魔物が棲む森に捨てられた私を拾ったのは、私を捨てた王子がいる国の騎士様だった件について。

imu

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さんじゅういち。

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side.メリル
____________________

「視て欲しい子がいるんだ。」

いつもと変わらぬ日常に、変化をもたらしたのは、セシルのその言葉からだった。



連れてこられた場所は、第1騎士団の団長室。

久しぶりに来るその部屋に入れば誰かが僕の前で土下座を披露する。

このおかしい子は誰だと思っていれば、ここに来る間にセシルに説明を受けた異世界から来た子だった。

面倒だなと思い、その子を見ると、違和感の塊のような気がした。

名前を聞かれ、冗談でメリル様と呼んで良いと言えば、本当に言うその子…リウに、アホなのかと思ったのはここだけの秘密だ。

そして、魔力検査をすれば、違和感の正体に気付く。

瞳…いや、髪か?魔力の巡りがそこだけ微妙に悪かった。

気付けば、その違和感の正体を知りたくなるもので、浄化をしてみれば、まさかの聖女様と言われる者と同じ黒髪で、とても興味をそそられた。

魔力の属性も気になって、リウを外に連れ出そうとすれば、ゼノが反対のリウの腕を掴む。

…ゼノが珍しいな、とは思ったが、君は今監視役でしょう?と言う目で見れば、アッサリと手を離した。

ゼノの視線を感じながら出て、訓練場に行く。

そこで時間をかけて調べると、結果は無。

まさかと思って自身に傷を付け、光魔術をするように言えば、戸惑いながらも手をかざす。

魔力の巡りは良かった。初めてとは思えないほどだ。

だが、残念ながら使えなかった。

正直、期待し過ぎていたんだと思う。

この子ならば、と。

見たこともない魔力に容姿。それに異界の者であるということ。

しかし、魔術師としては、このままにしておきたくもない。

とりあえず、いろいろ考えた結果、彼女は魔力の操作が初めてにしては出来過ぎていたことを思い出す。

もしやと思い、彼女に魔石を渡し、魔力を込めさせれば、思った通りの出来だった。

使用すれば、さらにその魔法石の威力に高揚した。

リウを帰し、魔術協会に戻った僕は、寝ずに調べる。

いろんな文献を見て、何十冊何百冊と読んでいると、一つの本が目に入った。

一番古いその本を読めば、一つの可能性にたどり着いた。

____闇属性。

魔力の原初。

まさか、この時代にお目にかかれるとは思っても見なかった。


その後、僕がリウを見る事になり、魔術協会に連れて帰る。

正直、もう少しここに来るのを嫌がるかと思っていたのだが、そうでもなかったのだろうか?

そんな日々が始まった時、セシルが魔石を大量に持ってきた。

いらないというリウに、貰っておけと言うと、素直に受け取る。

翌日から、お世話になったからと第一騎士団の者達にネックレスを作り始めた。

最初は、魔法石作りから。

しかし、僕が言っていなかったのも悪いが、彼女が魔力不足を起こした。

朝会った時に、青白い顔をして立っていたから、本当に驚いた。

急いでポーションを飲ませると、グラグラすると机に突っ伏していた。

それを見て、自分も昔体験したな…。と苦い記憶を思い出す。

それを追い出すように、リウに向直れば、先ほどよりはマシな顔色で、自身の作った魔法石を眺めていた。

そんな色々ありながらも順調な日々が続く。

だが、この生活も長くは続かないだろう。

今はまだ隠されているとは言え、いつかはバレる時が必ず来る。

それは、明日か、もしくは数ヶ月、数年後か。

ただ、セシルはそれを早くしなければいけないはずだ。


_____自分のためにも。


_____あの子のためにも。




「え⁉︎これ、リウが作ったの⁉︎」

「大事にするよ。」

「ふふーんっ!我ながら結構な出来栄えだと思いますよ!」

「本当、自分で言うな。」

経ったひと月で、あそこまで仲良くなれるものなのか。

そう言えば、迎えに行った時も、皆んなに見送られていたな、と思い出だす。

この、聖女でもない異界の子は、他とは違う魅力があるようだ。

ただ、もうこの子は元の世界には帰れない。

この世界でしか生きていくことが出来ない子。

それはきっと、辛いことだろう。

自分はそれを、少しだけでも和らげることができるだろうか。



彼女が来て、僕の静かな日常が活気付いた。

危なっかしいあの子は、人を見る目がないけれど。

そんな彼女を僕は、見守っていこうと思う。


「メリル様!」

「何?」

「これ、メリル様にも!」

どうぞ。

そう言って差し出されたのは、黒い石がはまったネックレス。

とてもシンプルな作りのそれは、彼女が頑張って作っていたものだ。

「ありがとう。」

素直にそう言うと、目の前の彼女の顔がみるみるうちに赤くなる。

「め、メリル様!もう一度!もう一度お願いします!あぁ!なんでこんな時にスマホが使えないんだ!!!」

ただ一つ、問題があるとすれば、このテンションをもう少しだけ下げてくれるとありがたい。
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