毒姫ライラは今日も生きている

木崎優

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三十八話 私には関係ない

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 脳裏に浮かぶ、薄暗い森の中で転がる黒髪に、立ち上がり私を見下ろした赤い瞳。たしかに思い返してみれば、ルーファス陛下と同じ色合いをしていた。
 そして薬を与えて――それから、案内、したのだろうか。
 森の中を? 案内するほどの何かが、あの森にあっただろうか。

 私はあの後、何をした。

『お前、何を言っているんだ』

 どこか遠くから聞こえる声。それはあの日、聞いた言葉。
 困惑した声はその後――

「ライラ」

 思考が中断される。
 意識が小屋の中から今に戻り、あの日よりも大人になった少年が視界に映る。

「だから、まあ、その、なんだ。お前がここで妃として扱われるのは、当然の権利だ。俺が、ではないが指定した相手であることには変わらない。だからどうか、ここで生きてほしい」
「それは……前向きに善処します」

 リーンさんに教わった返答に窮した時の言葉を返す。
 私は彼の希望に沿うことはできない。だって私は、ちゃんと死なないといけないから。

 ああ、そうだ。過去がどうでも、私には関係ない。
 私が死んでお母さまが目覚めて、そして私がいないことで安心して笑っていられるようにすればいい。
 私にできることは、最初からそれしかないんだから。

「とりあえず手始めに城下に降りてみるか。どういった国の妃になったのかわかれば、お前も過ごしやすいだろう」
「いえ、別に……私は城内だけで満足です」
「妃だと言い張っていたのはお前だろう。民の生活を知るのも妃の仕事だ」
「妃ではないと言っていたじゃないですか」
「だが今は、妃として扱うと言っただろう」

 妃として扱うことにしても頑固なところは変わらないようで、私の返事を待つことなく侍女を呼び、支度をするようにと命じてしまった。
 こうなったら前向きに考えよう。私を殺したい人がいても、城内では侵入するのが難しいかもしれない。
 だから人の多い城下町であれば、わらわらと私を殺してくれる人が現れてくれるかもしれない。

 あれやこれやと着替えさせられている間、現実逃避にも近い希望を抱くことしか私にはできなかった。
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