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続編:ヒューゴの結婚
婚約から2年
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微妙な表情を隠しもしないのは俺だけじゃない。
「ねぇティナ、今回は1ヶ月くらい泊まってよ」
「4ヶ月前も泊まったわよ?」
「だって、王都にいても忙しい、セルヴィー領にいても忙しい、その上ジオ領に行ったりして全然時間とってくれないし、先月なんかモルゾン領に行ってるじゃない!ジネットが“今夜からしばらくティナと一緒に寝るの”なんて手紙に書いて送ってきたんだから!」
「ジネットったら…」
俺の可愛い婚約者クリスティーナは、第二王子と結婚し子を産んで人として成長を遂げているはずのエルザ王子妃に詰め寄られている。痴話喧嘩の一種のような会話で、王子妃は、モルゾン公爵家の跡継ぎゼインと結婚したジネット夫人とクリスティーナを奪い合っていると言っても過言ではない。
「ジネットは赤ちゃん産んで忙しいはずなのに何でティナと一緒に寝てるのよ!」
「赤ちゃんはベビールームだし、乳母達がいるし」
「赤ちゃんは男児なんだから今からジネットが付きっきりで跡継ぎ教育すればいいのよ」
「跡継ぎ教育はジネットが教えられないと思うわ。それにまだ生後4ヶ月だから教育なんて無理よ」
「私のことが嫌いなのね!うわぁ~ん!!」
「ちょっと、エルザ」
エルザ王子妃はますますクリスティーナに執着するようになっていた。そのエルザ王子妃を見つめる第二王子は微妙な表情をしている。きっとこう言いたいのだろう、夫は自分だと。
いいじゃないか、結婚して夫と主張できて我が子まで産んでもらって一緒に住んでるのだから。
クリスティーナは婚約してくれたけど、互いに忙しくて結婚への発展がないし、あちらこちらに行ってしまうから一緒にいる時間が少ない。しかも気を付けなくてはならないのは男だけじゃない。女にも気を付けないといけない。まさに今目の前に嘘泣きかもしれない泣き声を上げてクリスティーナの気を引こうとしている女がいる。
「エルザ、泣き止んで。2人きりの女子会しよう」
「泊まって?」
「王宮が許すのならね」
「すぐ許可を得てもらうわね。殿下」
「行ってくるよ」
ついには夫である第二王子を使いっ走りにしてしまった。
彼は作った笑みを浮かべて席を立ち、クリスティーナの滞在と、王子妃と夜ふかしをしながら一緒に寝るという許可を取らせに侍従に指示を出している。
「はぁ…私が男だったらティナと結婚したのに」
「エルザが男の人だったらモテて大変だわ」
「そんなにモテると思うなら口説かれてよね」
クリスティーナの手の甲にキスをしてありもしない空想を広げ口説いている王子妃に護衛もチラチラと視線を向ける。もう殿下は二皿目のケーキに目を向け現実逃避を試みていた。
2人は政略結婚だと思っていたが、両想いだった。
ゼインが言うにはエルザは初めて会った日に好感を持ったらしい。母が言うには殿下はエルザにだけ王子の仮面を落としてしまう、今のように。
彼と俺は従兄弟だ。砕けた親しさはないが幼い頃から家族ぐるみの付き合いがある。彼の戸惑いや哀愁など様々な気持ちの変化を目撃するようになったのはここ数年のことだ。
「ティナにそっくりな娘を産んで。うちのアランと婚約させるの。交流は毎日よ。いっそ王宮に住めばいいわ。幼い頃からゆーっくり教育すれば後が楽だしね」
「いくらなんでも無理よ」
殿下は俺に目で合図を送るが、それがわかるほど親しくはない。
「殿下、陛下にティナ達の居住をお願いしてきてくださらない?」
殿下はニッコリと微笑んだ。
「い、一応聞いてみるが希望は1%もないと思うよ。前例がないからね」
「そんなこと言って!うちのアランの花嫁さんをレオナルドにとられてもいいのですか!」
「男の子が生まれたらどうするんだい?」
「親友になるに決まっています。乳兄弟もいいわね」
ちょっと待て、誰の乳をやるんだ?まさかクリスティーナの母乳をアランに飲ませる気が!?その頃にはアランはだいぶ大きくなっているぞ!
「クリスティーナ嬢に似れば可能かもしれないけど、ヒューゴに似たらどうするんだ?」
殿下、どういう意味だ?
「……」
王子妃もなんで押し黙るんだよ。
「いくらなんでもヒューゴ様も子どもの頃くらいは可愛かったはずです。転んで泣いたり怖い夢を見たと母親に抱きついたり、仕事に行くという父親を引き止めたり」
そんな記憶はないな。それよりティナ、“いくらなんでも子どもの頃くらいは”とはどういうことだ?
「ジオ公爵夫人から伝え聞いた話だと、ヒューゴは転んだくらいでは泣かないし、歩くようになると甘えるなんてことは無かったらしい。生まれながらにしてジオ家の濃い血を継いだ子だったって話だよ」
「え?ヒューゴ様?」
まずい!まだジオ家が何をしているのか教えていないのに!
「い、色濃く親父に似てるだろう?」
「う~ん、でも夫人の雰囲気ももっているのよね」
良かった、誤魔化せた。
「あ、そろそろ時間だな、殿下、王子妃様、素敵な時間をありがとうございました」
「え!もう!?
ティナぁ~!帰っちゃ嫌~!」
王子妃はクリスティーナに抱き付いてぐずり始めた。嘘泣きだろう?その涙は自由自在に出るんだろう?いくらクリスティーナでもそろそろ耐性が……
「エルザ、私も胸が痛いのよ」
何で効果があるんだよ…
「ねぇティナ、今回は1ヶ月くらい泊まってよ」
「4ヶ月前も泊まったわよ?」
「だって、王都にいても忙しい、セルヴィー領にいても忙しい、その上ジオ領に行ったりして全然時間とってくれないし、先月なんかモルゾン領に行ってるじゃない!ジネットが“今夜からしばらくティナと一緒に寝るの”なんて手紙に書いて送ってきたんだから!」
「ジネットったら…」
俺の可愛い婚約者クリスティーナは、第二王子と結婚し子を産んで人として成長を遂げているはずのエルザ王子妃に詰め寄られている。痴話喧嘩の一種のような会話で、王子妃は、モルゾン公爵家の跡継ぎゼインと結婚したジネット夫人とクリスティーナを奪い合っていると言っても過言ではない。
「ジネットは赤ちゃん産んで忙しいはずなのに何でティナと一緒に寝てるのよ!」
「赤ちゃんはベビールームだし、乳母達がいるし」
「赤ちゃんは男児なんだから今からジネットが付きっきりで跡継ぎ教育すればいいのよ」
「跡継ぎ教育はジネットが教えられないと思うわ。それにまだ生後4ヶ月だから教育なんて無理よ」
「私のことが嫌いなのね!うわぁ~ん!!」
「ちょっと、エルザ」
エルザ王子妃はますますクリスティーナに執着するようになっていた。そのエルザ王子妃を見つめる第二王子は微妙な表情をしている。きっとこう言いたいのだろう、夫は自分だと。
いいじゃないか、結婚して夫と主張できて我が子まで産んでもらって一緒に住んでるのだから。
クリスティーナは婚約してくれたけど、互いに忙しくて結婚への発展がないし、あちらこちらに行ってしまうから一緒にいる時間が少ない。しかも気を付けなくてはならないのは男だけじゃない。女にも気を付けないといけない。まさに今目の前に嘘泣きかもしれない泣き声を上げてクリスティーナの気を引こうとしている女がいる。
「エルザ、泣き止んで。2人きりの女子会しよう」
「泊まって?」
「王宮が許すのならね」
「すぐ許可を得てもらうわね。殿下」
「行ってくるよ」
ついには夫である第二王子を使いっ走りにしてしまった。
彼は作った笑みを浮かべて席を立ち、クリスティーナの滞在と、王子妃と夜ふかしをしながら一緒に寝るという許可を取らせに侍従に指示を出している。
「はぁ…私が男だったらティナと結婚したのに」
「エルザが男の人だったらモテて大変だわ」
「そんなにモテると思うなら口説かれてよね」
クリスティーナの手の甲にキスをしてありもしない空想を広げ口説いている王子妃に護衛もチラチラと視線を向ける。もう殿下は二皿目のケーキに目を向け現実逃避を試みていた。
2人は政略結婚だと思っていたが、両想いだった。
ゼインが言うにはエルザは初めて会った日に好感を持ったらしい。母が言うには殿下はエルザにだけ王子の仮面を落としてしまう、今のように。
彼と俺は従兄弟だ。砕けた親しさはないが幼い頃から家族ぐるみの付き合いがある。彼の戸惑いや哀愁など様々な気持ちの変化を目撃するようになったのはここ数年のことだ。
「ティナにそっくりな娘を産んで。うちのアランと婚約させるの。交流は毎日よ。いっそ王宮に住めばいいわ。幼い頃からゆーっくり教育すれば後が楽だしね」
「いくらなんでも無理よ」
殿下は俺に目で合図を送るが、それがわかるほど親しくはない。
「殿下、陛下にティナ達の居住をお願いしてきてくださらない?」
殿下はニッコリと微笑んだ。
「い、一応聞いてみるが希望は1%もないと思うよ。前例がないからね」
「そんなこと言って!うちのアランの花嫁さんをレオナルドにとられてもいいのですか!」
「男の子が生まれたらどうするんだい?」
「親友になるに決まっています。乳兄弟もいいわね」
ちょっと待て、誰の乳をやるんだ?まさかクリスティーナの母乳をアランに飲ませる気が!?その頃にはアランはだいぶ大きくなっているぞ!
「クリスティーナ嬢に似れば可能かもしれないけど、ヒューゴに似たらどうするんだ?」
殿下、どういう意味だ?
「……」
王子妃もなんで押し黙るんだよ。
「いくらなんでもヒューゴ様も子どもの頃くらいは可愛かったはずです。転んで泣いたり怖い夢を見たと母親に抱きついたり、仕事に行くという父親を引き止めたり」
そんな記憶はないな。それよりティナ、“いくらなんでも子どもの頃くらいは”とはどういうことだ?
「ジオ公爵夫人から伝え聞いた話だと、ヒューゴは転んだくらいでは泣かないし、歩くようになると甘えるなんてことは無かったらしい。生まれながらにしてジオ家の濃い血を継いだ子だったって話だよ」
「え?ヒューゴ様?」
まずい!まだジオ家が何をしているのか教えていないのに!
「い、色濃く親父に似てるだろう?」
「う~ん、でも夫人の雰囲気ももっているのよね」
良かった、誤魔化せた。
「あ、そろそろ時間だな、殿下、王子妃様、素敵な時間をありがとうございました」
「え!もう!?
ティナぁ~!帰っちゃ嫌~!」
王子妃はクリスティーナに抱き付いてぐずり始めた。嘘泣きだろう?その涙は自由自在に出るんだろう?いくらクリスティーナでもそろそろ耐性が……
「エルザ、私も胸が痛いのよ」
何で効果があるんだよ…
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