魔物が棲む森に捨てられた私を拾ったのは、私を捨てた王子がいる国の騎士様だった件について。

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さんじゅうに。

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________りっちゃん。


そう呼ぶ彼女を思い出してしまったのは、きっと、昨夜の夢があまりにもリアル過ぎたせいだろう。





「おはよう、リウ。」

「え⁉︎ゼノさん!おはようございます。」

朝早くからここに用事ですか?と聞くと、リウにお土産。と今街で人気だと言うスイーツ店の箱を私に渡す。

ありがとうございます。と言って受け取り、中身を見れば、なんと可愛い!

色とりどりなマカロンではないじゃないか!

マカロンを見てかわいいって言う女は信じられない。と言う言葉を思い出したが、思わず出てしまうのだから仕方がないのである。文句があるなら異世界ココまで来てみろ。来れるならな!うははははは!

そんな一人芝居を脳内で繰り広げていると、茶葉を持ったメリル様が、休憩にしようか。と紅茶を淹れてくれた。

ふぅ、と表面を冷まし紅茶を飲むと、ほどよい甘さで私好みであった。

今度淹れ方を教わろう。

受けとった箱から、一番人気だと言うチョコレートを手に取る。

もっとかわいい色にいくかと思った。と言うメリル様に、まずは無難なところから。と言い食べれば、なんだこれ⁉︎美味しい!思わず固まってしまった。

「どうだ?…あまり口に合わなかったか?」

「とっんでもない!スーパーミラクル美味しいです!」

そう私が言えば、そうか。と笑みを見せてくれる。

うん。甘い。私が勝手にそう思うだけかもしれないが、マカロン並みに甘い笑みである。けしからん。

胸がざわついてしまった。

それを誤魔化すように、チョコのマカロンを食べながら次食べるものを物色する。

白はバニラかな?…あ、ピンクは木苺っぽい。紫は…なんだろう?ブルーベリー?わっ、あの薄茶はキャラメルかな?

そうやって、ジロジロと眺めていれば、そんなに狙わなくても。とメリル様が木苺のを取った。

あ…、と見ていれば、それを豪快に一口で食べた。

ハムスターのようにほっぺを膨らませているメリル様。

私はもう、この世になんの未練もない。

昇天間際の私は、

「おい、一口って…。」

「なんかリウに取られそうだったから。」

そんな会話が繰り広げられているなんて、全く気づかなかった。




「ほら、食べたら手伝って。」

いつもより長めの休憩をしていたら、メリル様が立ち上がりながら言う。

はーい。と返事をし、私も立ち上がる。

残ったマカロンは後で食べようと箱を閉じた。

ゼノさんはどうするのだろう?と思えば、なんとメリル様にポーション作りを頼まれているではないか!

私はまだ薬草・ハーブすり潰し係から抜け出せていないと言うのに…!

すりこぎで薬草をギシギシ音をたてすり潰していれば、ゼノさんが笑った。

そして、なぜポーションが作れるのかを教えてくれた。


この世界では、8歳から15歳までの7年間学校に通うらしく、各学年、特進クラスと普通クラスに分かれるらしい。

特進クラスとは、人数は少ないが、魔法能力なども含む成績優秀者が入れるクラスで、そこに入れば、一定の授業だけ受ければ後は好きなことをしても良いらしい。

……行ったことはないが、大学みたいな感じだろうか?

そこで、ゼノさんは、よく学校の研究室にこもっていたメリル様のお手伝いをたまにしていたらしい。
そこで普通レベルのものまでなら作れるようになったとか。

凄い。凄いけど、何が凄いのかって、ゼノさんとメリル様がいる教室だ。

なんとこの2人、同級生だったのである。

そんなことを思っていると、メリルさまが、セシルもだけどね。と言った。

さらに輝きが増す教室。

できることなら私もそこにいたかった!…無念……ッ!!




それから2時間ほどいたゼノさんは、用事があるからと言うことで、私はお見送りに行く。

メリル様はポーション作製中で、鍋をかき混ぜていた為来なかった。

行けるのは協会の裏口を出たところまでだが、そこでゼノさんに、ありがとうございました。お気をつけて。と見送る。

その背が見えなくなるのを、寂しく思いながら、完全に見えなくなるまでいて、よしっ、と裏口のドアノブに手をかけた。

その時、



______りっちゃん?




そんな幻聴が聞こえた。

昨夜見た夢をひきずっていたのかと、苦笑した。

そのまま扉を開け、入り、メリル様の研究室に向かう。


メリル様の研究室は裏口の扉を入って二つ目の扉の中である。

一つ一つの部屋が広い為、廊下を少し急ぎ足で歩いていれば、

バンッ

と、扉の豪快に開く音が聞こえた。

その音にびくりと体を揺らせば、

「りっちゃん!!」

聞こえるはずもない声が聞こえた。

それを、幻聴と呼ぶにはあまりにもリアル過ぎて、

振り返った私に、きつく抱きつくその痛みと体温が、

「こ、ずえ…ちゃん……?」

それを現実だと、私に知らしめた。
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