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じゅうよん。
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「何この気持ち悪い魔力。」
昨日、ゼノさんのお金で買ってもらったばかりの服を来て、緊張しながらメリルさんと言う人を待った。
場所は団長室で、私とゼノさんとパドマさん、それにハロルド君がいる。
お昼を食べた後という事もあり、少し眠い。
これも暖かな陽と、柔らかな風がいけないのだ。
そうやって、うつらうつらと座り心地の良いソファーに座って待っていると、コンコン、ととびっらをノックする音が聞こえた。
ゼノさんの返事がする前に開いた扉から入って来たのは、思っていた通りのセシル王子で、
「—ッ⁉︎」
その後から入ってきた人物に、私の眠気もぶっ飛んだ。
この世界では久し振りに見る黒髪に、紫色の瞳。
雪のような白い肌に、薄く赤い唇が映える。
「……なんてことだ…!」
「リウ…?」
この世界に来て、1番美しいのはゼノさんだと思っていた…!
いたのだが……!
「誰だ!?誰がこの麗しき儚い天使をこんな下界に連れて来たのだ…っ!」
「「「「……は?」」」」
「誰この頭おかしい子。」
「はわわ……っ!」
なんてことだ……っ!
声まで美しく澄み渡っている……!
思わず変な声が出たほどだ。
けしからん!もっと聞かせろくださいお願い致します。
「すみません、取り乱しました。」
「いや…取り乱したって言うレベルじゃないだろ。」
顔を引きつらせて言うセシル王子は無視だ。
「ところで、そちらの天使はどちらから連れ去ってきたのですか?事の次第によっては私も黙っていませんよ?」
「いや、だから…、」
「まぁそれは後で聞くとして……。」
そう言って、セシル王子を退け、天使の前に出た私は、
「すみません、お名前教えてくださいお願いします。」
土下座した。
その後、近くにいたパドマさんとハロルド君に両腕を取られ起こされた私は、先ほどまで座っていたソファーに置かれた。
呆然としているセシル王子はそのままにしていると、私の目の前のソファーに天使が座った。
キャッ、と緊張する私に、落ち着け、とゼノ団長が隣に座る。
先ほどまでなら緊張したであろうその距離に、今は何故か安心した。
「何?ゼノ。そんな顔して僕を見ないでよ。」
「はわっ!」
「…なんでリウが反応するんだ……。」
「す、すみません…。」
いけない、いけない。
お口にチャックだ。
キュッと口を引き締めれば、隣から、フッ、と笑う声が聞こえた。
しばらくしてセシル王子が意識を取り戻し、天使の隣に座る。
それに嫉妬を覚えた時、ふと、思い出した。
「ゼノさん、そういえば私、昨日ここに来たのって、もう一つ理由があったんでした。」
昨日はなんか初めから色々ありすぎて、忘れちゃいけないことを忘れていた。
「私、これから此処で過ごすんですか?」
「え?今頃?」
「…聞いたんじゃなかったのか?」
驚く王子はそのままに、ゼノさんに聞いていないことを話す。
パドマさんも忘れていたのか、そうだったわ。と呟く声が聞こえた。
……なんか最近こんなやり取りばかりだな。
「それは、魔術検査をしてから決めるよ。」
「そうだな。それが良いよ。」
「…リウはこちらで預かると決めただろう。」
「前は前。今は今だよ、ゼノ。」
「……。」
…なんだろう、今この部屋の気温が下がった。絶対下がった。
3人が話している内容は自分のことだが、私が入る隙がない。
よく分からないが、私はここにはいれないかもしれないらしい。
魔力検査とはそんなに重要なのだろうか?
「と言うか、早くしようよ。僕も忙しいんだよね。」
長くなりそうな雰囲気を察したのか、天使が私の元に歩いて来る。
あ、天使って歩くんですね。
歩く姿も麗しいですけどね!
…そう言えばまだ名前も聞いていない。
「あ、あの……。」
「何?」
「お、お名前お聞きしても……。」
緊張でしどろもどろな私に、天使は、メリル・アゼリア。メリル様と呼んでも良いよ。と笑顔で言った。
「め、メリル様!」
「あ、呼ぶんだ。」
天使もといメリル様の願いを下僕の私が叶えないわけないじゃないか!
名前も綺麗な響きだ!流石ですメリル様!
今日会ってからの初めての笑顔にも癒されましたありがとうございます。
「じゃあ良い?まずは手を握るよ。」
「は、はひっ!」
緊張で声が裏返るのも気にしてられないぐらいだ。
私の前に跪いたメリル様は、その白魚のような手で私の手を握る。
あぁぁぁあぁぁ!私絶対手汗かいてる!どうしよう!もう手が洗えない!
そう思っていれば、メリル様に、落ち着いてくれない?と言われる。
ヒッヒッフー、ヒッヒッフー、と呼吸を落ち着かせていると、パドマさんに、それ違う。と突っ込まれた。
それから深く深呼吸をし、時間をかけて気持ちを落ち着かせると、じゃあ魔力検査始めるね。と言われる。
はい。とメリル様に返事をすると、繋がっている手先から暖かい物が流れてくる感覚がする。
時間にしては5分もなかったと思う。
集中するためにか、目を閉じていたメリル様の綺麗な紫が見えた時、
_____冒頭の台詞である。
昨日、ゼノさんのお金で買ってもらったばかりの服を来て、緊張しながらメリルさんと言う人を待った。
場所は団長室で、私とゼノさんとパドマさん、それにハロルド君がいる。
お昼を食べた後という事もあり、少し眠い。
これも暖かな陽と、柔らかな風がいけないのだ。
そうやって、うつらうつらと座り心地の良いソファーに座って待っていると、コンコン、ととびっらをノックする音が聞こえた。
ゼノさんの返事がする前に開いた扉から入って来たのは、思っていた通りのセシル王子で、
「—ッ⁉︎」
その後から入ってきた人物に、私の眠気もぶっ飛んだ。
この世界では久し振りに見る黒髪に、紫色の瞳。
雪のような白い肌に、薄く赤い唇が映える。
「……なんてことだ…!」
「リウ…?」
この世界に来て、1番美しいのはゼノさんだと思っていた…!
いたのだが……!
「誰だ!?誰がこの麗しき儚い天使をこんな下界に連れて来たのだ…っ!」
「「「「……は?」」」」
「誰この頭おかしい子。」
「はわわ……っ!」
なんてことだ……っ!
声まで美しく澄み渡っている……!
思わず変な声が出たほどだ。
けしからん!もっと聞かせろくださいお願い致します。
「すみません、取り乱しました。」
「いや…取り乱したって言うレベルじゃないだろ。」
顔を引きつらせて言うセシル王子は無視だ。
「ところで、そちらの天使はどちらから連れ去ってきたのですか?事の次第によっては私も黙っていませんよ?」
「いや、だから…、」
「まぁそれは後で聞くとして……。」
そう言って、セシル王子を退け、天使の前に出た私は、
「すみません、お名前教えてくださいお願いします。」
土下座した。
その後、近くにいたパドマさんとハロルド君に両腕を取られ起こされた私は、先ほどまで座っていたソファーに置かれた。
呆然としているセシル王子はそのままにしていると、私の目の前のソファーに天使が座った。
キャッ、と緊張する私に、落ち着け、とゼノ団長が隣に座る。
先ほどまでなら緊張したであろうその距離に、今は何故か安心した。
「何?ゼノ。そんな顔して僕を見ないでよ。」
「はわっ!」
「…なんでリウが反応するんだ……。」
「す、すみません…。」
いけない、いけない。
お口にチャックだ。
キュッと口を引き締めれば、隣から、フッ、と笑う声が聞こえた。
しばらくしてセシル王子が意識を取り戻し、天使の隣に座る。
それに嫉妬を覚えた時、ふと、思い出した。
「ゼノさん、そういえば私、昨日ここに来たのって、もう一つ理由があったんでした。」
昨日はなんか初めから色々ありすぎて、忘れちゃいけないことを忘れていた。
「私、これから此処で過ごすんですか?」
「え?今頃?」
「…聞いたんじゃなかったのか?」
驚く王子はそのままに、ゼノさんに聞いていないことを話す。
パドマさんも忘れていたのか、そうだったわ。と呟く声が聞こえた。
……なんか最近こんなやり取りばかりだな。
「それは、魔術検査をしてから決めるよ。」
「そうだな。それが良いよ。」
「…リウはこちらで預かると決めただろう。」
「前は前。今は今だよ、ゼノ。」
「……。」
…なんだろう、今この部屋の気温が下がった。絶対下がった。
3人が話している内容は自分のことだが、私が入る隙がない。
よく分からないが、私はここにはいれないかもしれないらしい。
魔力検査とはそんなに重要なのだろうか?
「と言うか、早くしようよ。僕も忙しいんだよね。」
長くなりそうな雰囲気を察したのか、天使が私の元に歩いて来る。
あ、天使って歩くんですね。
歩く姿も麗しいですけどね!
…そう言えばまだ名前も聞いていない。
「あ、あの……。」
「何?」
「お、お名前お聞きしても……。」
緊張でしどろもどろな私に、天使は、メリル・アゼリア。メリル様と呼んでも良いよ。と笑顔で言った。
「め、メリル様!」
「あ、呼ぶんだ。」
天使もといメリル様の願いを下僕の私が叶えないわけないじゃないか!
名前も綺麗な響きだ!流石ですメリル様!
今日会ってからの初めての笑顔にも癒されましたありがとうございます。
「じゃあ良い?まずは手を握るよ。」
「は、はひっ!」
緊張で声が裏返るのも気にしてられないぐらいだ。
私の前に跪いたメリル様は、その白魚のような手で私の手を握る。
あぁぁぁあぁぁ!私絶対手汗かいてる!どうしよう!もう手が洗えない!
そう思っていれば、メリル様に、落ち着いてくれない?と言われる。
ヒッヒッフー、ヒッヒッフー、と呼吸を落ち着かせていると、パドマさんに、それ違う。と突っ込まれた。
それから深く深呼吸をし、時間をかけて気持ちを落ち着かせると、じゃあ魔力検査始めるね。と言われる。
はい。とメリル様に返事をすると、繋がっている手先から暖かい物が流れてくる感覚がする。
時間にしては5分もなかったと思う。
集中するためにか、目を閉じていたメリル様の綺麗な紫が見えた時、
_____冒頭の台詞である。
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