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第12話 因果応報~上~
第12話 因果応報~上~
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どんな理由があるにせよ、他人を迫害すべからず。
迫害すれば、その報いが………
何らかの形で自分に帰ってくる。
「わたしは悪くないのよ?全ては、あなたの犯した罪………。さぁ。復讐の開幕……………
あなたが私たちにしたことと、
同じことしてあ、げ、る……………♪
うふふふふ………………
アハハハハハハハハハハハハハッ!」
彼女は、古びた卒業アルバムを開いたかと思うと、高らかに笑いながら…………一人の女性の顔写真にカッターを突き刺し………
何度も何度も、その人を殺害するような勢いで……………
その写真に向かって突き刺した。
鬼神………………
今の彼女には正にそれだった…………。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「さっむ……。」
そう呟いて、藍里はコートのファスナーを1番上まで上げると、手を擦り合わせる。
12月中旬。
季節はすっかり冬モードに入り、所々で見かけるイルミネーションや、クリスマスグッズがやたらと目立つ。
空を見上げると、どんよりと灰色の雲が覆っていた。
(あー。そう言えば早いとこはもう雪降るって言ってたな………。)
そんなことを思いながら藍里はトコトコと大学へと向かっていた。
「ねぇ!あなた!!」
突然、横から見知らぬおばさんが声をかけてきたと思うと……。
「サーカスの団長の事件を解決した………ほら!!あの!!名前出てこないけど………そう!!藍色の探偵さんじゃない!?その髪の色!間違いないでしょ!!」
「………。」
コレで5回目。
と、藍里は眉間に皺を寄せた。
サーカス団の事件がニュースで流れた翌日、藍里の名前は更に広がり今日家から出てここまで来るまでに既に4回声をかけられたのだ。
「あらまぁ。可愛らしい探偵さんねぇ。ほんとに髪の毛が藍色だわぁ…!私この色好きだわぁ…!」
女性は、藍里が迷惑がってることもそっちのけで、ぺちゃくちゃと話し出し、ベタベタと髪の毛を触り出す。
「す、すみません!急いでますので!!」
頭を深く下げて彼女の手を振りほどくと、スタコラサッサと逃げるようバスに乗り込んだ。
バスの中が落ち着けるかと言うと、そうでもなく、乗っている乗客何人かがチラチラと藍里を見てボソボソと「女子大生探偵」という声が聞えた。
(お………落ち着かない………。)
藍里は、1人がけの椅子に小さくなるように座る。
「…ねぇ。もしかして、橘さん?」
「…!?」
橘…………それは、藍里が叔母夫婦に育てられていたときの名前…いわば、旧姓。
この苗字を知ってるということは、相手は小学校~高校までの知り合いだ。
振り返ってみると、そこには懐かしい顔があった。
黒い髪の毛を肩の辺りまで伸ばし、毛先は黄色いメッシュが入っている。
小柄な体型……。
彼女は……
「えっと、同じ部活だった……
伊集院 弥生(いじゅういん やよい)さん?」
「そう!覚えててくれたんだね!」
弥生と呼ばれた彼女は、嬉しそうに顔をはにかむと、そう声をあげた。
「橘さん………って、今は森野さんだっけ?」
「うん。かつての本名に戻した。」
弥生の言葉に頷くと、藍里はふと彼女が手ぶらであることに気づいた。
財布はポケットから見えているのだが、バッグが見当たらない。
「……どこか行くの?」
藍里の言葉に、弥生は一瞬迷ったような顔をしたが、直ぐにニコリと微笑み、
「うん!武嶋さんに会うの!」
と答えた。
武嶋 優紀(たけしま ゆうき)。
彼女も藍里や弥生と同じ部活の1人の子だった。
さばさばした子で、文字通りのスポーツ少女だった。
「武嶋さんか…。懐かしいな~……来年成人式だけど参加する?」
「うん!橘さんは?」
「私は…………お金の関係とかで、厳しいかな?独り暮らししてるし……。」
「大変だね……。」
そんな他愛のない話をしていたら、弥生が次のバス停で降りると言って、別れた。
伊集院 弥生と武嶋 優紀。
2人とも、藍里とは仲良く話す方ではあった……が、遊ぶほど仲がいいというわけでもなかった。
そもそもだ。藍里は中学校3年間、同級生から少し距離を空けられていた。
その理由が……先輩からのいじめ……。
中学生は大人のようで子供っぽい年頃。
上下関係がうるさい年頃。
特に、中学の先輩達は少し鼻が高くなるのか、後輩いじめがたびたび見られる。
少なくとも藍里が通っていた中学校はそうだった。
そのターゲットにされる子は大概……
校則違反してる。
生意気。
敬語が使えない。
挨拶しない。
と言うのが多い。
藍里はというと、生まれつき髪の毛が藍色であったがために、タチの悪い先輩達から
「地毛とかゼッテー嘘だし。」
「あれ、絶対染めてるし。」
「黒に戻せよ。」
と、陰口叩かれ、呼び出されたのはしょっちゅうであった。
そのせいでか、同級生達は藍里と関わると自分にも被害が及ぶと思い、距離を空けられていた。
その為、高校や大学の友人が
「中学の頃の先輩で優しくていい人なの~!藍里は!?」
という話をされると、どうにも藍里は困ってしまう。
その為、濁さずにはいられない。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
大学の講義を終えて、香苗とパンケーキを食べに来ていた藍里は、
「夕方からね、環(たまき)先輩に誘われて合コンに行くんだー!環先輩は、中学時代の先輩で、優しくていい人なんだ!今でもたまにお茶とかするし!」
……という話をふられて、本気ものすごく困った。
けど、最近はそういう話をよく聞く…。
中学1年生か2年生辺りの子が、「先輩!」と呼んで仲良さそうに歩いているのを見かけるのだ。
それを見た藍里は直ぐに自分の過去と照らし合わせてしまい、
(私が特殊だったのか?)
と、疑いたくなってしまうのだった。
「……仲良いね。私は、地毛が困難だから、先輩から目ぇつけられっぱなしでいい思い出が全くないんだ……。」
あはは。と作り笑いをする藍里。香苗は目を丸くする。
「マジで?うちの中学でも地毛が茶髪の子いたよ。でも、先輩達は『羨ましい』で済ませてた。その学校が変なんじゃない?」
「そう……かな?」
「そうだよ!!イジメなんて普通にダサいじゃん!!あ!やばっ!ごめん!そろそろ行くね!」
そう言って、香苗は席をたち、走り去ってしまった。それを軽く手を降って見送る藍里は、腕時計に目を落とす。
(……バイトの時間までまだあるな……。小説の続きでも読んでるか…。)
コーヒーを1口口に含み、藍里は読みかけの推理小説の本を開く。
数分くらいたった時だろうか……。
「あれー!?橘 なんとかさんじゃなーい?」
突然、そんな嘲笑うかのような声が聞こえてきて、藍里は背筋を凍らせた。
この声には、聞き覚えがあったのだ。
ゆっくりと振り返る。
そこにいたのは、予想通りの人達がいた。
もう2度と会いたくもない人物達が………。
「やっぱりー!?1人でパンケーキですかー!?さみしー!!」
「探偵さんは大学生になってもボッチなんですねー!てゆか、キモーーい!!」
3人組。彼女達は知っている。藍里や弥生と同じ部活だったからだ。
2人は、中学時代の先輩。
そして、最後の1人は…………同級生。
「一人ぼっちのパンケーキ美味しいですかーー!?」
藤原彩弓(ふじわら あみ)。
この同級生……
藤原 彩弓は、とにかく藍里をけなしていた。
部活のエースだったこともあり、先生や先輩からは気に入られ、後輩も直ぐに自分のもとにおいといた。
その為、先輩とは仲のいい方であった。
3年生になると、部活のロッカーを、藍里の場所を追い出し、藍里には床で着替えさせ、自分は藍里から奪ったロッカーを使った。(要は2つ使った。自分だけ。)
藍里が、後輩から先輩と見られないのはほとんどこいつのせいでもある。
新入生が来ると早々「この人は先輩と見なくていいよー!うちらの先輩から目つけられてるしー!」と、大声で言いふらしたのだ。
とにかく、言い出したらきりがないくらいに、藍里は彼女からひどい仕打ちを受けていた。
(無視無視…………。)
藍里は、コーヒーを啜りながら彼女達から目をそらし、小説の続きを読み始めた。
「シカトー?てか、ほんと生意気ー!なんとか言えよ!」
「っ!」
後ろから先輩に髪を引っ張られ、小説がバサッ!と手から滑り落ちた。
「つーか、お前髪の毛黒にしろよ!」
「…中学時代から地毛だって言ってるでしょ?戻しようがないです。」
「はぁ?反抗すんの?スッゲー生意気!!」
先輩が手をあげる。
思わず目を閉じる藍里……。
「……………?」
いつまでたっても響かない痛み。恐る恐る目を開けてみる。
目の前に広がったのは、グレーのスーツを着た男性。
「随分と騒いでるな。」
彼の声には聞き覚えがあった。ここ最近よく聞くようになった声……。
「はぁ?誰この人?もしかして彼氏ー?」
「言ってろ。それよりお前ら。警察の前で暴行容疑たぁ、いい度胸だ。」
そういった彼は、彼女達の前に警察手帳を見せる。
「……笠村さん……?」
警察手帳をみた彼女達は、顔を真っ青にしてるのがよくわかった。
「警察が、なんで?」
「事件に関して、こいつとここで待ち合わせしてただけだ。けど、その前にお前達から暴行未遂の容疑で少し話を聞こうか?」
警察手帳をしまった笠村。
立場が怪しくなった3人……すると、藤原が、
「でもでもー!私達これからみたい映画あるのでー、見れなくなっちゃいますー!」
「そ、そうです!だ、だから急がないと!」
「ば、バイバイ!橘さん!!」
そう言って彼女達はそそくさと立ち去った。
目だけで彼女達を追った笠村は、振り返り藍里の小説を拾い上げる。
「…大丈夫だったか?」
「はい。ありがとうございます。」
藍里は、助け船を出してくれた笠村に感謝して、小説を受け取った。
「お前も言い返せよな?言われたい放題じゃなくてよ。」
「…無理ですよ。あれ、中学時代の先輩と同級生なんですけどね?こんな髪してるから、仕方ないですよ。」
藍里は、苦笑いを浮かべながら、藍色の髪をギュッと握った。
父親譲りの藍色の髪。
それのせいで目をつけられてしまった。
「そんなの、中学の話だろ?今は関係ねぇ。」
笠村は、フンッと鼻をならす。目をぱちくりさせる藍里。
「俺は、嫌いじゃねぇぞ?お前のその髪……。」
と、目をそらし、頭を撫でながら答えた。
髪を誉められた。
藍里にとってとても嬉しいことで、顔を綻ばせると
「ありがとうございます…!」
と、答えた。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
夕方。
藤原は、2人の先輩と別れてからまっすぐに帰路へとついていた。
先輩たちと遊ぶのは楽しかったし、申し分ない。
……が、1つだけ不満があるとしたら、藍里の件だ。
「あーあー、橘さんを久しぶりにからかってあげようとしたのに、最悪!」
彼女にとって、嫌われている人の悪口や、あることないことを言いふらすのは娯楽のひとつでもあった。
中学からそうだった。
他人を蹴落とすことで、優越感に浸る。
周りが自分と同じようにその人を敵に回すことで、1人でないと安心する。
が、しかし、今回はまさか警察が来てしまうなんて思っても見なかった。
刑事からうけた、あの鋭い目付き……あれが、どうにも彼女にとって気に入らなかったのだ。
「まぁ。いいや。帰ってドラマ見よ。」
そう、自分に言い聞かせるように呟くと、藤原は足軽に家へと向かった。
今まで録画したまま溜めているドラマを今日は1話から一気に見るつもりだったのだ。
「…?」
ところが、家まであと数百メートルというところで、藤原は足を止めた。
いつもと違う光景に、本当にここが自分の家なのかと疑いたくなったのだ。
「…あと赤いパトランプ…パトカー?」
今日はやたらと警察を見かけるなと思いながら、藤原は怪訝そうな顔を浮かべて、ゆっくりとそこに近づいていった。
「あら………藤原さんちの…。」
ボソリと聞こえた、聞き覚えのある声。
それは、いつも果物をおすそわけしてくれるお隣さんだった。
いつもニコニコしてくれる人が、今では自分を汚い物を見るかのような……冷たい目で見ていた………。
その人だけでなく、他の野次馬たちも、自分をみてヒソヒソと囁いている。
「……人殺し…。」
ボソッとだが、確かに聞こえた不穏な言葉。藤原は、我慢ができなくなってバッと振り返り、その人を睨み付ける。
「おー、怖っ。」
「ほんと、人って影で何してるかわからないわよねー……。」
「アリバイは完璧に見せて、何食わぬ顔して帰ってきて………。」
「本当に最近の若い子は恐ろしいわ~…。」
なにがなんだかわからない。
いったい何があったのか…。
全ての真相は、家の中に。
藤原は、野次馬たちの間をすり抜けて家の中へと向かった。
玄関を乱暴に開けると、驚いた顔の警察官と、階段に腰かけて頭を抱えている妹の結希(ゆき)の姿。
そのそばで慰めている母親の姿。
「………彩弓……。」
「…彼女が、彩弓さん?」
警察官が訪ねると、ゆっくりとうなずく母親。
よく見ると、母親も野次馬達と同じように、汚いものを見るような目でこちらを見ている。
「………なに?」
藤原が首を傾げていると、警察官が険しい顔をして自分の方を向く。
「…藤原彩弓さん。先程まで何を?」
「…遊んでましたけど?先輩達と。」
「……その前は?」
「…家にいましたけど?」
藤原の言葉をメモした警察官は、ゆっくりと口を開く。
その言葉に、藤原は目を真ん丸にして見開く………。
彼女にできるのは、ただそれだけだった………。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
翌日、大学の食堂で……。
「藤原彩弓、陽菜も嫌い!」
と、ピンクのロリータを着た陽菜が、眉間にシワを寄せて噛み付くように言い放った。
藍里が、昨日の昼に受けた仕打ちを話したら、陽菜がそう言い出したのだ。
「アイツさ!小学校の時の修学旅行の時にね、自由行動一緒にまわろ?って誘われたの!陽菜、その時違う友達と既に約束してたから
聞いてみるから待っててね
って言ったの!そしたらあいつ!!周りに
『陽菜に一緒に回ろ?って言われたけどどうしよう?』
って、言いふらしたんだよ!?陽菜、そんなこと言ってねーし!!」
声を荒げてテーブルをバンッ!と叩く陽菜。お陰で何人かの生徒がこちらを振り向いたが、すぐに気にしなくなった。
「…陽菜がそこまで言うって……ある意味すごいね。」
藍里がストローでアイスコーヒーを飲みながらそう呟く。
「中学時代、お前アイツにいろいろやられてたよな?」
哲也に思い出したくもないことを言われて、藍里は少しムッとしたが表には出さず
「…まぁね…。」
と濁した。
「てかさー、いい加減子供っぽいことしないで欲しいよね!藍ちゃんかわいそう!」
陽菜が、唇を尖らせたと思うと、藍里の頭をヨシヨシと言わんばかりに撫でた。
陽菜の優しさに感謝して、藍里は微笑むと
「ありがとね。でも、大丈夫だから。」
と答えた。
「大丈夫!いざとなったら、私とテッちゃん達で守るから!!」
「俺らも!?」
陽菜の言葉に、聖人がブッと水を吹き出して声を出した。
「いつだって守ってきたでしょ!?いざとなったら!」
「そりゃあ、探偵の仕事で危なくなったら助けてたけど……。」
「でしょ!?」
陽菜の言葉に、苦笑いを浮かべる輝に対し、陽菜は胸を張った。
その様子に、思わず吹き出す藍里は、
心のなかで彼らに感謝した。
中学時代は最低だった。
でも、もう過去の話。
今は、こんな自分に着いてきてくれる彼らに……
感謝の気持ちで一杯だった……。
「ねぇ。これ、うちの大学の近くじゃない?」
「ホントだ。なに?殺人?コワー…。」
そんな生徒の言葉が聞こえ、藍里は彼女たちが見ているテレビに視線を写す。
殺人事件が起きたらしく、テレビには古風を感じる木造の一軒家が映し出された。
「友達を家に呼び出して殺人……最近多いな。そーゆー友人を殺すって事件…。」
「ひええ…。」
聖人の言葉に、陽菜も声を漏らす。
藍里は、なにも答えずにただそのテレビの画面を見ていた。
『昨日未明、木造一軒家のリビングでこの家にすむ次女が「知らない人が死んでる」と警察に通報しました。
死亡したのは
伊集院弥生さん。20歳。
司法解剖の結果、紅茶に入れられた青酸カリを飲んだことによる中毒死と判明。」
「……伊集院……さん………?」
藍里は、そのテレビ画面をみて、初めて反応を示した…。
彼女は、藍里の同じ中学で昨日、バスのなかで再会したばかりの伊集院弥生だった…。
『調べによると、伊集院さんは「中学時代の友人の家に遊びに行く」と家族に言ったきり家に帰らなかったとのことです。
警察は、この家にすむ長女で、学生時代同じ部活だったと言う、
藤原彩弓さんを、殺人の容疑で逮捕しました。
藤原さんは、「やっていない。」と言って容疑を否認しています。』
「藤原彩弓…!?あいつ、とうとう殺人まで…!?」
陽菜が、信じられないとでも言うように声をあげる。
「同じ部活ってことは、藍里も知ってるんじゃねぇのか?弥生とか言うやつ。」
「………知ってるもなにも、昨日の朝に再会したばっかりだよ…!」
哲也の言葉に藍里は絶望にも似た声を出し、それにたいして皆が
「はぁっ!?」
「マジか!!」
「うそー!?」
「そうだったのか!?」
とそれぞれ同時に声をあげて目を丸くする。
藍里は、そんな彼らにはお構いなしに、そのテレビのニュースを、じっと見つめた………。
【事件ファイル】
被害者:伊集院 弥生
死因:青酸カリ入りの紅茶を飲んだことによる中毒死。
それ以外の外傷なし。
備考:
・友人の家に遊びに行くと言って家を出た。
・容疑者である藤原彩弓とは、中学時代からの同級生で、同じ部活。
・それ以外の友人とは会った形跡はなく、藤原彩弓と何らかのトラブルがあったのではないかとのこと。
・藤原彩弓は、先輩と遊んでたと言って容疑を否認。
後の調査で、藤原彩弓はとあるコミュニティサイトで、いろんな中学時代の同級生たちの悪口を書き込んでいたことがわかった。その中に、伊集院弥生と思われる人物も出てきていた。
そこで知り合った仲のいいユーザーに「殺したい」「マジでやっちまうか。」などといったようだ。
藤原彩弓はコミュニティサイトをやってることは認めてるが、愚痴については書いてないと言う。
(………藤原さんの家………で、他の友人には会っていない?)
眉間にシワを寄せた藍里は、画面に釘付けになった。
自分が知りうる情報とは少し食い違うのだ。
まず、あのとき弥生は間違いなく藍里に「武嶋にあう」と言った。そのため、少なくとも武嶋と会っている筈なのだが、実際は藤原彩弓の家で遺体となっている。しかも、誰ともあっていない様子が見られると来た。藍里は、我慢ができなくなり、置かれている鞄をガッと掴むと、食堂を飛び出した。名前を呼んで目を真ん丸にしてる陽菜にもお構いなしに……。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「それは、考えられないよ。藍里ちゃん。」
警察署についた藍里は、ことの成り行きと、弥生が自分に言ったことを訴えたが、あっさりと稲垣に返されてしまった。
だが、藍里もここであっさりとは引き下がらなかった。
「ですが、私はその時確かに伊集院さんと会って、本人の口から聞いたんです!」
「とは言ってもねぇ。武嶋にも事情聴取したんだが、彼女はその日、コミュニティサイトで知り合った人と会っていたと言うんだ。相手の人も、それを証明してる。伊集院弥生とは会っていないし、約束もしてないそうなんだ。」
困った顔をして、稲垣は頭を掻きながら答えた。
そこまで言われたらなにも言えない。
何度も事件解決に知恵を借りたとしても、今回ばっかりは、藍里のその言葉を聞いては貰えそうになかった……。
「そう言えば、君も伊集院さんと同じ部活だったんだね。あと、藤原彩弓とも。まぁ。同級生がこんな形になってしまうのはショックだろうけど、現実は現実さ。」
申し訳なさそうに声をかける稲垣、しかし、藍里はなにも言わずただ下を向くしかできなかった。
「そうだ。実はそのコミュニティサイト、僕もやっててね。藍里ちゃんもやって欲しいんだ。事件に関してやり取りできるかなと思ってね。これ。やりなよ。」
そう言った稲垣は、手帳にサラサラっと何かを記入すると、藍里に手渡す。怪訝そうな顔をして受けとると、藍里はその文面に目を落とす。
サイト名/lead
ユーザー名/あみあみ(@ amam05)
チェケラ(@ iitnk036)
あみあみという名でよくわからない犬のアイコンが藤原彩弓のユーザー、
チェケラという名でバラの写真をアイコンにしてるのが、武嶋のユーザーだよ。
そんな風に書かれていたメモに、藍里は
顔をバッとあげる。
稲垣は、すでにその場から離れており、上司と何やら話していた。
察するに……気のすむまで調べてみろと言うことだ。
藍里は、稲垣の好意にありがたく感じて、満悦な笑みを浮かべると、無言で深々と頭を下げて、警察署をでた。
「……頑張るんだよ。藍里ちゃん。」
横目でそんな様子を見ていた稲垣は、徐々に小さくなっていく彼女の背に向かって呟いた。
藍里は、稲垣に教えられたサイト名を検索すると、それはあっさりと引っ掛かった。
(lead………なるほど。フランス語で「繋がる」という意味か。)
ザッと概要を読んだ藍里は、新規登録というボタンを押し込んだ。
『ようこそ!leadへ!』
という文字の下に、ユーザー登録の場面が映りこんだ。
【ユーザー名】
その単語を見た藍里は少し悩んだ挙げ句に本名をもじって、
「もあい」
という名前と入力した。
どうせやり続ける気はないし、捜査のためだから、適当で構わない。
手続きを終わらせ、アプリ画面にはいる。
可愛らしいマスコットの吹き出しには
掲示板、ユーザーを探す、メニュー、利用規約、お問い合わせ、よくある質問
と書かれてタップできるようになっていた。
(ユーザー検索……してみるか。)
ユーザーを探すを迷いなくタップし、藍里は稲垣に教えられた藤原彩弓の名前を入力してみる。
すぐにヒットし、おじさん顔で決して可愛くない犬のキャラクターが現れた。
他にはユーザーが見当たらない。
藤原彩弓のユーザーで間違いないだろう。
選択すると、細かいプロフィールが写し出され、下には『このユーザーを友達登録する』『掲示板を見る。』
と書かれたボタンがあった。
藍里は、掲示板を見る。というボタンをタップする。
いないのに登録しても、返事がないのは目に見えていたからだ。そもそも、必要が無い。
パッと画面が変わったかと思うと、タイムラインのように、ズラリと言葉が並べられていた。
こんなにネタがあるのかと思っていたが、藍里は、ややぁ…と言わんばかりに顔をしかめると、その内容に絶句した。
「……これ、伊集院さんのことだよね?」
最初に目についた投稿に藍里は、呟いた。伊集院 弥生と思わせるような特徴が書かれている投稿。
【4月29日 AM8:09】
中学の頃、同じ部活だったやつに会った。髪が長いブリッコ野郎。
久しぶりに会って声かけたら、拳を顎に当てて
『きゃあ~↑ひさしぶりぃ~!!』
だって、クソキモイ。
ガチで毒入りの紅茶飲ませようかな。
……………………。
ここでは、『私が声をかけたらそうなった』と言う風になっているが、陽菜の言葉を思い出してみると、どうも逆なのではないかと言う気がしてならない。
よく見ると、その人だけではない。
『中学時代の奴ら全員キエロや』
『同級生に頼まれてT●itterフォローしてやったのに、即ブロとかマジ意味わかんないし。だったら最初からフォロー返すなや。』
『先輩に合わせるの大変。』
『あーあー。かつて学級委員だったあのがり勉男を誰かコロしてくんないかな?』
正直、見たくない……見てて嫌な感じしかしない。
「ゲッ!見つけちゃった!
『【12月10日 午前11:59】
中学時代の藍色の髪をしたキモい女に声かけたのに無視された。懐かしくて声かけちゃダメなの?まじ性格悪っ!』
って、あんな言い方されたら無視したくもなるでしょ!?」
全く、どの内容もまるで「自分には短所がありませんよ?こんな仕打ちを受けて可愛そうでしょ?だれか慰めて?」ともとらえられる。
その様子を、カメラで撮影してネットにのせたいくらいである。
けど、よく見てみると、これは明らかに昨日の投稿だ。どうやら、映画を見る前に投稿したらしい。
「ここは、内容は別として、私と会ってることはホントだしなぁ。」
投稿の時間的にも、この時間であっているだろう。あのあと、笠村と別れてから20分くらいしてから席をたったのだから。
とにかく、コミュニティアプリで中学時代の悪口ばかり書いてるのは違いないみたいだ。
これ以上読んだら気分が悪くなるので、藍里はユーザー検索ページに戻った。
次は、武嶋優紀の掲示板を調べてみる。
藤原彩弓とはうって変わって、こっちは
『今からバイトー!』
とか
『ウチのハヤト!』
と言って、猫の写真を乗せている。
「あれ?武嶋さん、あのパンケーキ屋で働いてたんだ!……掲示板を見ると……昨日の出勤は昼から夕方までか……。」
それなら、スレ違うはず。けど、その日は会わなかった。(藍里が気づいていないからかもしれないが。)
どちらにせよ、このパンケーキ屋に聞き込みに行くしかない。
武嶋は、あの日、伊集院さんに会ってる筈だからだ。
「発言次第では、藤原彩弓の容疑も考えるべきだな。」
そんなことをいいながら、藍里は昨日のパンケーキ屋に向かった。
迫害すれば、その報いが………
何らかの形で自分に帰ってくる。
「わたしは悪くないのよ?全ては、あなたの犯した罪………。さぁ。復讐の開幕……………
あなたが私たちにしたことと、
同じことしてあ、げ、る……………♪
うふふふふ………………
アハハハハハハハハハハハハハッ!」
彼女は、古びた卒業アルバムを開いたかと思うと、高らかに笑いながら…………一人の女性の顔写真にカッターを突き刺し………
何度も何度も、その人を殺害するような勢いで……………
その写真に向かって突き刺した。
鬼神………………
今の彼女には正にそれだった…………。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「さっむ……。」
そう呟いて、藍里はコートのファスナーを1番上まで上げると、手を擦り合わせる。
12月中旬。
季節はすっかり冬モードに入り、所々で見かけるイルミネーションや、クリスマスグッズがやたらと目立つ。
空を見上げると、どんよりと灰色の雲が覆っていた。
(あー。そう言えば早いとこはもう雪降るって言ってたな………。)
そんなことを思いながら藍里はトコトコと大学へと向かっていた。
「ねぇ!あなた!!」
突然、横から見知らぬおばさんが声をかけてきたと思うと……。
「サーカスの団長の事件を解決した………ほら!!あの!!名前出てこないけど………そう!!藍色の探偵さんじゃない!?その髪の色!間違いないでしょ!!」
「………。」
コレで5回目。
と、藍里は眉間に皺を寄せた。
サーカス団の事件がニュースで流れた翌日、藍里の名前は更に広がり今日家から出てここまで来るまでに既に4回声をかけられたのだ。
「あらまぁ。可愛らしい探偵さんねぇ。ほんとに髪の毛が藍色だわぁ…!私この色好きだわぁ…!」
女性は、藍里が迷惑がってることもそっちのけで、ぺちゃくちゃと話し出し、ベタベタと髪の毛を触り出す。
「す、すみません!急いでますので!!」
頭を深く下げて彼女の手を振りほどくと、スタコラサッサと逃げるようバスに乗り込んだ。
バスの中が落ち着けるかと言うと、そうでもなく、乗っている乗客何人かがチラチラと藍里を見てボソボソと「女子大生探偵」という声が聞えた。
(お………落ち着かない………。)
藍里は、1人がけの椅子に小さくなるように座る。
「…ねぇ。もしかして、橘さん?」
「…!?」
橘…………それは、藍里が叔母夫婦に育てられていたときの名前…いわば、旧姓。
この苗字を知ってるということは、相手は小学校~高校までの知り合いだ。
振り返ってみると、そこには懐かしい顔があった。
黒い髪の毛を肩の辺りまで伸ばし、毛先は黄色いメッシュが入っている。
小柄な体型……。
彼女は……
「えっと、同じ部活だった……
伊集院 弥生(いじゅういん やよい)さん?」
「そう!覚えててくれたんだね!」
弥生と呼ばれた彼女は、嬉しそうに顔をはにかむと、そう声をあげた。
「橘さん………って、今は森野さんだっけ?」
「うん。かつての本名に戻した。」
弥生の言葉に頷くと、藍里はふと彼女が手ぶらであることに気づいた。
財布はポケットから見えているのだが、バッグが見当たらない。
「……どこか行くの?」
藍里の言葉に、弥生は一瞬迷ったような顔をしたが、直ぐにニコリと微笑み、
「うん!武嶋さんに会うの!」
と答えた。
武嶋 優紀(たけしま ゆうき)。
彼女も藍里や弥生と同じ部活の1人の子だった。
さばさばした子で、文字通りのスポーツ少女だった。
「武嶋さんか…。懐かしいな~……来年成人式だけど参加する?」
「うん!橘さんは?」
「私は…………お金の関係とかで、厳しいかな?独り暮らししてるし……。」
「大変だね……。」
そんな他愛のない話をしていたら、弥生が次のバス停で降りると言って、別れた。
伊集院 弥生と武嶋 優紀。
2人とも、藍里とは仲良く話す方ではあった……が、遊ぶほど仲がいいというわけでもなかった。
そもそもだ。藍里は中学校3年間、同級生から少し距離を空けられていた。
その理由が……先輩からのいじめ……。
中学生は大人のようで子供っぽい年頃。
上下関係がうるさい年頃。
特に、中学の先輩達は少し鼻が高くなるのか、後輩いじめがたびたび見られる。
少なくとも藍里が通っていた中学校はそうだった。
そのターゲットにされる子は大概……
校則違反してる。
生意気。
敬語が使えない。
挨拶しない。
と言うのが多い。
藍里はというと、生まれつき髪の毛が藍色であったがために、タチの悪い先輩達から
「地毛とかゼッテー嘘だし。」
「あれ、絶対染めてるし。」
「黒に戻せよ。」
と、陰口叩かれ、呼び出されたのはしょっちゅうであった。
そのせいでか、同級生達は藍里と関わると自分にも被害が及ぶと思い、距離を空けられていた。
その為、高校や大学の友人が
「中学の頃の先輩で優しくていい人なの~!藍里は!?」
という話をされると、どうにも藍里は困ってしまう。
その為、濁さずにはいられない。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
大学の講義を終えて、香苗とパンケーキを食べに来ていた藍里は、
「夕方からね、環(たまき)先輩に誘われて合コンに行くんだー!環先輩は、中学時代の先輩で、優しくていい人なんだ!今でもたまにお茶とかするし!」
……という話をふられて、本気ものすごく困った。
けど、最近はそういう話をよく聞く…。
中学1年生か2年生辺りの子が、「先輩!」と呼んで仲良さそうに歩いているのを見かけるのだ。
それを見た藍里は直ぐに自分の過去と照らし合わせてしまい、
(私が特殊だったのか?)
と、疑いたくなってしまうのだった。
「……仲良いね。私は、地毛が困難だから、先輩から目ぇつけられっぱなしでいい思い出が全くないんだ……。」
あはは。と作り笑いをする藍里。香苗は目を丸くする。
「マジで?うちの中学でも地毛が茶髪の子いたよ。でも、先輩達は『羨ましい』で済ませてた。その学校が変なんじゃない?」
「そう……かな?」
「そうだよ!!イジメなんて普通にダサいじゃん!!あ!やばっ!ごめん!そろそろ行くね!」
そう言って、香苗は席をたち、走り去ってしまった。それを軽く手を降って見送る藍里は、腕時計に目を落とす。
(……バイトの時間までまだあるな……。小説の続きでも読んでるか…。)
コーヒーを1口口に含み、藍里は読みかけの推理小説の本を開く。
数分くらいたった時だろうか……。
「あれー!?橘 なんとかさんじゃなーい?」
突然、そんな嘲笑うかのような声が聞こえてきて、藍里は背筋を凍らせた。
この声には、聞き覚えがあったのだ。
ゆっくりと振り返る。
そこにいたのは、予想通りの人達がいた。
もう2度と会いたくもない人物達が………。
「やっぱりー!?1人でパンケーキですかー!?さみしー!!」
「探偵さんは大学生になってもボッチなんですねー!てゆか、キモーーい!!」
3人組。彼女達は知っている。藍里や弥生と同じ部活だったからだ。
2人は、中学時代の先輩。
そして、最後の1人は…………同級生。
「一人ぼっちのパンケーキ美味しいですかーー!?」
藤原彩弓(ふじわら あみ)。
この同級生……
藤原 彩弓は、とにかく藍里をけなしていた。
部活のエースだったこともあり、先生や先輩からは気に入られ、後輩も直ぐに自分のもとにおいといた。
その為、先輩とは仲のいい方であった。
3年生になると、部活のロッカーを、藍里の場所を追い出し、藍里には床で着替えさせ、自分は藍里から奪ったロッカーを使った。(要は2つ使った。自分だけ。)
藍里が、後輩から先輩と見られないのはほとんどこいつのせいでもある。
新入生が来ると早々「この人は先輩と見なくていいよー!うちらの先輩から目つけられてるしー!」と、大声で言いふらしたのだ。
とにかく、言い出したらきりがないくらいに、藍里は彼女からひどい仕打ちを受けていた。
(無視無視…………。)
藍里は、コーヒーを啜りながら彼女達から目をそらし、小説の続きを読み始めた。
「シカトー?てか、ほんと生意気ー!なんとか言えよ!」
「っ!」
後ろから先輩に髪を引っ張られ、小説がバサッ!と手から滑り落ちた。
「つーか、お前髪の毛黒にしろよ!」
「…中学時代から地毛だって言ってるでしょ?戻しようがないです。」
「はぁ?反抗すんの?スッゲー生意気!!」
先輩が手をあげる。
思わず目を閉じる藍里……。
「……………?」
いつまでたっても響かない痛み。恐る恐る目を開けてみる。
目の前に広がったのは、グレーのスーツを着た男性。
「随分と騒いでるな。」
彼の声には聞き覚えがあった。ここ最近よく聞くようになった声……。
「はぁ?誰この人?もしかして彼氏ー?」
「言ってろ。それよりお前ら。警察の前で暴行容疑たぁ、いい度胸だ。」
そういった彼は、彼女達の前に警察手帳を見せる。
「……笠村さん……?」
警察手帳をみた彼女達は、顔を真っ青にしてるのがよくわかった。
「警察が、なんで?」
「事件に関して、こいつとここで待ち合わせしてただけだ。けど、その前にお前達から暴行未遂の容疑で少し話を聞こうか?」
警察手帳をしまった笠村。
立場が怪しくなった3人……すると、藤原が、
「でもでもー!私達これからみたい映画あるのでー、見れなくなっちゃいますー!」
「そ、そうです!だ、だから急がないと!」
「ば、バイバイ!橘さん!!」
そう言って彼女達はそそくさと立ち去った。
目だけで彼女達を追った笠村は、振り返り藍里の小説を拾い上げる。
「…大丈夫だったか?」
「はい。ありがとうございます。」
藍里は、助け船を出してくれた笠村に感謝して、小説を受け取った。
「お前も言い返せよな?言われたい放題じゃなくてよ。」
「…無理ですよ。あれ、中学時代の先輩と同級生なんですけどね?こんな髪してるから、仕方ないですよ。」
藍里は、苦笑いを浮かべながら、藍色の髪をギュッと握った。
父親譲りの藍色の髪。
それのせいで目をつけられてしまった。
「そんなの、中学の話だろ?今は関係ねぇ。」
笠村は、フンッと鼻をならす。目をぱちくりさせる藍里。
「俺は、嫌いじゃねぇぞ?お前のその髪……。」
と、目をそらし、頭を撫でながら答えた。
髪を誉められた。
藍里にとってとても嬉しいことで、顔を綻ばせると
「ありがとうございます…!」
と、答えた。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
夕方。
藤原は、2人の先輩と別れてからまっすぐに帰路へとついていた。
先輩たちと遊ぶのは楽しかったし、申し分ない。
……が、1つだけ不満があるとしたら、藍里の件だ。
「あーあー、橘さんを久しぶりにからかってあげようとしたのに、最悪!」
彼女にとって、嫌われている人の悪口や、あることないことを言いふらすのは娯楽のひとつでもあった。
中学からそうだった。
他人を蹴落とすことで、優越感に浸る。
周りが自分と同じようにその人を敵に回すことで、1人でないと安心する。
が、しかし、今回はまさか警察が来てしまうなんて思っても見なかった。
刑事からうけた、あの鋭い目付き……あれが、どうにも彼女にとって気に入らなかったのだ。
「まぁ。いいや。帰ってドラマ見よ。」
そう、自分に言い聞かせるように呟くと、藤原は足軽に家へと向かった。
今まで録画したまま溜めているドラマを今日は1話から一気に見るつもりだったのだ。
「…?」
ところが、家まであと数百メートルというところで、藤原は足を止めた。
いつもと違う光景に、本当にここが自分の家なのかと疑いたくなったのだ。
「…あと赤いパトランプ…パトカー?」
今日はやたらと警察を見かけるなと思いながら、藤原は怪訝そうな顔を浮かべて、ゆっくりとそこに近づいていった。
「あら………藤原さんちの…。」
ボソリと聞こえた、聞き覚えのある声。
それは、いつも果物をおすそわけしてくれるお隣さんだった。
いつもニコニコしてくれる人が、今では自分を汚い物を見るかのような……冷たい目で見ていた………。
その人だけでなく、他の野次馬たちも、自分をみてヒソヒソと囁いている。
「……人殺し…。」
ボソッとだが、確かに聞こえた不穏な言葉。藤原は、我慢ができなくなってバッと振り返り、その人を睨み付ける。
「おー、怖っ。」
「ほんと、人って影で何してるかわからないわよねー……。」
「アリバイは完璧に見せて、何食わぬ顔して帰ってきて………。」
「本当に最近の若い子は恐ろしいわ~…。」
なにがなんだかわからない。
いったい何があったのか…。
全ての真相は、家の中に。
藤原は、野次馬たちの間をすり抜けて家の中へと向かった。
玄関を乱暴に開けると、驚いた顔の警察官と、階段に腰かけて頭を抱えている妹の結希(ゆき)の姿。
そのそばで慰めている母親の姿。
「………彩弓……。」
「…彼女が、彩弓さん?」
警察官が訪ねると、ゆっくりとうなずく母親。
よく見ると、母親も野次馬達と同じように、汚いものを見るような目でこちらを見ている。
「………なに?」
藤原が首を傾げていると、警察官が険しい顔をして自分の方を向く。
「…藤原彩弓さん。先程まで何を?」
「…遊んでましたけど?先輩達と。」
「……その前は?」
「…家にいましたけど?」
藤原の言葉をメモした警察官は、ゆっくりと口を開く。
その言葉に、藤原は目を真ん丸にして見開く………。
彼女にできるのは、ただそれだけだった………。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
翌日、大学の食堂で……。
「藤原彩弓、陽菜も嫌い!」
と、ピンクのロリータを着た陽菜が、眉間にシワを寄せて噛み付くように言い放った。
藍里が、昨日の昼に受けた仕打ちを話したら、陽菜がそう言い出したのだ。
「アイツさ!小学校の時の修学旅行の時にね、自由行動一緒にまわろ?って誘われたの!陽菜、その時違う友達と既に約束してたから
聞いてみるから待っててね
って言ったの!そしたらあいつ!!周りに
『陽菜に一緒に回ろ?って言われたけどどうしよう?』
って、言いふらしたんだよ!?陽菜、そんなこと言ってねーし!!」
声を荒げてテーブルをバンッ!と叩く陽菜。お陰で何人かの生徒がこちらを振り向いたが、すぐに気にしなくなった。
「…陽菜がそこまで言うって……ある意味すごいね。」
藍里がストローでアイスコーヒーを飲みながらそう呟く。
「中学時代、お前アイツにいろいろやられてたよな?」
哲也に思い出したくもないことを言われて、藍里は少しムッとしたが表には出さず
「…まぁね…。」
と濁した。
「てかさー、いい加減子供っぽいことしないで欲しいよね!藍ちゃんかわいそう!」
陽菜が、唇を尖らせたと思うと、藍里の頭をヨシヨシと言わんばかりに撫でた。
陽菜の優しさに感謝して、藍里は微笑むと
「ありがとね。でも、大丈夫だから。」
と答えた。
「大丈夫!いざとなったら、私とテッちゃん達で守るから!!」
「俺らも!?」
陽菜の言葉に、聖人がブッと水を吹き出して声を出した。
「いつだって守ってきたでしょ!?いざとなったら!」
「そりゃあ、探偵の仕事で危なくなったら助けてたけど……。」
「でしょ!?」
陽菜の言葉に、苦笑いを浮かべる輝に対し、陽菜は胸を張った。
その様子に、思わず吹き出す藍里は、
心のなかで彼らに感謝した。
中学時代は最低だった。
でも、もう過去の話。
今は、こんな自分に着いてきてくれる彼らに……
感謝の気持ちで一杯だった……。
「ねぇ。これ、うちの大学の近くじゃない?」
「ホントだ。なに?殺人?コワー…。」
そんな生徒の言葉が聞こえ、藍里は彼女たちが見ているテレビに視線を写す。
殺人事件が起きたらしく、テレビには古風を感じる木造の一軒家が映し出された。
「友達を家に呼び出して殺人……最近多いな。そーゆー友人を殺すって事件…。」
「ひええ…。」
聖人の言葉に、陽菜も声を漏らす。
藍里は、なにも答えずにただそのテレビの画面を見ていた。
『昨日未明、木造一軒家のリビングでこの家にすむ次女が「知らない人が死んでる」と警察に通報しました。
死亡したのは
伊集院弥生さん。20歳。
司法解剖の結果、紅茶に入れられた青酸カリを飲んだことによる中毒死と判明。」
「……伊集院……さん………?」
藍里は、そのテレビ画面をみて、初めて反応を示した…。
彼女は、藍里の同じ中学で昨日、バスのなかで再会したばかりの伊集院弥生だった…。
『調べによると、伊集院さんは「中学時代の友人の家に遊びに行く」と家族に言ったきり家に帰らなかったとのことです。
警察は、この家にすむ長女で、学生時代同じ部活だったと言う、
藤原彩弓さんを、殺人の容疑で逮捕しました。
藤原さんは、「やっていない。」と言って容疑を否認しています。』
「藤原彩弓…!?あいつ、とうとう殺人まで…!?」
陽菜が、信じられないとでも言うように声をあげる。
「同じ部活ってことは、藍里も知ってるんじゃねぇのか?弥生とか言うやつ。」
「………知ってるもなにも、昨日の朝に再会したばっかりだよ…!」
哲也の言葉に藍里は絶望にも似た声を出し、それにたいして皆が
「はぁっ!?」
「マジか!!」
「うそー!?」
「そうだったのか!?」
とそれぞれ同時に声をあげて目を丸くする。
藍里は、そんな彼らにはお構いなしに、そのテレビのニュースを、じっと見つめた………。
【事件ファイル】
被害者:伊集院 弥生
死因:青酸カリ入りの紅茶を飲んだことによる中毒死。
それ以外の外傷なし。
備考:
・友人の家に遊びに行くと言って家を出た。
・容疑者である藤原彩弓とは、中学時代からの同級生で、同じ部活。
・それ以外の友人とは会った形跡はなく、藤原彩弓と何らかのトラブルがあったのではないかとのこと。
・藤原彩弓は、先輩と遊んでたと言って容疑を否認。
後の調査で、藤原彩弓はとあるコミュニティサイトで、いろんな中学時代の同級生たちの悪口を書き込んでいたことがわかった。その中に、伊集院弥生と思われる人物も出てきていた。
そこで知り合った仲のいいユーザーに「殺したい」「マジでやっちまうか。」などといったようだ。
藤原彩弓はコミュニティサイトをやってることは認めてるが、愚痴については書いてないと言う。
(………藤原さんの家………で、他の友人には会っていない?)
眉間にシワを寄せた藍里は、画面に釘付けになった。
自分が知りうる情報とは少し食い違うのだ。
まず、あのとき弥生は間違いなく藍里に「武嶋にあう」と言った。そのため、少なくとも武嶋と会っている筈なのだが、実際は藤原彩弓の家で遺体となっている。しかも、誰ともあっていない様子が見られると来た。藍里は、我慢ができなくなり、置かれている鞄をガッと掴むと、食堂を飛び出した。名前を呼んで目を真ん丸にしてる陽菜にもお構いなしに……。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「それは、考えられないよ。藍里ちゃん。」
警察署についた藍里は、ことの成り行きと、弥生が自分に言ったことを訴えたが、あっさりと稲垣に返されてしまった。
だが、藍里もここであっさりとは引き下がらなかった。
「ですが、私はその時確かに伊集院さんと会って、本人の口から聞いたんです!」
「とは言ってもねぇ。武嶋にも事情聴取したんだが、彼女はその日、コミュニティサイトで知り合った人と会っていたと言うんだ。相手の人も、それを証明してる。伊集院弥生とは会っていないし、約束もしてないそうなんだ。」
困った顔をして、稲垣は頭を掻きながら答えた。
そこまで言われたらなにも言えない。
何度も事件解決に知恵を借りたとしても、今回ばっかりは、藍里のその言葉を聞いては貰えそうになかった……。
「そう言えば、君も伊集院さんと同じ部活だったんだね。あと、藤原彩弓とも。まぁ。同級生がこんな形になってしまうのはショックだろうけど、現実は現実さ。」
申し訳なさそうに声をかける稲垣、しかし、藍里はなにも言わずただ下を向くしかできなかった。
「そうだ。実はそのコミュニティサイト、僕もやっててね。藍里ちゃんもやって欲しいんだ。事件に関してやり取りできるかなと思ってね。これ。やりなよ。」
そう言った稲垣は、手帳にサラサラっと何かを記入すると、藍里に手渡す。怪訝そうな顔をして受けとると、藍里はその文面に目を落とす。
サイト名/lead
ユーザー名/あみあみ(@ amam05)
チェケラ(@ iitnk036)
あみあみという名でよくわからない犬のアイコンが藤原彩弓のユーザー、
チェケラという名でバラの写真をアイコンにしてるのが、武嶋のユーザーだよ。
そんな風に書かれていたメモに、藍里は
顔をバッとあげる。
稲垣は、すでにその場から離れており、上司と何やら話していた。
察するに……気のすむまで調べてみろと言うことだ。
藍里は、稲垣の好意にありがたく感じて、満悦な笑みを浮かべると、無言で深々と頭を下げて、警察署をでた。
「……頑張るんだよ。藍里ちゃん。」
横目でそんな様子を見ていた稲垣は、徐々に小さくなっていく彼女の背に向かって呟いた。
藍里は、稲垣に教えられたサイト名を検索すると、それはあっさりと引っ掛かった。
(lead………なるほど。フランス語で「繋がる」という意味か。)
ザッと概要を読んだ藍里は、新規登録というボタンを押し込んだ。
『ようこそ!leadへ!』
という文字の下に、ユーザー登録の場面が映りこんだ。
【ユーザー名】
その単語を見た藍里は少し悩んだ挙げ句に本名をもじって、
「もあい」
という名前と入力した。
どうせやり続ける気はないし、捜査のためだから、適当で構わない。
手続きを終わらせ、アプリ画面にはいる。
可愛らしいマスコットの吹き出しには
掲示板、ユーザーを探す、メニュー、利用規約、お問い合わせ、よくある質問
と書かれてタップできるようになっていた。
(ユーザー検索……してみるか。)
ユーザーを探すを迷いなくタップし、藍里は稲垣に教えられた藤原彩弓の名前を入力してみる。
すぐにヒットし、おじさん顔で決して可愛くない犬のキャラクターが現れた。
他にはユーザーが見当たらない。
藤原彩弓のユーザーで間違いないだろう。
選択すると、細かいプロフィールが写し出され、下には『このユーザーを友達登録する』『掲示板を見る。』
と書かれたボタンがあった。
藍里は、掲示板を見る。というボタンをタップする。
いないのに登録しても、返事がないのは目に見えていたからだ。そもそも、必要が無い。
パッと画面が変わったかと思うと、タイムラインのように、ズラリと言葉が並べられていた。
こんなにネタがあるのかと思っていたが、藍里は、ややぁ…と言わんばかりに顔をしかめると、その内容に絶句した。
「……これ、伊集院さんのことだよね?」
最初に目についた投稿に藍里は、呟いた。伊集院 弥生と思わせるような特徴が書かれている投稿。
【4月29日 AM8:09】
中学の頃、同じ部活だったやつに会った。髪が長いブリッコ野郎。
久しぶりに会って声かけたら、拳を顎に当てて
『きゃあ~↑ひさしぶりぃ~!!』
だって、クソキモイ。
ガチで毒入りの紅茶飲ませようかな。
……………………。
ここでは、『私が声をかけたらそうなった』と言う風になっているが、陽菜の言葉を思い出してみると、どうも逆なのではないかと言う気がしてならない。
よく見ると、その人だけではない。
『中学時代の奴ら全員キエロや』
『同級生に頼まれてT●itterフォローしてやったのに、即ブロとかマジ意味わかんないし。だったら最初からフォロー返すなや。』
『先輩に合わせるの大変。』
『あーあー。かつて学級委員だったあのがり勉男を誰かコロしてくんないかな?』
正直、見たくない……見てて嫌な感じしかしない。
「ゲッ!見つけちゃった!
『【12月10日 午前11:59】
中学時代の藍色の髪をしたキモい女に声かけたのに無視された。懐かしくて声かけちゃダメなの?まじ性格悪っ!』
って、あんな言い方されたら無視したくもなるでしょ!?」
全く、どの内容もまるで「自分には短所がありませんよ?こんな仕打ちを受けて可愛そうでしょ?だれか慰めて?」ともとらえられる。
その様子を、カメラで撮影してネットにのせたいくらいである。
けど、よく見てみると、これは明らかに昨日の投稿だ。どうやら、映画を見る前に投稿したらしい。
「ここは、内容は別として、私と会ってることはホントだしなぁ。」
投稿の時間的にも、この時間であっているだろう。あのあと、笠村と別れてから20分くらいしてから席をたったのだから。
とにかく、コミュニティアプリで中学時代の悪口ばかり書いてるのは違いないみたいだ。
これ以上読んだら気分が悪くなるので、藍里はユーザー検索ページに戻った。
次は、武嶋優紀の掲示板を調べてみる。
藤原彩弓とはうって変わって、こっちは
『今からバイトー!』
とか
『ウチのハヤト!』
と言って、猫の写真を乗せている。
「あれ?武嶋さん、あのパンケーキ屋で働いてたんだ!……掲示板を見ると……昨日の出勤は昼から夕方までか……。」
それなら、スレ違うはず。けど、その日は会わなかった。(藍里が気づいていないからかもしれないが。)
どちらにせよ、このパンケーキ屋に聞き込みに行くしかない。
武嶋は、あの日、伊集院さんに会ってる筈だからだ。
「発言次第では、藤原彩弓の容疑も考えるべきだな。」
そんなことをいいながら、藍里は昨日のパンケーキ屋に向かった。
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