笑顔で冷遇する婚約者に疲れてしまいました

ユユ

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生息範囲

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翌朝 食事をした後、裏庭に出てお父様がサブマ草で間違いないだろうと結論を出した。
だけど念のために本物か試す必要があった。

お父様が持ってきた道具でサブマ草を採取し刺を処理して擦り潰した。その後は絞ってエキスを抽出し、持って来ていたセルヴィー製の傷用軟膏に混ぜた。

ヒューゴ様が袖を捲ると兵士から受け取った小さなナイフを当てた。薄く皮が切れ血が滲んだ。
血が止まった後に軟膏を塗った。
本当はお父様が自分の身で試そうとしていたところをヒューゴ様が無言で自身に傷を付けてしまった。

“愛するクリスティーナの父君に傷などつけさせるわけがありません”と言った。
お父様は嬉しそうだった。


その後は、ジオ家の護衛の隊長から説明があった。
地図を広げテーブルの上に置いた。

隊長
「この太枠が子爵の所有地です。ここがこの屋敷です。裏の一帯、あとはこの辺りに広範囲、そしてこちらの小川の側にも生えています」

ユーグ
「……敷地の3割ですね」


「その先の話は 明日ヒューゴ殿の傷の経過を確認してからにしましょう。
今日はこの太枠の所有地の境を確認してみませんか

ヒューゴ
「そうですね。希少な草が生えていると分かった以上、防犯対策も練らないといけませんから」

隊長
「ここは馬車も通ることができる道幅がありますが、こちらからずっとこちらまで人が1人通ることができる程度の道です。獣道のような感じです。皆様が通るのであれば草や枝を切りながら進むことになります。この辺りは道はありません。ただ土地の境界線の目印はあります。パッと見た感じでは分かりませんが、草などを掻き分けると出てきました」


「これは…私と兵士だけで行くとしよう」

ヒューゴ
「俺も行きます」

ユーグ
「私も行きます。私の土地となってしまった以上 確認は必要ですらから」


「私も、」

ヒューゴ
「ティナは駄目だ。道がないところは大変だ。枝や蔦などで顔を切るかもしれない。獣も出てくるかもしれないし、虫もたくさんいるぞ?もちろんでっかい蜘蛛や、」

ひっ!!


「お言葉に甘えて留守番をします」

ヒューゴ
「留守の間にサブマ草に触るなよ」

…何で分かったのかしら。


「駄目だからな?」


「はい、お父様」

ヒューゴ
「カイルとロックを残しておくが、外出は駄目だ。
玄関から出て3歩までならいい」

私はお父様を見つめたけど


「5歩までだぞ」


「2歩増えただけじゃないですか」


「王都の屋敷に留守番させておくべきだったか?」


「お気を付けて」

現地で大人しくいうことを聞くという条件で同行を許してもらっていたので引き下がるしかない。


軽食を持ってみんなが出発した後、この建物にあると聞いた服に着替えた。昔住んでいた人の服らしい。

着替えて髪の毛を一つに結い、外に出た。

「あの、5歩を超えましたが」

「これは外出じゃないの。仕事よ」

「ですが」

「早くしないと終わらないから」

御者が馬車の高いところや中を掃除した後、私は側面や車輪を掃除ブラシと水を使って泥や砂埃などを落とした。
馬の手入れは御者に任せて、もう一度着替えると、今度は洗濯物を干すのを手伝った。
そして夕食の仕込みの手伝いをした。

刃物を持とうとしたら止められたけど、何度か野菜や果物くらい切っている。
カイル卿やロック卿は生きた心地がしないからと、結局私から刃物を取り上げて2人が野菜を切っていた。

酷いと思う。

昼食後、仕方がないので手が全く回っていない掃除をした。管理だけの別荘に大勢で押し掛けたら当然だ。
水回りやトイレは既に終わっていたので、水汲みはしないという約束で拭き掃除や掃き掃除を始めた。

「あれ?」

二階の主寝室にある本棚の本をどかして拭いていると奥の板に違和感を覚えた。押してみると、正方形の背面板が中心を軸にくるっと回った。隣も本をどかしてみたけど1箇所だけだった。怖いので板は元に戻してユーグ様達が戻るのを待った。


夕刻、日が暮れだした頃にみんなが戻って来た。
汚れたブーツを脱ぎ、服に付いた汚れを外で払っていた。

「ユーグ様、こっちに来てください」

少しぐったりしていたユーグ様の腕を掴んで引っ張って2階の部屋に向かった。

「本をどかしてある本棚の背板を押してください。下か上でお願いします」

「分かりました」

キュッと軸が回る音がした。

「うわ、何だこれ」

「お掃除していたら見付けてしまいました。
中に何かあるのか無いのかも分かりません。とにかくネズミとか虫がいたら怖いので」

そこに後から来たヒューゴ様達が覗きに来た。

「ランプを」

兵士がランプを手渡し、ユーグ様が覗いた。

「虫はいませんね。箱があります」

「これは防水と防虫の効果のある塗料を箱に塗っているようですね」

お父様がそう言いながら箱に触れた。
セルヴィーもこの塗料は使っている。

ユーグ様が開けると封筒が入っていた。
中を開けると遺言書だった。

“この手紙を読んでいるのはアレクかロミオか。
私はまだ生きているのか 死んでいるのか。

私は日々何かを頭から失ってしまう。
日付けが分からなくなり暗算が出来なくなり、ほとんどの友人や使用人の名前も忘れてしまった。
息子達の名前を忘れる前に遺言を残す。
この屋敷を相続し手紙を見つけた者に個人財産を遺そう。

一階の書斎の机の下に床下納が隠れている。
そこに金貨、金塊をしまった。
私を思い出してくれたであろう発見者に相続させる”

「参りましたね」

「本当にあるか見てみましょう」

全員で一階に降りた。

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