(完結)逆行令嬢の婚約回避

あかる

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婚約破棄、そして死へ

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    今日でこのような不快な日々も終わるのですわね…

    待ちに待った卒業式。後に祝賀会も開かれますが、学生としての立場は終わります。
    本来なら婚約者であるアベル殿下のエスコートを受けるはずですが、今日もアージェ嬢のお側にいるのですね。

    別に嫉妬心はありません。完全な政略婚約ですから。
    正妃様のお子様である第一王子殿下が数年前に立太子され、丁度年齢的にも釣り合っていた公爵令嬢と、もうすぐ結婚予定で、兄弟のいないわたくしが第二王子と婚約したのです。

    アージェ嬢は男爵令嬢。アベル殿下もいつかは目が覚めて、わたくしの元に戻ってくると本気で信じていました。

    ですが…

「スカーレット!俺はお前との婚約を破棄する!」

    これからパーティーが始まろうとしていたその時です。
    アベル殿下がアージェ嬢の腰に手を回し、そう宣言しました。

「何故ですか?殿下は将来ガゼル領の…」
「うるさい!その予定はないっ!俺は王になる男だ。そして王妃はアージェ。お前は将来の王妃に対して身分を傘に嫌がらせをし、脅迫し、あまつさえ暴力を振るったそうだな。そんな女は俺の婚約者として相応しくないし、王妃など以ての他だ」

    はぁ…何言ってるんだろう、この方は。もうエルネスト様が王位を継がれる事は確定なのに。

「お前は王妃に害なす存在として、国外追放だ!」

「待って下さい。証拠はございますの?それにお父様もお認めになるはずありませんわ!」

「うるさい!アージェが嘘をついたというのか!不敬罪も追加してやる!せめてもの情けで死刑だけは許してやろうと思ったが、死刑の方が良いか?」

「事実を確認しもせず、あまりにも横暴ですわ!ならせめて、陛下とお話をさせて下さいませ!」

「ならん!罪人のお前に陛下が会って下さると思うか!それにお前も知っているだろう。陛下はご病気だ」

「ならばお父様に…」

「黙れ!おい、こいつを牢屋に拘束しろ!」

    そしてわたくしは、何の抵抗も出来ないまま拘束され、連れて行かれました。
    その瞬間、アージェ嬢がいつもの天真爛漫な表情から一変して、悪意ある笑みを浮かべたのです…わたくしは、嵌められたのだと気付きました。

    連れて来られたのは貴族牢ではなく、一般牢。しかも拘束も解かれずに乱暴に押し込まれ、身の危険を感じて必死にお父様に会わせてくれるよう、頼みました。

    訴えは叶わず、驚いた事に何の審議もされずに古びた馬車に押し込まれ、国境に…

    突然国境近くの山中で引き摺り下ろされ、ナイフで刺され、放置された…このままでは魔物の餌食にされる!
    しかし、麻痺毒でも仕込んであったのか、ろくに動けずにいた所、魔物の気配が…どのみち、この傷では助からなかったでしょうが。

    わたくしの意識は、そこで途絶えました。
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