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勿論、サインしてくださいますわよね?
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公衆の面前にあるにも拘わらず、ぎゅっと全身抱きしめてきたルカーシュの暖かさにひとしきり甘えたリリーシアは、満足した瞬間、ベリっと自らの身体からルカーシュを剥がした。
「さて、お次はルカさまの番ですわね。愛おしい婚約者から贈られた契約書。勿論、サインしてくださいますわよね?」
花が綻ぶような美しい笑みにうっとりと頷いたルカーシュは、契約書に目を通して、そして固まった。
「えぇーっと、リリーさん?これ、嘘だよね?」
「嘘であるわけございませんでしょう?国王陛下にお認めいただいた公式文書ですわ」
わざとらしく笑顔で首を傾げたリリーシアに、ルカーシュは身体をわなわなと震わせた。
「無理だぁー!!公衆の面前でハグ禁止に、キス禁止、愛の囁き禁止って何!?やったら罰として1週間口聞かない&別居とか耐えられるわけない!!というか、あり得なさすぎる!!それに浮気したら即死刑?そんなの当然じゃん!!というか、浮気する前提なのが許せないんだけど!?」
「えぇ、分かっておりますわ。貴方が公衆の面前で猥褻な行為を繰り返す愚か者でないことや、浮気をするような愚かで滑稽な男ではないと。ですが、わたくしは伯爵令嬢であると同時に商人なのです。契約書があった方が、どうしても安心できるのです。わたくしを愛しているルカさまは、ちゃんとサイン、してくださいますよね?」
上目遣いに見つめてくるリリーシアに、ルカーシュは一瞬にして敗北した。
「あぁー分かったよ!!サインしてやる!こんな紙切れ1枚で愛おしいリリーが安心できるんならお安いご用だ!!」
ババっとサインしたルカーシュに、リリーシアは満足げに頷いた。
「ありがとう存じます、ルカさま」
可愛い微笑みに、仕草に、ルカーシュは、契約書をほっぽり出してぎゅーっとリリーシアを抱きしめる。
「あぁー、リリーが可愛過ぎて死にそう。お部屋に閉じ込めて永遠にお外に出したくない。あぁー、こんなとこで自分が、あの人間の問題をかき集めて煮込んで固めたような父上と同類だってわかるなんてなんて拷問なんだ………。ねぇリリー、傷心の私の頭を撫でてくれ」
「………………」
笑顔で固まっているリリーシアは、彼がほっぽり出した契約書を手に、彼の身体をベリっと外す。
「リリー?」
「………契約書、書きましたわよね?」
「え、」
契約書を彼の顔面に叩きつけたリリーシアは、恥ずかしさで真っ赤でありながら怒りによる青筋の浮かぶ顔に満面の笑顔を装うという器用なことをした上で、早口に捲し立てる。
「わたくしとのお約束を破った件も含めて、わたくし、ルカさまとは2週間お口を聞きませんわ」
「え、り、リリー、」
「………」
「リリー!リリー!!」
「………………」
「そ、そんな、———そんな殺生なぁ!!」
こうして、長年隣国へと留学していた第2王子が帰還し、2つの家紋が消えた。
驚くほどに甘々で奥方に尻を敷かれているという第1印象を残したルカーシュであったが、彼はとても優秀な男であり、王子として父親譲りの能力を遺憾なく発揮し、母親譲りの引き籠もりである兄王を支え続けた。
そんな彼であるが、近い将来にはこの日リリーシアと結んだ契約を度々破り、奥方のドレスに縋り付いて号泣する姿がありとあらゆる場面で見られるようになり、いつしか、天才であるにも拘わらず、奥方の願いに関しては一切学習しない挙句、奥方に縋り付いて赤子のように号泣することから、『天才バブちゃん王子』という不名誉なあだ名で呼ばれるようになった。
これより先、彼にはもう1つのあだ名が生まれる。
「パパっ!!」「ちちっ!!」
白銀と漆黒、2人の小さなお姫さまが走る先には漆黒の美丈夫が佇んでいる。
「———!———!」
愛おしいお姫さまを軽々と抱き上げた彼に寄り添うのは、彼は誰よりも愛する彼の女王。
商人として、元伯爵令嬢として、王子妃として、ありとあらゆる場面に置いて彼を支え続ける強い女性。
「ルカ、あんまり甘やかしてはいけませんよ?」
「ははっ!リリー、残念ながら、私はその契約書にはサインしていないんだ」
爽やかに笑う夫の腕に自らの身体を預けたリリーシアは仕方なさそうな笑みを浮かべ、『溺愛王子』の言葉に頷いたのだった———。
fin.
「さて、お次はルカさまの番ですわね。愛おしい婚約者から贈られた契約書。勿論、サインしてくださいますわよね?」
花が綻ぶような美しい笑みにうっとりと頷いたルカーシュは、契約書に目を通して、そして固まった。
「えぇーっと、リリーさん?これ、嘘だよね?」
「嘘であるわけございませんでしょう?国王陛下にお認めいただいた公式文書ですわ」
わざとらしく笑顔で首を傾げたリリーシアに、ルカーシュは身体をわなわなと震わせた。
「無理だぁー!!公衆の面前でハグ禁止に、キス禁止、愛の囁き禁止って何!?やったら罰として1週間口聞かない&別居とか耐えられるわけない!!というか、あり得なさすぎる!!それに浮気したら即死刑?そんなの当然じゃん!!というか、浮気する前提なのが許せないんだけど!?」
「えぇ、分かっておりますわ。貴方が公衆の面前で猥褻な行為を繰り返す愚か者でないことや、浮気をするような愚かで滑稽な男ではないと。ですが、わたくしは伯爵令嬢であると同時に商人なのです。契約書があった方が、どうしても安心できるのです。わたくしを愛しているルカさまは、ちゃんとサイン、してくださいますよね?」
上目遣いに見つめてくるリリーシアに、ルカーシュは一瞬にして敗北した。
「あぁー分かったよ!!サインしてやる!こんな紙切れ1枚で愛おしいリリーが安心できるんならお安いご用だ!!」
ババっとサインしたルカーシュに、リリーシアは満足げに頷いた。
「ありがとう存じます、ルカさま」
可愛い微笑みに、仕草に、ルカーシュは、契約書をほっぽり出してぎゅーっとリリーシアを抱きしめる。
「あぁー、リリーが可愛過ぎて死にそう。お部屋に閉じ込めて永遠にお外に出したくない。あぁー、こんなとこで自分が、あの人間の問題をかき集めて煮込んで固めたような父上と同類だってわかるなんてなんて拷問なんだ………。ねぇリリー、傷心の私の頭を撫でてくれ」
「………………」
笑顔で固まっているリリーシアは、彼がほっぽり出した契約書を手に、彼の身体をベリっと外す。
「リリー?」
「………契約書、書きましたわよね?」
「え、」
契約書を彼の顔面に叩きつけたリリーシアは、恥ずかしさで真っ赤でありながら怒りによる青筋の浮かぶ顔に満面の笑顔を装うという器用なことをした上で、早口に捲し立てる。
「わたくしとのお約束を破った件も含めて、わたくし、ルカさまとは2週間お口を聞きませんわ」
「え、り、リリー、」
「………」
「リリー!リリー!!」
「………………」
「そ、そんな、———そんな殺生なぁ!!」
こうして、長年隣国へと留学していた第2王子が帰還し、2つの家紋が消えた。
驚くほどに甘々で奥方に尻を敷かれているという第1印象を残したルカーシュであったが、彼はとても優秀な男であり、王子として父親譲りの能力を遺憾なく発揮し、母親譲りの引き籠もりである兄王を支え続けた。
そんな彼であるが、近い将来にはこの日リリーシアと結んだ契約を度々破り、奥方のドレスに縋り付いて号泣する姿がありとあらゆる場面で見られるようになり、いつしか、天才であるにも拘わらず、奥方の願いに関しては一切学習しない挙句、奥方に縋り付いて赤子のように号泣することから、『天才バブちゃん王子』という不名誉なあだ名で呼ばれるようになった。
これより先、彼にはもう1つのあだ名が生まれる。
「パパっ!!」「ちちっ!!」
白銀と漆黒、2人の小さなお姫さまが走る先には漆黒の美丈夫が佇んでいる。
「———!———!」
愛おしいお姫さまを軽々と抱き上げた彼に寄り添うのは、彼は誰よりも愛する彼の女王。
商人として、元伯爵令嬢として、王子妃として、ありとあらゆる場面に置いて彼を支え続ける強い女性。
「ルカ、あんまり甘やかしてはいけませんよ?」
「ははっ!リリー、残念ながら、私はその契約書にはサインしていないんだ」
爽やかに笑う夫の腕に自らの身体を預けたリリーシアは仕方なさそうな笑みを浮かべ、『溺愛王子』の言葉に頷いたのだった———。
fin.
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