【完結】新皇帝の後宮に献上された姫は、皇帝の寵愛を望まない

ユユ

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待遇が良くなる

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うっかり朝食の席で寝落ちしてしまい、挙句 本宮の皇妃の部屋で寝ていたなんて。
モアナ様とシャンティ様が一緒だったから良かったけど、後宮に運んでくれたら良かったのに。

自室に戻り頭を抱えていると エルダがメイド達に箱を持たせて後宮の部屋を訪ねてきた。

「陛下からの贈り物でございます」

「贈り物?」

「はい。ドレスは午前中に注文したばかりですので これからユピルピア様のサイズでお作りいたします。
こちらの品々は商人を呼んで持って来させた品の中から陛下が直々にお選びになりました」

「何でですか?散財する必要はありませんよ?
未来の皇后様のためにとっておいてください。
開けなければ所有者のいない新品ですよね?
持って帰ってください」

「それは致しかねます。帝国は財政難ではございませんし、誰に何を贈るかは陛下の自由です。
そして皇妃候補として後宮入りなさった皆様が皇帝陛下のお気持ちを拒否することは避けるべきことです。
母国の未来を背負って後宮入りなさっているはずですが違いますか?」

「その踊りです。失礼なことを申し上げました。
有り難く頂戴いたします。
陛下にお礼を申し上げてくださいますか」

「それは直接お願いいたします」

「直接?お手紙ということかしら。直ぐに、」

「いえ、対面でございます」

「次、いつお会いできるかわかりません。お礼が遅くなってしまいますわ」

「明日にはお呼びがかかると思いますので少しお待ちください」

食事中に寝落ちしてしまったから叱られるのかしら。

「分かりましたわ」


エルダが退室したので箱を開けた。

「ネックレスとイヤリングのセットが6箱もあるわ。普段使いの品とかなり高価な品をそれぞれ3セットずつね」

「こちらは化粧ブラシや櫛のセット、香油と口紅です」

「あ、こっちの大きな箱は寝具だわ。すごくフカフカ!!」

「ユピルピア様、こちらをご覧ください!」

興奮気味にペルペナが、箱の中身を見せた。

「これ!新月の雫じゃない!?
慈悲の種皮もあるわ!」

「メッセージカードがあります」

“時々頭が痛む。ユピルピアに調合して欲しい。必要な材料を揃えさせる。 アレクサンドル”

新月の雫は遠い西の砂漠にあるオアシスに咲く花で、白い花びらが雫の形をしている。
4年に一度だけ蕾をつけて新月の夜に咲く稀少な花で、新月に咲いた時に採取してその場で酒に漬ける。その酒は延命酒と呼ばれ、様々な不調に効果があると言われている。もちろんパッと治す神の薬などではなく、不調に染まった身体を快方に少し向かせると言われている。怪我などの治りもよくしたりするらしい。
飲んだこともないし飲んで効果の現れる様子を見たことがあるわけではない。遠くの地にある砂漠さえ見たことがない私がコレを目にすることは出来ないと思っていた。
瓶の中に酒に浸かった白い雫状の花びらが浮いている。多分新月の雫だと思う。

そして酒に漬けずに乾燥させると 煎じて飲む滋養強壮剤になる。

3つ目は慈悲の種皮。
これも遠い南の国で採れるので私では実物を見ることは叶わないと思っていた。
普通の鎮静薬よりも痛みを遮断できる。

3つとも薬材図鑑に載っていた。

「すごいわ!!信じられない!!」

「これは…しっかりお礼を申し上げなければなりませんね」


翌日の昼食を一緒にと言われたので、贈り物の普段使いのネックレスとイヤリングを身に付けて待った。

後宮で食べるのかと思っていたら本宮だという。迎えに来たエルダが渡り廊下で私とペルペナを後宮長のサイモンに引き渡した。

本宮を歩いているが道が違う気がする。

「サイモン後宮長、先日、他の女性達と一緒に行った食堂ではなさそうですね」

「はい。皇族の居住区にある陛下専用の食堂へ向かっております」

「え!?…そ、そうですか」

何故なのか考えるも思考が及ばない。


到着すると先日よりも小さな食堂ではあるが品よくお金をかけた内装になっていた。

「よく来たな、ユピルピア」

「お招きいただきありがとうございます」

「こっちは座れ」

わざわざ陛下が椅子を引き 私を座らせるとナプキンまで置いてくださった。

陛下との距離が近い。もっと離してセッティングしてくれたら良かったのにと思っていると頬を撫でられた。

「今日は寝不足ではないのだな?」

「あ…」

先日、食事の席で寝落ちしてしまったことと、何故そうなったのか、原因が胸を見られてしまったことだと思い出して、カーッと熱くなった。

「幼子のように眠ってしまうなど、大変失礼をいたしました。その前夜は お見苦しいものをお見せしてしまい申し訳ございません」

「謝ることはない。愛らしい寝顔だったし、美しい胸だった」

え?




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