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第11章 戦争
12 ほんと、どうしようっか
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西側諸国に対する対応に紛糾する俺たちテレスフィリアは今日もまた議会を開き、議論を交わしているがやはりというべきか答えが一向に出てこない。
「……ですから、ここは……」
これこそまさに会議は踊ると言わんばかりに、あちこちから意見が飛び交っては怒号まで飛んでいる始末。それでも妙案だというものが出ず、聞いている俺も困り果てている。
「最終目標としては和平、これは外すことはできない」
話し合いの末最終的には西側に応戦し倒す、という話になりかけたので軌道を修正する必要がある。
「しかし陛下、どう考えてもこの目標の達成は難しいと存じます。ご再考いただけませんか」
あまりに答えが出ないためにそんな懇願をしてくるものがいる。
「言いたいことはわかる。俺自身どうすればいいのか全く見当もつかない状況だ。だからこうして皆の知恵を借りたいわけだが。しかし、この目標を変えることはできない。その理由は以前にも説明したと思うが、もう一度話しておこう。まず、西側の戦争目標は魔王討伐、および魔族の殲滅。この根底にあるのはかつての魔王、つまり先代の暴走によるものであり、人族の間では長らく、語り継がれ、恐れられてきたことだ。もちろん今現在生きている人族は魔族の姿を知らない。しかし、だからこその恐怖、お前たちにとっても勇者がそうであったことだろう」
そう言ってから俺は魔族議員を見たら、案の定すべての魔族議員が少し青ざめている。魔族たちにとって勇者こそ自分たちの国を滅ぼし王などを殺した仇敵にして恐怖の対象なのである。
「お前たちはすでに勇者という存在と触れ合い、彼が敵ではないと認識しているが、人族はまだ魔族という者を知らない。そりゃぁ同盟を結んでいるわけだからごく一部のものは知っているだろう、でも、それはあくまでごく一部、人族全体と見た場合の1%にも、いや0.1%にも満たない割合と考えた方がいいだろうな。なにせ、魔族というものは同盟3国上層部の人間しかかかわっていないからな」
実際魔族と触れ合い会話した人族といえば、ほんの数人まだ数えられるだけしかいないだろう。まぁ、その中でもコルマベイントが一番多いとは思うが、それでもやはりごく一部のみとなる。
「こんな状況下で俺が魔王らしく大魔法でもぶっ放して、西側諸国と戦った場合、下手をしなくても反魔王、反魔族感情が高まってしまうことだろう」
「で、でしたら、陛下の魔法以外で決着をつけてはいかがですか。われら獣人族なら人族にそうそう遅れはとりませんぞ」
ここで獣人族が声を上げたわけだが、確かに獣人族は身体能力が高く人族相手なら問題なく戦えるだろう。
「獣人族全体のでやったとしてもさすがに100万以上は無理だろう」
俺の言葉に黙り込む獣人族議員、ほかの議員も黙り込んでしまっている。100万という途方もない数字におびえてしまっているのだろう。
「同盟の3国に応援を要請するのも難しくなった」
「はい、そうすれば3国の御立場が悪くなるでしょうな」
こちらの戦力増強のために同盟の3国に協力を要請しようにも、相手が反魔王として、正義を掲げている状況では3国が人類を裏切ったととられかねない。そう、ここで最大の問題が人族はまだ人族こそが人類であり、それ以外は亜人、魔族は人類の敵であると認識している者がほとんどであるということだ。しかもそれを長い年月先祖代々で信じ込まれていることで、そうそう真実を理解し変更できることではないということ。
「キリエルタ教、というものたちに仲介を頼んでみてはいかがでしょう」
そんな意見も出てきた。確かに人族の大半が信仰しているキリエルタ教の教皇に、真実を告げてもらい。そのうえで俺と西側諸国との仲介を頼めば何とかなる可能性はある。なにせ俺は一応聖人ダンクスの末裔らしいからな。
「そうだな。一応頼んでみるか」
あの後議会で承認を得て教会へ向かうこととなった。もちろん向かうのは俺とダンクスだけである。
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「申し訳ありませんが、現在教皇を始め皆様出ております。日を改めてお越しください」
堂々と正門から自身の名と身分を告げてから教皇に合わせてほしいと、言ってみたんだが皆留守にしているという。
「そうか、それなら仕方ないな。いつ戻るかはわかるか?」
「いいえ、申し訳ありませんが、わかりかねます」
いつ帰るかもわからないというが、そんなわけないと思うんだが、まぁいないものは仕方ない帰るとしよう。
「それじゃ、また来る」
そう言って引き返す俺であるが、一応探知魔法を使ってみたところ教皇を始めほかの連中も普通に教会内にいた。おかしい、俺がそこら辺の子供というのならこの対応も間違ってはいないが、俺はちゃんと魔王であるということなどを説明している。にもかかわらずこの対応は、通常ならありえない。
「これは、議員たちの予想通りになったか」
議会で承認されたこの行動だが、議会からある予想が告げられていた。それが、この状況である教皇たちの居留守だ。どうしてこんな対応をされているのかというと、西側が現在魔王討伐という人族の多くの支持を受ける事柄を起こそうとしている中、人族の信仰の中心であるキリエルタ教の教皇がその討伐対象と懇意にしているというのはあまりにもまずい。また、その魔王がまさかのキリエルタ教において聖人といわれた人物の末裔であるという、この事実もそれなりに広まっている可能性を考えると、キリエルタ教から魔王を出たとされ非常にまずいことから教皇も俺との接触を避けていると考えるべきだという。まぁ、言われてみれば納得できることであり、今回はその確認とできればという気持ちでここにやってきたわけだ。
「そうだな。確かにここで俺たち側に着くってのはないな。なぁ、そうなると伯母さんってのは大丈夫なのか?」
ダンクスが言うように伯母さんはキリエルタ教の大司教という立場なわけで、魔王の叔母ということで立場がかなりやばいことが予想された。
「俺もそう思って伯母さんに確認してみたけど、今伯母さんはカリブリンに戻ってるみたいでな。特に今は危険なことにはなっていないそうだが」
「こうなったからには保護しておいた方がいいんじゃないか」
「だよな」
下手をしたら俺の伯母ということで危険な目に合うかもしれない。
「戻ったらさっそくカリブリンに迎えに行くか」
俺としてはキリエルタ教とも敵対するつもりはないんだが、教会が伯母さんに何らかの行動を取る可能性も否定できないので、戻ったらすぐに迎えに行くべきだろう。
というわけで、さっそくテレスフィリアに戻ると、今度は父さんを連れて伯母さんを迎えに行った。父さんを連れていく理由は説得のためだ。俺よりも父さんが一緒の方が説得しやすいだろうからな。
▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽
「あら、2人ともどうしたの」
カリブリンの教会に着くと伯母さんがのんきに出迎えてくれた。
「ああ、実はさ」
ここは父さんが説明をしていく。
「そう、教皇様にお会いできなかったのね」
「うん、それで、このままじゃたぶん叔母さんの身に危険がある可能性があるから」
「俺もそうおもうぜ。姉貴いったんテレスフィリアに避難しないか」
「そうはいっても、ここを離れるわけにはいかないわよ」
伯母さんはそういってその場を離れようとはしなかった。
「大司教様、どうかご非難を教会のことはどうかわたくし共にお任せください」
大司教となった伯母さんには専属の護衛騎士が付いている。その騎士が援護射撃をしている。伯母さんの護衛としては正しいが護衛騎士というか聖騎士としてはいいのか。
そんな疑問がであるがこの際何も言わず伯母さんの説得を続けることにした。
「わかったわ。あなたたちにそこまで言われてしまえば、従わないというわけにはいかないわね」
「では、さっそく準備をいたします」
「お願いね」
それから少ししてから準備が整ったということで伯母さんとともにテレスフィリアへと戻ったのだった。
▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽
戻ったところで再びの会議である。これ、一体これまでどれだけ繰り返してきたか、いい加減飽きてきたんだが、やらないという選択肢がないために仕方ない。
そして、相も変わらず答えが出ないまま、さらに数日が経過したのだった。
「はぁ、ほんとどうしたらいいんだろうなぁ」
「難しいですよね。俺たちが言って説得というわけにもいかないんですか?」
頭を悩ませていると、孝輔がそういってきた。
「その案も出たが、却下した」
「なぜです?」
「お前たちの親とも約束しているからな。戦争にお前たちをかかわらせるわけにはいかない。それに、たとえお前たちを奴らのもとに送り出したとしても、結局奴らの旗印が増えるだけで、こちらのメリットはないだろうな」
「そうでしょうか。俺たちならスニルさんのことで説得できると思うんですけど」
孝輔はそういうが、何となく無理な気がしている。
「どうだろうな。今更連中が話を聞いてくれる気はしないが、ん? おいおい、まじか!」
「どうしたんです?」
孝輔と話をしていたら、突如頭に警報が鳴り響いた。一瞬何かと思ったが、すぐに理解した。
「結界が破られた」
「えっ!」
そう、今の警報は先ごろ俺が張り巡らせた結界が破られたというものだ。
「だ、大丈夫なんですか?」
「あ、ああ、問題ない。自動回復が施してあるからな。破られたのは一瞬ですぐに回復している」
心配そうな麗香と青ざめる那奈であったが、俺がそういうと安堵したようだ。
「しかし、こいつは厄介だな」
「おい、スニル、今のって」
そこに俺と同じく警報を聞いたダンクスが飛び込んできた。
「ああ、どうやら奴さんに動きがあったみたいだな」
「どうするの?」
「とりあえず現場に行ってみるか」
「おう」
「スニルさん俺も行きます」
何はともあれとにかく現場を見に行こうと思ったら、孝輔が自分も行くと言い出し、麗香と那奈もそれに続こうとしている。
「わかった。まぁ見に行くだけだしいいだろ」
というわけで、すぐさま現場へと向かったのだった。
「陛下!」
「何があった?」
現場に行くとそこには慌てた様子の兵士がおり、ダンクスが俺の代わりに何があったかと尋ねた。
「はっ、先ほど敵方より大魔法が放たれ、結界にぶつかりました。それにより何かが割れる音が響いたのです」
大魔法、なるほど確かにそれなら結界を破ることは可能だ。しかし、人族の身でそんなもの打てるとは思えないんだが。
「儀式魔法か」
「いえ、1人から放たれたようです」
「なに?」
「あっ、あの人」
報告を聞いていると、那奈がふとつぶやいた。
「知っているのか?」
「えっ、えっと、会ったわけではないですけど以前絵を見せてもらったことがあって、たぶんあの人だと思います」
「絵を? 有名人か?」
「はい、大賢者だって聞いています」
「大賢者? そういえばどっかに居るって言ってたな」
「はい、私もどこにいるのかまでは知りませんでしたけど」
大賢者、それはメティスルの下位互換スキルではあるが、元々俺がここに転生するまでは魔法系最高スキルである。その力としては、俺と同じように詠唱破棄から魔力補助などがあり、また魔法書というものがありそこに現在存在するあらゆる魔法の情報が記されている。その結果として大賢者はこの世界に存在するあらゆる魔法を無詠唱で行使することが出来るわけだ。
「なるほど、大賢者か、それなら1人で大魔法を放つことも可能だな」
「大丈夫なんですか?」
麗香が心配そうに尋ねてきた。
「そうだな。まぁ、確かに脅威ではあるな。さっきみたいに大魔法をぶっ放されれば結界が数秒間は穴が開くから、そこに追加で大魔法を放ってくる可能性もあるし、大賢者それが可能だ。また、そのすきをついて船とかが入ってくる可能性もある。なるほど、それで奴らは蜂起したってわけか」
これまでどうして西側が踏み切ってきたのか、その理由はわからなかった。いや、俺の討伐とか、かつて英雄の末裔の存在とかもあるとは思うが、それでも何となく弱いと思っていた。だってそうだろ、俺の討伐という目的、これは魔王という存在や魔族に対しての恨みや憎しみが原動力となっているわけだが、問題としてそれは1万年前の話だ。そんな大昔の憎しみや恨みをいまだに持ち続けているというのはありえない。そういった負の感情ってのは結構つらいものがあるから、ながく続かないものだ。まぁ、中にはしぶとく恨み続ける根性の入った奴もいるけど、それでもさすがに1万年は無理だろ。となると、一体どんな原動力が働いたのか、それが分からなかった。ただの英雄願望が働いたのではという意見もあったが、それで命を懸けるのは納得できなかった。
「奴らも思ったんだろうな、人族の子供でしかない俺がいくら魔法が得意でも、大賢者を要する自分たちがまけるはずがないって」
「そういえば、大賢者ってこの世界の魔法系最高スキルなんですよね。そして、その大賢者スキルは世界に1人しか発現しない。ですよね」
さすが大賢者と双璧といわれる聖女スキルを持つだけあって、よく知っているな。
「ああ、俺がここに転生するまではその認識だな。それに聞いた話では以前の魔王討伐パーティーは勇者と聖女、そして大賢者だったそうだ。んで、ちなみに勇者と聖女は召喚された異世界人しか発現しないが、大賢者はこの世界のものにしか発現しない」
その結果として実は大賢者こそこの世界最強の存在といわれている。
「世界最強がいるから、たとえ魔王でも問題ないってことですか」
「そういうことだな。まぁ、実際には俺の方が強いんだけどな」
「ですよね」
「まぁ、なんにせよ。大賢者がいるとなると議会にも報告しなければいけないし、とりあえず戻るとするか」
「はい」
というわけで俺たちはいったんアベイルへと戻ったのだった。
「……というわけで、相手方に大賢者がいるということが判明し、その力は結界を破壊することが出来る。尤も、破壊しても結界はすぐに修復するので実際に穴が開くのは数秒程度だろう」
「……」
「へ、陛下、その数秒というのはどのくらいなのでしょうか?」
「そうだな。その時の威力にもよるから一概には言えないが、最小で瞬間、最大の場合船が一艘通れるくらいか、だからもし、奴が最大威力の大魔法を放ってきた場合、最悪一艘分の敵が攻め込んでくるだろう」
俺の言葉に顔を青ざめる議員たちであった。
「大丈夫だ。一艘分ぐらいであれば大した数じゃない。こちらに被害なく殲滅は可能だ。ということでスニル俺も現地へ行くぜ。さすがに俺が行かないと被害ゼロとはいかねぇからな」
「おう、任せた」
そんなわけでダンクスが現地で支持を出すべくとんぼ返りしたのだった。はてさて、新たな動き、これは言ったいどうなることやら、また話し合いが終わらないな。
「……ですから、ここは……」
これこそまさに会議は踊ると言わんばかりに、あちこちから意見が飛び交っては怒号まで飛んでいる始末。それでも妙案だというものが出ず、聞いている俺も困り果てている。
「最終目標としては和平、これは外すことはできない」
話し合いの末最終的には西側に応戦し倒す、という話になりかけたので軌道を修正する必要がある。
「しかし陛下、どう考えてもこの目標の達成は難しいと存じます。ご再考いただけませんか」
あまりに答えが出ないためにそんな懇願をしてくるものがいる。
「言いたいことはわかる。俺自身どうすればいいのか全く見当もつかない状況だ。だからこうして皆の知恵を借りたいわけだが。しかし、この目標を変えることはできない。その理由は以前にも説明したと思うが、もう一度話しておこう。まず、西側の戦争目標は魔王討伐、および魔族の殲滅。この根底にあるのはかつての魔王、つまり先代の暴走によるものであり、人族の間では長らく、語り継がれ、恐れられてきたことだ。もちろん今現在生きている人族は魔族の姿を知らない。しかし、だからこその恐怖、お前たちにとっても勇者がそうであったことだろう」
そう言ってから俺は魔族議員を見たら、案の定すべての魔族議員が少し青ざめている。魔族たちにとって勇者こそ自分たちの国を滅ぼし王などを殺した仇敵にして恐怖の対象なのである。
「お前たちはすでに勇者という存在と触れ合い、彼が敵ではないと認識しているが、人族はまだ魔族という者を知らない。そりゃぁ同盟を結んでいるわけだからごく一部のものは知っているだろう、でも、それはあくまでごく一部、人族全体と見た場合の1%にも、いや0.1%にも満たない割合と考えた方がいいだろうな。なにせ、魔族というものは同盟3国上層部の人間しかかかわっていないからな」
実際魔族と触れ合い会話した人族といえば、ほんの数人まだ数えられるだけしかいないだろう。まぁ、その中でもコルマベイントが一番多いとは思うが、それでもやはりごく一部のみとなる。
「こんな状況下で俺が魔王らしく大魔法でもぶっ放して、西側諸国と戦った場合、下手をしなくても反魔王、反魔族感情が高まってしまうことだろう」
「で、でしたら、陛下の魔法以外で決着をつけてはいかがですか。われら獣人族なら人族にそうそう遅れはとりませんぞ」
ここで獣人族が声を上げたわけだが、確かに獣人族は身体能力が高く人族相手なら問題なく戦えるだろう。
「獣人族全体のでやったとしてもさすがに100万以上は無理だろう」
俺の言葉に黙り込む獣人族議員、ほかの議員も黙り込んでしまっている。100万という途方もない数字におびえてしまっているのだろう。
「同盟の3国に応援を要請するのも難しくなった」
「はい、そうすれば3国の御立場が悪くなるでしょうな」
こちらの戦力増強のために同盟の3国に協力を要請しようにも、相手が反魔王として、正義を掲げている状況では3国が人類を裏切ったととられかねない。そう、ここで最大の問題が人族はまだ人族こそが人類であり、それ以外は亜人、魔族は人類の敵であると認識している者がほとんどであるということだ。しかもそれを長い年月先祖代々で信じ込まれていることで、そうそう真実を理解し変更できることではないということ。
「キリエルタ教、というものたちに仲介を頼んでみてはいかがでしょう」
そんな意見も出てきた。確かに人族の大半が信仰しているキリエルタ教の教皇に、真実を告げてもらい。そのうえで俺と西側諸国との仲介を頼めば何とかなる可能性はある。なにせ俺は一応聖人ダンクスの末裔らしいからな。
「そうだな。一応頼んでみるか」
あの後議会で承認を得て教会へ向かうこととなった。もちろん向かうのは俺とダンクスだけである。
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「申し訳ありませんが、現在教皇を始め皆様出ております。日を改めてお越しください」
堂々と正門から自身の名と身分を告げてから教皇に合わせてほしいと、言ってみたんだが皆留守にしているという。
「そうか、それなら仕方ないな。いつ戻るかはわかるか?」
「いいえ、申し訳ありませんが、わかりかねます」
いつ帰るかもわからないというが、そんなわけないと思うんだが、まぁいないものは仕方ない帰るとしよう。
「それじゃ、また来る」
そう言って引き返す俺であるが、一応探知魔法を使ってみたところ教皇を始めほかの連中も普通に教会内にいた。おかしい、俺がそこら辺の子供というのならこの対応も間違ってはいないが、俺はちゃんと魔王であるということなどを説明している。にもかかわらずこの対応は、通常ならありえない。
「これは、議員たちの予想通りになったか」
議会で承認されたこの行動だが、議会からある予想が告げられていた。それが、この状況である教皇たちの居留守だ。どうしてこんな対応をされているのかというと、西側が現在魔王討伐という人族の多くの支持を受ける事柄を起こそうとしている中、人族の信仰の中心であるキリエルタ教の教皇がその討伐対象と懇意にしているというのはあまりにもまずい。また、その魔王がまさかのキリエルタ教において聖人といわれた人物の末裔であるという、この事実もそれなりに広まっている可能性を考えると、キリエルタ教から魔王を出たとされ非常にまずいことから教皇も俺との接触を避けていると考えるべきだという。まぁ、言われてみれば納得できることであり、今回はその確認とできればという気持ちでここにやってきたわけだ。
「そうだな。確かにここで俺たち側に着くってのはないな。なぁ、そうなると伯母さんってのは大丈夫なのか?」
ダンクスが言うように伯母さんはキリエルタ教の大司教という立場なわけで、魔王の叔母ということで立場がかなりやばいことが予想された。
「俺もそう思って伯母さんに確認してみたけど、今伯母さんはカリブリンに戻ってるみたいでな。特に今は危険なことにはなっていないそうだが」
「こうなったからには保護しておいた方がいいんじゃないか」
「だよな」
下手をしたら俺の伯母ということで危険な目に合うかもしれない。
「戻ったらさっそくカリブリンに迎えに行くか」
俺としてはキリエルタ教とも敵対するつもりはないんだが、教会が伯母さんに何らかの行動を取る可能性も否定できないので、戻ったらすぐに迎えに行くべきだろう。
というわけで、さっそくテレスフィリアに戻ると、今度は父さんを連れて伯母さんを迎えに行った。父さんを連れていく理由は説得のためだ。俺よりも父さんが一緒の方が説得しやすいだろうからな。
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「あら、2人ともどうしたの」
カリブリンの教会に着くと伯母さんがのんきに出迎えてくれた。
「ああ、実はさ」
ここは父さんが説明をしていく。
「そう、教皇様にお会いできなかったのね」
「うん、それで、このままじゃたぶん叔母さんの身に危険がある可能性があるから」
「俺もそうおもうぜ。姉貴いったんテレスフィリアに避難しないか」
「そうはいっても、ここを離れるわけにはいかないわよ」
伯母さんはそういってその場を離れようとはしなかった。
「大司教様、どうかご非難を教会のことはどうかわたくし共にお任せください」
大司教となった伯母さんには専属の護衛騎士が付いている。その騎士が援護射撃をしている。伯母さんの護衛としては正しいが護衛騎士というか聖騎士としてはいいのか。
そんな疑問がであるがこの際何も言わず伯母さんの説得を続けることにした。
「わかったわ。あなたたちにそこまで言われてしまえば、従わないというわけにはいかないわね」
「では、さっそく準備をいたします」
「お願いね」
それから少ししてから準備が整ったということで伯母さんとともにテレスフィリアへと戻ったのだった。
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戻ったところで再びの会議である。これ、一体これまでどれだけ繰り返してきたか、いい加減飽きてきたんだが、やらないという選択肢がないために仕方ない。
そして、相も変わらず答えが出ないまま、さらに数日が経過したのだった。
「はぁ、ほんとどうしたらいいんだろうなぁ」
「難しいですよね。俺たちが言って説得というわけにもいかないんですか?」
頭を悩ませていると、孝輔がそういってきた。
「その案も出たが、却下した」
「なぜです?」
「お前たちの親とも約束しているからな。戦争にお前たちをかかわらせるわけにはいかない。それに、たとえお前たちを奴らのもとに送り出したとしても、結局奴らの旗印が増えるだけで、こちらのメリットはないだろうな」
「そうでしょうか。俺たちならスニルさんのことで説得できると思うんですけど」
孝輔はそういうが、何となく無理な気がしている。
「どうだろうな。今更連中が話を聞いてくれる気はしないが、ん? おいおい、まじか!」
「どうしたんです?」
孝輔と話をしていたら、突如頭に警報が鳴り響いた。一瞬何かと思ったが、すぐに理解した。
「結界が破られた」
「えっ!」
そう、今の警報は先ごろ俺が張り巡らせた結界が破られたというものだ。
「だ、大丈夫なんですか?」
「あ、ああ、問題ない。自動回復が施してあるからな。破られたのは一瞬ですぐに回復している」
心配そうな麗香と青ざめる那奈であったが、俺がそういうと安堵したようだ。
「しかし、こいつは厄介だな」
「おい、スニル、今のって」
そこに俺と同じく警報を聞いたダンクスが飛び込んできた。
「ああ、どうやら奴さんに動きがあったみたいだな」
「どうするの?」
「とりあえず現場に行ってみるか」
「おう」
「スニルさん俺も行きます」
何はともあれとにかく現場を見に行こうと思ったら、孝輔が自分も行くと言い出し、麗香と那奈もそれに続こうとしている。
「わかった。まぁ見に行くだけだしいいだろ」
というわけで、すぐさま現場へと向かったのだった。
「陛下!」
「何があった?」
現場に行くとそこには慌てた様子の兵士がおり、ダンクスが俺の代わりに何があったかと尋ねた。
「はっ、先ほど敵方より大魔法が放たれ、結界にぶつかりました。それにより何かが割れる音が響いたのです」
大魔法、なるほど確かにそれなら結界を破ることは可能だ。しかし、人族の身でそんなもの打てるとは思えないんだが。
「儀式魔法か」
「いえ、1人から放たれたようです」
「なに?」
「あっ、あの人」
報告を聞いていると、那奈がふとつぶやいた。
「知っているのか?」
「えっ、えっと、会ったわけではないですけど以前絵を見せてもらったことがあって、たぶんあの人だと思います」
「絵を? 有名人か?」
「はい、大賢者だって聞いています」
「大賢者? そういえばどっかに居るって言ってたな」
「はい、私もどこにいるのかまでは知りませんでしたけど」
大賢者、それはメティスルの下位互換スキルではあるが、元々俺がここに転生するまでは魔法系最高スキルである。その力としては、俺と同じように詠唱破棄から魔力補助などがあり、また魔法書というものがありそこに現在存在するあらゆる魔法の情報が記されている。その結果として大賢者はこの世界に存在するあらゆる魔法を無詠唱で行使することが出来るわけだ。
「なるほど、大賢者か、それなら1人で大魔法を放つことも可能だな」
「大丈夫なんですか?」
麗香が心配そうに尋ねてきた。
「そうだな。まぁ、確かに脅威ではあるな。さっきみたいに大魔法をぶっ放されれば結界が数秒間は穴が開くから、そこに追加で大魔法を放ってくる可能性もあるし、大賢者それが可能だ。また、そのすきをついて船とかが入ってくる可能性もある。なるほど、それで奴らは蜂起したってわけか」
これまでどうして西側が踏み切ってきたのか、その理由はわからなかった。いや、俺の討伐とか、かつて英雄の末裔の存在とかもあるとは思うが、それでも何となく弱いと思っていた。だってそうだろ、俺の討伐という目的、これは魔王という存在や魔族に対しての恨みや憎しみが原動力となっているわけだが、問題としてそれは1万年前の話だ。そんな大昔の憎しみや恨みをいまだに持ち続けているというのはありえない。そういった負の感情ってのは結構つらいものがあるから、ながく続かないものだ。まぁ、中にはしぶとく恨み続ける根性の入った奴もいるけど、それでもさすがに1万年は無理だろ。となると、一体どんな原動力が働いたのか、それが分からなかった。ただの英雄願望が働いたのではという意見もあったが、それで命を懸けるのは納得できなかった。
「奴らも思ったんだろうな、人族の子供でしかない俺がいくら魔法が得意でも、大賢者を要する自分たちがまけるはずがないって」
「そういえば、大賢者ってこの世界の魔法系最高スキルなんですよね。そして、その大賢者スキルは世界に1人しか発現しない。ですよね」
さすが大賢者と双璧といわれる聖女スキルを持つだけあって、よく知っているな。
「ああ、俺がここに転生するまではその認識だな。それに聞いた話では以前の魔王討伐パーティーは勇者と聖女、そして大賢者だったそうだ。んで、ちなみに勇者と聖女は召喚された異世界人しか発現しないが、大賢者はこの世界のものにしか発現しない」
その結果として実は大賢者こそこの世界最強の存在といわれている。
「世界最強がいるから、たとえ魔王でも問題ないってことですか」
「そういうことだな。まぁ、実際には俺の方が強いんだけどな」
「ですよね」
「まぁ、なんにせよ。大賢者がいるとなると議会にも報告しなければいけないし、とりあえず戻るとするか」
「はい」
というわけで俺たちはいったんアベイルへと戻ったのだった。
「……というわけで、相手方に大賢者がいるということが判明し、その力は結界を破壊することが出来る。尤も、破壊しても結界はすぐに修復するので実際に穴が開くのは数秒程度だろう」
「……」
「へ、陛下、その数秒というのはどのくらいなのでしょうか?」
「そうだな。その時の威力にもよるから一概には言えないが、最小で瞬間、最大の場合船が一艘通れるくらいか、だからもし、奴が最大威力の大魔法を放ってきた場合、最悪一艘分の敵が攻め込んでくるだろう」
俺の言葉に顔を青ざめる議員たちであった。
「大丈夫だ。一艘分ぐらいであれば大した数じゃない。こちらに被害なく殲滅は可能だ。ということでスニル俺も現地へ行くぜ。さすがに俺が行かないと被害ゼロとはいかねぇからな」
「おう、任せた」
そんなわけでダンクスが現地で支持を出すべくとんぼ返りしたのだった。はてさて、新たな動き、これは言ったいどうなることやら、また話し合いが終わらないな。
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転生したら最強種の竜人かよ~目立ちたくないので種族隠して学院へ通います~
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強さをひた隠しにして学院の入学試験を受けるが、強すぎて隠し通せておらず、逆に目立ってしまう。
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