【完結】2人の幼馴染が私を離しません

ユユ

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翌日の午前中は王子妃について、基本的なことを聞いた。役割などを聞いた後、お母様から聞いたあの話も聞かされた。
本当だったんだと気分が沈んだ。

午後は作法やダンスなどの試験があった。
どの令嬢も素晴らしかった。

その合間に一人ずつノエル様との交流が15分あった。

「困ったことはない?」

「お気遣いいただきありがとうございます」

「これは僕との相性をみる時間だし、僕とアリスティーネの仲は周知されているから、いつも通りでいいんだよ」

「ノエル様」

「頑張ってこの選抜に臨んでくれたみたいだね、ありがとう」

「…エミリオの言う通り、厳しい先生を付けて学ぶのが遅すぎました」

「良く頑張っているよ」

「……」

「僕も母上も無邪気なアリスティーネに癒されていたんだ。君の成長を妨げたのは周囲のせいでもある。いつまでも子供のままでいて欲しい、その無邪気な笑顔を見ていたいと願ってしまった。ごめんよ」

「謝らないでください。
可愛がってくださっていつも嬉しく思っていました。
残れなさそうなのは感じ取っています。むしろ残れた方がおかしいですから」

「たとえ君が選ばれなかったとしても僕達は幼馴染で大事な存在だ。
アリスティーネ、大好きだよ」

「私も大好きです」


夜、ベッドでノエル様の言葉を反芻していた。

“妹のように”

「…私、上手に笑顔を作れていたかな」

ノエル様は私のことを妹として見ていたことが分かってしまった。
異性として優しくしてくれていたわけではない。

出会ってから徐々に惹かれておよそ6年。片想いだったことを知った。優しかったのは私のことを妹として好きだったから。

失恋と同義だった。


翌日の試験は疑似体験中のトラブル対応や 面接だった。

ティータイムに慰労会があり、そのあと、一人ずつ個室に呼ばれた。

「アリスティーネ・エンブレア様。残念ながらご縁はございませんでした。
理由は……」

理由を聞いていると、いかに減点要素が多いのかが分かった。
悔しいなどという言葉を口にする資格さえない。

「以上です」

「未熟な私にチャンスを与えていただきありがとうございました。当然の結果だと納得しております」

「エンブレア嬢。私達はあなたの人柄はとても好きです。ライバルがあなたの悪口を言ってもあなたは悪意で返しませんでした。メイドや兵士にも感謝と気配りの気持ちを忘れずに、王族の方々や試験官と同じ笑顔を向けました。あなたが飴を配ったときは なんて可愛い賄賂なのだろうと笑ってしまいました。何故飴だったのですか?」

「6年前ほど前に、ノエル王子殿下のお友達を探す目的で貴族の子が招待を受けたことがありました。
その頃も年齢より幼い私に門番の兵士が飴をくださろうとしたのです。上司に叱られて、私の乗る馬車は通過しましたが、とても嬉しかったのです。その後、お友達として訪ねる度に、いろいろな方から飴をいただくようになりました。いまでもいただくのですよ」

「私達はエンブレア嬢が通る門や廊下や殿下のお部屋に行くことは原則ございません。メイドや兵士も管轄が分かれていますので知りませんでした。皆こっそり愛らしいエンブレア嬢に捧げていたのですね」

「っ!」

我慢していた涙を溢してしまった。

「もうあなたらしくしても構いませんよ」

「駄目です。このまま涙が止まらなければ皆様に虐められたと噂が立ちます」

「…それは恐ろしいですね。王妃様もエンブレア嬢を娘のように可愛がっていらっしゃいますから。
誰か飴を持っていませんか?」

「すみません、ありません」

「持っていません」

「私も持っていません」

「ふふっ ありがとうございます、涙は止まりました」

「お疲れ様でした」


荷物を持って王宮馬車に乗った。
屋敷に帰ると、ドレスを脱いでベッドに倒れ込み、そのまま目を閉じた。





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