私が聖女でした。〜侍女扱いされた本物の聖女がハッピーエンドを迎える話〜

井上 佳

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第3話

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 祈祷式は、完璧だった。

「民よ、私の祝福を受けなさい」

 両手を天に向けると、眩い光の柱が聖堂を満たす。
 民衆の歓声。アレクシス様の誇らしげな笑み。
 この瞬間が、私は何よりも好きだった。

「素晴らしい奇跡です、リリアーナ」

 式の後、アレクシス様が優しく声をかけてくれる。

「ありがとうございます。民のために尽くすのが、聖女の務めですから」

 完璧な笑顔。完璧な言葉。

 でも——
 視線を感じた。
 聖堂の隅で、白衣の男が何か測定器のようなものを持って、私を観察している。

 あれは……エドガー・クロイツ。王立魔導研究院の研究者だったはず。
 気味が悪い。

「リリアーナ様、お疲れ様でした」

 セレスティアが、控えめに頭を下げた。
 淡い銀色の髪が、光を反射してきらめく。
 最近、民衆の一部がこの娘を見る目が変わってきている。

「清らかな雰囲気がある」
「優しそうな方だ」

 そんな声を、耳にするようになった。

 ……ありえない。
 あの娘は、測定不能の無能力者。私の引き立て役でしかない。

「セレスティア、今夜の晩餐の準備は?」
「はい、心を込めて準備しております」

 怯えた表情。それでいい。
 あなたは私の侍女。それ以上でも、それ以下でもない。

 でも——
 胸元に隠した小さなペンダントを、そっと握りしめる。

 これが私の力の源。古代の魔道具。
 これがあれば、私は永遠に聖女でいられる。
 誰にも、奪われない。
 心の奥底で、小さな不安が囁く。

――もし、バレたら?

 いいえ、大丈夫。
 私は完璧に演じている。誰も疑わない。
 疑わせない。

 この地位を、この称賛を、アレクシス様の愛を——
 絶対に失うわけにはいかないのだから。
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