【完結】騙された? 貴方の仰る通りにしただけですが

ユユ

文字の大きさ
10 / 15

サヴァン子爵/接近

しおりを挟む
【 エリックの視点 】


一週間後、コゼット嬢の婚約者の調査報告があった。

『ご報告を申し上げます。

フォリー公爵家の三兄弟の内の長男がダニエル殿です。

コゼット伯爵令嬢より二歳上で現在は跡継ぎ教育を始めました。

成績はあまり良くありません。
そして女性との関係もおありです。
ほとんどは一夜限りのお相手です。

コゼット嬢をパートナーとしてエスコートしたのはデビュータントのみ。後は別行動をとっております。
公爵も出席なさっているパーティの時だけコゼット嬢とダンスを踊るようです。

陰では婚約を嘆いていて、ブサイクだのブタだのと口走っているようです』

馬鹿だな。

『婚約はどうして結ばれた?』

『ダニエル殿の一目惚れです』

一目惚れ? なのに陰口を?

『伯爵家はなぜ受けたのか?』

『ダニエル殿が婚約したいと言うと伯爵家は断りました。
すると首にナイフを突き付けて、婚約してくれないなら死んでやると騒ぎを起こしたようで。
公爵が一生懸命に頼み込み、成立したようです』

『熱がさめたのか』

『婚約騒動の後、本当の意味で高熱を出し、二週間後に落ち着いた時には、その日の記憶がほぼ消えてしまったようです』

一目惚れした時の令嬢の姿を忘れてしまったのだな。



興味が湧いて、週末 令嬢がいる時間に孤児院へ出向いた。

ダンスの時間だったようだ。施設の人が説明してくれた。

『コゼット様のドレスですよ。子供の頃のドレスを持ってきてくださってダンスの練習させるのです。
子供達も難易度が違うと体感できて有り難いです』

隣の部屋ではメイドが令嬢の世話の仕方を教えていた。

『そうです。髪は少しずつとかしましょう。
令嬢方は髪が長いので絡まることもございます。
いきなり櫛やブラシを入れては引っ掛かり 痛みを与えてしまいます。それが原因で罰を与える方もいらっしゃいますので、自身を守るためにも丁寧にしましょう』


授業が終わると施設長が紹介してくれた。

『コゼット様、こちらはサヴァン子爵家のご令息のエリック様です』

『ブラウニー嬢、エリック・サヴァンと申します。
お見知り置きを』

その後、話をすると心の綺麗な令嬢だと感じた。
あっという間に惹かれてしまった。
孤児達も平民と貴族という垣根なく懐いている。

『サヴァン様はどうしてこちらに?』

『寄付をしに参りました』

『子供達の未来を繋いでくださりありがとうございます』

令嬢がお礼を述べた。まるで施設長だなとうっかり笑いが漏れてしまった。

『嫌だ 私ったら。私も外部の者なのに』

『いや、失礼。あまりにも可愛らしくて』

『……』

令嬢は目を逸らして頬をほんのり薄桃色に染めた。



毎回行くと怪しまれるので隔週で孤児院を訪れて物資の寄付をした。

『こんなに素敵な書庫を持つ孤児院はここくらいですわ』

大喜びだった。

ある週は浴場を改装した。

『素晴らしいわ!』

赤ちゃんやまだ排泄管理ができない幼児用の小さな浴槽。まだ月のモノが来ていない子用。それ以上の少女と職員が入るための浴槽の三種類を用意してくれた。

『湯が少しでも清潔に保てますね』

やはり幼子は湯を汚しやすい。

次の月はトイレを改装した。

『このおトイレ可愛いですわ』

幼児の体に合わせた小さな便器。掴まるところもあり、壁には 草原や青空や花や動物を描いた。

トイレを怖がる子も喜んで使った。

『それは何?』

『オムツを卒業した子にお祝いのぬいぐるみを作っているのです』

『クマか』

『…ネコです』

ちょっと拗ねる顔も可愛い。



そうやってコゼット嬢と時間を過ごすようになって一年後に友人のパーティで嫌な話を聞いた。

『フォリー公爵家の長男が愛人を常に伴わせているんだが、命知らずだな』

『せめて表に出すなよ』

『王太子夫妻がお怒りになるだろうな』

『……』



コゼット嬢の婚約者が出席する夜会を調べて見に行った。

相手は男爵家の令嬢だという。
いかにも無垢な害無しという雰囲気を令息に見せているが、王太子妃の妹を婚約者に持つ次期公爵と腕を組んで堂々と貴族達の前に顔を出す様を見ると、腹黒さがわかる。もしくは厚顔無恥か。

こんな二人にコゼット嬢が踏み躙られるのは耐え難かった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

わざわざパーティで婚約破棄していただかなくても大丈夫ですよ。私もそのつもりでしたから。

しあ
恋愛
私の婚約者がパーティーで別の女性をパートナーに連れてきて、突然婚約破棄を宣言をし始めた。 わざわざここで始めなくてもいいものを…ですが、私も色々と用意してましたので、少しお話をして、私と魔道具研究所で共同開発を行った映像記録魔道具を見ていただくことにしました。 あら?映像をご覧になってから顔色が悪いですが、大丈夫でしょうか? もし大丈夫ではなくても止める気はありませんけどね?

【完結】真面目だけが取り柄の地味で従順な女はもうやめますね

祈璃
恋愛
「結婚相手としては、ああいうのがいいんだよ。真面目だけが取り柄の、地味で従順な女が」 婚約者のエイデンが自分の陰口を言っているのを偶然聞いてしまったサンドラ。 ショックを受けたサンドラが中庭で泣いていると、そこに公爵令嬢であるマチルダが偶然やってくる。 その後、マチルダの助けと従兄弟のユーリスの後押しを受けたサンドラは、新しい自分へと生まれ変わることを決意した。 「あなたの結婚相手に相応しくなくなってごめんなさいね。申し訳ないから、あなたの望み通り婚約は解消してあげるわ」  ***** 全18話。 過剰なざまぁはありません。

穏便に婚約解消する予定がざまぁすることになりました

よーこ
恋愛
ずっと好きだった婚約者が、他の人に恋していることに気付いたから、悲しくて辛いけれども婚約解消をすることを決意し、その提案を婚約者に伝えた。 そうしたら、婚約解消するつもりはないって言うんです。 わたくしとは政略結婚をして、恋する人は愛人にして囲うとか、悪びれることなく言うんです。 ちょっと酷くありません? 当然、ざまぁすることになりますわね!

婚約破棄で見限られたもの

志位斗 茂家波
恋愛
‥‥‥ミアス・フォン・レーラ侯爵令嬢は、パスタリアン王国の王子から婚約破棄を言い渡され、ありもしない冤罪を言われ、彼女は国外へ追放されてしまう。 すでにその国を見限っていた彼女は、これ幸いとばかりに別の国でやりたかったことを始めるのだが‥‥‥ よくある婚約破棄ざまぁもの?思い付きと勢いだけでなぜか出来上がってしまった。

公爵令嬢は運命の相手を間違える

あおくん
恋愛
エリーナ公爵令嬢は、幼い頃に決められた婚約者であるアルベルト王子殿下と仲睦まじく過ごしていた。 だが、学園へ通うようになるとアルベルト王子に一人の令嬢が近づくようになる。 アルベルト王子を誑し込もうとする令嬢と、そんな令嬢を許すアルベルト王子にエリーナは自分の心が離れていくのを感じた。 だがエリーナは既に次期王妃の座が確約している状態。 今更婚約を解消することなど出来るはずもなく、そんなエリーナは女に現を抜かすアルベルト王子の代わりに帝王学を学び始める。 そんなエリーナの前に一人の男性が現れた。 そんな感じのお話です。

復縁は絶対に受け入れません ~婚約破棄された有能令嬢は、幸せな日々を満喫しています~

水空 葵
恋愛
伯爵令嬢のクラリスは、婚約者のネイサンを支えるため、幼い頃から血の滲むような努力を重ねてきた。社交はもちろん、本来ならしなくても良い執務の補佐まで。 ネイサンは跡継ぎとして期待されているが、そこには必ずと言っていいほどクラリスの尽力があった。 しかし、クラリスはネイサンから婚約破棄を告げられてしまう。 彼の隣には妹エリノアが寄り添っていて、潔く離縁した方が良いと思える状況だった。 「俺は真実の愛を見つけた。だから邪魔しないで欲しい」 「分かりました。二度と貴方には関わりません」 何もかもを諦めて自由になったクラリスは、その時間を満喫することにする。 そんな中、彼女を見つめる者が居て―― ◇5/2 HOTランキング1位になりました。お読みいただきありがとうございます。 ※他サイトでも連載しています

やめてくれないか?ですって?それは私のセリフです。

あおくん
恋愛
公爵令嬢のエリザベートはとても優秀な女性だった。 そして彼女の婚約者も真面目な性格の王子だった。だけど王子の初めての恋に2人の関係は崩れ去る。 貴族意識高めの主人公による、詰問ストーリーです。 設定に関しては、ゆるゆる設定でふわっと進みます。

(完結)婚約解消は当然でした

青空一夏
恋愛
エヴァリン・シャー子爵令嬢とイライジャ・メソン伯爵は婚約者同士。レイテ・イラ伯爵令嬢とは従姉妹。 シャー子爵家は大富豪でエヴァリンのお母様は他界。 お父様に溺愛されたエヴァリンの恋の物語。 エヴァリンは婚約者が従姉妹とキスをしているのを見てしまいますが、それは・・・・・・

処理中です...