なんでも思い通りにしないと気が済まない妹から逃げ出したい

木崎優

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25.買い物2

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 魔術の塔は王都のすみっこに建っている。
 何が起きるかわからないので周りには何もなく――今はノエルの建てた家があるけど――買い物に行くには馬車に乗る必要がある。

 ということで、家具を買いに行くことになった私とノエルは、馬車に乗って小一時間してようやく、家や店が立ち並ぶ場所に到着した。

 王都は商業地区と住居地区と、貴族が暮らす地区の三地区で構成されている。やろうと思えばより詳しく細分化できるが、ある程度の地図さえ頭に入っていれば誰も困らないので、わざわざ細かく区分しようとする人はいなかったらしい。

「家具、ということは注文ですか?」

 国の中心ともいえる王都の商業地区。そこにはたくさんの店が並んでいる。並びすぎて、大型店舗を構えられないほど。
 なので、大型商品を買う場合は注文して、一から作ってもらうことが多い。近くの街や村に倉庫を構えて商品を管理している店もあるが、どちらにせよ時間はかかる。

「僕はどちらでも構いませんが……あなたはこだわりなどはありますか?」
「……悩みますね。爆発などで壊れてしまうかもしれないことを考えると、安価なもので揃えるか……長年使えるように耐久性を重視するか……」

 でも耐久性を重視しても、爆発には耐えられないだろう。鉄で作れば可能性はあるが、変形したらどちらにせよ用を成さないだろう。

「ある程度は耐えられると思いますが……さすがにジルからの被害は抑えられませんね」

 塔の周りで何か起きれば、その犯人は九割ジルだ。 
 そうなると、なるべく細部にこだわらず、安価で揃えやすいものにしよう。そしてやはり、塔の近くに家を構えたのは失敗なのではないだろうか。

「魔術師は何かと研究室にこもりがちですからね。僕は構いませんが、あなたにはしっかりと休息をとっていただきたいので……近くなら、帰る気になるでしょう」

 私の心を読んだのか、顔色を読んだのか。まず間違いなく後者だろうけど、今抱いたばかりの考えに答えられて、ドキリと心臓が跳ねた。

「魔術師を目指すんですよね?」
「え、ええ、まあ」

 びっくりして反応できなかった私を見て、ノエルが首を傾げた。

「一応、目指すつもりではあります」
「ならやはり、家は近くがいいですね」

 魔術師は個人主義で、研究に没頭すると部屋にこもりきりになる人が多い。
 それは魔術師を目指す弟子も同じで、本気で魔術の道を目指す人ほど、成果を得ようと必死になる。

 ノエルは長年フロランの弟子をしていて、本気で魔術師を目指しているのだと思っていた。だから最初に提示したメリットに、家に帰らなくても文句は言わないというのを掲げた。
 だけどノエルはすでに魔術師で、死に物狂いで得ないといけない成果はない。研究に没頭すれば家に帰らない日も出てくるとは思うけど、私のほうがこもりきりになる可能性が高い。

 それを考えるとたしかに、家は近いに越したことはないのかもしれない。徒歩五分だし、となんだかんだ帰りそうだ。

「それに、できれば毎日あなたに会いたいですし」
「……ノエルは毎日帰るつもりなんですか?」
「あなたのいる家に帰らない理由がありますか?」

 不思議そうに――いつもと同じだけど――首を傾げられ、唸ってしまう。

「ぜ、善処します」
「はい。お願いします」

 確約できないのは、成果を得るのにどれぐらい時間と手間がかかるかわからないから。
 もしも、時間や手間がかからないのなら、私はなんて答えたのだろう。そんなことをふと考えたけど、答えは出なかった。
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