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二十七話 縁のなかったものばかり
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ヴィルヘルムさんが選んでくれたドレスはレースと細かな刺繍がされているものだった。
宝石がふんだんに使われているドレスもあることを考えると、一番地味なものを選んだように思える。
これは、もしかしたら私が持ってきた服を参考にしてくれたのかもしれない。
私が持ってきた服は、華美な装飾のされていない質素なものが多かった。小屋から持ってきた調合用の服以外は、エイシュケル王国で働いていた人が選んでくれたのだろう。
そこには、私にあまり手間をかけたくない王様の意向も含まれていたに違いない。
動きやすそうだったのでありがたく受け取ったけど、もしかしたらあれらすべてが私の趣味だとヴィルヘルムさんは思ったのかもしれない。
実際間違ってはいないので訂正する気はない。
「ありがとうございます。その宴、というので注意しないといけないことはありますか?」
「よほどのことがない限り、あなたを咎められる人はおりません。ですので、好きに行動していただいてよろしいかと」
それはやはり、ルーファス陛下の権力――もとい皇帝に対する恐れがあるから、ということだろうか。
皇帝を恐れつつも私を殺したくなるようないい方法はないだろうか。失礼になりすぎない程度の、失礼な態度。
難しいけど、やりがいはある。成功すれば喜んで殺しに来る人の一人や二人は増えそうだ。
「わかりました。頑張ります」
ルーファス陛下が私を殺してくれないことも考えて、候補を増やしておくことは大切だ。
それから、侍女の手によってこれまで着たことのないドレスや装飾品で飾り付けられていく。
きらきらと光る宝石も、刺繍の施されたドレスもこれまでの私には無縁だった。
見ている分には気にならなかったけど、踵の高い靴は油断すると足首を捻ってしまいそうだ。それに引きずりそうになるほど長い丈もうっかりすると裾を踏んでしまいそうになる。
「お国ではどのような生活を……?」
そう漏らしてしまった侍女を責めることはできない。他の侍女に叱られていたけど。
なんとか形が整った私は、ヴィルヘルムさんに連れられて宴の会場である広間に向かう。
靴に慣れる暇すらなかったので足首を捻るかもしれないけど、考えたところでどうしようもない。それにどうせ、頑丈な体は捻った程度では怪我にすらならない。ただ衆目の中で転ぶだけだ。
「遅かったな」
到着したのは、広間に続く扉の前。そこには私を待っていたらしいルーファス陛下が立っていた。
私のお披露目なので、夫であり王であるルーファス陛下と一緒に入場しないといけないらしい。
ルーファス陛下の後ろには大きな扉が構えている。
私はアドフィル城の広間に立ち寄ったことも、足を踏み入れたこともはない。ルーファス陛下と初めて会ったのは玉座の間で、その後は自室や執務室、庭園をうろちょろしていただけだ。
エイシュケル城の広間は宴のために開かれるもので、大勢の貴族が一堂に会しても余裕のある空間となっているらしい。
らしい、というのは私はエイシュケル王国にいた時に、広間に足を踏み入れたことがなかったからだ。祝いの席に呼ばれることはなく、貴族の知り合いがいるわけでもない。
だからつまり、私は宴というものと縁のない生活を送っていた。
「開けろ」
ルーファス陛下の一言で、重そうな扉が開かれていく。
きらきらと輝くシャンデリアに照らされた室内は明るく、その下にいる人たちもきらきらと輝いて見える。実際、輝いているのかもしれない。まとっている宝石がシャンデリアの光を反射しているから。
初めて見る光景と、向けられた色とりどりの瞳に、私は圧倒されてしまった。
宝石がふんだんに使われているドレスもあることを考えると、一番地味なものを選んだように思える。
これは、もしかしたら私が持ってきた服を参考にしてくれたのかもしれない。
私が持ってきた服は、華美な装飾のされていない質素なものが多かった。小屋から持ってきた調合用の服以外は、エイシュケル王国で働いていた人が選んでくれたのだろう。
そこには、私にあまり手間をかけたくない王様の意向も含まれていたに違いない。
動きやすそうだったのでありがたく受け取ったけど、もしかしたらあれらすべてが私の趣味だとヴィルヘルムさんは思ったのかもしれない。
実際間違ってはいないので訂正する気はない。
「ありがとうございます。その宴、というので注意しないといけないことはありますか?」
「よほどのことがない限り、あなたを咎められる人はおりません。ですので、好きに行動していただいてよろしいかと」
それはやはり、ルーファス陛下の権力――もとい皇帝に対する恐れがあるから、ということだろうか。
皇帝を恐れつつも私を殺したくなるようないい方法はないだろうか。失礼になりすぎない程度の、失礼な態度。
難しいけど、やりがいはある。成功すれば喜んで殺しに来る人の一人や二人は増えそうだ。
「わかりました。頑張ります」
ルーファス陛下が私を殺してくれないことも考えて、候補を増やしておくことは大切だ。
それから、侍女の手によってこれまで着たことのないドレスや装飾品で飾り付けられていく。
きらきらと光る宝石も、刺繍の施されたドレスもこれまでの私には無縁だった。
見ている分には気にならなかったけど、踵の高い靴は油断すると足首を捻ってしまいそうだ。それに引きずりそうになるほど長い丈もうっかりすると裾を踏んでしまいそうになる。
「お国ではどのような生活を……?」
そう漏らしてしまった侍女を責めることはできない。他の侍女に叱られていたけど。
なんとか形が整った私は、ヴィルヘルムさんに連れられて宴の会場である広間に向かう。
靴に慣れる暇すらなかったので足首を捻るかもしれないけど、考えたところでどうしようもない。それにどうせ、頑丈な体は捻った程度では怪我にすらならない。ただ衆目の中で転ぶだけだ。
「遅かったな」
到着したのは、広間に続く扉の前。そこには私を待っていたらしいルーファス陛下が立っていた。
私のお披露目なので、夫であり王であるルーファス陛下と一緒に入場しないといけないらしい。
ルーファス陛下の後ろには大きな扉が構えている。
私はアドフィル城の広間に立ち寄ったことも、足を踏み入れたこともはない。ルーファス陛下と初めて会ったのは玉座の間で、その後は自室や執務室、庭園をうろちょろしていただけだ。
エイシュケル城の広間は宴のために開かれるもので、大勢の貴族が一堂に会しても余裕のある空間となっているらしい。
らしい、というのは私はエイシュケル王国にいた時に、広間に足を踏み入れたことがなかったからだ。祝いの席に呼ばれることはなく、貴族の知り合いがいるわけでもない。
だからつまり、私は宴というものと縁のない生活を送っていた。
「開けろ」
ルーファス陛下の一言で、重そうな扉が開かれていく。
きらきらと輝くシャンデリアに照らされた室内は明るく、その下にいる人たちもきらきらと輝いて見える。実際、輝いているのかもしれない。まとっている宝石がシャンデリアの光を反射しているから。
初めて見る光景と、向けられた色とりどりの瞳に、私は圧倒されてしまった。
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