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三十六話 どうしていきなり
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執務室から部屋に帰され、ソファの上をごろごろ転がる。転がれるぐらい広いソファに最初は驚いたし、落ち着かなかったものだ。
だけど何日も過ごしていれば、転がれる程度には慣れる。大きなベッドではまだ眠れないけど。
「侍女さん大丈夫かなぁ」
彼女の処遇は検討すると言ってくれたけど、こっそり処理されたら私では知りようがない。
今度面会でも申請して、生きているか確認しようかとも考えたけど、ルーファス陛下が承諾してくれる図が浮かばない。
「……頑固な人」
いつまで経っても妻とも妃とも認めないルーファス陛下。
――それなのにどうして、殺せと言うななんて言ったのだろうか。
私を見下ろす赤い瞳を思い出し、ぶんぶんと首を横に振る。勢いがよすぎて頭が少しくらくらしたけど、おかげで赤い瞳のことは頭の中から消えた。
「牢屋の場所はわからないし……勝手に出歩くこともできないし……どうしよう」
お披露目会からは放置されていたけど、また執務室に連行されても不思議ではない。
そうなると、勝手に抜け出して城内を散策することもできない。
年若の侍女がどうなったのか、どうすれば知ることができるのか必死に考える。
考えすぎて頭が痛くなってきた頃、扉が遠慮がちに叩かれた。
「はーい、どうぞー」
ソファに突っ伏しながら応えると、扉の開く音が聞こえ――だけど開ききる前に音が止まった。
ん? と思い、首だけを動かしてそちらを見て、そこにいる人物に頭の中に疑問符が浮かぶ。
「……お前は何をしているんだ」
「ルーファス陛下こそ……なんの用ですか?」
これまで、ルーファス陛下が私の部屋を訪ねたことはない。執務室に連行されるのは昼食の後なので、いつも食堂からの出発だった。
部屋に戻るのは侍女に案内され、ルーファス陛下の部屋と繋がっているはずの寝室でも会うことはなく、私的な部屋で彼と会うのはこれが初めてだ。
「お前に……謝りに……」
「謝る?」
謝られることなんてあっただろうかと首を傾げる私に、ルーファス陛下は扉を開ききり、私のところまで向かってきた。
そしてソファの前で跪き、赤い瞳に私が映る。
「心ないことを言ってしまったことを……すまなかった。これからは、妃として扱うと約束しよう」
「……どんな心変わりですか」
一回も妃とも妻とも認めず、お披露目会はくだらないと言って中座し、それなのにどうして今さら妃として扱うなんて言い出すのか。
謝るのなら首を落としてほしい。
「……お前の立場を考えず、愚かなことをした。今さらだと思われることはわかっている。だが、ここがお前にとって過ごしやすくなるよう……妃として丁重に扱おう」
「お気遣いいただかなくても、大丈夫です」
妃として丁重にということは、安全も保証されることになる。
せっかく毒を盛られて、これからじゃんじゃん私を殺しにくる人が現れそうなのに、それでは駄目だ。
「今までのように扱ってください」
ルーファス陛下が私を妃とも妻とも思っていなくてもかまわない。
私にとって、そんなことは重要ではないから。
「いや、それでは俺の気がすまん」
「……勝手なことばかり言うんですね」
棘のある口振りで言うと、ルーファス陛下の眉間にしわが寄る。
「身勝手なことを言っているのはわかっている。だが、これからはお前を妃として扱うから……覚悟しておくことだな」
そして何故だか脅迫するかのように言って、ルーファス陛下の口元ににやりとした笑みが浮かんだ。
だけど何日も過ごしていれば、転がれる程度には慣れる。大きなベッドではまだ眠れないけど。
「侍女さん大丈夫かなぁ」
彼女の処遇は検討すると言ってくれたけど、こっそり処理されたら私では知りようがない。
今度面会でも申請して、生きているか確認しようかとも考えたけど、ルーファス陛下が承諾してくれる図が浮かばない。
「……頑固な人」
いつまで経っても妻とも妃とも認めないルーファス陛下。
――それなのにどうして、殺せと言うななんて言ったのだろうか。
私を見下ろす赤い瞳を思い出し、ぶんぶんと首を横に振る。勢いがよすぎて頭が少しくらくらしたけど、おかげで赤い瞳のことは頭の中から消えた。
「牢屋の場所はわからないし……勝手に出歩くこともできないし……どうしよう」
お披露目会からは放置されていたけど、また執務室に連行されても不思議ではない。
そうなると、勝手に抜け出して城内を散策することもできない。
年若の侍女がどうなったのか、どうすれば知ることができるのか必死に考える。
考えすぎて頭が痛くなってきた頃、扉が遠慮がちに叩かれた。
「はーい、どうぞー」
ソファに突っ伏しながら応えると、扉の開く音が聞こえ――だけど開ききる前に音が止まった。
ん? と思い、首だけを動かしてそちらを見て、そこにいる人物に頭の中に疑問符が浮かぶ。
「……お前は何をしているんだ」
「ルーファス陛下こそ……なんの用ですか?」
これまで、ルーファス陛下が私の部屋を訪ねたことはない。執務室に連行されるのは昼食の後なので、いつも食堂からの出発だった。
部屋に戻るのは侍女に案内され、ルーファス陛下の部屋と繋がっているはずの寝室でも会うことはなく、私的な部屋で彼と会うのはこれが初めてだ。
「お前に……謝りに……」
「謝る?」
謝られることなんてあっただろうかと首を傾げる私に、ルーファス陛下は扉を開ききり、私のところまで向かってきた。
そしてソファの前で跪き、赤い瞳に私が映る。
「心ないことを言ってしまったことを……すまなかった。これからは、妃として扱うと約束しよう」
「……どんな心変わりですか」
一回も妃とも妻とも認めず、お披露目会はくだらないと言って中座し、それなのにどうして今さら妃として扱うなんて言い出すのか。
謝るのなら首を落としてほしい。
「……お前の立場を考えず、愚かなことをした。今さらだと思われることはわかっている。だが、ここがお前にとって過ごしやすくなるよう……妃として丁重に扱おう」
「お気遣いいただかなくても、大丈夫です」
妃として丁重にということは、安全も保証されることになる。
せっかく毒を盛られて、これからじゃんじゃん私を殺しにくる人が現れそうなのに、それでは駄目だ。
「今までのように扱ってください」
ルーファス陛下が私を妃とも妻とも思っていなくてもかまわない。
私にとって、そんなことは重要ではないから。
「いや、それでは俺の気がすまん」
「……勝手なことばかり言うんですね」
棘のある口振りで言うと、ルーファス陛下の眉間にしわが寄る。
「身勝手なことを言っているのはわかっている。だが、これからはお前を妃として扱うから……覚悟しておくことだな」
そして何故だか脅迫するかのように言って、ルーファス陛下の口元ににやりとした笑みが浮かんだ。
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