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第02章 旅立ちと出会い
08 早々の帰郷
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孤児院の支援、それを思いついた俺はさっそくシュンナやダンクスをはじめシエリルとワイエノ一家にも話した。
「それじゃ、さっそく孤児院に行って院長に話をしねぇといけねぇな」
ダンクスがそういった。おそらく孤児院出身だからこそ、俺たちの中で誰よりも気になっているんだろう。
「ああ、そうだな。これから孤児院に行って話す」
「それがいいわね。じゃぁ行きましょうか」
「だったら、俺も行くぜ。野菜を買い取るのは俺たちだからな。その俺が行ったほうが話が早い」
さっそく孤児院にこの話を持っていこうと思っていると、ワイエノが同行を申し出てきた。
確かに、ワイエノのいう通り、実際に野菜を買い取る人物がいて説明したほうがいいだろう。
「わかった」
というわけで、俺とシュンナとダンクス、ワイエノの4人で昨日に引き続き孤児院に向かったのだった。
昨日と同じように4人で貧民街を歩いている。
相変わらず、周囲からは妙な気配がしているが、特に気にせずにまっすぐに孤児院を目指した。
しばらく歩くと目の前に孤児院がみえてきた。
「ついたな。おーい、誰かいるか!」
ついたとたんダンクスが建物に向かってそう叫んだ。
「はーい、あら、昨日の」
ダンクスの声に反応して出てきたのはソニアだった。
「ソニアさん、昨日ぶりです。えっと、今日は院長にお話があってきました。今大丈夫ですか?」
人当たりのいいシュンナがまず説明をした。
「いいですよ。さぁ、どうぞ、入ってください」
そう言ってソニアはあっさりと孤児院の中に入れてくれた。
まぁ、昨日も午後いっぱいいたしな。
そんなわけで、遠慮なく孤児院の中に入ると、俺たちの周りに子供たちがわらわらと集まってきた。
「あっ、スニルー」
「シュンナおねえちゃん」
「あそんでー」
「しらないおじちゃんがいるよ」
「すにるにーちゃ」
子供たちはそれぞれ好き勝手に俺たちの周りではしゃいでいる。
「ほらほら、あなたたちはこれからお昼寝でしょ。遊ぶのはお昼寝から起きてからよ」
「えー」
子供たちはこれから昼寝の時間、俺たちはそれを見越してこの時間にやってきたのだった。
「じゃぁ、すにるもいこ」
ここで、幼い子供から誘いを受けてしまった。
「いや、俺はやることがあるし、それに、昼寝はしないから」
「えーだめだよー。せんせがね、おひるねしないとだめだっていったよ」
俺が断るとなおもそう言ってきた。
俺の見た目は幼い子供、でも実際は12歳、そんなこと子供が理解できるはずもなく、見た目通りの年齢だと子供たちは思っているんだよな。
「ふふっ、お昼寝のお部屋は狭いから、スニル君は別の場所でするから大丈夫よ」
俺が困っているとソニアが機転を利かせてそういった。
実際、俺も昨日子供たちの昼寝部屋を見たが、たしかに狭い、ここにいる子供たちでいっぱいいっぱいだった。
「そっかー、じゃぁね」
それで納得したのか、俺を誘ってきた子供はあっさりと引き下がっていった。
「ふふふっ、スニルも、ほんとにお昼寝する?」
「しねぇよ!」
シュンナがそういって揶揄ってきたので、俺はそう言って突っ込んだ。
見た目は幼くても、実年齢は12歳、中身でいえば、記憶上は40超えてんだぞ。
「それより、院長のとこ」
「ふふふ、そうね」
それから、俺たちは院長の部屋にたどり着いた。
「あらあら、スニル君に皆さん。ようこそ、今日はどうしたのかしら」
俺たちの姿を見た院長が、まるで孫でも迎えるように歓迎してくれた。
まぁ、院長にとって俺は実際に孫みたいなものなんだろう、院長が育てた父さんの息子だからな。
「今日は、この孤児院の支援について、お話ししたくて来ました」
シュンナが代表してそういった。
「まぁまぁ、支援なんていいのに」
支援と聞いて、院長は少し困った表情をした。
支援してくれるのはうれしいけど、申し訳なさのほうが強いんだろう。
「大丈夫、問題ないよ。それで、その支援だけど」
俺はそのあと、院長に俺が考えた支援、つまり子供たちに野菜を作らせて、それをワイエノが買い取るという話をした。
「子供たちが野菜を、でも、あの子たちにできるかしら」
尤もな疑問だと思う。
「そりゃぁ、子供たちだけでやるのはさすがに無理だろうな。だから、大人がちゃんとサポートしてやればいいんだよ。なんだったら、うちのバカ息子にも手伝わせるさ」
そう言ったのはワイエノだ。
「でもスニル君、サポートといっても、私たちは野菜は作ったことないから、わからないわよ」
これも尤もな話だ。家庭菜園でも無知でできるものではないからな。
「それなら、問題ない、知識のある人を呼んでくる」
「呼ぶって、誰をかしら」
「ゾーリン村から、あそこは農村だから」
そう、俺の故郷であるゾーリン村は農村、つまり住人は農業のプロだ。餅は餅屋っていうし、野菜つくりはその道のプロに聞けばいい。
「来てくれる人がいるの?」
「いや、まだこれから行って話をしてくる。多分大丈夫だと思う」
村長に話をすれば、おそらく誰か紹介してくれると思う。
「そうなの、でもねぇ」
院長は悩んでいるようだ。
「野菜を作って、ワイエノおじさんたちが買えば、それが孤児院の収入になる。それに、ここで野菜を作れば、子供の食糧にもなるし、売ったお金で食料だけじゃなくて、子供たちのためのものを買うことだってできる」
俺がする支援はあくまで最初のきっかけみたいなものだ。
「そうね。それは、うれしいわね」
「子供たちにはおなか一杯食べてもらいたいですからね」
院長に続いてソニアもなびいてきたようだ。
やはり、子供の食糧が増える、つまり子供たちが腹いっぱい食べられるというのは重要なことだからだ。
「ありがとう、スニル君」
「いや、それはいい」
「あっ、でも、スニル君、畑を作るにしてもお庭よね」
そうなると、子供たちの遊ぶ場所がなくなってしまう、ソニアはそれを懸念したようだ。
「いや、畑は新たに土地を買って、そこに作るつもり」
俺はその懸念に対してそう答えた。
「土地を? でも土地って高いわよね、いくら貧民街でも結構な額になるわよ」
「あっ、それなら大丈夫ですよ。あたしたち、ちょっとした事情から結構なお金を持っていて、土地の1つや2つなら問題ないですから」
ソニアの質問に答えたのは俺たちの財布を持つシュンナだった。
「そうなの。でも、えっと、いいのかしら?」
「それも含めての支援だからな、問題ねぇよ」
今度はダンクスが答えた。
「そんなわけで話を進めても?」
最後に俺が聞く。
「ええ、お話を聞く限り、とてもいいお話だと思うし、何より子供たちがおなか一杯食べることができろようになるのはうれしいわ」
院長もな。俺は心の中でそう思った。
「それじゃ、俺はこれから村に戻って、村長に頼んでくる」
「おう」
「あたしたちは、土地を買っとく?」
「そうだな。そうしてくれ、ああ、土地の名義はダンクスにしておいて」
「俺が、なんでだ?」
「俺やシュンナじゃ無理だろ」
俺はどう見ても子供だし、シュンナもまだ少女といわれる年齢、そんな俺たちが土地を所有者になるのは無理がある。
「ああ、そっか、まぁ、それぐらいなら構わねぇ、そんじゃシュンナ行くか」
「ええ、それじゃ、スニルあとでね」
「ああ、俺も行くぜ、お前らこの街のこと詳しくないだろ」
こうして、シュンナとダンクス、ワイエノの3人は土地を買いに出かけて行った。
「えっと、それで、スニル君はどうやって、村にというか一緒に行かなくてもよかったの」
俺が一人残ったことにソニアがそういってきた。
「それなら問題ない、転移魔法で村に行くから」
”転移魔法”それは空間魔法に属するもので、遠く離れた場所に瞬時に行くことができる。
とはいえ、実はこの魔法普通なら超高度な魔法で、扱えるものはほぼいないといってもいい。
というのも、これは自身が一度行ったことがある場所にしか行けないし、自分自身がそこに行くまでの道のりを把握した上に、その場所を強くイメージしなければならないというものだからだ。
だが、俺にはメティスルがある。メティスルの”マップ”機能を使って、ゲームのようにその場所を示すだけでその場所に行くことができるからな。
というわけで、俺は庭に出てさっそく”転移魔法”を行使した。
▽△▽▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△
ところ変わって、ゾーリン村入口。
「まさか、こんなに早く帰ってくることになるとは思わなかったな」
そうつぶやきながら村の中を見てみるが、誰の姿も見えないな。
「まぁ、この時間は多分みんな畑だろう」
ゾーリン村は小さいが農村、つまり全員が農家だから畑仕事をしているはずだ。
そんなわけで、村の畑に向かう俺。
といっても、畑は村の奥にあり村長宅を通り越して数軒先、俺の視界に畑が見えてきた。
畑はそれぞれの家に代々伝わってきたものを使用している。
つまり、当然だが俺の家、母さんの実家に伝わっている畑もある。
それはこれまでくそ一家が俺とともに引き継いでいたが、追放された今、うちの畑は村長一家に預けている。
どうでもいいことだが、くそ一家の畑は村共有のものとして手の空いたものが世話をするようにしているそうだ。
「あれっ、スニル?」
俺がそんなことを考えていると横からそんな声がかけられた。
「ああ、ポリーか」
声をかけてきたのは、例のごとく俺と同い年であり、一種の乳姉弟となるポリーだ。
「どうしたの、もう帰ってきたの?」
「いや、帰ってきたわけじゃないんだが、ちょっと村長にっていうか、村に頼みがあってな」
「頼み? なに? まぁ、いいや、ちょっと待ってね。おじーちゃーん」
ポリーはすぐに祖父である村長を大声で呼んだ。
「なんじゃ、大声出し……スニル?」
「まぁまぁ、スニル君、どうしたの急に」
大胡で呼ばれたことに文句を言いに来た村長とノニスだったが、俺の姿を見た途端驚きながらやってきた。
「ちょっと、頼みがあって戻ってきたんだ」
「頼み、それは構わんが、ここでいいかのぉ」
「ああ、ここでいいよ。ていうか、みんなにも聞いてほしいかも」
「なんだなんだ」
「あら、スニル君、おかえり」
俺の姿を見た村人たちが一斉に集まってきた。
畑仕事はいいんだろうか。
そんな疑問を持つとともにちょっとありがたかった。
「それで、スニル頼みってなんなの?」
村人を代表してポリーが俺に訪ねてきた。
「ああ、えっとなんていうか……」
俺は村人を前にして孤児院の支援について話をした。
「……なるほどのぉ、子供たちに野菜を」
「うーん、いい考えだと思うけど」
畑仕事とはそんな子供が簡単にできるものではないと、村人は口々に言っている。
「それは、わかってる。俺も子供たちにそこまで求めていない。それこそ簡単な子供でもできる範囲でいいと思ってる。そもそも、作った野菜は全部料理として加工してから売ってもらうし」
「うむ、それで、スニルは子供たちに野菜の作り方を指導してほしいというんじゃな」
「そういうこと、だれかいないかな」
誰かいないか、俺は村人たちをざっと見たが、誰も手を挙げるものはいない。
まぁ、それは予想通りだし当然だ。なにせ、村人たちには自分の畑があるからだ。
それを放置して他人の畑の面倒は見れないだろう。
「だったら、ロッドおじさんとサリームおばさんがいいんじゃないか、ほら、あの2人は去年隠居してるし」
「ああ、そっか、確かに2人なら自分の畑はないな」
「ロッドおじさん?」
「えっと、ほら覚えてない、今日はいないけど、スニルがいた時もあそこの木陰でいつも畑を見ていたおじいちゃんとおばあちゃんがいたでしょ」
ポリーにそう言われて、ちょっと前の記憶を思い起こしてみる。
「ああ、そういえばいたな」
この村で過ごした数日の間。俺は村人たちといっよに畑仕事をしていた。
その時、よく木陰からこちらを見てにこにこしていた老夫婦がいた。
もちろん、その2人とも話はしたことはあるが、名前までは聞いていなかったな。
「ロッドたちなら引き受けてくれるかもしれんな。よし、さっそく訪ねてみよう」
善は急げとばかりにさっそく老夫婦の自宅へと向かったのだった。
「ロッド、サリーム、はいるぞ」
村長にとっては同世代ということもあり、呼び捨てながら勝手に家の扉を開けた。
「んっ、なんだダレスンか、どうしたんだ」
村長が家に入ると中からそんな声とともに爺さんが出てきた。
「ロッドおじいちゃんこんにちは」
「おおっ、ポリーか、こんにちは、おや、その子はスニルだったかな」
「……」
ロッド爺さんがまずポリーに挨拶を返した後、俺の姿を見て少し考えた後俺の名を出したので、俺はうなずいて返事をした。
「実は、2人に話があってのぉ」
「俺たちにか、まぁ、入ってくれ。サリーム」
「はいはい、あら、ダレスンにポリーちゃん、あなたはスニル君だったわね。いらっしゃい」
それから、家の中に招かれた俺は、しどろもどろになりながらもこの老夫婦に孤児院のことを説明した。
もちろん、俺の説明だとわかりずらいということでポリーや村長が補足してくれた。
人と話すのが苦手な俺は、こうして説明するのが苦手だ。たとえ事前に考えたとしてもその通りに話せなくなる。
「……ふむ、なるほどな。それで、俺たちってわけか、うむ、それにしても、その領主何を考えているだ」
「ほんとね。子供たちのことなんてまるで考えていないわね」
ロッドとサリームは憤っているようだ。
「この2人は、昔から子供好きなんじゃが、あいにくと2人には子供がおらんでな」
話から察するに、ロッドとサリームは子供好きで、自身の子供をたくさん作ろうと思っていたが、どう頑張っても子供ができなかったらしい。おそらくどちらかが不妊症だったんだろう。この世界には不妊治療なんてものはなさそうだし、何よりこんな小さな農村でそんなものできるはずがないからな。2人にとってはほんとに最悪なことだったのだろう。
「その代わりに、村の子供たちの面倒はよく見ておったがな」
「私も、小さいころいっぱい遊んでもらったもの」
「そうね。そういえば、スニル君も赤ちゃんの時、2人に抱いてもらっていたのよ」
「そうなのか?」
「ええ、ええ、とてもかわいかったわね」
「そうだな。立派になった」
まぁ、赤ん坊から比べたらそうだろうな。
「だからこそ、あ奴らが許せん!」
ここで急にロッドが怒り出した。
「そうね。ほんと、許せないわね。最も、それは気が付けなかった私たちにもだけど」
「うむ、そうじゃな、それはわしも同意じゃ」
急に俺についての怒りを思い出したらしい。
「えっと、それより、孤児院のことだけど」
ここは、俺でないと止められないと思って声をかける。
「おお、そうじゃったな。それで、2人とも引き受けてくれんか?」
村長が改めてそういうと、ロッドとサリームは悩み始めた。
「……そうだな。このまま何もせず、っていうのも悪くはないが、子供たちに囲まれる生活もまた楽しそうだ」
「そうね。きっとかわいいのでしょうね」
どうやら、2人ともやる気のようだ。
「えっと、それじゃ」
「うむ、引き受けるぞ。スニル」
「ええ、任せて頂戴」
こうして、ロッドとサリームが孤児院にきて子供たちに野菜つくりを教えてくれることとなった。
その後は言うまでもなくロニスとポリーにつかまり、村を出てからの出来事を聴取されることとなった。
「それじゃ、さっそく孤児院に行って院長に話をしねぇといけねぇな」
ダンクスがそういった。おそらく孤児院出身だからこそ、俺たちの中で誰よりも気になっているんだろう。
「ああ、そうだな。これから孤児院に行って話す」
「それがいいわね。じゃぁ行きましょうか」
「だったら、俺も行くぜ。野菜を買い取るのは俺たちだからな。その俺が行ったほうが話が早い」
さっそく孤児院にこの話を持っていこうと思っていると、ワイエノが同行を申し出てきた。
確かに、ワイエノのいう通り、実際に野菜を買い取る人物がいて説明したほうがいいだろう。
「わかった」
というわけで、俺とシュンナとダンクス、ワイエノの4人で昨日に引き続き孤児院に向かったのだった。
昨日と同じように4人で貧民街を歩いている。
相変わらず、周囲からは妙な気配がしているが、特に気にせずにまっすぐに孤児院を目指した。
しばらく歩くと目の前に孤児院がみえてきた。
「ついたな。おーい、誰かいるか!」
ついたとたんダンクスが建物に向かってそう叫んだ。
「はーい、あら、昨日の」
ダンクスの声に反応して出てきたのはソニアだった。
「ソニアさん、昨日ぶりです。えっと、今日は院長にお話があってきました。今大丈夫ですか?」
人当たりのいいシュンナがまず説明をした。
「いいですよ。さぁ、どうぞ、入ってください」
そう言ってソニアはあっさりと孤児院の中に入れてくれた。
まぁ、昨日も午後いっぱいいたしな。
そんなわけで、遠慮なく孤児院の中に入ると、俺たちの周りに子供たちがわらわらと集まってきた。
「あっ、スニルー」
「シュンナおねえちゃん」
「あそんでー」
「しらないおじちゃんがいるよ」
「すにるにーちゃ」
子供たちはそれぞれ好き勝手に俺たちの周りではしゃいでいる。
「ほらほら、あなたたちはこれからお昼寝でしょ。遊ぶのはお昼寝から起きてからよ」
「えー」
子供たちはこれから昼寝の時間、俺たちはそれを見越してこの時間にやってきたのだった。
「じゃぁ、すにるもいこ」
ここで、幼い子供から誘いを受けてしまった。
「いや、俺はやることがあるし、それに、昼寝はしないから」
「えーだめだよー。せんせがね、おひるねしないとだめだっていったよ」
俺が断るとなおもそう言ってきた。
俺の見た目は幼い子供、でも実際は12歳、そんなこと子供が理解できるはずもなく、見た目通りの年齢だと子供たちは思っているんだよな。
「ふふっ、お昼寝のお部屋は狭いから、スニル君は別の場所でするから大丈夫よ」
俺が困っているとソニアが機転を利かせてそういった。
実際、俺も昨日子供たちの昼寝部屋を見たが、たしかに狭い、ここにいる子供たちでいっぱいいっぱいだった。
「そっかー、じゃぁね」
それで納得したのか、俺を誘ってきた子供はあっさりと引き下がっていった。
「ふふふっ、スニルも、ほんとにお昼寝する?」
「しねぇよ!」
シュンナがそういって揶揄ってきたので、俺はそう言って突っ込んだ。
見た目は幼くても、実年齢は12歳、中身でいえば、記憶上は40超えてんだぞ。
「それより、院長のとこ」
「ふふふ、そうね」
それから、俺たちは院長の部屋にたどり着いた。
「あらあら、スニル君に皆さん。ようこそ、今日はどうしたのかしら」
俺たちの姿を見た院長が、まるで孫でも迎えるように歓迎してくれた。
まぁ、院長にとって俺は実際に孫みたいなものなんだろう、院長が育てた父さんの息子だからな。
「今日は、この孤児院の支援について、お話ししたくて来ました」
シュンナが代表してそういった。
「まぁまぁ、支援なんていいのに」
支援と聞いて、院長は少し困った表情をした。
支援してくれるのはうれしいけど、申し訳なさのほうが強いんだろう。
「大丈夫、問題ないよ。それで、その支援だけど」
俺はそのあと、院長に俺が考えた支援、つまり子供たちに野菜を作らせて、それをワイエノが買い取るという話をした。
「子供たちが野菜を、でも、あの子たちにできるかしら」
尤もな疑問だと思う。
「そりゃぁ、子供たちだけでやるのはさすがに無理だろうな。だから、大人がちゃんとサポートしてやればいいんだよ。なんだったら、うちのバカ息子にも手伝わせるさ」
そう言ったのはワイエノだ。
「でもスニル君、サポートといっても、私たちは野菜は作ったことないから、わからないわよ」
これも尤もな話だ。家庭菜園でも無知でできるものではないからな。
「それなら、問題ない、知識のある人を呼んでくる」
「呼ぶって、誰をかしら」
「ゾーリン村から、あそこは農村だから」
そう、俺の故郷であるゾーリン村は農村、つまり住人は農業のプロだ。餅は餅屋っていうし、野菜つくりはその道のプロに聞けばいい。
「来てくれる人がいるの?」
「いや、まだこれから行って話をしてくる。多分大丈夫だと思う」
村長に話をすれば、おそらく誰か紹介してくれると思う。
「そうなの、でもねぇ」
院長は悩んでいるようだ。
「野菜を作って、ワイエノおじさんたちが買えば、それが孤児院の収入になる。それに、ここで野菜を作れば、子供の食糧にもなるし、売ったお金で食料だけじゃなくて、子供たちのためのものを買うことだってできる」
俺がする支援はあくまで最初のきっかけみたいなものだ。
「そうね。それは、うれしいわね」
「子供たちにはおなか一杯食べてもらいたいですからね」
院長に続いてソニアもなびいてきたようだ。
やはり、子供の食糧が増える、つまり子供たちが腹いっぱい食べられるというのは重要なことだからだ。
「ありがとう、スニル君」
「いや、それはいい」
「あっ、でも、スニル君、畑を作るにしてもお庭よね」
そうなると、子供たちの遊ぶ場所がなくなってしまう、ソニアはそれを懸念したようだ。
「いや、畑は新たに土地を買って、そこに作るつもり」
俺はその懸念に対してそう答えた。
「土地を? でも土地って高いわよね、いくら貧民街でも結構な額になるわよ」
「あっ、それなら大丈夫ですよ。あたしたち、ちょっとした事情から結構なお金を持っていて、土地の1つや2つなら問題ないですから」
ソニアの質問に答えたのは俺たちの財布を持つシュンナだった。
「そうなの。でも、えっと、いいのかしら?」
「それも含めての支援だからな、問題ねぇよ」
今度はダンクスが答えた。
「そんなわけで話を進めても?」
最後に俺が聞く。
「ええ、お話を聞く限り、とてもいいお話だと思うし、何より子供たちがおなか一杯食べることができろようになるのはうれしいわ」
院長もな。俺は心の中でそう思った。
「それじゃ、俺はこれから村に戻って、村長に頼んでくる」
「おう」
「あたしたちは、土地を買っとく?」
「そうだな。そうしてくれ、ああ、土地の名義はダンクスにしておいて」
「俺が、なんでだ?」
「俺やシュンナじゃ無理だろ」
俺はどう見ても子供だし、シュンナもまだ少女といわれる年齢、そんな俺たちが土地を所有者になるのは無理がある。
「ああ、そっか、まぁ、それぐらいなら構わねぇ、そんじゃシュンナ行くか」
「ええ、それじゃ、スニルあとでね」
「ああ、俺も行くぜ、お前らこの街のこと詳しくないだろ」
こうして、シュンナとダンクス、ワイエノの3人は土地を買いに出かけて行った。
「えっと、それで、スニル君はどうやって、村にというか一緒に行かなくてもよかったの」
俺が一人残ったことにソニアがそういってきた。
「それなら問題ない、転移魔法で村に行くから」
”転移魔法”それは空間魔法に属するもので、遠く離れた場所に瞬時に行くことができる。
とはいえ、実はこの魔法普通なら超高度な魔法で、扱えるものはほぼいないといってもいい。
というのも、これは自身が一度行ったことがある場所にしか行けないし、自分自身がそこに行くまでの道のりを把握した上に、その場所を強くイメージしなければならないというものだからだ。
だが、俺にはメティスルがある。メティスルの”マップ”機能を使って、ゲームのようにその場所を示すだけでその場所に行くことができるからな。
というわけで、俺は庭に出てさっそく”転移魔法”を行使した。
▽△▽▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△
ところ変わって、ゾーリン村入口。
「まさか、こんなに早く帰ってくることになるとは思わなかったな」
そうつぶやきながら村の中を見てみるが、誰の姿も見えないな。
「まぁ、この時間は多分みんな畑だろう」
ゾーリン村は小さいが農村、つまり全員が農家だから畑仕事をしているはずだ。
そんなわけで、村の畑に向かう俺。
といっても、畑は村の奥にあり村長宅を通り越して数軒先、俺の視界に畑が見えてきた。
畑はそれぞれの家に代々伝わってきたものを使用している。
つまり、当然だが俺の家、母さんの実家に伝わっている畑もある。
それはこれまでくそ一家が俺とともに引き継いでいたが、追放された今、うちの畑は村長一家に預けている。
どうでもいいことだが、くそ一家の畑は村共有のものとして手の空いたものが世話をするようにしているそうだ。
「あれっ、スニル?」
俺がそんなことを考えていると横からそんな声がかけられた。
「ああ、ポリーか」
声をかけてきたのは、例のごとく俺と同い年であり、一種の乳姉弟となるポリーだ。
「どうしたの、もう帰ってきたの?」
「いや、帰ってきたわけじゃないんだが、ちょっと村長にっていうか、村に頼みがあってな」
「頼み? なに? まぁ、いいや、ちょっと待ってね。おじーちゃーん」
ポリーはすぐに祖父である村長を大声で呼んだ。
「なんじゃ、大声出し……スニル?」
「まぁまぁ、スニル君、どうしたの急に」
大胡で呼ばれたことに文句を言いに来た村長とノニスだったが、俺の姿を見た途端驚きながらやってきた。
「ちょっと、頼みがあって戻ってきたんだ」
「頼み、それは構わんが、ここでいいかのぉ」
「ああ、ここでいいよ。ていうか、みんなにも聞いてほしいかも」
「なんだなんだ」
「あら、スニル君、おかえり」
俺の姿を見た村人たちが一斉に集まってきた。
畑仕事はいいんだろうか。
そんな疑問を持つとともにちょっとありがたかった。
「それで、スニル頼みってなんなの?」
村人を代表してポリーが俺に訪ねてきた。
「ああ、えっとなんていうか……」
俺は村人を前にして孤児院の支援について話をした。
「……なるほどのぉ、子供たちに野菜を」
「うーん、いい考えだと思うけど」
畑仕事とはそんな子供が簡単にできるものではないと、村人は口々に言っている。
「それは、わかってる。俺も子供たちにそこまで求めていない。それこそ簡単な子供でもできる範囲でいいと思ってる。そもそも、作った野菜は全部料理として加工してから売ってもらうし」
「うむ、それで、スニルは子供たちに野菜の作り方を指導してほしいというんじゃな」
「そういうこと、だれかいないかな」
誰かいないか、俺は村人たちをざっと見たが、誰も手を挙げるものはいない。
まぁ、それは予想通りだし当然だ。なにせ、村人たちには自分の畑があるからだ。
それを放置して他人の畑の面倒は見れないだろう。
「だったら、ロッドおじさんとサリームおばさんがいいんじゃないか、ほら、あの2人は去年隠居してるし」
「ああ、そっか、確かに2人なら自分の畑はないな」
「ロッドおじさん?」
「えっと、ほら覚えてない、今日はいないけど、スニルがいた時もあそこの木陰でいつも畑を見ていたおじいちゃんとおばあちゃんがいたでしょ」
ポリーにそう言われて、ちょっと前の記憶を思い起こしてみる。
「ああ、そういえばいたな」
この村で過ごした数日の間。俺は村人たちといっよに畑仕事をしていた。
その時、よく木陰からこちらを見てにこにこしていた老夫婦がいた。
もちろん、その2人とも話はしたことはあるが、名前までは聞いていなかったな。
「ロッドたちなら引き受けてくれるかもしれんな。よし、さっそく訪ねてみよう」
善は急げとばかりにさっそく老夫婦の自宅へと向かったのだった。
「ロッド、サリーム、はいるぞ」
村長にとっては同世代ということもあり、呼び捨てながら勝手に家の扉を開けた。
「んっ、なんだダレスンか、どうしたんだ」
村長が家に入ると中からそんな声とともに爺さんが出てきた。
「ロッドおじいちゃんこんにちは」
「おおっ、ポリーか、こんにちは、おや、その子はスニルだったかな」
「……」
ロッド爺さんがまずポリーに挨拶を返した後、俺の姿を見て少し考えた後俺の名を出したので、俺はうなずいて返事をした。
「実は、2人に話があってのぉ」
「俺たちにか、まぁ、入ってくれ。サリーム」
「はいはい、あら、ダレスンにポリーちゃん、あなたはスニル君だったわね。いらっしゃい」
それから、家の中に招かれた俺は、しどろもどろになりながらもこの老夫婦に孤児院のことを説明した。
もちろん、俺の説明だとわかりずらいということでポリーや村長が補足してくれた。
人と話すのが苦手な俺は、こうして説明するのが苦手だ。たとえ事前に考えたとしてもその通りに話せなくなる。
「……ふむ、なるほどな。それで、俺たちってわけか、うむ、それにしても、その領主何を考えているだ」
「ほんとね。子供たちのことなんてまるで考えていないわね」
ロッドとサリームは憤っているようだ。
「この2人は、昔から子供好きなんじゃが、あいにくと2人には子供がおらんでな」
話から察するに、ロッドとサリームは子供好きで、自身の子供をたくさん作ろうと思っていたが、どう頑張っても子供ができなかったらしい。おそらくどちらかが不妊症だったんだろう。この世界には不妊治療なんてものはなさそうだし、何よりこんな小さな農村でそんなものできるはずがないからな。2人にとってはほんとに最悪なことだったのだろう。
「その代わりに、村の子供たちの面倒はよく見ておったがな」
「私も、小さいころいっぱい遊んでもらったもの」
「そうね。そういえば、スニル君も赤ちゃんの時、2人に抱いてもらっていたのよ」
「そうなのか?」
「ええ、ええ、とてもかわいかったわね」
「そうだな。立派になった」
まぁ、赤ん坊から比べたらそうだろうな。
「だからこそ、あ奴らが許せん!」
ここで急にロッドが怒り出した。
「そうね。ほんと、許せないわね。最も、それは気が付けなかった私たちにもだけど」
「うむ、そうじゃな、それはわしも同意じゃ」
急に俺についての怒りを思い出したらしい。
「えっと、それより、孤児院のことだけど」
ここは、俺でないと止められないと思って声をかける。
「おお、そうじゃったな。それで、2人とも引き受けてくれんか?」
村長が改めてそういうと、ロッドとサリームは悩み始めた。
「……そうだな。このまま何もせず、っていうのも悪くはないが、子供たちに囲まれる生活もまた楽しそうだ」
「そうね。きっとかわいいのでしょうね」
どうやら、2人ともやる気のようだ。
「えっと、それじゃ」
「うむ、引き受けるぞ。スニル」
「ええ、任せて頂戴」
こうして、ロッドとサリームが孤児院にきて子供たちに野菜つくりを教えてくれることとなった。
その後は言うまでもなくロニスとポリーにつかまり、村を出てからの出来事を聴取されることとなった。
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【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
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ギルドの片隅で飲んだくれてるおっさん冒険者
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チートを貰い転生した。
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伯爵家の三男に転生しました。風属性と回復属性で成り上がります
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ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
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劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?
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海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、
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99歳で亡くなり異世界に転生した老人は7歳の子供に生まれ変わり、召喚魔法でドラゴンや前世の世界の物を召喚して世界を変える
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転生したら最強種の竜人かよ~目立ちたくないので種族隠して学院へ通います~
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