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罠
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サリモア公爵邸のパーティ会場に入ると、ご挨拶を交わしたことがない方が多かった。
これは壁の花とかテラスに逃げることになりそうね。奥にジネットがいるわ。良かった。
「飲み物をいただこうか」
「はい」
私にジュースを渡し、シャルル様はシャンパンを手に取った。何故私にはジュースを渡すのか聞いたことがない。子供扱いなのか、酔って醜態を晒すなということなのか…。
「ようこそ」
振り向くと、今夜の主役サリモア公子が彼の妻を連れ添っていた。
「ご招待いただきありがとうございます。お誕生日おめでとうございます」
「ありがとう。
妹がお世話になっているようだね。ヘインズくん」
「友人としてお付き合いをさせていただいております。サリモア夫人、私はシャルル・ヘインズと申します」
「オリヴィア・サリモアと申します。アレクシア様があなたにぞっこんだとか…そちらの方は?」
「彼女は婚約者です」
「クリスティーナ・セルヴィーと申します。
お誕生日おめでとうございます」
「婚約者…」
サリモア公女と親しくしているシャルル様に婚約者なんて存在がいたことに夫人は驚いているようだった。
私は微笑むしかない。
「おっ、クリスティーナ嬢」
「モルゾン公子、ごきげんよう。ジネット、今夜も素敵よ」
「ティナこそ」
「ゼインはセルヴィー嬢と親しいのか?」
「婚約者の友人で、去年からモルゾン家でも仲良くしてもらっているよ。父も母もクリスティーナ嬢を気に入っているし、エステルなんか彼女にべったりだよ」
「そうなんだ」
モルゾン公子の説明を受けて サリモア公子が私を見た。
「シャルル様ぁ~」
いつもの声が聞こえると、シャルル様の背後から彼の腕に美人が絡み付いた。
「アレクシア様」
「シャルル様、今夜は私の側にいてくださる?」
「婚約者はどうなさったのです?」
「緊急の用事が出来たから来ていないの。
ね、いいでしょう?」
シャルル様は少し困惑している。
「アレクシア様、令息は婚約者を同伴しているのよ」
「お義姉様、婚約者といってもお飾りの婚約者ですわ。他人のように過ごしていますもの。
いつもシャルル様は私達と一緒におりますわ」
「今夜は駄目だ」
「お兄様が決めることではありませんわ」
シャルル様は答えない。私に言わせたいのね。
「シャルル様、私のことは気にせずにサリモア公女の側にいてあげてください」
「……」
「ほら、言った通りでしょう」
「決まりか?」
最近よく聞く声が私の背後から聞こえた。
「ヒューゴ様!」
サリモア公女は彼の名を口にした。
「公女、俺の名を勝手に呼ばないでくれ。ヒューゴと呼んでいいと言った女はクリスティーナだけだ」
「え!?」
私以外の6人は声を揃えた。
「で、決まったのか?」
「何がですか?」
「おまえが独りになることだよ」
「……」
「……決まったようだな。
よし、クリスティーナ 行くぞ」
「ちょっと!」
ジオ公子は私の腰に手をまわし、輪から抜けた。
「公子、私はひとりで大丈夫です」
「あんなことをいつも許しているのか」
「そういう約束なので大丈夫です」
ジオ公子は私をテラスに連れ出すと、約束の内容について問い詰めた。
「はぁ!?何なんだよそれ」
「貴族の政略結婚には珍しいことではありません。それに私の片想いを父が汲み取って、婚約に至りました。シャルル様にとっては売られるみたいでいい気はしないのでしょう。
これは代償なのです。
私は好きな人の正妻になれることに感謝をしなくてはなりません」
「顔だけで選んだんだろう?」
そう言われると…一目惚れだから否定できないけど。
「……」
「あいつとはタイプが違うだけで俺の顔も良いぞ」
「ぷっ」
「何で笑うんだよ、事実だろう」
「そうですね、事実ですね」
「何だその適当な返事は」
この変態ストーカーの存在に元気付けられるなんて。
これは壁の花とかテラスに逃げることになりそうね。奥にジネットがいるわ。良かった。
「飲み物をいただこうか」
「はい」
私にジュースを渡し、シャルル様はシャンパンを手に取った。何故私にはジュースを渡すのか聞いたことがない。子供扱いなのか、酔って醜態を晒すなということなのか…。
「ようこそ」
振り向くと、今夜の主役サリモア公子が彼の妻を連れ添っていた。
「ご招待いただきありがとうございます。お誕生日おめでとうございます」
「ありがとう。
妹がお世話になっているようだね。ヘインズくん」
「友人としてお付き合いをさせていただいております。サリモア夫人、私はシャルル・ヘインズと申します」
「オリヴィア・サリモアと申します。アレクシア様があなたにぞっこんだとか…そちらの方は?」
「彼女は婚約者です」
「クリスティーナ・セルヴィーと申します。
お誕生日おめでとうございます」
「婚約者…」
サリモア公女と親しくしているシャルル様に婚約者なんて存在がいたことに夫人は驚いているようだった。
私は微笑むしかない。
「おっ、クリスティーナ嬢」
「モルゾン公子、ごきげんよう。ジネット、今夜も素敵よ」
「ティナこそ」
「ゼインはセルヴィー嬢と親しいのか?」
「婚約者の友人で、去年からモルゾン家でも仲良くしてもらっているよ。父も母もクリスティーナ嬢を気に入っているし、エステルなんか彼女にべったりだよ」
「そうなんだ」
モルゾン公子の説明を受けて サリモア公子が私を見た。
「シャルル様ぁ~」
いつもの声が聞こえると、シャルル様の背後から彼の腕に美人が絡み付いた。
「アレクシア様」
「シャルル様、今夜は私の側にいてくださる?」
「婚約者はどうなさったのです?」
「緊急の用事が出来たから来ていないの。
ね、いいでしょう?」
シャルル様は少し困惑している。
「アレクシア様、令息は婚約者を同伴しているのよ」
「お義姉様、婚約者といってもお飾りの婚約者ですわ。他人のように過ごしていますもの。
いつもシャルル様は私達と一緒におりますわ」
「今夜は駄目だ」
「お兄様が決めることではありませんわ」
シャルル様は答えない。私に言わせたいのね。
「シャルル様、私のことは気にせずにサリモア公女の側にいてあげてください」
「……」
「ほら、言った通りでしょう」
「決まりか?」
最近よく聞く声が私の背後から聞こえた。
「ヒューゴ様!」
サリモア公女は彼の名を口にした。
「公女、俺の名を勝手に呼ばないでくれ。ヒューゴと呼んでいいと言った女はクリスティーナだけだ」
「え!?」
私以外の6人は声を揃えた。
「で、決まったのか?」
「何がですか?」
「おまえが独りになることだよ」
「……」
「……決まったようだな。
よし、クリスティーナ 行くぞ」
「ちょっと!」
ジオ公子は私の腰に手をまわし、輪から抜けた。
「公子、私はひとりで大丈夫です」
「あんなことをいつも許しているのか」
「そういう約束なので大丈夫です」
ジオ公子は私をテラスに連れ出すと、約束の内容について問い詰めた。
「はぁ!?何なんだよそれ」
「貴族の政略結婚には珍しいことではありません。それに私の片想いを父が汲み取って、婚約に至りました。シャルル様にとっては売られるみたいでいい気はしないのでしょう。
これは代償なのです。
私は好きな人の正妻になれることに感謝をしなくてはなりません」
「顔だけで選んだんだろう?」
そう言われると…一目惚れだから否定できないけど。
「……」
「あいつとはタイプが違うだけで俺の顔も良いぞ」
「ぷっ」
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「そうですね、事実ですね」
「何だその適当な返事は」
この変態ストーカーの存在に元気付けられるなんて。
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