2 / 10
第2話
しおりを挟む
深夜の王立魔導研究院は、静まり返っている。
だが、俺の研究室だけは例外だ。
「……やはり、おかしい」
手元の測定器が示すデータを、俺は何度も見直していた。
聖女リリアーナの聖力波形——規則正しすぎる。まるで機械が生み出したかのような、完璧なパターン。
人の心は揺らぐものだ。感情が動けば、聖力の波形も変動する。それが自然だ。
だが、彼女の波形には、そうした"生きた揺らぎ"がない。
「魔道具……か?」
古代文献に記されていた、聖力増幅装置。
実物を見たことはないが、特徴は一致する。
コーヒーを一口飲む。冷めきっていて、苦い。
「もう一つ、気になるデータがある」
別のファイルを開く。
セレスティア・リュミエール——リリアーナの侍女として連れてこられた娘。
公式の測定では、聖力値は「測定不能」と記録されていた。
だが、俺が独自に開発した精密測定器で遠隔から計測したところ——
「8700。しかも純度99.9%……」
前代未聞の数値だ。
通常の測定器が反応しなかったのは、彼女の聖力があまりにも純粋すぎて、波長が安定しすぎていたからだろう。
透明すぎる水は、光を屈折させない。それと同じ原理だ。
「面白い」
俺は立ち上がり、白衣の袖で測定器を拭った。
真実を知りたい。
リリアーナの"奇跡"は本当に聖力なのか。
セレスティアの力は、なぜ隠されているのか。
「次の祈祷式に、潜り込んでみるか」
面倒だが、真実を見過ごすわけにはいかない。
窓の外では、王都の灯りがまばらに光っている。
この国が崇める聖女が、もし偽物だとしたら——
「大問題だな」
それでも、俺は真実を追う。
それが学者の本能だから。
だが、俺の研究室だけは例外だ。
「……やはり、おかしい」
手元の測定器が示すデータを、俺は何度も見直していた。
聖女リリアーナの聖力波形——規則正しすぎる。まるで機械が生み出したかのような、完璧なパターン。
人の心は揺らぐものだ。感情が動けば、聖力の波形も変動する。それが自然だ。
だが、彼女の波形には、そうした"生きた揺らぎ"がない。
「魔道具……か?」
古代文献に記されていた、聖力増幅装置。
実物を見たことはないが、特徴は一致する。
コーヒーを一口飲む。冷めきっていて、苦い。
「もう一つ、気になるデータがある」
別のファイルを開く。
セレスティア・リュミエール——リリアーナの侍女として連れてこられた娘。
公式の測定では、聖力値は「測定不能」と記録されていた。
だが、俺が独自に開発した精密測定器で遠隔から計測したところ——
「8700。しかも純度99.9%……」
前代未聞の数値だ。
通常の測定器が反応しなかったのは、彼女の聖力があまりにも純粋すぎて、波長が安定しすぎていたからだろう。
透明すぎる水は、光を屈折させない。それと同じ原理だ。
「面白い」
俺は立ち上がり、白衣の袖で測定器を拭った。
真実を知りたい。
リリアーナの"奇跡"は本当に聖力なのか。
セレスティアの力は、なぜ隠されているのか。
「次の祈祷式に、潜り込んでみるか」
面倒だが、真実を見過ごすわけにはいかない。
窓の外では、王都の灯りがまばらに光っている。
この国が崇める聖女が、もし偽物だとしたら——
「大問題だな」
それでも、俺は真実を追う。
それが学者の本能だから。
58
あなたにおすすめの小説
存在感のない聖女が姿を消した後 [完]
風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは
永く仕えた国を捨てた。
何故って?
それは新たに現れた聖女が
ヒロインだったから。
ディアターナは
いつの日からか新聖女と比べられ
人々の心が離れていった事を悟った。
もう私の役目は終わったわ…
神託を受けたディアターナは
手紙を残して消えた。
残された国は天災に見舞われ
てしまった。
しかし聖女は戻る事はなかった。
ディアターナは西帝国にて
初代聖女のコリーアンナに出会い
運命を切り開いて
自分自身の幸せをみつけるのだった。
偽物と断罪された令嬢が精霊に溺愛されていたら
影茸
恋愛
公爵令嬢マレシアは偽聖女として、一方的に断罪された。
あらゆる罪を着せられ、一切の弁明も許されずに。
けれど、断罪したもの達は知らない。
彼女は偽物であれ、無力ではなく。
──彼女こそ真の聖女と、多くのものが認めていたことを。
(書きたいネタが出てきてしまったゆえの、衝動的短編です)
(少しだけタイトル変えました)
「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます
七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。
「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」
そう言われて、ミュゼは城を追い出された。
しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。
そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……
王妃ですが都からの追放を言い渡されたので、田舎暮らしを楽しみます!
藤野ひま
ファンタジー
わたくし王妃の身でありながら、夫から婚姻破棄と王都から出て行く事を言い渡されました。
初めての田舎暮らしは……楽しいのですが?!
夫や、かの女性は王城でお元気かしら?
わたくしは元気にしておりますので、ご心配御無用です!
〔『仮面の王と風吹く国の姫君』の続編となります。できるだけこちらだけでわかるようにしています。が、気になったら前作にも立ち寄っていただけると嬉しいです〕〔ただ、ネタバレ的要素がありますのでご了承ください〕
ゴースト聖女は今日までです〜お父様お義母さま、そして偽聖女の妹様、さようなら。私は魔神の妻になります〜
嘉神かろ
恋愛
魔神を封じる一族の娘として幸せに暮していたアリシアの生活は、母が死に、継母が妹を産んだことで一変する。
妹は聖女と呼ばれ、もてはやされる一方で、アリシアは周囲に気付かれないよう、妹の影となって魔神の眷属を屠りつづける。
これから先も続くと思われたこの、妹に功績を譲る生活は、魔神の封印を補強する封魔の神儀をきっかけに思いもよらなかった方へ動き出す。
神託を聞けた姉が聖女に選ばれました。私、女神様自体を見ることが出来るんですけど… (21話完結 作成済み)
京月
恋愛
両親がいない私達姉妹。
生きていくために身を粉にして働く妹マリン。
家事を全て妹の私に押し付けて、村の男の子たちと遊ぶ姉シーナ。
ある日、ゼラス教の大司祭様が我が家を訪ねてきて神託が聞けるかと質問してきた。
姉「あ、私聞けた!これから雨が降るって!!」
司祭「雨が降ってきた……!間違いない!彼女こそが聖女だ!!」
妹「…(このふわふわ浮いている女性誰だろう?)」
※本日を持ちまして完結とさせていただきます。
更新が出来ない日があったり、時間が不定期など様々なご迷惑をおかけいたしましたが、この作品を読んでくださった皆様には感謝しかございません。
ありがとうございました。
強制力がなくなった世界に残されたものは
りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った
令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達
世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか
その世界を狂わせたものは
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる