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5話
しおりを挟む私の急な婚約破棄に殿下は目を大きく見開いている。
今思ったんだけど婚約破棄されたいのに、なんでそこそこ仲が良くなってしまったんだろう。
それもこれもスカーレットが殿下を追いかけ回すせいだよ。
そう考えているといつの間にか、はぁ...とため息をついてしまった。
「......ナナリー嬢、俺は何か気分を害することをしてしまったのか?」
そう言った殿下はなぜか凄く悲しそうな顔をしている。
なんで?
だって、私達は愛しあっていた訳ではないですし、殿下になら私以外にも相応しい令嬢は山ほどいるでしょ?
悲しむ理由がわからないって。
まぁ、本人に向かってそんなことは言えないけどね。
ということで
「スカーレットは私の物を欲しがる子なんです。私のものは、なんでも自分のものだと勘違いをしているみたいで......だから、私の婚約者である殿下を私から奪い取りたいのでしょう」
私はあえて悲しそうに目を伏せながらそう言った。
あ、間違いは言ってないからね!
本当に幼少期から私の人形もドレスもアクセサリーも、似合う似合わない関係なしに奪っていったのよ。
それで、自分で散々着たり遊んだりしてボロボロになって返ってくるのは日常茶飯事。
お父様もお母様も注意をすれば泣き叫んで悪者扱いしてくるスカーレットに呆れていたっけ。
「私と婚約破棄すれば、多分スカーレットの行為はおさまると思うのです」
私の話を唖然として聞いている殿下に、そう言って頭を下げた。
ここまで言われたら断れるわけがないよね。
しかも、理由が私の浮気、とかそういうのじゃなくて殿下の為なんだもの。
殿下も私も、どちらの醜聞にもならない。
ただ、スカーレットの評判はまたガタ落ちするだろうけどね。
頭を下げたまま殿下にバレないようにニヤッと笑ってしまった。
あれ?なんか悪役みたいじゃない?
頭を下げてどれくらい待っただろうか。
思った以上に長い時間がたった後
「ナナリー嬢......俺の為に...」
とやっと殿下が言葉を発した。
顔を上げると殿下はなんだか泣きそうな顔をして私を見ていた。
いや、だからなんで?
そして、
「............婚約破棄の件は少し待ってくれ。父上にも相談がしたい」
と言って殿下が顔を背けたので、わかりました、とだけ返事をした。
私もお父様に報告しなければいけないからね。
殿下の言う通り、私達の間で勝手に決めるのは得策ではないか。
出来ることなら一刻も早く婚約破棄して舞台から降りたかったけど仕方ない。
はぁ......ということはもう少しスカーレットに関わらなきゃなのか。
面倒くさいなぁ......。
この時私は気付いていなかった。
殿下は思っていた以上に私のことを好いていてくれたことを。
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