【完結】もう辛い片想いは卒業して結婚相手を探そうと思います

ユユ

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生還

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真っ黒な世界にいたはずなのに、だんだん眩しくなり、白に包まれた。

「サラ!」

「……」

「サラが目を開けたわ!」

「旦那様をお呼びします」

「サラ、もう大丈夫よ」

「私…」

「大丈夫。心配ないわ」

お母様が涙を流しながら私の頭を撫でている。

「死ねなかったのですね」

「サラ……」


お父様が入室すると薬を飲んだ理由を聞かれた。

「気持ちが変えられない以上、薬で終わらせたかったのです」

「クズだと知ったのだな?」

「はい、お父様の仰る通りでした」

「そんなクズのために命を散らすな。アメリーがどんな思いでサラを産んだと思っているんだ」

「ごめんなさい」

「サラが助かったのは生き直せという神の思し召だ。静養した後は見合いでもさせよう」

「あなた」

「婚姻は避けられないだろう。サラ1人の力で生きていけるわけがないからな。嫁ぎ先で多少何かあっても皆それを受け入れて我慢しているんだ。
生かされたことを忘れてまた薬を飲むようなら、それまでと諦めるしかない。サラはもう大人なのだから急がないと良い条件の嫁ぎ先はなくなるぞ」

「……」

「まあ、数日はゆっくり休みなさい」

「はい」


お父様とお母様が部屋を出た後はひたすら寝て過ごした。

「婚姻かぁ」

私の名はサラ・イリザス。伯爵家の8女だ。

父 シルヴァン・イリザスには3人の妻がいる。
第一夫人マリアは3人の娘を産み、全員嫁いだ。
第二夫人オデットは2人の娘を産み、1人の娘を死産。生きている2人は嫁いだ。
第三夫人アメリーは男児フィリップと私を産んだ。

妻が3人女児を産むと、新しい妻を迎え子を産ませた。男児が産まれるまでそれは続いた。

シュクール王国では基本的に国王以外は一夫一妻制。例外は男児が産まれぬとき。死産も含む3人産んで駄目なら、もしくは4年産まなければ次の妻を迎えることができる。但し財力次第。財力が無ければ養子を取ることになる。

男児を産まなくても妊娠できなくても、先にいた妻を冷遇したり離縁することは許されない。
別れたいならそれなりの財産分与をしなくてはならず、それを選択する者は稀だ。

イリザス家は大富豪。妻を複数迎えることも、離縁することも選べる。だが父は離縁せず、敷地内に妻ごとに離れを建てて住まわせ、曜日を決めて平等に通う。日曜だけは本邸で全員揃って過ごしている。
私の母アメリー第三夫人がフィリップを産み、その後で私を産んだ。そこで子作りは止めた。

現在イリザス家に残っているのは3人の妻とフィリップと末娘の私だけ。
父はだいぶ高齢で、跡継ぎ教育を急いでいた。


「サラちゃん。この子と一緒に寝てちょうだい」

「マリア様の手編みですか?」

「サラちゃんが元気になるように祈りながら編んだのよ」

第一夫人は手編みが得意で、もう何体も動物などを手編みしてヌイグルミを贈ってくれる。

「甘いものが体を癒すわ。アメリー様も召し上がって」

「オデット様の手作りですか?」

「もちろんよ。林檎のタルトよ」

第二夫人は菓子作りが得意で、時々作って食べさせてくれる。

母アメリーは傷薬を作るのが得意で、顔に塗ると吹き出物も出ない。

3人の妻は婚姻後の暇つぶしに手を付けてみたらハマったことで特技になった。

そして妻同士の仲がいい。

「まあ!シルヴァン様ったら。サラちゃん1人くらい無理に嫁がなくてもいいじゃない」

「そうよ。癒しが無くなるじゃないの」

「目覚めて直ぐに言わなくてもとは思いましたわ」

こうして何かあると結託している。
父は苦笑いしながら3人を宥めるのがいつものパターンだ。


「サラちゃんは純粋だったから、つい騙されちゃうのね」

「乙女の心を何だと思っているのかしら」

「埋めようかしら」

3人でヒソヒソと話し始めた間にタルトを食べ終え、手編みのヌイグルミを抱きしめていたら、いつの間にか寝てしまった。
4時間後に起きても3人はまだ居て、昔の初恋の話に花を咲かせていた。



2日前、飲みすぎると昏睡して心臓が止まるという薬を飲んだ。確かに心臓の鼓動は段々とゆっくり小さくなったはず。そして暗闇の中にいた。自害は地獄行きと聞いていた。行ったことはなかったけど、その暗闇がソレだと思った。


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