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第23話 写真に埋もれた死体
第23話 写真に埋もれた死体
しおりを挟む「今、世間で有名な藍色の探偵が通っている大学と知ったら、うちの評判も上がるし宣伝にもなるから写真を撮ってもらってくれ。」
大学の教授たちも同じ考えだったらしく、生徒(藍里)が読書をしているところを手始めにとることになった。
「いいわー!いいよ!そんな感じ!んで、顎少し引いて!!」
めぐみが、図書室で本を読んでいるポーズを撮っている藍里にそう指示を出す。
ある意味、やらせである。
「めぐみさん。そんなわざとらしい写真じゃなくて、もっと自然な方がいいかと……。」
眼鏡をかけた女性が、オドオドとしながらそう言うと、めぐみはギロリと睨みつけて
「っさいわね!!黙ってなさいよ!アシスタントのくせに!いいからこっち!もっと光り当てて!!」
と怒鳴り散らした。
女性は体をビクリと震わせながら「はい。」と答えてレフ板を傾けた。
「はい!OK!やっぱり!いいわね!本を読む女子大生探偵!!絵になるわ~!」
めぐみが今まで撮った写真を、うっとりと眺めてそう呟くと、
「あ。もういいわよー。ありがとねー。」
と言い残して、片手をヒラリと上げて立ち去ってしまった。
「横野さん。大丈夫?」
別の声に振り返ると、そこに居たのは先程めぐみに怒鳴られたメガネ女性と、麻美子がいた。
麻美子は、胸の前で手をもじもじと手を動かしている女性を心配そうに声をかけていた。
「平気です。ごめんなさい。私がのろまなのに、めぐみさんに意見したから……。」
「横野さんは間違ってないよ!あの人が自分勝手なだけ!」
麻美子は、俯いている横野にそう言い聞かせるが、横野は首を横に振る。
「いいの。めぐみさんの実力は本物だし。だって、入賞が難しいって言われている、あの有名なコンテストに、最優秀賞をとったぐらいだし……。」
その言葉に、めぐみは難しい顔をしながらもため息をついて「そう……だね。」とだけ呟いた。
「コンテスト…?」
「写真家の間ではかなり有名なコンテストがあるんだけど、佳作賞すらなかなか取れないって言われているくらいなんだ。」
藍里のつぶやきが聞こえたのか、近くにいた真己人が説明をしてくれた。
「へぇ。そんなコンテストで、最優秀賞を……。」
「そんなことよりさ!!」
藍里の言葉を遮るように真己人は声を上げると、取り繕うかのように口ごもらせる。
「えーっと。あの……ほら!ちょっと1枚撮らせて欲しいなと思って!カメラマンの血が騒いだっつーか……!」
「なぁによ!真己人!やっぱり騒ぐんじゃないの!カメラマンの血が!!」
真己人の言葉に麻美子が、バシバシ背中を叩きながら答えた。鬱陶しそうに麻美子を見た真己人だったがすぐに藍里の方に向きなおった。
「ちょっと来てくれ。場所を変えたい。」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
真己人に連れられてやってきたのは大学の中でも大きな木であった。
普段はよくここのベンチで大学生達が待ち合わせに使われるのである。
真己人は、藍里にカメラを向けると、木に寄りかかっている藍里にむかって角度を変えているが、いまいち納得が出来ないのか、『うーん。』と唸ると、鞄からペットボトルを取りだした。
「森野さん。今からこのペットボトルから目を離すな!」
と、指示を出すと、近くにいた麻美子にペットボトルを渡す。
麻美子は、慣れた手つきでそれを藍里の前まで行くと、ペットボトルを高く掲げた。
それを目線で追う藍里。
そこでようやく、真己人がカメラのシャッターを何回かきる。
「OK!いいぞ。いい写真が撮れた。」
と言ってカメラをケースに戻した。
撮影に少し疲れたのか、藍里が木によりかかったまま息をつく。
すると、不意にしたの方から声が聞こえてきて、そちらに視線を移す。
「え…?」
そこに居たのは少し年配の男と、その男の腕に絡みついている めぐみの姿で合った。
男は、少しデレデレしているような表情を浮かべ、めぐみも、とても親しげにその人と話をしていた。
(しりあい……?)
そう思ったが、藍里はすぐにその2人から目線を外し、その場から立ち去った。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
次の日。
藍里が学校のパンフレットに載るという話は大学内であっという間に広がり、何人かの生徒がジロジロと藍里の事を見ていた。
「あら。いいじゃないの。人気者は辛いわねぇ。」
和水(なごみ)先生は、クスクスと笑いながらそう答えた。
和水教授のゼミの為に、哲也や輝、聖人と陽菜も集まっていた。
「ま。確かに大学側からすりゃいい宣伝だよな。」
哲也が読んでいた漫画から目を離すと、大きく伸びをして答えた。
「んで?そのパンフとやらは?」
腕立て伏せを終えた聖人は、軽く伸びをしてからタオルで汗を拭いながら尋ねた。
「今日その写真を渡すから、出来上がるのはもう少し先じゃないかな?」
雑誌から目を離した陽菜が、顎に手をやりながら答えた。
「そうね。今頃……。」
そこまで言いかけた和水だったが、突然のノックの音でその言葉はぷっつりと切れた。『誰かしら? 』と呟いて扉の方へ向かった和水は、ドアノブを回してソっとドアを開けると、目の前の人物に目をぱちくりさせた。
「あら…!?学園長…!?」
その言葉に、和水の教授室にいた藍里達にも緊張が走った……。
哲也は、慌てて読んでいた漫画を机の下に隠し、陽菜も、雑誌を隠すと手ぐしで髪の毛を整えだした。
「…和水教授。森野藍里さんはいるかな?」
「ええ。いますが……?」
「呼んでもらえるかな?」
(やべー!!来たー!!ご指名入っちゃいましたァあ!!!)
と、その会話を耳にした本人がそう心の中で叫んだ。
「愛莉ちゃん。学園長が…!」
その言葉に無言で頷いた藍里は、文字通り、固まりながら出入口の方へと向かった。
「コンニチワ。学園長……。」
「森野藍里さん。今すぐに、蓑原宿に向かって欲しい。」
「蓑原宿……?」
「宿泊施設だ。君にお願いしたいことがある。」
「なんでしょう…?」
カチンコチンに固まった状態で学園長と会話をしていた藍里だったが、次の言葉で色んな意味で緊張が吹き飛ぶのであった…………。
「昨日のカメラマンの…小野原 めぐみ さんが殺された………!」
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