない私を中に招き入れ、近くにあった椅子に座らせる。
ランプの灯りで照らされたそこには、お粥と野菜が入ったスープが置かれており、とても良い匂いが私の鼻孔をくすぐった。
「どうぞ。君のために準備させたんだ。お食べ。」
私の目に前に座った青年にそう言われ、何日か食べていないお腹が、キュゥと鳴った。
「…いただきます。」
手を合わせ、スプーンを握る。
久しぶりの温かい食事。
お粥を一口食べると、ジワジワと体に染み渡っていく気がした。
一口、二口…と食べ進め、気付けばお粥もスープも綺麗に完食していた。
ごちそうさまでした。とスプーンを置けば、こちらを見ていた青い瞳と視線が交わる。
夢中で食べていたのを見られていたと、今更になって恥ずかしさがやってきた。
「あ、あの…ご飯、ありがとうございました。」
「いや、綺麗に食べてもらって嬉しいよ。」
口に合ったようで良かった、と微笑む青年は、先程私にポーションとか言う液体を、無理矢理飲ませた人物とは思えないほどだ。
「パドマ。」
「はい。」
青年が先程の女性を呼び、外で待機していたのだろう、パドマと呼ばれた女性が、失礼します。と言って入ってくる。
空になった皿を取り、出て行こうとする女性を慌てて止めた。
「あ、あの!すみません、お皿、私が片付けます!…食べたの、私だし…。」
「ふふっ、ありがとうございます。しかし、これは私の仕事であり、病み上がりの、しかも団長のお連れした方に、この様なことはさせられません。」
「でも…。」
そう言われてしまうと、手が出しにくくなる。
団長、と呼ばれていたし、やはりあの青年が私を連れて来てくれたのか。
チラリと青年を見ると、女性が言ったことを肯定するように頷かれる。
女性・青年・女性と視線を向けるが、変わってくれる気はなさそうだ。
「…すみません、よろしくお願いします。」
「いえいえ。」
私がそう言って頭を下げると、女性が笑みを浮かべここを出て行った。
失礼します。と言う声の主を見送ると、立ってないで座ったらどうだ。と声をかけられる。
素直にそれに従い、先程の席に座れば、青年と目が合う。
「あと少ししたらもう1人来るから。」
それまで紅茶でも飲んでて。と言われ、初めて目の前にある紅茶が入ったカップに気付いた。
先程、パドマさんって人が持ってきたのだろうか。と記憶をたどるが、お盆を持っていたような気がする事以外は、数分前なのに曖昧だった。
いつの間にか用意されていた紅茶を飲み、テントの中に視線を巡らせる。
最初いたテントの3倍はありそうな広さに、簡易的なテーブルが1つと、椅子が4つ。
私が寝ていた所は、薄めのマットが敷かれた寝床だったが、ここは簡易的ではあるがベッドの様なものがあった。
着替えなどの荷物が入っているのだろう大きなバッグが1つ、床にポツリと置かれているだけのこの部屋は、5つのランプで照らされている。
「ふっ、落ち着かないか?」
「あっ、すみません…!」
じろじろと部屋を見すぎる私に不快に思ったのか、青年が声をかける。
慌てて視線を戻し謝れば、いや、構わない。と帰ってきた。
そろ…と視線をあげ青年を伺い見ると、優雅に紅茶を飲んでいる姿を確認する。
ホッとし、私も紅茶を一口飲めば、遅くなりました。と言う男の人の声がした。
青年は、空になった容器を後ろで控えていた女性に渡し、何かを告げている。
出て行く女性を横目に見ながら、私は息を整えた。
「どう?体調は?」
そう言って覗き込んでくる青年に、お前がそれを聞くか!と思うが、謎の液体を飲んでから、なぜか体の調子がすこぶる良いのだ。
釈然としないまま、体調は凄く良いです。と告げると、良かった。と笑う。
その笑みに今の恨みを忘れそうになるが、ブルブルと首を振って邪念を追い出した。
しばらくの間無言の空間が続き、そろそろ耐えきれないなと思った時、先程の女性が戻ってきた。
「団長、準備が整いました。」
「ありがとう、パドマ。」
それじゃあ行こうか。と未だ座り込んでいる私に手を差し出す。
あ、私も行くのか。とおずおずとその手を掴めば、優しく引き起こされた。
イケメンかよ?…イケメンか。
立ち上がったしと、手を離そうとすると、強い力で握り返される。
いやいや、離したいんですって!と思い青年を見れば、綺麗な笑みを浮かべ歩き出した。
その笑みに顔を赤くし、え?と戸惑う私を引っ張り建物の外に出る。
入り口の布らしき物を開けた先は、星空が綺麗な夜で、20人ほどの人達が焚き火の近くで食事を取っていた。
なるほど、そちらに向かうのか。と思っていた私は、真逆の方向に向かう青年に着いて行く事しかできない。
ズンズンと進み、焚き火の灯りも薄くなってきた時、一つの大きなテントの前で立ち止まった。
その入り口を開け、私を引っ張ったまま中に入る。
え?…え?と戸惑うことしか出来ない私を中に招き入れ、近くにあった椅子に座らせる。
ランプの灯りで照らされたそこには、お粥と野菜が入ったスープが置かれており、とても良い匂いが私の鼻孔をくすぐった。
「どうぞ。君のために準備させたんだ。お食べ。」
私の目に前に座った青年にそう言われ、何日か食べていないお腹が、キュゥと鳴った。
「…いただきます。」
手を合わせ、スプーンを握る。
久しぶりの温かい食事。
お粥を一口食べると、ジワジワと体に染み渡っていく気がした。
一口、二口…と食べ進め、気付けばお粥もスープも綺麗に完食していた。
ごちそうさまでした。とスプーンを置けば、こちらを見ていた青い瞳と視線が交わる。
夢中で食べていたのを見られていたと、今更になって恥ずかしさがやってきた。
「あ、あの…ご飯、ありがとうございました。」
「いや、綺麗に食べてもらって嬉しいよ。」
口に合ったようで良かった、と微笑む青年は、先程私にポーションとか言う液体を、無理矢理飲ませた人物とは思えないほどだ。
「パドマ。」
「はい。」
青年が先程の女性を呼び、外で待機していたのだろう、パドマと呼ばれた女性が、失礼します。と言って入ってくる。
空になった皿を取り、出て行こうとする女性を慌てて止めた。
「あ、あの!すみません、お皿、私が片付けます!…食べたの、私だし…。」
「ふふっ、ありがとうございます。しかし、これは私の仕事であり、病み上がりの、しかも団長のお連れした方に、この様なことはさせられません。」
「でも…。」
そう言われてしまうと、手が出しにくくなる。
団長、と呼ばれていたし、やはりあの青年が私を連れて来てくれたのか。
チラリと青年を見ると、女性が言ったことを肯定するように頷かれる。
女性・青年・女性と視線を向けるが、変わってくれる気はなさそうだ。
「…すみません、よろしくお願いします。」
「いえいえ。」
私がそう言って頭を下げると、女性が笑みを浮かべここを出て行った。
失礼します。と言う声の主を見送ると、立ってないで座ったらどうだ。と声をかけられる。
素直にそれに従い、先程の席に座れば、青年と目が合う。
「あと少ししたらもう1人来るから。」
それまで紅茶でも飲んでて。と言われ、初めて目の前にある紅茶が入ったカップに気付いた。
先程、パドマさんって人が持ってきたのだろうか。と記憶をたどるが、お盆を持っていたような気がする事以外は、数分前なのに曖昧だった。
いつの間にか用意されていた紅茶を飲み、テントの中に視線を巡らせる。
最初いたテントの3倍はありそうな広さに、簡易的なテーブルが1つと、椅子が4つ。
私が寝ていた所は、薄めのマットが敷かれた寝床だったが、ここは簡易的ではあるがベッドの様なものがあった。
着替えなどの荷物が入っているのだろう大きなバッグが1つ、床にポツリと置かれているだけのこの部屋は、5つのランプで照らされている。
「ふっ、落ち着かないか?」
「あっ、すみません…!」
じろじろと部屋を見すぎる私に不快に思ったのか、青年が声をかける。
慌てて視線を戻し謝れば、いや、構わない。と帰ってきた。
そろ…と視線をあげ青年を伺い見ると、優雅に紅茶を飲んでいる姿を確認する。
ホッとし、私も紅茶を一口飲めば、遅くなりました。と言う男の人の声がした。
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