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第05章 家族
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数日村へ滞在した俺とシュンナ、サーナは”転移”でテントまで戻ってきた。
「ただいま」
「ただいま」
「あぅあー」
俺とシュンナがただいまというとサーナが何かを言ったが、もしかして俺たちの真似をしてただいまといったのではないかと勘繰ってしまう。
「おう、帰ったかお前ら」
「スニルおかえりなさい、シュンナとサーナちゃんもおかえり」
「おかえり」
テント前にいたダンクスたちが迎えてくれる。両親からおかえりと言われると、なんだか妙にうれしくなるな。なんか実家に帰って来たって気がして、まぁ、テントだけど。
「村のみんな元気だった?」
母さんが村の連中の様子を聞いてきたので答えることにした。
「ああ、元気だったよ」
「そう、それはよかったわ」
「村かぁ。俺は結局受け入れてもらえなかったからなぁ」
村の話をしていると父さんがしみじみとそういった。確かに村長からも父さんは最後までよそ者扱いされていたらしいからな。
「でも、村長はそろそろ父さんを村の一員として村会議に参加させようと思っていたみたいだよ」
「ホントか。でもまぁ、今となっちゃぁな」
そうだな。あれは俺相手だから村長がそう言っただけだった可能性もあるし、何より村長が認めてもほかの人間が認めなかった可能性だってある。まぁ、こればかりは分からないことだが。
「それで、村ではまた宴会か?」
俺たち親子で会話をしているとダンクスはシュンナに聞いている。
「まぁね。みんな酔っ払って、奥さんたちに怒られてた」
「あははっ、何やってんだあいつら」
「どうやら、楽しい時間を過ごしてきたみたいだな」
「そうね」
ダンクスとシュンナの会話を聞いた父さんと母さんは少し寂しそうだった。やっぱり2人とも村に行きたかったんだろうな。母さんにとっては村は故郷だし、父さんは認められていなかったとはいえ、やはり父さん自信は村の一員として頑張っていたんだろうな。だから、あの村を囲う柵を作ったわけだし。
「しゅあー、つおー、つおー」
俺とシュンナで村での話をしていると、突如サーナがそう言いだした。
「おおう、どうした。サーナ、シュンナがどうしたって」
「もしかして、シュンナが強いって言っているんじゃない」
「あうぁー」
シュンナのことは分かるが、『つおー』というのが分からず困惑していると母さんが『強い』と翻訳した。
「強い? そりゃぁ、まぁ確かにシュンナは強いが、それがどうしたっていうんだ」
当たり前のことを言われても困るとダンクスは首をかしげるが、俺とシュンナには心当たりがあった。
「ああ、もしかしてあのことか?」
「あのこと?」
俺がつぶやくと母さんが聞いてきた。
「いや、俺たちが村にいた時にオークが現れて」
「えっ、オークだって」
「だ、大丈夫なの?」
オークと聞いて父さんと母さんが青くなった。やはり2人にとってオークといえば前世の死因だからその時のことを思い出しているのだろう。
「1匹だけのはぐれだったからな。俺でもよかったんだけれど、シュンナが片づけたんだ。シュンナなら1人でも問題ないからな」
「まっ、確かにそれはそうだな」
「お、おう、そうか、そういえばそうだったな」
「そうね。でも、びっくりしたぁ。まさか、またオークが村にねぇ」
父さんと母さんもシュンナがいかに強いかは知っているために、安堵するとともに少し悔しそうだ。自分たちが命がけで倒した存在をたった1人で討伐してしまった。その強さがうらやましいのだろう。
「ホントにね。あたしもびっくりしたよ。でも、ミリアとヒュリックだって、今ならオークの1匹や2匹、問題ないでしょ」
父さんと母さんは転生特典で大幅なステータス上昇をもらっているために、今の2人ならオークごとき全く敵ではない。
「それは、わかるんだけどな。やはりな」
「そうね」
母さんはそう言って近くにいた俺を抱きしめた。たとえ、今オークと戦っても勝てるとわかっていたとしても、やはり前世で最期に戦った相手ということで思うところがあるのだろう。それに何より、その戦いによって命を落とし俺という1人息子を残してしまったこと。そして、それが原因で俺が虐待を受ける羽目となったことが、何よりも悔しい、2人の表情にはそんな思いがあるように思える。だからこそ、俺はおとなしく母さんに抱きしめられているというわけだ。
「それで、3人は何をやってたんだ」
「そうそう、外に出てたみたいだけど、増築は終わったの?」
俺たちが戻った時、残った3人はテントの外にいた。本来なら増築をするためにテント内にいるはずなんだけど。
「ああ、そのことか増築はまだなんだが、ちょっと休憩がてら模擬戦をな」
「模擬戦? だからみんなして武器を持っているってわけか?」
「あたしはてっきり魔物でも出たのかと思ったわよ」
「それは、悪かったわね。でも、大丈夫よ私たちがここにきて魔物は1匹も出ていないから」
シュンナの言う通り俺たちが転移してきたとき3人はそれぞれ武器を手に持っていた。俺は”探知”ですぐに魔物がいないことは分かったが、シュンナはそうはいかなかったようで一瞬身構えていた。尤も、シュンナも長年の勘ってやつなのかすぐに違うことが分かっていたようだけど。
「それはよかったけど、なんで模擬戦?」
なぜ模擬戦をやっていたのか餓鬼になったので尋ねてみた。
「ああ、それはな……」
ここから父さんと母さん、ダンクスの3人がなぜ模擬戦をすることになったのか説明してくれたのだった。
それによると、俺とシュンナ、サーナがゾーリン村に旅立った後、3人は予定通り増築を行っていた。そんなときふと父さんからダンクスに相談を持ち掛けた。
「ダンクス、少し聞きたいんだがいいか?」
「なんだ?」
「ダンクスも聞いていると思うが、俺とミリアは2人掛かりでオークと戦って負けてる」
「おう」
ダンクスは若干苦笑しながら答えた。
「でも、ダンクスやシュンナだったら、オークぐらい簡単に倒せるのよね」
「まぁ、それはまぁな。俺もシュンナもわけもねぇ。でもそれはお前たちだってそうだろ」
「それは、まぁ多分な。でも、お前たち程簡単ではないさ。それに、スニルだってお前たち並みには強いんだろ」
「そうだな。といってもスニルの場合魔法があるからな。それを入れると俺たちよりも圧倒的に強いぞ。スニルによるとチートとかいうらしいが、神様からもらった力がかなり強いみたいだからな」
「そうなのよねぇ。あの子は神様からとんでもない力をもらったものよね」
母さんはそう言って周囲を見た、その目に映るものが俺の力だと改めて感心しているのだった。
「本当にな。スニルの魔法は本当にすごいよ。見ていると本当に俺たちの息子かと疑いたくなる」
「そうね。でも、性格はあなたにそっくりよ」
「そうか、まぁ、見た目はミリアそのものだけどな。そこら辺を考えると確かに俺たちの息子なんだが、能力がなぁ」
「はははっ、確かにな。でもよ。あいつが持っている剣術ってスキル、あれはお前たちから受け継いだ才能とあいつが前世で得た力が合わさったものだって言っていたぜ。ていうか、スニルが言うには前世の力って言っても刀を振り回すだけの遊びだったって話だ」
ダンクスの言う通り俺が前世で得た力というのは、まさに通販で買った居合刀という模造刀を思い立った時に振り回していただけ。別に剣道をやっていたわけでも居合などをやっていたわけでもないただの趣味だ。そこで得た物なんかは実際何の役に立っていないと思う。つまり、俺がこの世界で剣術として刀を振り回す能力は間違いなく両親から受け継いだ才能に基づくものだ。
ダンクスはそんなことを両親へと説明したのだった。
「つまり、スニルのあの剣技は俺たちから受け継いだものってわけか」
「そうなるな。それに魔法だって、あいつ全属性が使えるけど、そんなかでも風が一番使いやすいって言ってたぞ」
「風が?」
「風と言えば、ミリアだな」
「ええ、私が昔よく使っていた属性ね」
母さんはよく風魔法を使っていたということをワイエノおじさんとシエリルおばさんから聞いていたが、実は俺も全属性の中で一番しっくりくる魔法が風魔法だった。これこそ母さんから受け継いだものだろう。まぁ、一番しっくりくるってだけでほかの属性の違いは微々たるものではあるんだけどね。とにかく俺の能力は間違いなく両親から受け継いだもので間違いない。
「そういうわけだから、間違いなくお前たちの息子だぜ。スニルは」
「そうか、それを聞いてなんというか、安心した」
「そうね。でも、そうなるとますます、私たちはこれからも一緒にいてもいいのかしら」
父さんと母さんが考えていたことはまさにこれだった。俺たちの強さと父さんと母さんの強さには差がある。俺たちのような強者の中に父さんと母さんがいてもいいのかと思っていたらしい。
「なんだそんなことか」
「そんなことって」
ダンクスの答えに少しむっとする父さんと母さん。2人は真剣だというのにダンクスの答えがあまりにもぞんざいだったからだ。
「俺もそうだが、スニルもシュンナもそんなこと気にしてないぞ。ていうか、俺たちはすでにサーナを抱えてるじゃねぇか。それにだ。そもそも俺たちは別に何かと戦いに行くわけじゃない。ただの旅人だ」
ダンクスが言うように俺たちは魔王を討伐しに行く勇者パーティーというわけでもなくただただ、世界を見てわまりだけの旅人。俺たちがそれぞれ強者となっているのはただの偶然であり、俺たちはそれを使って何をしようというつもりはない。
「それに、2人はスニルの両親だろ、なら、親が息子と一緒にいるのに理由なんているか?」
「まぁ、いらないな。でも、スニルはいいが、ダンクスはいいのか、俺たちは足を引っ張るんじゃないか」
「それこそ、気にするんじゃねぇって、というか2人だって十分な強さを持っているじゃないか」
俺たち3人とひっかうするから弱く見えるだけで、父さんと母さんも十分すぎるほどには強い、なにせもともと冒険者としても実力者の方であったところに神様からの転生特典でさらに強さを手に入れている。
「それはそうだが、やはりお前たちと比べてしまうとな」
「それはまだ、自分の力を使いきれているわけじゃないからじゃないのか」
ダンクスが言うように父さんと母さんの2人はまだ自分が持つ力をすべて使いきれているわけじゃない。これは俺も経験しているからわかることだが、前世の記憶を取り戻すのは12歳の子供、そして前世では大人だった。そのためにまずは体が違う、筋力も違えばリーチも違っている。元の通りに体を動かしたとしてもその通りに動くわけじゃない。特に俺は前世でも鍛えていたわけではないが、大人の男として最低限の力はあった。それが、生まれ変わって子供のそれも虐待を受けてやせ細って小さい体となっていたために、その力はとんでもなく落ちていたために、持てると思ったものが持てなかった。あれは、ちょっとショックだったな。まぁ、父さんと母さんはそれなりに鍛えていたみたいだからそこまでの変化はないと思うが、戦闘をするものにとってのそのわずかな変化が命取りになる。2人はそんな違和感の中にいるわけだから本来の力を発揮するのは難しいというわけだ。
「だったら、この機会にちょっとこの体に慣れておく必要があるかもしれないわね」
「だな。というわけでダンクス、俺たちと模擬戦をしてもらえないか」
「いいぜ。増築ばかりやるより楽しそうだしな」
そんなわけで、3人は模擬戦をすることとなったようだ。
「なるほどねぇ。だったら、あたしもやろうか、ダンクスとばかりじゃつまらないでしょ」
「それは助かる」
それから、ダンクスに代わりシュンナが父さん母さんと模擬戦をすることとなった。俺は? って俺はやってない、父さんが嫌がったからだ。どうしてかというと、これは父親としてのプライドの問題で、今やると俺の方が強い、それは父親として許せないことだそうだ。それは俺もなんとなくわかるので、父さんが本来の力を出せるようになるまで待つことにした。まぁ、それはすぐだと思う、魔法を使わなかったら多分すぐに父さんの方が強くなる、なにせ、やはり父さんと俺では戦闘に関しての経験値が違うし、スキルレベルもやはり父さんの方が上だからな。俺が強いのはやはり魔法ありきだし。
そこで暇となった俺は、この際だからと父さんと母さんに渡す魔道具を作ることにした。これはダンクスとシュンナにも渡している物で、それぞれの力を底上げするものだ。
「あらっ、スニルは何を作っているの?」
俺が出した机の上に道具などを並べて魔道具を作っていると、隣にやって来た母さんが覗き込んで聞いてきた。
「これは、認識疎外のローブだよ。ダンクスとシュンナも持っているけど、これを使うと顔を認識できなくなるかんだ。ほら、前に話したろコルマベイントの王都での話」
「ああ、シュンナが大変なことになったあれね」
「そうそう、あれはかなり面倒だったからね。だから、今後何があってもいいように2人にも作っておこうと思ってね」
「そう、スニルは魔道具も作れるなんてすごいのね」
母さんはそう言って俺の頭をなでる。
「神様のおかげだよ。まぁ、あとは前世の記憶があるからってのもあるけど、大したことじゃないよ」
神様がくれたメティスルがなかったら作ることはできないし、前世の記憶がなかったら思いつくことすらできないだろう。
「そんなことないよ。普通は魔道具なんて作れないもの、やっぱり、スニルはすごいのよ。これは、誇りなさい。ねっ」
「あ、ああ」
母さんは笑顔でそういった。それを見た瞬間俺は、ああこれが母親なんだなぁと思った。正直言って俺は親というものがよくわかってない。というのも前世の両親は共働きで忙しく幼いころは祖父母に育てられたようなものだった。なにせそのころの俺は祖父母こそ俺の両親ではないかと思ってしまっていたほどだ。まぁ、それはさておき、そんな両親だったから、祖父母が亡くなった後は、いつも1人でむなしくコンビニ弁当か子ども食堂で過ごす毎日だった。また、日によっては一緒に住んでいるのに両親に合わない日というのもあった。なぜそうなるのかというと、単純に俺が夜寝た後に両親が帰ったり、俺が起きる前に出かけてしまっていたからなんだ。また、よくおふくろの味とかいうが、これも俺にはなかった。というのも、おれの母やほとんど料理をしなかったからだ。先も言ったように忙しくてできないというのもあるが、たまに家に居ても作らずに外食などが多かった。まっ、俺がいたころの日本ではよくある光景だったと思う。だからこそ、今母さんが母親として俺と接してくれているのが何だかうれしいのかもしれないな。
それから俺は、いくつか魔道具を作っていったのだった。その間父さんと母さんははダンクスやシュンナと模擬戦を行い、徐々に今の体に慣れていったのであった。とまぁ、そんなこともあってか俺たちはこの地にしばし滞在することとなったのは言うまでもないだろう。
「ただいま」
「ただいま」
「あぅあー」
俺とシュンナがただいまというとサーナが何かを言ったが、もしかして俺たちの真似をしてただいまといったのではないかと勘繰ってしまう。
「おう、帰ったかお前ら」
「スニルおかえりなさい、シュンナとサーナちゃんもおかえり」
「おかえり」
テント前にいたダンクスたちが迎えてくれる。両親からおかえりと言われると、なんだか妙にうれしくなるな。なんか実家に帰って来たって気がして、まぁ、テントだけど。
「村のみんな元気だった?」
母さんが村の連中の様子を聞いてきたので答えることにした。
「ああ、元気だったよ」
「そう、それはよかったわ」
「村かぁ。俺は結局受け入れてもらえなかったからなぁ」
村の話をしていると父さんがしみじみとそういった。確かに村長からも父さんは最後までよそ者扱いされていたらしいからな。
「でも、村長はそろそろ父さんを村の一員として村会議に参加させようと思っていたみたいだよ」
「ホントか。でもまぁ、今となっちゃぁな」
そうだな。あれは俺相手だから村長がそう言っただけだった可能性もあるし、何より村長が認めてもほかの人間が認めなかった可能性だってある。まぁ、こればかりは分からないことだが。
「それで、村ではまた宴会か?」
俺たち親子で会話をしているとダンクスはシュンナに聞いている。
「まぁね。みんな酔っ払って、奥さんたちに怒られてた」
「あははっ、何やってんだあいつら」
「どうやら、楽しい時間を過ごしてきたみたいだな」
「そうね」
ダンクスとシュンナの会話を聞いた父さんと母さんは少し寂しそうだった。やっぱり2人とも村に行きたかったんだろうな。母さんにとっては村は故郷だし、父さんは認められていなかったとはいえ、やはり父さん自信は村の一員として頑張っていたんだろうな。だから、あの村を囲う柵を作ったわけだし。
「しゅあー、つおー、つおー」
俺とシュンナで村での話をしていると、突如サーナがそう言いだした。
「おおう、どうした。サーナ、シュンナがどうしたって」
「もしかして、シュンナが強いって言っているんじゃない」
「あうぁー」
シュンナのことは分かるが、『つおー』というのが分からず困惑していると母さんが『強い』と翻訳した。
「強い? そりゃぁ、まぁ確かにシュンナは強いが、それがどうしたっていうんだ」
当たり前のことを言われても困るとダンクスは首をかしげるが、俺とシュンナには心当たりがあった。
「ああ、もしかしてあのことか?」
「あのこと?」
俺がつぶやくと母さんが聞いてきた。
「いや、俺たちが村にいた時にオークが現れて」
「えっ、オークだって」
「だ、大丈夫なの?」
オークと聞いて父さんと母さんが青くなった。やはり2人にとってオークといえば前世の死因だからその時のことを思い出しているのだろう。
「1匹だけのはぐれだったからな。俺でもよかったんだけれど、シュンナが片づけたんだ。シュンナなら1人でも問題ないからな」
「まっ、確かにそれはそうだな」
「お、おう、そうか、そういえばそうだったな」
「そうね。でも、びっくりしたぁ。まさか、またオークが村にねぇ」
父さんと母さんもシュンナがいかに強いかは知っているために、安堵するとともに少し悔しそうだ。自分たちが命がけで倒した存在をたった1人で討伐してしまった。その強さがうらやましいのだろう。
「ホントにね。あたしもびっくりしたよ。でも、ミリアとヒュリックだって、今ならオークの1匹や2匹、問題ないでしょ」
父さんと母さんは転生特典で大幅なステータス上昇をもらっているために、今の2人ならオークごとき全く敵ではない。
「それは、わかるんだけどな。やはりな」
「そうね」
母さんはそう言って近くにいた俺を抱きしめた。たとえ、今オークと戦っても勝てるとわかっていたとしても、やはり前世で最期に戦った相手ということで思うところがあるのだろう。それに何より、その戦いによって命を落とし俺という1人息子を残してしまったこと。そして、それが原因で俺が虐待を受ける羽目となったことが、何よりも悔しい、2人の表情にはそんな思いがあるように思える。だからこそ、俺はおとなしく母さんに抱きしめられているというわけだ。
「それで、3人は何をやってたんだ」
「そうそう、外に出てたみたいだけど、増築は終わったの?」
俺たちが戻った時、残った3人はテントの外にいた。本来なら増築をするためにテント内にいるはずなんだけど。
「ああ、そのことか増築はまだなんだが、ちょっと休憩がてら模擬戦をな」
「模擬戦? だからみんなして武器を持っているってわけか?」
「あたしはてっきり魔物でも出たのかと思ったわよ」
「それは、悪かったわね。でも、大丈夫よ私たちがここにきて魔物は1匹も出ていないから」
シュンナの言う通り俺たちが転移してきたとき3人はそれぞれ武器を手に持っていた。俺は”探知”ですぐに魔物がいないことは分かったが、シュンナはそうはいかなかったようで一瞬身構えていた。尤も、シュンナも長年の勘ってやつなのかすぐに違うことが分かっていたようだけど。
「それはよかったけど、なんで模擬戦?」
なぜ模擬戦をやっていたのか餓鬼になったので尋ねてみた。
「ああ、それはな……」
ここから父さんと母さん、ダンクスの3人がなぜ模擬戦をすることになったのか説明してくれたのだった。
それによると、俺とシュンナ、サーナがゾーリン村に旅立った後、3人は予定通り増築を行っていた。そんなときふと父さんからダンクスに相談を持ち掛けた。
「ダンクス、少し聞きたいんだがいいか?」
「なんだ?」
「ダンクスも聞いていると思うが、俺とミリアは2人掛かりでオークと戦って負けてる」
「おう」
ダンクスは若干苦笑しながら答えた。
「でも、ダンクスやシュンナだったら、オークぐらい簡単に倒せるのよね」
「まぁ、それはまぁな。俺もシュンナもわけもねぇ。でもそれはお前たちだってそうだろ」
「それは、まぁ多分な。でも、お前たち程簡単ではないさ。それに、スニルだってお前たち並みには強いんだろ」
「そうだな。といってもスニルの場合魔法があるからな。それを入れると俺たちよりも圧倒的に強いぞ。スニルによるとチートとかいうらしいが、神様からもらった力がかなり強いみたいだからな」
「そうなのよねぇ。あの子は神様からとんでもない力をもらったものよね」
母さんはそう言って周囲を見た、その目に映るものが俺の力だと改めて感心しているのだった。
「本当にな。スニルの魔法は本当にすごいよ。見ていると本当に俺たちの息子かと疑いたくなる」
「そうね。でも、性格はあなたにそっくりよ」
「そうか、まぁ、見た目はミリアそのものだけどな。そこら辺を考えると確かに俺たちの息子なんだが、能力がなぁ」
「はははっ、確かにな。でもよ。あいつが持っている剣術ってスキル、あれはお前たちから受け継いだ才能とあいつが前世で得た力が合わさったものだって言っていたぜ。ていうか、スニルが言うには前世の力って言っても刀を振り回すだけの遊びだったって話だ」
ダンクスの言う通り俺が前世で得た力というのは、まさに通販で買った居合刀という模造刀を思い立った時に振り回していただけ。別に剣道をやっていたわけでも居合などをやっていたわけでもないただの趣味だ。そこで得た物なんかは実際何の役に立っていないと思う。つまり、俺がこの世界で剣術として刀を振り回す能力は間違いなく両親から受け継いだ才能に基づくものだ。
ダンクスはそんなことを両親へと説明したのだった。
「つまり、スニルのあの剣技は俺たちから受け継いだものってわけか」
「そうなるな。それに魔法だって、あいつ全属性が使えるけど、そんなかでも風が一番使いやすいって言ってたぞ」
「風が?」
「風と言えば、ミリアだな」
「ええ、私が昔よく使っていた属性ね」
母さんはよく風魔法を使っていたということをワイエノおじさんとシエリルおばさんから聞いていたが、実は俺も全属性の中で一番しっくりくる魔法が風魔法だった。これこそ母さんから受け継いだものだろう。まぁ、一番しっくりくるってだけでほかの属性の違いは微々たるものではあるんだけどね。とにかく俺の能力は間違いなく両親から受け継いだもので間違いない。
「そういうわけだから、間違いなくお前たちの息子だぜ。スニルは」
「そうか、それを聞いてなんというか、安心した」
「そうね。でも、そうなるとますます、私たちはこれからも一緒にいてもいいのかしら」
父さんと母さんが考えていたことはまさにこれだった。俺たちの強さと父さんと母さんの強さには差がある。俺たちのような強者の中に父さんと母さんがいてもいいのかと思っていたらしい。
「なんだそんなことか」
「そんなことって」
ダンクスの答えに少しむっとする父さんと母さん。2人は真剣だというのにダンクスの答えがあまりにもぞんざいだったからだ。
「俺もそうだが、スニルもシュンナもそんなこと気にしてないぞ。ていうか、俺たちはすでにサーナを抱えてるじゃねぇか。それにだ。そもそも俺たちは別に何かと戦いに行くわけじゃない。ただの旅人だ」
ダンクスが言うように俺たちは魔王を討伐しに行く勇者パーティーというわけでもなくただただ、世界を見てわまりだけの旅人。俺たちがそれぞれ強者となっているのはただの偶然であり、俺たちはそれを使って何をしようというつもりはない。
「それに、2人はスニルの両親だろ、なら、親が息子と一緒にいるのに理由なんているか?」
「まぁ、いらないな。でも、スニルはいいが、ダンクスはいいのか、俺たちは足を引っ張るんじゃないか」
「それこそ、気にするんじゃねぇって、というか2人だって十分な強さを持っているじゃないか」
俺たち3人とひっかうするから弱く見えるだけで、父さんと母さんも十分すぎるほどには強い、なにせもともと冒険者としても実力者の方であったところに神様からの転生特典でさらに強さを手に入れている。
「それはそうだが、やはりお前たちと比べてしまうとな」
「それはまだ、自分の力を使いきれているわけじゃないからじゃないのか」
ダンクスが言うように父さんと母さんの2人はまだ自分が持つ力をすべて使いきれているわけじゃない。これは俺も経験しているからわかることだが、前世の記憶を取り戻すのは12歳の子供、そして前世では大人だった。そのためにまずは体が違う、筋力も違えばリーチも違っている。元の通りに体を動かしたとしてもその通りに動くわけじゃない。特に俺は前世でも鍛えていたわけではないが、大人の男として最低限の力はあった。それが、生まれ変わって子供のそれも虐待を受けてやせ細って小さい体となっていたために、その力はとんでもなく落ちていたために、持てると思ったものが持てなかった。あれは、ちょっとショックだったな。まぁ、父さんと母さんはそれなりに鍛えていたみたいだからそこまでの変化はないと思うが、戦闘をするものにとってのそのわずかな変化が命取りになる。2人はそんな違和感の中にいるわけだから本来の力を発揮するのは難しいというわけだ。
「だったら、この機会にちょっとこの体に慣れておく必要があるかもしれないわね」
「だな。というわけでダンクス、俺たちと模擬戦をしてもらえないか」
「いいぜ。増築ばかりやるより楽しそうだしな」
そんなわけで、3人は模擬戦をすることとなったようだ。
「なるほどねぇ。だったら、あたしもやろうか、ダンクスとばかりじゃつまらないでしょ」
「それは助かる」
それから、ダンクスに代わりシュンナが父さん母さんと模擬戦をすることとなった。俺は? って俺はやってない、父さんが嫌がったからだ。どうしてかというと、これは父親としてのプライドの問題で、今やると俺の方が強い、それは父親として許せないことだそうだ。それは俺もなんとなくわかるので、父さんが本来の力を出せるようになるまで待つことにした。まぁ、それはすぐだと思う、魔法を使わなかったら多分すぐに父さんの方が強くなる、なにせ、やはり父さんと俺では戦闘に関しての経験値が違うし、スキルレベルもやはり父さんの方が上だからな。俺が強いのはやはり魔法ありきだし。
そこで暇となった俺は、この際だからと父さんと母さんに渡す魔道具を作ることにした。これはダンクスとシュンナにも渡している物で、それぞれの力を底上げするものだ。
「あらっ、スニルは何を作っているの?」
俺が出した机の上に道具などを並べて魔道具を作っていると、隣にやって来た母さんが覗き込んで聞いてきた。
「これは、認識疎外のローブだよ。ダンクスとシュンナも持っているけど、これを使うと顔を認識できなくなるかんだ。ほら、前に話したろコルマベイントの王都での話」
「ああ、シュンナが大変なことになったあれね」
「そうそう、あれはかなり面倒だったからね。だから、今後何があってもいいように2人にも作っておこうと思ってね」
「そう、スニルは魔道具も作れるなんてすごいのね」
母さんはそう言って俺の頭をなでる。
「神様のおかげだよ。まぁ、あとは前世の記憶があるからってのもあるけど、大したことじゃないよ」
神様がくれたメティスルがなかったら作ることはできないし、前世の記憶がなかったら思いつくことすらできないだろう。
「そんなことないよ。普通は魔道具なんて作れないもの、やっぱり、スニルはすごいのよ。これは、誇りなさい。ねっ」
「あ、ああ」
母さんは笑顔でそういった。それを見た瞬間俺は、ああこれが母親なんだなぁと思った。正直言って俺は親というものがよくわかってない。というのも前世の両親は共働きで忙しく幼いころは祖父母に育てられたようなものだった。なにせそのころの俺は祖父母こそ俺の両親ではないかと思ってしまっていたほどだ。まぁ、それはさておき、そんな両親だったから、祖父母が亡くなった後は、いつも1人でむなしくコンビニ弁当か子ども食堂で過ごす毎日だった。また、日によっては一緒に住んでいるのに両親に合わない日というのもあった。なぜそうなるのかというと、単純に俺が夜寝た後に両親が帰ったり、俺が起きる前に出かけてしまっていたからなんだ。また、よくおふくろの味とかいうが、これも俺にはなかった。というのも、おれの母やほとんど料理をしなかったからだ。先も言ったように忙しくてできないというのもあるが、たまに家に居ても作らずに外食などが多かった。まっ、俺がいたころの日本ではよくある光景だったと思う。だからこそ、今母さんが母親として俺と接してくれているのが何だかうれしいのかもしれないな。
それから俺は、いくつか魔道具を作っていったのだった。その間父さんと母さんははダンクスやシュンナと模擬戦を行い、徐々に今の体に慣れていったのであった。とまぁ、そんなこともあってか俺たちはこの地にしばし滞在することとなったのは言うまでもないだろう。
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夫が病気で長期入院したので夫が途中まで書いていた小説を私なりに書き直して完結まで投稿しますので応援よろしくお願いいたします。
主人公は建築会社を55歳で取り締まり役常務をしていたが惜しげもなく早期退職し田舎で大好きな農業をしていた。99歳で亡くなった老人は前世の記憶を持ったまま7歳の少年マリュウスとして異世界の僻地の男爵家に生まれ変わる。10歳の鑑定の儀で、火、水、風、土、木の5大魔法ではなく、この世界で初めての召喚魔法を授かる。最初に召喚出来たのは弱いスライム、モグラ魔獣でマリウスはガッカリしたが優しい家族に見守られ次第に色んな魔獣や地球の、物などを召喚出来るようになり、僻地の男爵家を発展させ気が付けば大陸一豊かで最強の小さい王国を起こしていた。
転生したら最強種の竜人かよ~目立ちたくないので種族隠して学院へ通います~
ゆる弥
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