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第06章 獣人の土地
01 聖教国へ
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テントの増築を初めて2週間が経った。増築自体はそれほどかからなかったが、父さんと母さんが自身の強さに不安があるということでダンクス、シュンナと模擬戦を始めたためにここまでとどまっていたというわけだ。俺はというと、そんな両親を見ながらついでとばかりに2人に渡す魔道具を作っていったのだった。
「ふぅ、もうヒュリックもミリアもだいぶ慣れてきたろ」
「ああ、おかげでな。でもまさかここまで強くなれるとは思わなかったな」
「そうね。ありがとうダンクス、シュンナ」
「なに、俺たちはただ模擬戦をしただけだ」
どうやら、両親は今の自分の体にようやく慣れたようだ。その結果2人は飛躍的に強くなった。これまではやはり前世の記憶と今の体が違いすぎたためにいろいろ勝手が違っていたから、十全な力を発揮できなかったんだろう。それにしてもこの2週間でその力をものにしたのだから、すごいものだと思う。俺なんかいまだに戸惑うことがあるってのにな。まぁ、俺の場合日々成長して体が大きくなっているから余計なのかもしれない。
「それにしても、ヒュリックはやっぱりスニルの父親だな」
「? そりゃぁな。何を今さら」
ダンクスが妙なこと言いだしたので父さんは首をかしげている。
「スニル、良かったじゃないか。これからはヒュリックに戦い方を教わったほうがいいぞ」
「父さんに? それはまぁ、父親だしそれはいいけど、なんでだ?」
「これまでは2人が教えていたのじゃないの」
母さんが言うように俺の戦い方はダンクスとシュンナから教わっていた。なにせ俺は戦い方なんて知らないからな。
「そうだけど、あたしたちが教えていたのはあくまで基礎だけなのよ」
シュンナの言う通り基礎だけだった。その理由は単純に2人の戦闘スタイルと俺の戦闘スタイルが別物だったからだ。ダンクスは見ての通りその巨体から繰り出す力を込めて叩き斬るもので小さい体を持つ俺にはまねできない。一方でシュンナはというと、そのたぐいまれなるスピードで敵を翻弄し急所を斬るもの。それに対して俺はというと剣術スキルからわかるように、斬ることに特化した戦闘スタイルとなる。これでは2人から細かい戦い方を教わるわけにはいかない。そのため現在の俺はどうしてもスキルと魔法による身体強化の力技であったり、独学な適当となっている。だからだろうな、俺の剣技だけだと冒険者でいうようやく一人前に足を突っ込んだレベルでしかない。まぁ、経験値も圧倒的に低いこともあるんだけどね。
「でも、ヒュリックの戦闘スタイルはさすが親子だけあってスニルと似てる」
「そうなのか、俺の戦い方は結構特殊だったはずだが」
「そうそう、珍しいのよね」
「だろうな。俺もヒュリックとスニルでしか見たことがない。斬ることに主体を置いた剣技なんてものはな」
「えっ? それは本当か、スニル」
父さんが驚いたように俺を見てきたんだけど、俺も驚いた。日本の剣術である斬ることに主体を置いた剣技をこの西洋みたいな異世界で使い手がいるとは、しかもそれが父親だってことにさらに驚いた。
「あ、ああ、俺の剣は刀といって、斬ることに特化したものなんだ」
そう言って俺は愛刀を抜き放って見せた。
「それが、スニルの剣か、確かにこいつは斬ることに特化したものだな」
「ええ、綺麗ね」
「まぁ、俺の魔力を思いっきりこめてあるから、神剣になっているからね」
「神剣って、それはまたすごいな」
「ホントね。本当にスニルはすごいのね」
ここでまた父さんと母さんが俺をすごいとほめてくれるが、やはり照れくさいな。
「まっ、というわけだから、これからはヒュリックがスニルに戦い方を教えてやってくれ」
「それは、任せてくれ。というか、そもそもそれは俺の役目だ」
息子に戦い方を教えるのは父親の役目というわけで、今後俺は父さんからいろいろ教わることになりそうだ。それにしても、まさか父さんが俺と同じく斬る剣技を扱うと思わなかった。もしかして神様はこれを考慮して父さんと母さんの息子として俺を転生させたのだろうか。そんな気がしてきたな。
「まっ、それはともかく、そろそろ出発しないか、増築も終わっているしいつまでもここにとどまっていても仕方ないし、父さんと母さんも納得できたんだろ」
「そうね。確かにいつまでもここに居ても仕方ないわね」
「うん、確かにね」
「そんじゃ、そうすっか」
というわけで俺たちは旅の再開をすることになった。といっても今すぐではなく出発は明日となった。今日はもう遅いからな。
翌日である。
「忘れ物はない?」
「大丈夫だ」
「ないよ。ていうか、忘れ物も何も、全部俺の”収納”に収まっているから忘れても問題ないんじゃ」
「そうでもいざ必要になったらその時はテントを出さなきゃいけないでしょ」
「あ、ああ、それもそうか」
母さんの言う通り、例えば剣をテント内に忘れていざ戦闘になったから場合、どう考えても戦えないからな。
そんなわけで、俺はしっかり確認したのちテントを出て、テントを収めたのだった。
「そんじゃ行くか、それで、どっち行くんだ」
「そうだな。このまま南に進んでまずは王都を目指すか、そのあとはまぁ、適当にな」
「いつも通りね」
「王都か、行ったことないからなぁ」
「楽しみね」
こうして、俺たちは一路王都を目指して旅立ったのだった。
そして、それから2週間の旅路を得てようやく王都へと到着した。
「ここが王都か、活気があるな」
「だな。まぁ、そこらへんはどこも同じってとこか」
「へぇ、そうなのね」
「あたしたちが言った王都とかは大体こんな感じだったよ」
「どんなところか楽しみだな」
「ええ、本当にね。でも、ずいぶん人が多いから、スニル迷子にならないようにね」
王都の人の多さに驚いた母さんが俺にそう言ったが、俺が迷子になることはありえない。
「大丈夫だよ。俺は”マップ”っていう力があるから」
「そういえばそうだったわね。それじゃ、ヒュリック気を付けてよね」
「いや、俺は大丈夫だろ」
「わからないわよ。ヘイゲルは落ち着きがなかったでしょ」
ヘイゲルというのは父さんの今世での名前だ。
「それはお前、12歳の子供なんだから当たり前だろ」
父さんがそう言うと母さんが微笑んでいる。
「ふふっ、そうだったわね」
「それじゃ、俺は行くぜ。宿はどうする取っておくか」
「そうねお願い」
「おう、2部屋でいいよな」
「ああ、いつも通りだ」
2部屋というのは男女で分けるということだ。父さんと母さんが合流してからこの形をとってきている。
「任せろ」
ダンクスはそう言ってさっさとサーナをシュンナに預けて1人街へと繰り出していった。
「それじゃぁ、あたしたちも行くね」
「ああ」
「あとでね」
「おう」
続いてシュンナもサーナを連れて街へと歩き出す。
「俺たちも行くか」
「そうね。それで、スニルどこに行く?」
俺たち親子3人は一緒に行動する。俺としては別でもいいんだが、両親にとってはやはり離れていた10年を取り戻すためにと、なるべく俺と一緒に居ようとしているためにこうして街へ繰り出す時も俺に付き合ってくれている。
「そうだなぁ。とりあえず……」
それから俺たち親子3人も街へと繰り出したのだった。そして、それから3日ほど王都に滞在し、俺たちは王都を発ったのであった。王都を見て思ったが、このブリザリア王国もコルマベイントなどとほとんど文化レベルは同じだった。しかし、やはりというべきか多くの女性が働いている姿をよく見た。俺としては日本でよく見た光景だが、ほかのみんなには見慣れない光景だったらしい。
そんな王都を発ってからさらに1か月余りが経過した。
「やっと、国境か」
父さんがそう言ったように俺たちはようやくブリザリア王国の国境へとやって来た。
「ここを越えるとミザークレス聖教国だな」
俺たちがやって来た国境はブリザリア王国王都から、南西に位置するミザークレス聖教国との国境だ。
この国、聖教国と名がついていることからわかるかもしれないが、この世界の人族のほとんどが信仰しているキリエルタ教の総本山がある国である。俺たちが熱心な信者であれば聖地巡礼ということでいいんだが、俺たちは別に信者になった覚えはないし、むしろ人族以外は人間ではないという教示を並べている宗教とはできれば関わりたくないし、何よりサーナが獣人族である以上近づきたくもない国の1つだ。
では、なぜ俺たちがそんな国へと足を運んでいるのかというと、これは王都をはじめいくつかの街で仕入れた情報による。それによると聖教国の聖都の近くを流れる川を渡った先に獣人族がすむ土地があるということだった。俺たちの旅の目的は俺が世界を見て回りたいことと、サーナを獣人族の土地へと連れて行くという目的がある。つまり、その獣人族の土地にサーナを連れていくためにこの国へと入るというわけだ。
「それにしても、本当にこの先に獣人族の土地があるのかしら」
「そういう情報がそれなりにあったからなぁ。そう考えるとあるのは確かだろう」
「そうだな」
そんなわけでいざ国境を越えるために列へと並ぼう。
「はい、お次の方」
前の奴らが通り抜けたところで今度は俺たちの番となった。
「身分証をお願いします」
国境警備を行っているのは女性兵士のため言葉遣いが丁寧だな。ここブリザリアではよく見る光景だった。
「あたしたちは旅人だから身分証はないわ」
「そうですか。では、通行料をお願いします」
「ええ、それじゃ5人分ね。この子はいいのよね」
「はい、赤ちゃんは無料ですから」
ブリザリアでは基本赤ん坊であるサーナに通行料などがかからない。
「巡礼ですか?」
「ええ、そのつもり」
通常人族がミザークレスへ向かう理由は主に聖地巡礼と相場が決まっている。俺たちの目的はその先なんだが、この場合そう言っておこうとなったわけだ。
「そうですか、楽しんでください」
こうして俺たちは聖地巡礼という名目てブリザリア王国を出国しミザークレス聖教国へ向かったのであった。
「お次の方はこちらへどうぞ」
聖教国との緩衝地帯を抜けたのち、ついに聖教国の門へとやって来た。そこではこれまでの兵士ではなく神官風の男が門番をしていた。
「ようこそミザークレス聖教国へ、人族が6名ですね。目的は?」
「一応巡礼かな」
「そうですか。では神のご加護があらんことを」
門番はそう言って祈るようなポーズを取った。これはキリエルタ教においての祈りの形となる。手の形だけならキリスト教と同じのため、日本人の俺にはなんだか違和感がある。
また、ミザークレス聖教国の入国には通行料がかからない。ていうか、聞いたところによるとこの国では税金その物がかからないらしい。それではどうやって国が成り立っているのかというと、それこそキリエルタ教の総本山だからこそ人族の国、各国からお布施が届く。それで賄っているというわけだ。
「聖教国に入ったけど、これからどうする?」
シュンナのどうするとは、このまま人の流れにの取って生地巡礼の順路をたどるかというものだ。
実はこの国は小さく、街と呼べるものは聖都しかない、あとは宿場というか宿坊というか、巡礼に来たものが泊るための宿泊施設などしかない。そのためまっすぐ聖都を目指せば3日か4日あたりでたどり着くらしい。しかし、通常この国へとやって来た者たちは、聖地と呼ばれる。かつてキリエルタが何らかのことをなした場所を巡る旅をして最後に聖都を訪れる道程となる。俺たちは巡礼という名目でこの国に入ったし、何より国へとやって来た奴ら全員がその順路を巡る。そんな中、俺たちだけ順路を外れまっすぐ聖都に向かうのはおかしい。
「普通に順路をたどるしかないんだが……」
「興味ないよね」
「昔ならともかく、今となってはねぇ」
「そうだな」
「じゃぁ、どうする?」
俺たちはどうするか相談を始めた。普通に順路をたどってもいいんだが、そうすると聖都にたどり着くまでに大体2週間はかかる。しかも、サーナのことがあるために俺たちはキリエルタに対してあまりいいイメージがない。そんな奴の聖地を巡る気にはなれない。かといって、やはり多くの人族が順路をたどっているからな。さて、どうするか、悩むところだ。
「まぁ、キリエルタって確か多種族のことを除けば立派な人物だったらしいからね。それに、キリエルタ教もそれを除けば本当にまっとうな宗教なのよね」
シュンナの言う通りで、キリエルタ教という宗教もかの人物もともに多種族に対してのことを除けば本当にまともな宗教なんだよな。例えば、地球では宗教と言えばかつては他宗教を認めず異教徒の弾圧とか、教えに反したものを処刑するなんて過激なことをいとわなかったことがあった。しかし、キリエルタの歴史ではそれがない上に、今現在においても神に仕えるものが立場を利用して信者に無体なことをするということすらない。本当にまっとうな宗教といっていいだろう。尤も、その背景には人族以外は人間とは認めない。つまり、人族以外のものたち相手なら何をしても許されるという考えいがあり、彼らに対して様々な欲望のはけ口としているだけなんだけどな。
「まっ、敵を知ることも必要だし、俺もそこまでキリエルタのことを知っているわけじゃないし、急ぎの旅でもないしな。まぁ、サーナのことがばれると面倒だが、それはないしな。一応流れに乗っておくか」
「つまり、順路を行くってこと」
「それがいいか、確かに俺もよくわかってないしな」
「そうね。イメージはよくないけれど、彼が何をして聖人となったのか、それを知るのも必要かもしれないわね」
「そうだな。そうすっか、面倒だが」
「ははっ、確かに、でも、俺たちのリーダーはスニルだ、スニルがそうしたいのなら俺は構わないぞ」
そんなわけで俺たちは聖地巡礼を行うために順路に従って街道を歩き出したのだった。
「ふぅ、もうヒュリックもミリアもだいぶ慣れてきたろ」
「ああ、おかげでな。でもまさかここまで強くなれるとは思わなかったな」
「そうね。ありがとうダンクス、シュンナ」
「なに、俺たちはただ模擬戦をしただけだ」
どうやら、両親は今の自分の体にようやく慣れたようだ。その結果2人は飛躍的に強くなった。これまではやはり前世の記憶と今の体が違いすぎたためにいろいろ勝手が違っていたから、十全な力を発揮できなかったんだろう。それにしてもこの2週間でその力をものにしたのだから、すごいものだと思う。俺なんかいまだに戸惑うことがあるってのにな。まぁ、俺の場合日々成長して体が大きくなっているから余計なのかもしれない。
「それにしても、ヒュリックはやっぱりスニルの父親だな」
「? そりゃぁな。何を今さら」
ダンクスが妙なこと言いだしたので父さんは首をかしげている。
「スニル、良かったじゃないか。これからはヒュリックに戦い方を教わったほうがいいぞ」
「父さんに? それはまぁ、父親だしそれはいいけど、なんでだ?」
「これまでは2人が教えていたのじゃないの」
母さんが言うように俺の戦い方はダンクスとシュンナから教わっていた。なにせ俺は戦い方なんて知らないからな。
「そうだけど、あたしたちが教えていたのはあくまで基礎だけなのよ」
シュンナの言う通り基礎だけだった。その理由は単純に2人の戦闘スタイルと俺の戦闘スタイルが別物だったからだ。ダンクスは見ての通りその巨体から繰り出す力を込めて叩き斬るもので小さい体を持つ俺にはまねできない。一方でシュンナはというと、そのたぐいまれなるスピードで敵を翻弄し急所を斬るもの。それに対して俺はというと剣術スキルからわかるように、斬ることに特化した戦闘スタイルとなる。これでは2人から細かい戦い方を教わるわけにはいかない。そのため現在の俺はどうしてもスキルと魔法による身体強化の力技であったり、独学な適当となっている。だからだろうな、俺の剣技だけだと冒険者でいうようやく一人前に足を突っ込んだレベルでしかない。まぁ、経験値も圧倒的に低いこともあるんだけどね。
「でも、ヒュリックの戦闘スタイルはさすが親子だけあってスニルと似てる」
「そうなのか、俺の戦い方は結構特殊だったはずだが」
「そうそう、珍しいのよね」
「だろうな。俺もヒュリックとスニルでしか見たことがない。斬ることに主体を置いた剣技なんてものはな」
「えっ? それは本当か、スニル」
父さんが驚いたように俺を見てきたんだけど、俺も驚いた。日本の剣術である斬ることに主体を置いた剣技をこの西洋みたいな異世界で使い手がいるとは、しかもそれが父親だってことにさらに驚いた。
「あ、ああ、俺の剣は刀といって、斬ることに特化したものなんだ」
そう言って俺は愛刀を抜き放って見せた。
「それが、スニルの剣か、確かにこいつは斬ることに特化したものだな」
「ええ、綺麗ね」
「まぁ、俺の魔力を思いっきりこめてあるから、神剣になっているからね」
「神剣って、それはまたすごいな」
「ホントね。本当にスニルはすごいのね」
ここでまた父さんと母さんが俺をすごいとほめてくれるが、やはり照れくさいな。
「まっ、というわけだから、これからはヒュリックがスニルに戦い方を教えてやってくれ」
「それは、任せてくれ。というか、そもそもそれは俺の役目だ」
息子に戦い方を教えるのは父親の役目というわけで、今後俺は父さんからいろいろ教わることになりそうだ。それにしても、まさか父さんが俺と同じく斬る剣技を扱うと思わなかった。もしかして神様はこれを考慮して父さんと母さんの息子として俺を転生させたのだろうか。そんな気がしてきたな。
「まっ、それはともかく、そろそろ出発しないか、増築も終わっているしいつまでもここにとどまっていても仕方ないし、父さんと母さんも納得できたんだろ」
「そうね。確かにいつまでもここに居ても仕方ないわね」
「うん、確かにね」
「そんじゃ、そうすっか」
というわけで俺たちは旅の再開をすることになった。といっても今すぐではなく出発は明日となった。今日はもう遅いからな。
翌日である。
「忘れ物はない?」
「大丈夫だ」
「ないよ。ていうか、忘れ物も何も、全部俺の”収納”に収まっているから忘れても問題ないんじゃ」
「そうでもいざ必要になったらその時はテントを出さなきゃいけないでしょ」
「あ、ああ、それもそうか」
母さんの言う通り、例えば剣をテント内に忘れていざ戦闘になったから場合、どう考えても戦えないからな。
そんなわけで、俺はしっかり確認したのちテントを出て、テントを収めたのだった。
「そんじゃ行くか、それで、どっち行くんだ」
「そうだな。このまま南に進んでまずは王都を目指すか、そのあとはまぁ、適当にな」
「いつも通りね」
「王都か、行ったことないからなぁ」
「楽しみね」
こうして、俺たちは一路王都を目指して旅立ったのだった。
そして、それから2週間の旅路を得てようやく王都へと到着した。
「ここが王都か、活気があるな」
「だな。まぁ、そこらへんはどこも同じってとこか」
「へぇ、そうなのね」
「あたしたちが言った王都とかは大体こんな感じだったよ」
「どんなところか楽しみだな」
「ええ、本当にね。でも、ずいぶん人が多いから、スニル迷子にならないようにね」
王都の人の多さに驚いた母さんが俺にそう言ったが、俺が迷子になることはありえない。
「大丈夫だよ。俺は”マップ”っていう力があるから」
「そういえばそうだったわね。それじゃ、ヒュリック気を付けてよね」
「いや、俺は大丈夫だろ」
「わからないわよ。ヘイゲルは落ち着きがなかったでしょ」
ヘイゲルというのは父さんの今世での名前だ。
「それはお前、12歳の子供なんだから当たり前だろ」
父さんがそう言うと母さんが微笑んでいる。
「ふふっ、そうだったわね」
「それじゃ、俺は行くぜ。宿はどうする取っておくか」
「そうねお願い」
「おう、2部屋でいいよな」
「ああ、いつも通りだ」
2部屋というのは男女で分けるということだ。父さんと母さんが合流してからこの形をとってきている。
「任せろ」
ダンクスはそう言ってさっさとサーナをシュンナに預けて1人街へと繰り出していった。
「それじゃぁ、あたしたちも行くね」
「ああ」
「あとでね」
「おう」
続いてシュンナもサーナを連れて街へと歩き出す。
「俺たちも行くか」
「そうね。それで、スニルどこに行く?」
俺たち親子3人は一緒に行動する。俺としては別でもいいんだが、両親にとってはやはり離れていた10年を取り戻すためにと、なるべく俺と一緒に居ようとしているためにこうして街へ繰り出す時も俺に付き合ってくれている。
「そうだなぁ。とりあえず……」
それから俺たち親子3人も街へと繰り出したのだった。そして、それから3日ほど王都に滞在し、俺たちは王都を発ったのであった。王都を見て思ったが、このブリザリア王国もコルマベイントなどとほとんど文化レベルは同じだった。しかし、やはりというべきか多くの女性が働いている姿をよく見た。俺としては日本でよく見た光景だが、ほかのみんなには見慣れない光景だったらしい。
そんな王都を発ってからさらに1か月余りが経過した。
「やっと、国境か」
父さんがそう言ったように俺たちはようやくブリザリア王国の国境へとやって来た。
「ここを越えるとミザークレス聖教国だな」
俺たちがやって来た国境はブリザリア王国王都から、南西に位置するミザークレス聖教国との国境だ。
この国、聖教国と名がついていることからわかるかもしれないが、この世界の人族のほとんどが信仰しているキリエルタ教の総本山がある国である。俺たちが熱心な信者であれば聖地巡礼ということでいいんだが、俺たちは別に信者になった覚えはないし、むしろ人族以外は人間ではないという教示を並べている宗教とはできれば関わりたくないし、何よりサーナが獣人族である以上近づきたくもない国の1つだ。
では、なぜ俺たちがそんな国へと足を運んでいるのかというと、これは王都をはじめいくつかの街で仕入れた情報による。それによると聖教国の聖都の近くを流れる川を渡った先に獣人族がすむ土地があるということだった。俺たちの旅の目的は俺が世界を見て回りたいことと、サーナを獣人族の土地へと連れて行くという目的がある。つまり、その獣人族の土地にサーナを連れていくためにこの国へと入るというわけだ。
「それにしても、本当にこの先に獣人族の土地があるのかしら」
「そういう情報がそれなりにあったからなぁ。そう考えるとあるのは確かだろう」
「そうだな」
そんなわけでいざ国境を越えるために列へと並ぼう。
「はい、お次の方」
前の奴らが通り抜けたところで今度は俺たちの番となった。
「身分証をお願いします」
国境警備を行っているのは女性兵士のため言葉遣いが丁寧だな。ここブリザリアではよく見る光景だった。
「あたしたちは旅人だから身分証はないわ」
「そうですか。では、通行料をお願いします」
「ええ、それじゃ5人分ね。この子はいいのよね」
「はい、赤ちゃんは無料ですから」
ブリザリアでは基本赤ん坊であるサーナに通行料などがかからない。
「巡礼ですか?」
「ええ、そのつもり」
通常人族がミザークレスへ向かう理由は主に聖地巡礼と相場が決まっている。俺たちの目的はその先なんだが、この場合そう言っておこうとなったわけだ。
「そうですか、楽しんでください」
こうして俺たちは聖地巡礼という名目てブリザリア王国を出国しミザークレス聖教国へ向かったのであった。
「お次の方はこちらへどうぞ」
聖教国との緩衝地帯を抜けたのち、ついに聖教国の門へとやって来た。そこではこれまでの兵士ではなく神官風の男が門番をしていた。
「ようこそミザークレス聖教国へ、人族が6名ですね。目的は?」
「一応巡礼かな」
「そうですか。では神のご加護があらんことを」
門番はそう言って祈るようなポーズを取った。これはキリエルタ教においての祈りの形となる。手の形だけならキリスト教と同じのため、日本人の俺にはなんだか違和感がある。
また、ミザークレス聖教国の入国には通行料がかからない。ていうか、聞いたところによるとこの国では税金その物がかからないらしい。それではどうやって国が成り立っているのかというと、それこそキリエルタ教の総本山だからこそ人族の国、各国からお布施が届く。それで賄っているというわけだ。
「聖教国に入ったけど、これからどうする?」
シュンナのどうするとは、このまま人の流れにの取って生地巡礼の順路をたどるかというものだ。
実はこの国は小さく、街と呼べるものは聖都しかない、あとは宿場というか宿坊というか、巡礼に来たものが泊るための宿泊施設などしかない。そのためまっすぐ聖都を目指せば3日か4日あたりでたどり着くらしい。しかし、通常この国へとやって来た者たちは、聖地と呼ばれる。かつてキリエルタが何らかのことをなした場所を巡る旅をして最後に聖都を訪れる道程となる。俺たちは巡礼という名目でこの国に入ったし、何より国へとやって来た奴ら全員がその順路を巡る。そんな中、俺たちだけ順路を外れまっすぐ聖都に向かうのはおかしい。
「普通に順路をたどるしかないんだが……」
「興味ないよね」
「昔ならともかく、今となってはねぇ」
「そうだな」
「じゃぁ、どうする?」
俺たちはどうするか相談を始めた。普通に順路をたどってもいいんだが、そうすると聖都にたどり着くまでに大体2週間はかかる。しかも、サーナのことがあるために俺たちはキリエルタに対してあまりいいイメージがない。そんな奴の聖地を巡る気にはなれない。かといって、やはり多くの人族が順路をたどっているからな。さて、どうするか、悩むところだ。
「まぁ、キリエルタって確か多種族のことを除けば立派な人物だったらしいからね。それに、キリエルタ教もそれを除けば本当にまっとうな宗教なのよね」
シュンナの言う通りで、キリエルタ教という宗教もかの人物もともに多種族に対してのことを除けば本当にまともな宗教なんだよな。例えば、地球では宗教と言えばかつては他宗教を認めず異教徒の弾圧とか、教えに反したものを処刑するなんて過激なことをいとわなかったことがあった。しかし、キリエルタの歴史ではそれがない上に、今現在においても神に仕えるものが立場を利用して信者に無体なことをするということすらない。本当にまっとうな宗教といっていいだろう。尤も、その背景には人族以外は人間とは認めない。つまり、人族以外のものたち相手なら何をしても許されるという考えいがあり、彼らに対して様々な欲望のはけ口としているだけなんだけどな。
「まっ、敵を知ることも必要だし、俺もそこまでキリエルタのことを知っているわけじゃないし、急ぎの旅でもないしな。まぁ、サーナのことがばれると面倒だが、それはないしな。一応流れに乗っておくか」
「つまり、順路を行くってこと」
「それがいいか、確かに俺もよくわかってないしな」
「そうね。イメージはよくないけれど、彼が何をして聖人となったのか、それを知るのも必要かもしれないわね」
「そうだな。そうすっか、面倒だが」
「ははっ、確かに、でも、俺たちのリーダーはスニルだ、スニルがそうしたいのなら俺は構わないぞ」
そんなわけで俺たちは聖地巡礼を行うために順路に従って街道を歩き出したのだった。
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