私が聖女でした。〜侍女扱いされた本物の聖女がハッピーエンドを迎える話〜

井上 佳

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第2話

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 深夜の王立魔導研究院は、静まり返っている。
 だが、俺の研究室だけは例外だ。

「……やはり、おかしい」

 手元の測定器が示すデータを、俺は何度も見直していた。

 聖女リリアーナの聖力波形——規則正しすぎる。まるで機械が生み出したかのような、完璧なパターン。
 人の心は揺らぐものだ。感情が動けば、聖力の波形も変動する。それが自然だ。
 だが、彼女の波形には、そうした"生きた揺らぎ"がない。

「魔道具……か?」

 古代文献に記されていた、聖力増幅装置。
 実物を見たことはないが、特徴は一致する。

 コーヒーを一口飲む。冷めきっていて、苦い。

「もう一つ、気になるデータがある」

 別のファイルを開く。
 セレスティア・リュミエール——リリアーナの侍女として連れてこられた娘。
 公式の測定では、聖力値は「測定不能」と記録されていた。
 だが、俺が独自に開発した精密測定器で遠隔から計測したところ——

「8700。しかも純度99.9%……」

 前代未聞の数値だ。
 通常の測定器が反応しなかったのは、彼女の聖力があまりにも純粋すぎて、波長が安定しすぎていたからだろう。

 透明すぎる水は、光を屈折させない。それと同じ原理だ。

「面白い」

 俺は立ち上がり、白衣の袖で測定器を拭った。

 真実を知りたい。
 リリアーナの"奇跡"は本当に聖力なのか。
 セレスティアの力は、なぜ隠されているのか。

「次の祈祷式に、潜り込んでみるか」

 面倒だが、真実を見過ごすわけにはいかない。
 窓の外では、王都の灯りがまばらに光っている。
 この国が崇める聖女が、もし偽物だとしたら——

「大問題だな」

 それでも、俺は真実を追う。
 それが学者の本能だから。
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