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とある国の、小さな恋の昔話
2.
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ちょうどその頃の出来事です。
1人の青年が街を歩いていました。
薄暗くなってきた頃、彼は1人の少女と出逢います。
路地裏で襲われそうになっていた彼女を助けた青年は、お礼をしたいという少女の言葉に首をふります。
それでも諦めない少女に、青年の方が折れました。
数日して、待ち合わせ場所に向かった青年は驚きます。
あの日、土に汚れ、暗さで顔の分かりづらかった少女は、とても愛らしい容姿をしていました。
恥ずかしそうに笑う少女に、何故か青年まで照れてしまいます。
2人が恋に落ちるのはすぐでした。
しかし、その恋もすぐに叶わぬ恋だと気付きます。
なぜなら、彼女は伯爵家のご令嬢だったのです。
街の雰囲気が好きな少女は、お忍びでよく街に来ていたとのことでした。
平民の青年は言います。
「会うのはもうやめましょう」
少女は言います。
「私は離れたくない!」
青年は悩みました。自分は平民。彼女は貴族。
その差はあまりにも大きすぎる。
これからの未来のことを考えると、一介の兵士である自分に彼女は幸せにできない。
しかし、少女はそれでも言いました。
身分なんて関係ない。この気持ちに嘘偽りもない。貴方だけを愛している、と。
訴えました。
晴れの日も、風の日も、雨の日も、会える日は必ず。
そんなある日のことです。
青年の元に、少女が来なくなりました。
青年は、安堵します。しかし、それと共に虚しさが広がります。
青年は気付いたのです。己も、少女を愛している、と。
しかし、それはあまりにも遅かった。
数日後。
ある噂を聞きました。
『平民に恋した愚かな令嬢が修道院送りになるらしい』
青年は、すぐにあの少女だと気付きます。
詳しく聞くと、3日後出発するらしいとのことでした。
青年は、考えました。
少女を救う方法を。
青年は、思い出しました。
少女が己に訴えていたことを。
青年は、決断します。
3日後、青年はある道の真ん中にいました。
その道は、少女が向かうと噂の修道院までの道の途中です。
「そこの者、何をしている」
噂通り、少女を乗せた馬車が来ます。
道を譲らない青年に、数人の護衛が剣を抜きました。
青年は、向かってくる剣をはじき応戦します。
しかし、青年は一介の兵士。
仲間もいない彼は、ついに膝をつきました。
「__!」
護衛を押し切り、青年に駆け寄る人がいました。
そう、彼が助けたかった少女です。
少女は、泣いています。
青年の名を叫び、泣いています。
護衛の者達が少女を離そうとしますが、少女は絶対に離れません。
青年は、少女の腕の中で意識が薄れていくのを感じます。
“愛してる“
少女に届いたのかは分かりません。
ただ、薄れる視界に、少女の悲痛な顔が映ります。
そんな顔をさせたいわけじゃなかった。
君の幸せな顔が見たかった。ただ、それだけだった。
青年は、もう目を開ける気力も、口を開く気力も残っていません。
薄れいく意識の中、降り注ぐ雫だけが暖かく感じました。
「ここは…」
次に目を覚ますと、簡易的な寝床にいました。
テントの中らしいここは、青年以外1人もいません。
そして青年は気付きます。
トクトクと、心臓の音が聞こえることに。
そして青年は気付きます。
自分が生きているということに。
そして青年は気付きます。
自分の体にあった、無数の傷が綺麗になくなっていることを。
「起きたみたいだな」
突然、声がしました。
テントの入り口、そこにはこの国の第一王子がいました。
青年は飛び起きます。
慌てて床に伏す青年に、第一王子はそれを止めるように言います。
青年は恐る恐る顔をあげました。
「__!」
青年は名前を呼ばれました。
王子の後に入ってきたのは、あの少女でした。
青年は視界が滲みます。
言いたいことはたくさんあります。
でも、何も出てきません。
喉が痛いわけでも、声帯に障害が出たわけでもありません。
ただ、なぜか何も出てこないのです。
伝えたいことがありすぎて、ただ、抱きしめることしかできないのです。
暫くして、青年は第一王子に事情を聞きました。
それを聞いた青年は驚きます。
なんと、自分が憧れる騎士団の人達に助けられていたのです。
いや、騎士団とは違うかもしれません。
青年はその騎士団に着いてきた、国1番の魔術師様と”あの“もう1人の聖女様に助けられていたのです。
青年と少女は、彼等に感謝します。それはもう、一生掛けても返せないほどです。
それと同時に怖くなりました。
青年に使ったのは、赤、青、緑、黄、紫の最上級のポーションだったのです。
最上級のポーションは、貴族であってもなかなか買える品物ではありません。
それを青年が目を覚ますまでの3日間の間、惜しむことなく何本と使ったのです。
2人は慄きました。
しかし、もう1人の聖女様は言いました。
「人生には、楽しいことも、嬉しいことも、辛いことも、悲しいことも、沢山、沢山あるでしょう。それでも、諦めなければ必ず救いの手は差し出されます。私も、そうでした。もう、辛いことも、悲しいことも、貴方達は経験しました。次は、楽しい時と嬉しい時を過ごす番です。生きてください。幸せになってください。2人の未来を見せてください。それが、私達への最高のお返しです」
青年と少女は予想外の展開に言葉をなくしました。
もう1人の聖女様はどれだけ私達を救ってくれるのでしょう。
しかも、それだけではありません。
青年が寝ている間に少女から事の顛末を聞いたもう1人の聖女様は、私達の結婚を認めるよう、伯爵様に”お願い“をしてくれたのです。
青年と少女は、もう”感謝“という言葉では表せないほどの衝撃と感動を覚えました。
数年後、雲ひとつない快晴の日。
青年と少女は結婚式をあげました。
それはとても慎ましいものでしたが、2人はとても幸せでした。
青年の元に嫁入りをした彼女は平民になりました。
豊かな生活はできないでしょう。
それでも、少女は青年を選びました。
青年はようやく言えます。
ようやく伝えられます。
たくさんの人々に祝福される中、青年は言いました。
「愛している」
と。
1人の青年が街を歩いていました。
薄暗くなってきた頃、彼は1人の少女と出逢います。
路地裏で襲われそうになっていた彼女を助けた青年は、お礼をしたいという少女の言葉に首をふります。
それでも諦めない少女に、青年の方が折れました。
数日して、待ち合わせ場所に向かった青年は驚きます。
あの日、土に汚れ、暗さで顔の分かりづらかった少女は、とても愛らしい容姿をしていました。
恥ずかしそうに笑う少女に、何故か青年まで照れてしまいます。
2人が恋に落ちるのはすぐでした。
しかし、その恋もすぐに叶わぬ恋だと気付きます。
なぜなら、彼女は伯爵家のご令嬢だったのです。
街の雰囲気が好きな少女は、お忍びでよく街に来ていたとのことでした。
平民の青年は言います。
「会うのはもうやめましょう」
少女は言います。
「私は離れたくない!」
青年は悩みました。自分は平民。彼女は貴族。
その差はあまりにも大きすぎる。
これからの未来のことを考えると、一介の兵士である自分に彼女は幸せにできない。
しかし、少女はそれでも言いました。
身分なんて関係ない。この気持ちに嘘偽りもない。貴方だけを愛している、と。
訴えました。
晴れの日も、風の日も、雨の日も、会える日は必ず。
そんなある日のことです。
青年の元に、少女が来なくなりました。
青年は、安堵します。しかし、それと共に虚しさが広がります。
青年は気付いたのです。己も、少女を愛している、と。
しかし、それはあまりにも遅かった。
数日後。
ある噂を聞きました。
『平民に恋した愚かな令嬢が修道院送りになるらしい』
青年は、すぐにあの少女だと気付きます。
詳しく聞くと、3日後出発するらしいとのことでした。
青年は、考えました。
少女を救う方法を。
青年は、思い出しました。
少女が己に訴えていたことを。
青年は、決断します。
3日後、青年はある道の真ん中にいました。
その道は、少女が向かうと噂の修道院までの道の途中です。
「そこの者、何をしている」
噂通り、少女を乗せた馬車が来ます。
道を譲らない青年に、数人の護衛が剣を抜きました。
青年は、向かってくる剣をはじき応戦します。
しかし、青年は一介の兵士。
仲間もいない彼は、ついに膝をつきました。
「__!」
護衛を押し切り、青年に駆け寄る人がいました。
そう、彼が助けたかった少女です。
少女は、泣いています。
青年の名を叫び、泣いています。
護衛の者達が少女を離そうとしますが、少女は絶対に離れません。
青年は、少女の腕の中で意識が薄れていくのを感じます。
“愛してる“
少女に届いたのかは分かりません。
ただ、薄れる視界に、少女の悲痛な顔が映ります。
そんな顔をさせたいわけじゃなかった。
君の幸せな顔が見たかった。ただ、それだけだった。
青年は、もう目を開ける気力も、口を開く気力も残っていません。
薄れいく意識の中、降り注ぐ雫だけが暖かく感じました。
「ここは…」
次に目を覚ますと、簡易的な寝床にいました。
テントの中らしいここは、青年以外1人もいません。
そして青年は気付きます。
トクトクと、心臓の音が聞こえることに。
そして青年は気付きます。
自分が生きているということに。
そして青年は気付きます。
自分の体にあった、無数の傷が綺麗になくなっていることを。
「起きたみたいだな」
突然、声がしました。
テントの入り口、そこにはこの国の第一王子がいました。
青年は飛び起きます。
慌てて床に伏す青年に、第一王子はそれを止めるように言います。
青年は恐る恐る顔をあげました。
「__!」
青年は名前を呼ばれました。
王子の後に入ってきたのは、あの少女でした。
青年は視界が滲みます。
言いたいことはたくさんあります。
でも、何も出てきません。
喉が痛いわけでも、声帯に障害が出たわけでもありません。
ただ、なぜか何も出てこないのです。
伝えたいことがありすぎて、ただ、抱きしめることしかできないのです。
暫くして、青年は第一王子に事情を聞きました。
それを聞いた青年は驚きます。
なんと、自分が憧れる騎士団の人達に助けられていたのです。
いや、騎士団とは違うかもしれません。
青年はその騎士団に着いてきた、国1番の魔術師様と”あの“もう1人の聖女様に助けられていたのです。
青年と少女は、彼等に感謝します。それはもう、一生掛けても返せないほどです。
それと同時に怖くなりました。
青年に使ったのは、赤、青、緑、黄、紫の最上級のポーションだったのです。
最上級のポーションは、貴族であってもなかなか買える品物ではありません。
それを青年が目を覚ますまでの3日間の間、惜しむことなく何本と使ったのです。
2人は慄きました。
しかし、もう1人の聖女様は言いました。
「人生には、楽しいことも、嬉しいことも、辛いことも、悲しいことも、沢山、沢山あるでしょう。それでも、諦めなければ必ず救いの手は差し出されます。私も、そうでした。もう、辛いことも、悲しいことも、貴方達は経験しました。次は、楽しい時と嬉しい時を過ごす番です。生きてください。幸せになってください。2人の未来を見せてください。それが、私達への最高のお返しです」
青年と少女は予想外の展開に言葉をなくしました。
もう1人の聖女様はどれだけ私達を救ってくれるのでしょう。
しかも、それだけではありません。
青年が寝ている間に少女から事の顛末を聞いたもう1人の聖女様は、私達の結婚を認めるよう、伯爵様に”お願い“をしてくれたのです。
青年と少女は、もう”感謝“という言葉では表せないほどの衝撃と感動を覚えました。
数年後、雲ひとつない快晴の日。
青年と少女は結婚式をあげました。
それはとても慎ましいものでしたが、2人はとても幸せでした。
青年の元に嫁入りをした彼女は平民になりました。
豊かな生活はできないでしょう。
それでも、少女は青年を選びました。
青年はようやく言えます。
ようやく伝えられます。
たくさんの人々に祝福される中、青年は言いました。
「愛している」
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