《完結》当て馬悪役令息のツッコミ属性が強すぎて、物語の仕事を全くしないんですが?!

犬丸大福

文字の大きさ
23 / 562
幼少期

幕間 僕の死なない理由

しおりを挟む
僕の名前はエミリオ・エアトル。
僕は侯爵家の嫡男として生まれた。
生まれただけだ。
死ぬための理由は、見つかっていない。

僕には双子の妹がいる。
名前は、ユーディリア。

3歳以前の事はあまり覚えていないけれど、気がついたら僕の世界は灰色だった。
ずっと勉強。
覚えて当然、間違えれば、存在価値を否定される。
「貴方は、侯爵家の嫡男として生きる以外無いのです。これぐらい出来なくてどうするんですか?侯爵家のために生きているから許されてるのであって、そうで無ければ、だれも貴方の事を必要としないのですよ?」
母親からの抱擁も、父親からの褒め言葉もなく、ただただ覚えるものを伝えられるだけの日々。
近くにいたセバスが、「お辛くないですか?少し休憩を挟みましょう?」と、しゃがんで僕に目線を合わせるように気遣い、
乳母のアンが、「ぼっちゃまは、大変良くやっておられます」と、手を握ってくるのが、
ほぼ唯一と言っていい、人とのふれあいだった。

そんなアンに、僕が勉強している間、何をしてるの?と何となく聞いた時の答えが

「お嬢様のお着替えのお手伝いをしている」だった。

僕は、は?と思った。

だって、僕はほぼ日中一杯勉強をさせられている。
その間、ずっと着替えてる、そんなわけないと思ったから。

そしたら、朝昼晩3食、毎回着替えなければならないと言う。

それも、母親の言いつけで。

僕がひとりっきり、もしくは、家庭教師からの指示で勉強している間、母親と一緒に侍女に囲まれて、アンに褒めてもらいながら過ごしているのか、と思ったら、妹がたまらなく憎くなった。
それなら、アン一人くらい僕の側にずっといてくれたっていいじゃないか。
僕も若かったねぇ。
アンに、妹の所に行かないで、僕の側にだけいてくれ。妹には、母親もついてるんだろう、着替えの侍女も一杯いるんだろう、母親を独り占めできているんだ、ワガママな妹じゃなく、アンぐらい僕だけの者でいてくれ。
そしたら、アンに滅茶苦茶怒られた。

「なんて事をおっしゃるのです!
ぼっちゃまは、ある意味、お嬢様に守られているんです!
何もお調べにならず、自分の思い込みで相手を嫌ってはいけません。
まずは、お嬢様をお知りになることです!!!」

そう言って、連れて行かれた母親の昼食の席、少しだけドアを開けて気付かれないように見ていた。

すると、僕と同じ顔の女の子が、姿勢を伸ばして入ってきて、母親の前でほんの一瞬たじろいだけど、綺麗なカーテシーを披露した。

僕はびっくりした。
本当に鏡で見る僕と同じをしていたから。

君は母親に可愛いがられているんじゃないの?
アンや侍女達に囲まれて、目一杯おしゃれを楽しんでるんじゃないの?

さらに驚いた事に、カーテシーのまま、頭を上げないんだ。

だから、ちょっとふらついたら、母親が急に怒り出し、しかも、スープを頭からかけたんだ。
しかも、頭を上げる許可さえ出さない。
4歳児だよ?!何してるの?!

案の定、女の子は、べしゃっと、倒れた。
自分にかけられたスープの上に。

そしたら、あのクソババァ、立ち上がって癇癪起こしそうになったから、アンがかばって、抱えて出ていった。

あまりの現状に僕は暫く理解が追い付かなかった。

あの、醜悪な態度の癇癪持ちが、母親?!
直接的な暴力も受けていたのが、僕の妹?!

あの母親の前に僕も出されていたら、着せ替えに時間を取られた上で、まだ覚えられないのか、と、僕も殴られていたんだろう。
アンが、僕が妹に守られている、って言ったのは、そういう事かと思った。

そのあと、いてもたっても居られなくなった僕は、妹の部屋へ行き、妹に突撃した。
「ごめんよ、僕は君が大嫌いだったけど、君があんなにひどい目に合っていたなんて、知らなかった。お母様と一緒にいる君が羨ましくて、それで、それで!!」
「おにいさ…ま?」
「そう、そう!僕は君の兄だよ、エミリオだよ。僕達は双子だもんね、つらかったの僕だけじゃない、一緒だった!しかも君は、実際にいじめられてた!
うわーーーん!」
気づけば僕は、妹をぎゅうぎゅう抱き締めて泣いていた。
妹の暖かさを感じながら、気づけば、妹もワァワァ泣いていた。

その妹の顔を見て、ほっぺたが赤いのに気がついた。
必死だと、肌に色味って増すんだね。
ああ、抱きしめると、抱きしめられると、人って温かいんだね、と初めて思ったんだ。
しおりを挟む
感想 68

あなたにおすすめの小説

悪役令息に転生したけど、静かな老後を送りたい!

えながゆうき
ファンタジー
 妹がやっていた乙女ゲームの世界に転生し、自分がゲームの中の悪役令息であり、魔王フラグ持ちであることに気がついたシリウス。しかし、乙女ゲームに興味がなかった事が仇となり、断片的にしかゲームの内容が分からない!わずかな記憶を頼りに魔王フラグをへし折って、静かな老後を送りたい!  剣と魔法のファンタジー世界で、精一杯、悪足搔きさせていただきます!

ひ弱な竜人 ~周りより弱い身体に転生して、たまに面倒くさい事にも出会うけど家族・仲間・植物に囲まれて二度目の人生を楽しんでます~

白黒 キリン
ファンタジー
前世で重度の病人だった少年が、普人と変わらないくらい貧弱な身体に生まれた竜人族の少年ヤーウェルトとして転生する。ひたすらにマイペースに前世で諦めていたささやかな幸せを噛み締め、面倒くさい奴に絡まれたら鋼の精神力と図太い神経と植物の力を借りて圧倒し、面倒事に巻き込まれたら頼れる家族や仲間と植物の力を借りて撃破して、時に周囲を振り回しながら生きていく。 タイトルロゴは美風慶伍 様作で副題無し版です。 小説家になろうでも公開しています。 https://ncode.syosetu.com/n5715cb/ カクヨムでも公開してします。 https://kakuyomu.jp/works/1177354054887026500 ●現状あれこれ ・2021/02/21 完結 ・2020/12/16 累計1000000ポイント達成 ・2020/12/15 300話達成 ・2020/10/05 お気に入り700達成 ・2020/09/02 累計ポイント900000達成 ・2020/04/26 累計ポイント800000達成 ・2019/11/16 累計ポイント700000達成 ・2019/10/12 200話達成 ・2019/08/25 お気に入り登録者数600達成 ・2019/06/08 累計ポイント600000達成 ・2019/04/20 累計ポイント550000達成 ・2019/02/14 累計ポイント500000達成 ・2019/02/04 ブックマーク500達成

【完結】私ですか?ただの令嬢です。

凛 伊緒
恋愛
死んで転生したら、大好きな乙女ゲーの世界の悪役令嬢だった!? バッドエンドだらけの悪役令嬢。 しかし、 「悪さをしなければ、最悪な結末は回避出来るのでは!?」 そう考え、ただの令嬢として生きていくことを決意する。 運命を変えたい主人公の、バッドエンド回避の物語! ※完結済です。 ※作者がシステムに不慣れかつ創作初心者な時に書いたものなので、温かく見守っていだければ幸いです……(。_。///) ※ご感想・ご指摘につきましては、近況ボードをお読みくださいませ。 《皆様のご愛読に、心からの感謝を申し上げますm(*_ _)m》

ヒロインですが、舞台にも上がれなかったので田舎暮らしをします

未羊
ファンタジー
レイチェル・ウィルソンは公爵令嬢 十二歳の時に王都にある魔法学園の入学試験を受けたものの、なんと不合格になってしまう 好きなヒロインとの交流を進める恋愛ゲームのヒロインの一人なのに、なんとその舞台に上がれることもできずに退場となってしまったのだ 傷つきはしたものの、公爵の治める領地へと移り住むことになったことをきっかけに、レイチェルは前世の夢を叶えることを計画する 今日もレイチェルは、公爵領の片隅で畑を耕したり、お店をしたりと気ままに暮らすのだった

転生チート薬師は巻き込まれやすいのか? ~スローライフと時々騒動~ 

志位斗 茂家波
ファンタジー
異世界転生という話は聞いたことがあるが、まさかそのような事を実際に経験するとは思わなかった。 けれども、よくあるチートとかで暴れるような事よりも、自由にかつのんびりと適当に過ごしたい。 そう思っていたけれども、そうはいかないのが現実である。 ‥‥‥才能はあるのに、無駄遣いが多い、苦労人が増えやすいお話です。 「小説家になろう」でも公開中。興味があればそちらの方でもどうぞ。誤字は出来るだけ無いようにしたいですが、発見次第伝えていただければ幸いです。あと、案があればそれもある程度受け付けたいと思います。

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

転生しましたが悪役令嬢な気がするんですけど⁉︎

水月華
恋愛
ヘンリエッタ・スタンホープは8歳の時に前世の記憶を思い出す。最初は混乱したが、じきに貴族生活に順応し始める。・・・が、ある時気づく。 もしかして‘’私‘’って悪役令嬢ポジションでは?整った容姿。申し分ない身分。・・・だけなら疑わなかったが、ある時ふと言われたのである。「昔のヘンリエッタは我儘だったのにこんなに立派になって」と。 振り返れば記憶が戻る前は嫌いな食べ物が出ると癇癪を起こし、着たいドレスがないと癇癪を起こし…。私めっちゃ性格悪かった!! え?記憶戻らなかったらそのままだった=悪役令嬢!?いやいや確かに前世では転生して悪役令嬢とか流行ってたけどまさか自分が!? でもヘンリエッタ・スタンホープなんて知らないし、私どうすればいいのー!? と、とにかく攻略対象者候補たちには必要以上に近づかない様にしよう! 前世の記憶のせいで恋愛なんて面倒くさいし、政略結婚じゃないなら出来れば避けたい! だからこっちに熱い眼差しを送らないで! 答えられないんです! これは悪役令嬢(?)の侯爵令嬢があるかもしれない破滅フラグを手探りで回避しようとするお話。 または前世の記憶から臆病になっている彼女が再び大切な人を見つけるお話。 小説家になろうでも投稿してます。 こちらは全話投稿してますので、先を読みたいと思ってくださればそちらからもよろしくお願いします。

異世界の貴族に転生できたのに、2歳で父親が殺されました。

克全
ファンタジー
アルファポリスオンリー:ファンタジー世界の仮想戦記です、試し読みとお気に入り登録お願いします。

処理中です...