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第11章 戦争
20 終結と後始末
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西側諸国との一回戦が終了した。その結果西側諸国が約1000人で、こちらが10人の死者が出た。尤も、向こうはけが人が多く出ているのに対して、こちらはすでに治療済みだ。この結果の理由はやはり俺の存在が大きい。大賢者というのは確かに魔法特化の絶大な力を持つが、回復系が苦手となる。もちろんできないわけではないが、聖女というそっちに特化したスキルがあるためにそうなった。そして、俺のメティスルはそんな苦手とかそういったことはなく、回復も得意で聖女よりもうまく使えるというわけだ。
「穴はどうする。俺がまとめてやるか?」
「それが一番早いけど、無効と協議が必要だな」
穴というのはもちろん墓穴となる。この世界の戦争ではこうしたインターバルで戦死者を埋葬する決まりとなっている。そして、こうした場合は敵とか味方とかは関係なく行うのが通例だ。
「報告します。協議の結果大賢者と協力するということとなりました」
「わかった、んで場所は?」
「ご案内します」
というわけで、戦場から離れた場所へと案内される。
「ふむ、来たようじゃな魔王」
「こうして話すのは久しぶりだな大賢者。さっそく掘るわけだが、どうする個別にするか? まとめるか?」
戦場での墓穴は、戦死者を個別に埋葬するか、全員を1つの墓穴に埋葬するという2通りがある。
「わしとおぬしでなら個別でも問題あるまい」
「了解した」
この時ばかりは敵味方関係なく協力するので、いさかいはしない決まりがある。これを破ればまさに野蛮なる存在となり、各地から嫌われるはじかれることになる。それでなくとも俺という魔王は嫌われがちなので、これ以上はまずいし、何よりこれから各国とかかわっていこうとしている中でそうした行為はしないが吉だろう。そして、大賢者も忌避される行為であることはわかっているので、俺相手でも普通に接している。
とまぁ、そんなことより大賢者と手分けして戦死者1043名の墓穴を掘っていく。
「むっ、さすがは魔王というわけか」
俺がいくつかの墓穴をあっという間に掘ったものだから、大賢者が唸っている。が、大賢者も俺には劣るものの結構な速さで墓穴を掘り進んでいる。
それから、小一時間ほどかかって全部の墓穴を掘り終え、兵士たちが次々に戦死者を葬っていく。
「終わったな」
「ああ、といってもこのままいくとまだまだ増えそうではあるが」
「だよなぁ。これで引いてほしいよな」
「まったくよねぇ」
戦争は終わったわけではなく、これから第二回戦へと突入する。そうなるとまた戦死者が出てくることになる。今こうして仲間を葬っている奴が、今度は葬られることになる。これが戦場であり、人間の罪深き事なのかもしれない。
「さて、気持ちを切り替えて、次の話をしておくか」
「だな」
「ええ、それで、次はどう行くの?」
それから俺たちは様々話し合い第二回戦の戦略を決めるのであった。
第二回戦が開始される。あちらの陣形は同じく鶴翼、こちらも横陣という同じものを採用している。違いがあるとすれば、開始早々大賢者が大魔法をぶっ放してきたということだろう。もちろん俺はすぐさま結界を張り防ぐわけだが、この時俺が行ったのは、必要最小限の結界を張り、大魔法の軌道をそらしたというものだ。それを見た大賢者は思惑通りに驚愕の表情をしている。というのもこれはかなり難しいもので、少しでも間違えれば反らすことが出来ずに直撃してしまうからだ。俺がこれを使ったのはメティスルの上で胡坐をかいているわけではないという証明をするため。
その後も幾度となく大賢者が放ってきた魔法を同じ方法で防いでいく。また、俺自身も大賢者に向けて魔法を放ちまくっていく。そして、大賢者も俺と同じ方法で防いでいくという攻防をこなす。
「さすがは大賢者だな。ちゃんと研鑽は詰んでいるみたいだ」
俺は一人そうつぶやきつつもほくそ笑んだ。面白くなってきやがった。というわけで、次々にお互いに魔法をぶつけ、防いでいったのだった。
一方で、兵士たちの戦いがどうなったのかというと、第一回戦とほとんど同じ展開になっている。もちろん俺は大賢者とやりあいながら、兵士たちの回復も忘れていないので彼らはすぐに戦線に復帰しているのに対して、向こうは回復魔法使いが担当しているので、そこまですぐには回復していない。
あれ? 今思ったんだが、これって俺の仕事が多くない? 大賢者の相手をしつつ味方の回復や支援までしているのに、大賢者は俺との攻防に集中しているだけだよな。まぁ、それでも何とか大賢者と打ち合えているのはメティスルのおかげといってもいいだろう。
さて、そんなことを考えつつ頑張っていると、ようやく第二回戦も終了したのである。
「やっと終わったかぁ」
「おう、お疲れ」
「おう、全くだ」
大賢者との打ち合いは結構疲れた上に、味方の支援などもやっていたので、ほんとに疲れた。
「被害は?」
ダンクスに第二回戦の被害状況を尋ねる。
「こっちは変わらず少ないな。といっても24人ばかりやられたが、うちのも2人獣人族がやられたぜ」
「そうか、あとでリスト作っておいてくれ」
「わかった」
第一回戦でのこちらの戦死者はテレスフィリア以外の国の者であったが、今回はテレスフィリアの兵士が2人命を落としたようだ。これは命令を下した俺の責任、彼らの冥福を祈るとともに、その責任を果たす必要がある。
「さて、それじゃまた埋葬してくるか」
「おう」
というわけで、再び大賢者とともに墓穴を掘り、戦死者を埋葬していったのだった。
ここでちょっと余談だが、実は俺たちがしっかり埋葬しているのは敵兵のみで、味方の兵は誰一人埋葬はしていない。いや、一応あちらの手前埋葬している振りはするが、実際は俺の”収納”に収めている。本来ここで埋葬している理由はわかると思うが、持ち帰れないから、しかし俺には持ち帰る手段があるのだから当然その手段を使うというわけだ。向こうがそれをしない理由は、単純に大賢者が俺ほどの”収納”を使うことが出来ないだけ、大賢者が使う”収納”だと、もとのままだから時間経過もするし容量も有限、遺体を納めたところで遺族のもとに返そうに腐ってしまっている可能性がある。だから向こうは普通に埋葬しているというわけだ。
埋葬が終わったところで静かに手を合わせる。
「魔王陛下、御足労をおかけし申し訳ありません」
手を合わせていると不意に3国の将軍たちがやってきてそういった。
「なに、これも魔法に長けた魔王の務めだ」
この場には大賢者を始め西側諸国の連中もいるので、便宜上ここに埋葬したという亭で話する。
「ありがとうございます。ところで陛下、先ほど手を合わされていたようですが、あれは一体?」
「手を? ああ、合掌のことか、これだろ」
「はい」
この世界での祈りはキリストのように手を組む形をとる。それに対して俺は日本式の合掌なので不思議に思ったようだ。
「これは、勇者たちの故郷での祈りの手法でな。最近テレスフィリアでも取り入れている形だ」
「なるほど、勇者様でしたか、確か勇者様は異世界からとのことでしたな」
勇者が異世界から召喚されるというのは、この世界の者ならだれでも知る事実となる。なにせ昔話でもちゃんと異世界から呼ばれ終わった後は帰ったと記されているからだ。
「テレスフィリアではキリエルタ教は信仰していないからな。別の形がいいだろうと話が出た時にな」
実際には俺が提案したのだが、ここは麗香たちの提案ということにした。尤もあえてそこは言及せず相手に勝手に相応してもらうことで、嘘を言っていないということにした。
「さようでしたか」
「ああ、さて、今日はこの後会議だったな」
「はっ、その通りでございます」
「それじゃ、さっそく始めるか」
「お供いたします」
ここに援軍でやってきた将軍たちは俺が子供だとか、もとは平民であったとか、そういったことは抜きにちゃんと同盟国の王として接してくれる。まぁ、各国の王たちがそういったものを贈りだしてくれたというわけだが、妙なトラブルが起きないからありがたい。というわけで、将軍たちと陣地に張った幕営へと向かったのだった。
「それでは本日行われた戦においての……」
シュンナの司会で始まった会議、ここでは今日の戦争においての反省点や明日の戦略などが話し合われる。
これでわかったと思うが、今日の戦争は終わったということ。というかこの世界の戦争は午前に1回、午後に1回と一日に2回行うのが通例となっているからだ。もちろん、これは今回のような草原などの遮蔽物がないような場合のみで、森などがある場合は夜中などに奇襲を仕掛けるということは当然ある。
というわけで、夜はのんびりとこうして反省会をすることが出来るというわけだ。まぁ、中にはこれを破るものもいるので、警戒は怠らないのが普通なんだが。
それから行われる反省は、正直俺にはさっぱりでほとんどなにを言っているのかわからなかったが、おおむね問題ないという結論となった。やはりこれは戦死者が少なかったのが効いているのだろう。おかげで各国からは賞賛され、明日もよろしくといわれて会議を終えたのだった。
翌日、この日も朝から昨日と同じく戦争が始まる。全体の流れとしては昨日とほぼ同じで、こちらの戦死者は少なく、西側諸国は多いという結果となっている。そうした戦いを幾度となく繰り返し、数日が経過した。
「向こうも戦死者が3割に届きそうだし、そろそろだとは思うが」
戦争において戦死者が全体の3割を超えると全滅判定となり、相手も撤退を始めると聞いたが、今の彼らの状態を見るに残念ながらそんな気はしない。なにせ、いまだに戦意が衰えた様子がないからだ。
「あの様子だと難しそうだけどね」
シュンナも俺と同じ意見なのか、少し辟易としている。
「そんなに俺を討伐したいのかねぇ」
「そうみたいだな」
「ほんと、一体何がそうさせているのかな」
「そんなもの知らねぇって」
いまだに衰えない戦意に心底戦慄する俺たちであった。そして、その後もさらに戦いは続き、いよいよ半分を切り始めたが、いまだに撤退する気がない。これはもしかしなくても、本当の全滅まで続ける気なのだろうか。
そんなことを思いながらも続けることさらに日数を重ねたところで、ついに1/4となり、ここまでくるとようやく敵兵たちも戦意が落ち始める。それでも敵総大将であるガルナホレイオン王だけは引く気が無いように兵士たちを鼓舞している。また、大賢者についてでだが、これはもうずいぶん前から結界で隔離しており、戦線には一切参加できていない。実は戦略会議でも大賢者は隔離ではなく殺してはという意見があった。しかし、大賢者というのは、勇者や聖女のように民衆から絶大な人気を誇っており、下手に殺してしまうと反感を買う恐れがある。それが西側諸国からであれば、いいのだが場合によっては味方である同盟国からも出る恐れがある。だから殺すのだけはまずいという話になり、こうして隔離にとどめているわけだ。それで、その結界だけど、これは大賢者の周囲2mほどのサイズで、魔法結界と物理結界で構成されている。そして、魔法結界は双方に対応し、物理は内部にのみ対応している。こうすることで、魔法に関しては内外ともに干渉できず、物品などであれば外から中に入れることが可能となる。だから、大賢者は現在何もできないが食料は得ることが出来るという状態だ。といっても実はこの結界は大魔法を使えば破ることは可能、しかし、例えば大賢者が大魔法を使ったとすると、間違いなく自爆し、敵に大賢者以外に大魔法を放つことが出来る者はいない。というわけで結局身動きができない状態となっている。
「さすがにそろそろ終わりか」
「そうね。あと少しってとこかな」
「だな。たぶんあの総大将を倒せば終わりだと思う、ダンクス行けるか?」
「任せておけ」
そういうことで敵兵が減った今、総大将であるガルナホレイオン王も守りが薄くなり今ならこちらの攻撃が届く。ダンクスもそう判断したようで、力強くうなずいた。
そうして、始まった最後と思われる戦い、向かってくる敵兵をなぎ倒しつつ、ついに味方がガルナホレイオン王の元へとたどり着いた。
そして
「敵将、打ち取ったぁー」
味方がついにガルナホレイオン王を倒し、それを宣言したことでようやく長い戦いが終わりを告げたのだった。ほんと長かった。
「うぉぉぉぉぉぉぉおおぅ」
その瞬間戦場が沸いた。味方の兵が皆雄たけびを上げ、敵兵たちは大賢者ともども崩れ落ちる。それを見た俺は大賢者に施していた結界を解除した。
「終わったな」
「ああ」
その後ようやく敵も負けを認めたことで、この場の最高責任者となった大賢者と戦後処理のための交渉などを行ったことで、ようやくこの戦争が終結したのだった。ちなみに、なぜガルナホレイオン王があそこまで執拗に俺を討伐したかったのかというと、その理由は何も教会からの洗脳というわけではなく、単純に王家の威信を取り戻すためだったそうだ。英雄の末裔をうたったところで、あの体格と鎧から考えても今現在そんな威信があるとは思えないからな。魔王を討伐という先祖が成し遂げた偉業を達したかったのだろう。こちらとしても兵士たちにとってもはた迷惑な話だ。また、兵たちまであそこまで必死だったのもある意味暴走中の王に従っていたからだった。だから、王が倒れたことで兵もまた止まったというわけだ。こんなことならもっと早くに追うだけを狙い撃ちにでもしておけばよかった。
「とにかくま、終わったわけだし、あとは戦死者の冥福でも祈って帰るとするか」
「そうだな。といっても俺たちはまだ帰れそうにないんだが」
「そうなんだよねぇ。早くお風呂入りたいのに」
王である俺は戦いが終われば帰っても問題ないが、ダンクスとシュンナには戦後処理があるためにこの場に残る必要がある。
「はははっ、まぁあとは任せた」
というわけで俺はいったんアベイルへと戻ったのだった。
「穴はどうする。俺がまとめてやるか?」
「それが一番早いけど、無効と協議が必要だな」
穴というのはもちろん墓穴となる。この世界の戦争ではこうしたインターバルで戦死者を埋葬する決まりとなっている。そして、こうした場合は敵とか味方とかは関係なく行うのが通例だ。
「報告します。協議の結果大賢者と協力するということとなりました」
「わかった、んで場所は?」
「ご案内します」
というわけで、戦場から離れた場所へと案内される。
「ふむ、来たようじゃな魔王」
「こうして話すのは久しぶりだな大賢者。さっそく掘るわけだが、どうする個別にするか? まとめるか?」
戦場での墓穴は、戦死者を個別に埋葬するか、全員を1つの墓穴に埋葬するという2通りがある。
「わしとおぬしでなら個別でも問題あるまい」
「了解した」
この時ばかりは敵味方関係なく協力するので、いさかいはしない決まりがある。これを破ればまさに野蛮なる存在となり、各地から嫌われるはじかれることになる。それでなくとも俺という魔王は嫌われがちなので、これ以上はまずいし、何よりこれから各国とかかわっていこうとしている中でそうした行為はしないが吉だろう。そして、大賢者も忌避される行為であることはわかっているので、俺相手でも普通に接している。
とまぁ、そんなことより大賢者と手分けして戦死者1043名の墓穴を掘っていく。
「むっ、さすがは魔王というわけか」
俺がいくつかの墓穴をあっという間に掘ったものだから、大賢者が唸っている。が、大賢者も俺には劣るものの結構な速さで墓穴を掘り進んでいる。
それから、小一時間ほどかかって全部の墓穴を掘り終え、兵士たちが次々に戦死者を葬っていく。
「終わったな」
「ああ、といってもこのままいくとまだまだ増えそうではあるが」
「だよなぁ。これで引いてほしいよな」
「まったくよねぇ」
戦争は終わったわけではなく、これから第二回戦へと突入する。そうなるとまた戦死者が出てくることになる。今こうして仲間を葬っている奴が、今度は葬られることになる。これが戦場であり、人間の罪深き事なのかもしれない。
「さて、気持ちを切り替えて、次の話をしておくか」
「だな」
「ええ、それで、次はどう行くの?」
それから俺たちは様々話し合い第二回戦の戦略を決めるのであった。
第二回戦が開始される。あちらの陣形は同じく鶴翼、こちらも横陣という同じものを採用している。違いがあるとすれば、開始早々大賢者が大魔法をぶっ放してきたということだろう。もちろん俺はすぐさま結界を張り防ぐわけだが、この時俺が行ったのは、必要最小限の結界を張り、大魔法の軌道をそらしたというものだ。それを見た大賢者は思惑通りに驚愕の表情をしている。というのもこれはかなり難しいもので、少しでも間違えれば反らすことが出来ずに直撃してしまうからだ。俺がこれを使ったのはメティスルの上で胡坐をかいているわけではないという証明をするため。
その後も幾度となく大賢者が放ってきた魔法を同じ方法で防いでいく。また、俺自身も大賢者に向けて魔法を放ちまくっていく。そして、大賢者も俺と同じ方法で防いでいくという攻防をこなす。
「さすがは大賢者だな。ちゃんと研鑽は詰んでいるみたいだ」
俺は一人そうつぶやきつつもほくそ笑んだ。面白くなってきやがった。というわけで、次々にお互いに魔法をぶつけ、防いでいったのだった。
一方で、兵士たちの戦いがどうなったのかというと、第一回戦とほとんど同じ展開になっている。もちろん俺は大賢者とやりあいながら、兵士たちの回復も忘れていないので彼らはすぐに戦線に復帰しているのに対して、向こうは回復魔法使いが担当しているので、そこまですぐには回復していない。
あれ? 今思ったんだが、これって俺の仕事が多くない? 大賢者の相手をしつつ味方の回復や支援までしているのに、大賢者は俺との攻防に集中しているだけだよな。まぁ、それでも何とか大賢者と打ち合えているのはメティスルのおかげといってもいいだろう。
さて、そんなことを考えつつ頑張っていると、ようやく第二回戦も終了したのである。
「やっと終わったかぁ」
「おう、お疲れ」
「おう、全くだ」
大賢者との打ち合いは結構疲れた上に、味方の支援などもやっていたので、ほんとに疲れた。
「被害は?」
ダンクスに第二回戦の被害状況を尋ねる。
「こっちは変わらず少ないな。といっても24人ばかりやられたが、うちのも2人獣人族がやられたぜ」
「そうか、あとでリスト作っておいてくれ」
「わかった」
第一回戦でのこちらの戦死者はテレスフィリア以外の国の者であったが、今回はテレスフィリアの兵士が2人命を落としたようだ。これは命令を下した俺の責任、彼らの冥福を祈るとともに、その責任を果たす必要がある。
「さて、それじゃまた埋葬してくるか」
「おう」
というわけで、再び大賢者とともに墓穴を掘り、戦死者を埋葬していったのだった。
ここでちょっと余談だが、実は俺たちがしっかり埋葬しているのは敵兵のみで、味方の兵は誰一人埋葬はしていない。いや、一応あちらの手前埋葬している振りはするが、実際は俺の”収納”に収めている。本来ここで埋葬している理由はわかると思うが、持ち帰れないから、しかし俺には持ち帰る手段があるのだから当然その手段を使うというわけだ。向こうがそれをしない理由は、単純に大賢者が俺ほどの”収納”を使うことが出来ないだけ、大賢者が使う”収納”だと、もとのままだから時間経過もするし容量も有限、遺体を納めたところで遺族のもとに返そうに腐ってしまっている可能性がある。だから向こうは普通に埋葬しているというわけだ。
埋葬が終わったところで静かに手を合わせる。
「魔王陛下、御足労をおかけし申し訳ありません」
手を合わせていると不意に3国の将軍たちがやってきてそういった。
「なに、これも魔法に長けた魔王の務めだ」
この場には大賢者を始め西側諸国の連中もいるので、便宜上ここに埋葬したという亭で話する。
「ありがとうございます。ところで陛下、先ほど手を合わされていたようですが、あれは一体?」
「手を? ああ、合掌のことか、これだろ」
「はい」
この世界での祈りはキリストのように手を組む形をとる。それに対して俺は日本式の合掌なので不思議に思ったようだ。
「これは、勇者たちの故郷での祈りの手法でな。最近テレスフィリアでも取り入れている形だ」
「なるほど、勇者様でしたか、確か勇者様は異世界からとのことでしたな」
勇者が異世界から召喚されるというのは、この世界の者ならだれでも知る事実となる。なにせ昔話でもちゃんと異世界から呼ばれ終わった後は帰ったと記されているからだ。
「テレスフィリアではキリエルタ教は信仰していないからな。別の形がいいだろうと話が出た時にな」
実際には俺が提案したのだが、ここは麗香たちの提案ということにした。尤もあえてそこは言及せず相手に勝手に相応してもらうことで、嘘を言っていないということにした。
「さようでしたか」
「ああ、さて、今日はこの後会議だったな」
「はっ、その通りでございます」
「それじゃ、さっそく始めるか」
「お供いたします」
ここに援軍でやってきた将軍たちは俺が子供だとか、もとは平民であったとか、そういったことは抜きにちゃんと同盟国の王として接してくれる。まぁ、各国の王たちがそういったものを贈りだしてくれたというわけだが、妙なトラブルが起きないからありがたい。というわけで、将軍たちと陣地に張った幕営へと向かったのだった。
「それでは本日行われた戦においての……」
シュンナの司会で始まった会議、ここでは今日の戦争においての反省点や明日の戦略などが話し合われる。
これでわかったと思うが、今日の戦争は終わったということ。というかこの世界の戦争は午前に1回、午後に1回と一日に2回行うのが通例となっているからだ。もちろん、これは今回のような草原などの遮蔽物がないような場合のみで、森などがある場合は夜中などに奇襲を仕掛けるということは当然ある。
というわけで、夜はのんびりとこうして反省会をすることが出来るというわけだ。まぁ、中にはこれを破るものもいるので、警戒は怠らないのが普通なんだが。
それから行われる反省は、正直俺にはさっぱりでほとんどなにを言っているのかわからなかったが、おおむね問題ないという結論となった。やはりこれは戦死者が少なかったのが効いているのだろう。おかげで各国からは賞賛され、明日もよろしくといわれて会議を終えたのだった。
翌日、この日も朝から昨日と同じく戦争が始まる。全体の流れとしては昨日とほぼ同じで、こちらの戦死者は少なく、西側諸国は多いという結果となっている。そうした戦いを幾度となく繰り返し、数日が経過した。
「向こうも戦死者が3割に届きそうだし、そろそろだとは思うが」
戦争において戦死者が全体の3割を超えると全滅判定となり、相手も撤退を始めると聞いたが、今の彼らの状態を見るに残念ながらそんな気はしない。なにせ、いまだに戦意が衰えた様子がないからだ。
「あの様子だと難しそうだけどね」
シュンナも俺と同じ意見なのか、少し辟易としている。
「そんなに俺を討伐したいのかねぇ」
「そうみたいだな」
「ほんと、一体何がそうさせているのかな」
「そんなもの知らねぇって」
いまだに衰えない戦意に心底戦慄する俺たちであった。そして、その後もさらに戦いは続き、いよいよ半分を切り始めたが、いまだに撤退する気がない。これはもしかしなくても、本当の全滅まで続ける気なのだろうか。
そんなことを思いながらも続けることさらに日数を重ねたところで、ついに1/4となり、ここまでくるとようやく敵兵たちも戦意が落ち始める。それでも敵総大将であるガルナホレイオン王だけは引く気が無いように兵士たちを鼓舞している。また、大賢者についてでだが、これはもうずいぶん前から結界で隔離しており、戦線には一切参加できていない。実は戦略会議でも大賢者は隔離ではなく殺してはという意見があった。しかし、大賢者というのは、勇者や聖女のように民衆から絶大な人気を誇っており、下手に殺してしまうと反感を買う恐れがある。それが西側諸国からであれば、いいのだが場合によっては味方である同盟国からも出る恐れがある。だから殺すのだけはまずいという話になり、こうして隔離にとどめているわけだ。それで、その結界だけど、これは大賢者の周囲2mほどのサイズで、魔法結界と物理結界で構成されている。そして、魔法結界は双方に対応し、物理は内部にのみ対応している。こうすることで、魔法に関しては内外ともに干渉できず、物品などであれば外から中に入れることが可能となる。だから、大賢者は現在何もできないが食料は得ることが出来るという状態だ。といっても実はこの結界は大魔法を使えば破ることは可能、しかし、例えば大賢者が大魔法を使ったとすると、間違いなく自爆し、敵に大賢者以外に大魔法を放つことが出来る者はいない。というわけで結局身動きができない状態となっている。
「さすがにそろそろ終わりか」
「そうね。あと少しってとこかな」
「だな。たぶんあの総大将を倒せば終わりだと思う、ダンクス行けるか?」
「任せておけ」
そういうことで敵兵が減った今、総大将であるガルナホレイオン王も守りが薄くなり今ならこちらの攻撃が届く。ダンクスもそう判断したようで、力強くうなずいた。
そうして、始まった最後と思われる戦い、向かってくる敵兵をなぎ倒しつつ、ついに味方がガルナホレイオン王の元へとたどり着いた。
そして
「敵将、打ち取ったぁー」
味方がついにガルナホレイオン王を倒し、それを宣言したことでようやく長い戦いが終わりを告げたのだった。ほんと長かった。
「うぉぉぉぉぉぉぉおおぅ」
その瞬間戦場が沸いた。味方の兵が皆雄たけびを上げ、敵兵たちは大賢者ともども崩れ落ちる。それを見た俺は大賢者に施していた結界を解除した。
「終わったな」
「ああ」
その後ようやく敵も負けを認めたことで、この場の最高責任者となった大賢者と戦後処理のための交渉などを行ったことで、ようやくこの戦争が終結したのだった。ちなみに、なぜガルナホレイオン王があそこまで執拗に俺を討伐したかったのかというと、その理由は何も教会からの洗脳というわけではなく、単純に王家の威信を取り戻すためだったそうだ。英雄の末裔をうたったところで、あの体格と鎧から考えても今現在そんな威信があるとは思えないからな。魔王を討伐という先祖が成し遂げた偉業を達したかったのだろう。こちらとしても兵士たちにとってもはた迷惑な話だ。また、兵たちまであそこまで必死だったのもある意味暴走中の王に従っていたからだった。だから、王が倒れたことで兵もまた止まったというわけだ。こんなことならもっと早くに追うだけを狙い撃ちにでもしておけばよかった。
「とにかくま、終わったわけだし、あとは戦死者の冥福でも祈って帰るとするか」
「そうだな。といっても俺たちはまだ帰れそうにないんだが」
「そうなんだよねぇ。早くお風呂入りたいのに」
王である俺は戦いが終われば帰っても問題ないが、ダンクスとシュンナには戦後処理があるためにこの場に残る必要がある。
「はははっ、まぁあとは任せた」
というわけで俺はいったんアベイルへと戻ったのだった。
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