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番わない覚悟 (3)
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和泉の答えはシンプルだった。
「オレと番った相手を不幸にする、そう思うから番えない」
和泉ほどに優しい人が何故相手を不幸にすると言い切るのか。
和泉の告白は意外なものだった。
「実は、オレは子供が出来にくい身体なんだ」
子供。
アルファとオメガが番えば、自然と子供はできる。とくに発情期のオメガの妊娠率は高い。ベータに比べて圧倒的に人数が少なく、とくに男性型のオメガの妊娠、出産は女性よりも危険が伴うため、高い妊娠率があると言われている。
要するに、アルファがオメガと番えば子供は間違いなくできると世間では思われているのだ。
「だから、ベータと偽っていた」
ベータならばアルファとオメガほどに周囲から子供を求められない。子供ができなくても、それもまた一つの人生だと、選択肢が用意されているのだ。
「どうして……」
朔耶もさすがにショックを隠せなかった。
「十代の頃に、急性の血液がんに罹患してな……」
中学生の頃だったという。生命の危機に瀕し、生と死の間を彷徨ったという。幸いながら、一命と取り留めたものの、その治療の過程で、大量の放射線を浴びたため、子供が出来にくい身体になったという。
「子供は望めないかもしれないと、医師からも言われたと思うけど、子供だったし、その言葉の重大性がよく分かっていなかったのかもしれない。でも、あの治療を受けなければ、今自分がここにいないというのは、よく分かっている」
和泉が第二の性がアルファであると分かったのは、その病気から生還してからだったという。
「第二の性が知らされる通知、来ただろ。あれを見て、オレは決意した。アルファとして当然の幸せは望めないだろう。将来は、アルファのヒート抑制剤が難なく手に入る仕事に就けば、自分はベータと偽って生きていくことができる。そして一生独身を貫こうと」
それは悲痛な決意のように朔耶には思えた。
「オレのように、子種が怪しいアルファなんかと番ってしまったら、相手のオメガは不幸だ」
思わず朔耶は和泉を抱きしめた。これまで和泉に抱きしめられていたのに、抱きしめたいと思ったのだ。こんなことを、和泉に言わせてしまった。詳しく問うたことを少し後悔した。
驚いた和泉が、身体を捩ったが、奇跡的な早さで、朔耶は和泉の唇を奪った。
ためらいなく、歯列を割り、舌を入れ込む。
ぐっとその奥にいた和泉の舌を、自分のものと絡ませる。唾液を交じ合わせる。舌と液体が絡む、湿った淫靡な音がしばらく続いた。
ようやく、唇を離す。
「そんなことを、言わないで」
朔耶は胸に迫る気持ちをそう吐きだした。
「それは、暁さんが懸命に生きてきた道なのだから。その苦しみは、僕には分かりません。でも、それを分かち合えることはできる」
朔耶は気持ちを決めた。
「その苦しみを、僕に半分ください」
「な……」
「暁さんが生きていてくれて、僕は本当に嬉しい。そのときの、その決断に感謝します。あなたが生きるために失った機能であるのならば……そして、それ故に苦しむのならば、僕はそれを半分背負いたい」
和泉は言葉を失っていた。
「僕の両親はふたりともベータです。だから僕自身、ベータの家庭で育った、ある種の雑種です。両親は長く子供ができなかったと聞いています。父の方が子供が出来にくい身体であったそうですが、母はそれを知っていて結婚しました。運良く授かったのが僕でしたが、それまで母もいろいろと言われたそうです」
不妊となると、どちらに原因があったとしてもまず授かる方に問題があると思われがちだ。
「馬鹿な。そんな目に朔耶を遭わせるわけには……」
「僕がいいと言っているんです。ふたりで居れば、苦しみもいずれ和らぐ」
朔耶は和泉のまなざしを直球で受け留める。
大丈夫、と力強くうなずいた。
「僕を番にしてください」
「オレと番った相手を不幸にする、そう思うから番えない」
和泉ほどに優しい人が何故相手を不幸にすると言い切るのか。
和泉の告白は意外なものだった。
「実は、オレは子供が出来にくい身体なんだ」
子供。
アルファとオメガが番えば、自然と子供はできる。とくに発情期のオメガの妊娠率は高い。ベータに比べて圧倒的に人数が少なく、とくに男性型のオメガの妊娠、出産は女性よりも危険が伴うため、高い妊娠率があると言われている。
要するに、アルファがオメガと番えば子供は間違いなくできると世間では思われているのだ。
「だから、ベータと偽っていた」
ベータならばアルファとオメガほどに周囲から子供を求められない。子供ができなくても、それもまた一つの人生だと、選択肢が用意されているのだ。
「どうして……」
朔耶もさすがにショックを隠せなかった。
「十代の頃に、急性の血液がんに罹患してな……」
中学生の頃だったという。生命の危機に瀕し、生と死の間を彷徨ったという。幸いながら、一命と取り留めたものの、その治療の過程で、大量の放射線を浴びたため、子供が出来にくい身体になったという。
「子供は望めないかもしれないと、医師からも言われたと思うけど、子供だったし、その言葉の重大性がよく分かっていなかったのかもしれない。でも、あの治療を受けなければ、今自分がここにいないというのは、よく分かっている」
和泉が第二の性がアルファであると分かったのは、その病気から生還してからだったという。
「第二の性が知らされる通知、来ただろ。あれを見て、オレは決意した。アルファとして当然の幸せは望めないだろう。将来は、アルファのヒート抑制剤が難なく手に入る仕事に就けば、自分はベータと偽って生きていくことができる。そして一生独身を貫こうと」
それは悲痛な決意のように朔耶には思えた。
「オレのように、子種が怪しいアルファなんかと番ってしまったら、相手のオメガは不幸だ」
思わず朔耶は和泉を抱きしめた。これまで和泉に抱きしめられていたのに、抱きしめたいと思ったのだ。こんなことを、和泉に言わせてしまった。詳しく問うたことを少し後悔した。
驚いた和泉が、身体を捩ったが、奇跡的な早さで、朔耶は和泉の唇を奪った。
ためらいなく、歯列を割り、舌を入れ込む。
ぐっとその奥にいた和泉の舌を、自分のものと絡ませる。唾液を交じ合わせる。舌と液体が絡む、湿った淫靡な音がしばらく続いた。
ようやく、唇を離す。
「そんなことを、言わないで」
朔耶は胸に迫る気持ちをそう吐きだした。
「それは、暁さんが懸命に生きてきた道なのだから。その苦しみは、僕には分かりません。でも、それを分かち合えることはできる」
朔耶は気持ちを決めた。
「その苦しみを、僕に半分ください」
「な……」
「暁さんが生きていてくれて、僕は本当に嬉しい。そのときの、その決断に感謝します。あなたが生きるために失った機能であるのならば……そして、それ故に苦しむのならば、僕はそれを半分背負いたい」
和泉は言葉を失っていた。
「僕の両親はふたりともベータです。だから僕自身、ベータの家庭で育った、ある種の雑種です。両親は長く子供ができなかったと聞いています。父の方が子供が出来にくい身体であったそうですが、母はそれを知っていて結婚しました。運良く授かったのが僕でしたが、それまで母もいろいろと言われたそうです」
不妊となると、どちらに原因があったとしてもまず授かる方に問題があると思われがちだ。
「馬鹿な。そんな目に朔耶を遭わせるわけには……」
「僕がいいと言っているんです。ふたりで居れば、苦しみもいずれ和らぐ」
朔耶は和泉のまなざしを直球で受け留める。
大丈夫、と力強くうなずいた。
「僕を番にしてください」
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