32 / 47
32.自然体
しおりを挟む
初めて、ノエルの顔に変化が生まれた。だけど驚いて瞬きをした次の瞬間には、いつもと変わらない顔に戻っていて、見間違えかと自分の目を疑ってしまう。
だけど、もしも今のが見間違えではなく実際にあったことなら、希望があるのでは。
「いつかノエルを馬鹿笑いさせてみせます」
「期待していますね」
淡々と言うノエルからは、本当に期待しているのかどうかわからない。
でも、この数日の付き合いで、ノエルが話を流すような人ではないことはわかった。最初のお付き合いを申し込んだ時は別として。
だからきっと、本当に期待してくれている、と思うことにする。そのほうが私の精神衛生上にもいいし、頑張る気になれるから。
「それはそうと」
心の中で決意を新たにしていると、ノエルがふと思い出したかのように言葉を落とした。
「愛ある恋人を演じるにあたって、あなたにお願いしたいことがあります」
「お願い、ですか?」
改めてお願いしないといけないこととはなんだろう。首を傾げなら繰り返すと、ノエルが「はい」と言いながら頷いた。
「愛ある恋人にしては少々他人行儀な気がするので、お付き合いを初めて三日も経ったことですし……そろそろ自然体で話していただけますか」
三日は、三日も、というほどの期間じゃないような気がする。普通は、三日しか、とかにならないだろうか。
だけどノエルは一日で結婚式を挙げようとしていたし、それを思うと三日もで合っているような合っていないような。
なんてことを頭の片隅で考えながら、ええと、と曖昧な声を出す。
「自然体、と言いますとどういうことでしょうか。だいぶ気を抜いているつもりではあるのですが……」
「先日、あなたが妹と接する場を見たので、今が自然体でないことはわかっています。つまりわかりやすく言うと、恋人に対して敬語なのは距離があるように思うということです」
なるほど。世の恋人がどんな風なのかは知らないけど、両親やアニエスとクロードは気安い口調で喋り合っていた。
だけどあれが恋人らしい姿なのだとすると、今の私とノエルはたしかに少々距離がある。
塔ではずっと敬語で話していたので、意識しないと難しいかもしれない。だけど約束した以上、意識してでも改善しないと。
「わかりま……わかったわ」
「これで、僕のお願いは以上です。あなたからは何かありますか?」
「……ノエルは敬語のままなの?」
促され、思ったことをそのまま口にする。
敬語なのが他人行儀というのなら、ノエルも気安く話すものだと思っていた。それなのにあいかわらず敬語のままで、なんだか肩透かしを食らったような気分になる。
「僕はこれが自然体なので」
ノエルは考えるようにわずかに頭を動かした後、小さく頷いてから言った。
だけど、もしも今のが見間違えではなく実際にあったことなら、希望があるのでは。
「いつかノエルを馬鹿笑いさせてみせます」
「期待していますね」
淡々と言うノエルからは、本当に期待しているのかどうかわからない。
でも、この数日の付き合いで、ノエルが話を流すような人ではないことはわかった。最初のお付き合いを申し込んだ時は別として。
だからきっと、本当に期待してくれている、と思うことにする。そのほうが私の精神衛生上にもいいし、頑張る気になれるから。
「それはそうと」
心の中で決意を新たにしていると、ノエルがふと思い出したかのように言葉を落とした。
「愛ある恋人を演じるにあたって、あなたにお願いしたいことがあります」
「お願い、ですか?」
改めてお願いしないといけないこととはなんだろう。首を傾げなら繰り返すと、ノエルが「はい」と言いながら頷いた。
「愛ある恋人にしては少々他人行儀な気がするので、お付き合いを初めて三日も経ったことですし……そろそろ自然体で話していただけますか」
三日は、三日も、というほどの期間じゃないような気がする。普通は、三日しか、とかにならないだろうか。
だけどノエルは一日で結婚式を挙げようとしていたし、それを思うと三日もで合っているような合っていないような。
なんてことを頭の片隅で考えながら、ええと、と曖昧な声を出す。
「自然体、と言いますとどういうことでしょうか。だいぶ気を抜いているつもりではあるのですが……」
「先日、あなたが妹と接する場を見たので、今が自然体でないことはわかっています。つまりわかりやすく言うと、恋人に対して敬語なのは距離があるように思うということです」
なるほど。世の恋人がどんな風なのかは知らないけど、両親やアニエスとクロードは気安い口調で喋り合っていた。
だけどあれが恋人らしい姿なのだとすると、今の私とノエルはたしかに少々距離がある。
塔ではずっと敬語で話していたので、意識しないと難しいかもしれない。だけど約束した以上、意識してでも改善しないと。
「わかりま……わかったわ」
「これで、僕のお願いは以上です。あなたからは何かありますか?」
「……ノエルは敬語のままなの?」
促され、思ったことをそのまま口にする。
敬語なのが他人行儀というのなら、ノエルも気安く話すものだと思っていた。それなのにあいかわらず敬語のままで、なんだか肩透かしを食らったような気分になる。
「僕はこれが自然体なので」
ノエルは考えるようにわずかに頭を動かした後、小さく頷いてから言った。
68
あなたにおすすめの小説
いくら政略結婚だからって、そこまで嫌わなくてもいいんじゃないですか?いい加減、腹が立ってきたんですけど!
夢呼
恋愛
伯爵令嬢のローゼは大好きな婚約者アーサー・レイモンド侯爵令息との結婚式を今か今かと待ち望んでいた。
しかし、結婚式の僅か10日前、その大好きなアーサーから「私から愛されたいという思いがあったら捨ててくれ。それに応えることは出来ない」と告げられる。
ローゼはその言葉にショックを受け、熱を出し寝込んでしまう。数日間うなされ続け、やっと目を覚ました。前世の記憶と共に・・・。
愛されることは無いと分かっていても、覆すことが出来ないのが貴族間の政略結婚。日本で生きたアラサー女子の「私」が八割心を占めているローゼが、この政略結婚に臨むことになる。
いくら政略結婚といえども、親に孫を見せてあげて親孝行をしたいという願いを持つローゼは、何とかアーサーに振り向いてもらおうと頑張るが、鉄壁のアーサーには敵わず。それどころか益々嫌われる始末。
一体私の何が気に入らないんだか。そこまで嫌わなくてもいいんじゃないんですかね!いい加減腹立つわっ!
世界観はゆるいです!
カクヨム様にも投稿しております。
※10万文字を超えたので長編に変更しました。
婚約破棄されました。
まるねこ
恋愛
私、ルナ・ブラウン。歳は本日14歳となったところですわ。家族は父ラスク・ブラウン公爵と母オリヴィエ、そして3つ上の兄、アーロの4人家族。
本日、私の14歳の誕生日のお祝いと、婚約者のお披露目会を兼ねたパーティーの場でそれは起こりました。
ド定番的な婚約破棄からの恋愛物です。
習作なので短めの話となります。
恋愛大賞に応募してみました。内容は変わっていませんが、少し文を整えています。
ふんわり設定で気軽に読んでいただければ幸いです。
Copyright©︎2020-まるねこ
【完結】地味な私と公爵様
ベル
恋愛
ラエル公爵。この学園でこの名を知らない人はいないでしょう。
端正な顔立ちに甘く低い声、時折見せる少年のような笑顔。誰もがその美しさに魅了され、女性なら誰もがラエル様との結婚を夢見てしまう。
そんな方が、平凡...いや、かなり地味で目立たない伯爵令嬢である私の婚約者だなんて一体誰が信じるでしょうか。
...正直私も信じていません。
ラエル様が、私を溺愛しているなんて。
きっと、きっと、夢に違いありません。
お読みいただきありがとうございます。短編のつもりで書き始めましたが、意外と話が増えて長編に変更し、無事完結しました(*´-`)
異母妹にすべてを奪われ追い出されるように嫁いだ相手は変人の王太子殿下でした。
あとさん♪
恋愛
リラジェンマは第一王女。王位継承権一位の王太女であったが、停戦の証として隣国へ連行された。名目は『花嫁として』。
だが実際は、実父に疎まれたうえに異母妹がリラジェンマの許婚(いいなずけ)と恋仲になったからだ。
要するに、リラジェンマは厄介払いに隣国へ行くはめになったのだ。
ところで隣国の王太子って、何者だろう? 初対面のはずなのに『良かった。間に合ったね』とは? 彼は母国の事情を、承知していたのだろうか。明るい笑顔に惹かれ始めるリラジェンマであったが、彼はなにか裏がありそうで信じきれない。
しかも『弟みたいな女の子を生んで欲しい』とはどういうこと⁈¿?
言葉の違い、習慣の違いに戸惑いつつも距離を縮めていくふたり。
一方、王太女を失った母国ではじわじわと異変が起こり始め、ついに異母妹がリラジェンマと立場を交換してくれと押しかける。
※設定はゆるんゆるん
※R15は保険
※現実世界に似たような状況がありますが、拙作の中では忠実な再現はしていません。なんちゃって異世界だとご了承ください。
※拙作『王子殿下がその婚約破棄を裁定しますが、ご自分の恋模様には四苦八苦しているようです』と同じ世界観です。
※このお話は小説家になろうにも投稿してます。
※このお話のスピンオフ『結婚さえすれば問題解決!…って思った過去がわたしにもあって』もよろしくお願いします。
ベリンダ王女がグランデヌエベ滞在中にしでかしたアレコレに振り回された侍女(ルチア)のお話です。
<(_ _)>
あなたには彼女がお似合いです
風見ゆうみ
恋愛
私の婚約者には大事な妹がいた。
妹に呼び出されたからと言って、パーティー会場やデート先で私を置き去りにしていく、そんなあなたでも好きだったんです。
でも、あなたと妹は血が繋がっておらず、昔は恋仲だったということを知ってしまった今では、私のあなたへの思いは邪魔なものでしかないのだと知りました。
ずっとあなたが好きでした。
あなたの妻になれると思うだけで幸せでした。
でも、あなたには他に好きな人がいたんですね。
公爵令嬢のわたしに、伯爵令息であるあなたから婚約破棄はできないのでしょう?
あなたのために婚約を破棄します。
だから、あなたは彼女とどうか幸せになってください。
たとえわたしが平民になろうとも婚約破棄をすれば、幸せになれると思っていたのに――
※作者独特の異世界の世界観であり、設定はゆるゆるで、ご都合主義です。
※誤字脱字など見直して気を付けているつもりですが、やはりございます。申し訳ございません。教えていただけますと有り難いです。
クリスティーヌの本当の幸せ
宝月 蓮
恋愛
ニサップ王国での王太子誕生祭にて、前代未聞の事件が起こった。王太子が婚約者である公爵令嬢に婚約破棄を突き付けたのだ。そして新たに男爵令嬢と婚約する目論見だ。しかし、そう上手くはいかなかった。
この事件はナルフェック王国でも話題になった。ナルフェック王国の男爵令嬢クリスティーヌはこの事件を知り、自分は絶対に身分不相応の相手との結婚を夢見たりしないと決心する。タルド家の為、領民の為に行動するクリスティーヌ。そんな彼女が、自分にとっての本当の幸せを見つける物語。
小説家になろう、カクヨムにも投稿しています。
乙女ゲームの悪役令嬢の兄の婚約者に転生しましたが傷物になったので退場を希望します!
ユウ
恋愛
平凡な伯爵令嬢のリネットは優しい婚約者と妹と穏やかで幸福な日々を送っていた。
相手は公爵家の嫡男であり第一王子殿下の側近で覚えもめでたく社交界の憧れの漆黒の騎士と呼ばれる貴族令息だった。
結婚式前夜、婚約者の妹に会いに学園に向かったが、そこで事件が起きる。
現在学園で騒動を起こしている第二王子とその友人達に勘違いから暴行を受け階段から落ちてしまう…
その時に前世の記憶を取り戻すのだった…
「悪役令嬢の兄の婚約者って…」
なんとも微妙なポジション。
しかも結婚前夜で傷物になる失態を犯してしまったリネットは婚約解消を望むのだが、悪役令嬢の義妹が王子に婚約破棄を突きつける事件に発展してしまう。
婚約破棄を突き付けてきた貴方なんか助けたくないのですが
夢呼
恋愛
エリーゼ・ミレー侯爵令嬢はこの国の第三王子レオナルドと婚約関係にあったが、当の二人は犬猿の仲。
ある日、とうとうエリーゼはレオナルドから婚約破棄を突き付けられる。
「婚約破棄上等!」
エリーゼは喜んで受け入れるが、その翌日、レオナルドは行方をくらました!
殿下は一体どこに?!
・・・どういうわけか、レオナルドはエリーゼのもとにいた。なぜか二歳児の姿で。
王宮の権力争いに巻き込まれ、謎の薬を飲まされてしまい、幼児になってしまったレオナルドを、既に他人になったはずのエリーゼが保護する羽目になってしまった。
殿下、どうして私があなたなんか助けなきゃいけないんですか?
本当に迷惑なんですけど。
拗らせ王子と毒舌令嬢のお話です。
※世界観は非常×2にゆるいです。
文字数が多くなりましたので、短編から長編へ変更しました。申し訳ありません。
カクヨム様にも投稿しております。
レオナルド目線の回は*を付けました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる