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14.夜会1
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馬車が止まり、ノエルの手を借りて王城の前に降り立つ。厳かな門は客人を迎えるため開かれていて、儀礼用の鎧を騎士が二人、左右に立って守護している。
出迎えてくれた執事に名前を告げ、門をくぐる。そうしてたどり着いた王城のホールは夜とも思えない輝きを放っている。
私とノエルが入場したことにより起きているざわめきは、私よりもノエルに注目してのものだろう。
ノエルの胸には、魔術師であることを示す紋章の彫られたブローチが飾られている。
普段は着けていないそれを身に着けているのは、魔術師としてあまり知られていないからだろう。表立って動く魔術師以外は顔を知られていないことが多い。
そして私自身ノエルが魔術師だということを知らなかった。フロランの弟子で苦情係を請け負っている人が、どうして魔術師だと思えるだろうか。
「……これはめでたい。魔術師殿が足を運んでくださるとは」
恰幅のよい男性が声を上げてノエルを歓迎する。
辺境の地を守護する侯爵の弟で、文官として兄を支えている人だ。塔に依頼する可能性が高い人だからこそ、まず真っ先に歓迎の意を表したのだろう。
「たまには顔を見せるのもわるくないかと思いまして」
「いやはや、魔術師殿がいらっしゃるとわかっていたのなら何かしら用意していたのですが、残念なことに今日はこれといった手持ちがなく――」
これでもかと歓迎し続ける男性から視線をずらす。
あまりにも強い、睨みつけてくるような視線を感じたからだ。
視線のするほうを見ると、案の定とでも言えばいいのか。これでもかとこちらを睨みつけているアニエス。
誰もが絶賛する美貌も、淑女らしさも台無しになっている。
アニエスの思わぬ形相にクロードがおろおろと視線をさまよわせているのが、見ていて滑稽だ。
「――それで、本日は恋人と一緒に来たのですが、紹介しても構いませんか?」
「ええ、それはもちろん!」
「クラリス。こちらに」
横から腰を抱かれ、顔をノエルと侯爵の弟に戻す。
愛ある恋人同士とでも言うような笑みを浮かべて。
「ご存じかと思いますが、ミュラトール伯のご息女であるクラリスです」
「もちろん、お噂はかねがね。いやあ、噂通りの美貌の方で」
まるで初対面かのような口振りだが、社交の場で顔を合わせたこともあれば挨拶をしたこともある。
まあ、彼の視線はアニエスに釘付けで、私的な会話をしたことはないけど。
「ちょっと、お姉様」
カツカツカツカツ、と荒ぶる気持ちを隠す気がないのか、踵を鳴らしてアニエスが近づいてきた。
「恋人、とか聞こえたのだけど、まさか……冗談よね?」
「冗談で恋人なんて作らないわ」
すまして返すと、アニエスの顔が強張った。だけどそれは一瞬で、悲しげに眉尻が下がる。
「魔術師様。何か勘違いされているとか……そういうことはありませんか? お姉様は傷心中の身でして、きっと思ってもいないことを口にされたのではないかと……。ああ、お姉様、本当にごめんなさい。私、そこまでお姉様のことを傷つけていたのね」
じわりと涙が浮かぶ。哀れな姿に、侯爵の弟が胸打たれたようによろめいた。
出迎えてくれた執事に名前を告げ、門をくぐる。そうしてたどり着いた王城のホールは夜とも思えない輝きを放っている。
私とノエルが入場したことにより起きているざわめきは、私よりもノエルに注目してのものだろう。
ノエルの胸には、魔術師であることを示す紋章の彫られたブローチが飾られている。
普段は着けていないそれを身に着けているのは、魔術師としてあまり知られていないからだろう。表立って動く魔術師以外は顔を知られていないことが多い。
そして私自身ノエルが魔術師だということを知らなかった。フロランの弟子で苦情係を請け負っている人が、どうして魔術師だと思えるだろうか。
「……これはめでたい。魔術師殿が足を運んでくださるとは」
恰幅のよい男性が声を上げてノエルを歓迎する。
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「たまには顔を見せるのもわるくないかと思いまして」
「いやはや、魔術師殿がいらっしゃるとわかっていたのなら何かしら用意していたのですが、残念なことに今日はこれといった手持ちがなく――」
これでもかと歓迎し続ける男性から視線をずらす。
あまりにも強い、睨みつけてくるような視線を感じたからだ。
視線のするほうを見ると、案の定とでも言えばいいのか。これでもかとこちらを睨みつけているアニエス。
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アニエスの思わぬ形相にクロードがおろおろと視線をさまよわせているのが、見ていて滑稽だ。
「――それで、本日は恋人と一緒に来たのですが、紹介しても構いませんか?」
「ええ、それはもちろん!」
「クラリス。こちらに」
横から腰を抱かれ、顔をノエルと侯爵の弟に戻す。
愛ある恋人同士とでも言うような笑みを浮かべて。
「ご存じかと思いますが、ミュラトール伯のご息女であるクラリスです」
「もちろん、お噂はかねがね。いやあ、噂通りの美貌の方で」
まるで初対面かのような口振りだが、社交の場で顔を合わせたこともあれば挨拶をしたこともある。
まあ、彼の視線はアニエスに釘付けで、私的な会話をしたことはないけど。
「ちょっと、お姉様」
カツカツカツカツ、と荒ぶる気持ちを隠す気がないのか、踵を鳴らしてアニエスが近づいてきた。
「恋人、とか聞こえたのだけど、まさか……冗談よね?」
「冗談で恋人なんて作らないわ」
すまして返すと、アニエスの顔が強張った。だけどそれは一瞬で、悲しげに眉尻が下がる。
「魔術師様。何か勘違いされているとか……そういうことはありませんか? お姉様は傷心中の身でして、きっと思ってもいないことを口にされたのではないかと……。ああ、お姉様、本当にごめんなさい。私、そこまでお姉様のことを傷つけていたのね」
じわりと涙が浮かぶ。哀れな姿に、侯爵の弟が胸打たれたようによろめいた。
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