毒姫ライラは今日も生きている

木崎優

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三十一話 それはそれ、これはこれ

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「……それで、症状は?」

 指示を出し終わったルーファス陛下がどっしりとソファに座る。
 突然の剣幕にあ然としていた私は、見上げるように聞かれて首を横に振った。

「舌がピリピリしただけで、今はなんとも……」
「……そうか、妖精の血か……」

 はあ、と息を吐くルーファス陛下に、視線をさまよわせることしかできない。
 妖精の血をひく人がそう簡単に死なないのは、常識だ。
 毒一つでまさかここまで怒鳴られるとは思ってもいなかった。

「とりあえず、座れ。そして舌を出せ」
「いやですよ!?」

 ソファの空いたスペース――ルーファス陛下の横に視線を落としながら、当然のように言う彼に慌てて返す。
 何が悲しくて、異性に対して舌を突き出さねばならないのか。

「やましいことがあって言っているわけではない。本当に大丈夫かどうか、診るだけだ」
「大丈夫です! これまでたくさん毒を飲んでも平気でしたし、舌が痺れるぐらい……しかも今はなんともないんだから、診なくても大丈夫です」
「恥じるべき恰好をしていたこともあったのに、どうしてこの程度のことで恥ずかしがるんだ……」

 ルーファス陛下は呆れたように言うけど、それはそれ、これはこれ、だ。
 肌着姿になったのは必要だったからだけど、今のこれは必要のないことだ。私が大丈夫だと言っているのだから、大丈夫に決まっている。

「陛下、下手人を捕らえましたがどうしますか?」

 開けろ、いやです、を繰り返した私たちだが、扉が開かれたことによって言い合いが止まった。

「ここに連れてこい」
「そう言うと思って、連れてきました」

 ヴィルヘルムさんと一緒に部屋に入ってきたのは見覚えのある――年若の侍女だった。
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