99 / 215
おまえじゃない
しおりを挟む
【 シャルルの視点 】
メルト子爵邸に父上と訪問をした。
疲れた様子のユーグが応接間で応対した。
父「一体セルヴィー家と何をしているんだ」
ユ「特には。土地の売買をしただけですよ」
父「ユーグ、長い付き合いじゃないか。正直に話してくれ」
ユ「借金の担保として受け取った土地と建物をセルヴィー伯爵が引き取ってくれただけです」
父「何もなくして引き取るわけがない。何があるんだ」
ユ「確かにメルト家とヘインズ家は長い付きあいではありますが何でもペラペラと話せるわけが無いではありませんか。特に所有権の移った土地のことを軽々しく話せませんよ」
父「見に行けば分かるか?」
ユ「ジオ公爵家を敵に回したいのなら調べて行ってみればどうですか。
ジオ家を敵に回すということは王妃殿下も漏れなく敵に回しますけど、大丈夫ですか?」
父「っ!」
僕「ユーグ、本当にクリスティーナとは何もないんだな?」
ユ「彼女とは友人になっただけだ。それに公子がいるのにどうこうなれるわけがない」
僕「……」
父「ジオ公子とクリスティーナはそんなに仲が良いのか」
ユ「ええ。クリスティーナ様は公子に心を開いていますし、公子は彼女を溺愛していますよ。クリスティーナ様はとても魅力的な女性ですから当然でしょう」
父「はぁ…」
メルト邸から戻った後は、クリスティーナとの関係を修復しろと叱責を受けた。
クリスティーナはまだいくつかパーティや夜会に誘われていたはず。僕を誘えばエスコートするし話もできる。だが彼女からは一切誘うことはしない。僕がそうするように最初に言ったから。
僕を見つめるクリスティーナの眼差しに鬱陶しさを覚えて見るなと言った。今では彼女の瞳にはあの頃のような熱を感じないし見もしない。
代わりにジオ公子を見つめているとでも言うのだろうか。
彼女は思ったより仕事を重視する人だと知った。最近まで貴族令嬢の暇つぶしか好奇心を満たすために、セルヴィー家が彼女を少し関わらせているのだと思っていた。だけどあの気迫はそうではない。
王都に出ている店2件はかなりの人気店で、今では新商品の発売は店頭に並んだその日中に完売して入荷待ちとなると令嬢達が話していた。母上も“クリスティーナに気を利かせて持って来させるように言いなさい”などと僕に言っていた。だがそんな物乞いみたいな真似を彼女にするのは嫌だったので、婚約したての頃は彼女が“夫人にどうですか”と言っていたのを断った。煩わしい関係になるきっかけを与えたくなかったから。
もし、受け入れていたらそれをきっかけにして 屋敷に訪ねてきていたはずだ。だがやはり屋敷に来られたら鬱陶しかったはずだ。
今はもう彼女を鬱陶しいなどと感じない。
その瞳に映り込みたいと思うし、笑顔を見せて欲しと思っている。以前は僕の瞳の色のドレスを着ることに苛立ちが募った。今ではせめて青い宝石でもリボンでもいいから身に付けて欲しいと思っている。
ダンスのとき、彼女はギリギリまで距離を置いた。
それは今まで僕がとっていた距離だ。なのに今はその距離に不満だし胸を針で刺されたような痛みを感じた。だから引き寄せた。
クリスティーナを抱きしめたらどんな感じだろうか。他の令嬢達のように何も感じないのだろうか。令嬢達を抱きしめるのは寝るための通過儀礼に過ぎない。キスでさえも。
クリスティーナとキスをしたらはっきりと分かるだろうか。
長期休暇は残りわずか。クリスティーナに一緒に過ごさないかと手紙を出した。
だけど招待も残っているし勉強もしなくてはならないと返事が返ってきた。
僕が真面目に勉強をしていたらクリスティーナの隣に座って教えただろうけど、クリスティーナは学年の優秀な生徒が集まるクラスにいるし、僕は成績が良くなかったから、教えると言って隣に座ってもいざ問題を見たら解けない可能性もある。そんな恥ずかしい事態は避けたい。
「こちらの箱と一緒にお手紙が届きました」
執事が持ってきた手紙を先に受け取り 封筒の裏を見た。
“アマリア・ビクセン”
「箱を開けてくれ」
開けると、一番上にハンカチが3枚乗っていてあまり上手くない刺繍がなされていた。
ハンカチの下には紙が敷いてあり、取り除かせるとクッキーが敷き詰められていた。
封筒を開けて手紙を読んだ。
“愛するシャルル様
いかがお過ごしでしょうか。
一昨日のお手紙のお返事をいただけず
寂しい思いをしております。
あの夜、激しく私を抱いてくださったこと
とても嬉しく思っております。
シャルル様に純潔を捧げることができて
本当に幸せです。
次はもっとシャルル様の熱い思いを
受け止めることができると思います。
早くお会いしたいです。
シャルル様を思いハンカチに刺繍をしました。
クッキーも私の手作りです。
私のことを思い浮かべながら
お召し上がりください。
愛を込めて
あなたのアマリアより”
グシャ
どうしたらこのような勘違いができるんだ!?
血の気が引くような寒気と鳥肌に襲われた。
“僕は君を愛していない。
一夜の過ちだ。
二度と関わらないでくれ”
そう返事を出したのに また数日後、愛の言葉とともに手作りのクッキーが送られてきた。
捨てずに送り返して、以降は受取拒否をすることにした。
メルト子爵邸に父上と訪問をした。
疲れた様子のユーグが応接間で応対した。
父「一体セルヴィー家と何をしているんだ」
ユ「特には。土地の売買をしただけですよ」
父「ユーグ、長い付き合いじゃないか。正直に話してくれ」
ユ「借金の担保として受け取った土地と建物をセルヴィー伯爵が引き取ってくれただけです」
父「何もなくして引き取るわけがない。何があるんだ」
ユ「確かにメルト家とヘインズ家は長い付きあいではありますが何でもペラペラと話せるわけが無いではありませんか。特に所有権の移った土地のことを軽々しく話せませんよ」
父「見に行けば分かるか?」
ユ「ジオ公爵家を敵に回したいのなら調べて行ってみればどうですか。
ジオ家を敵に回すということは王妃殿下も漏れなく敵に回しますけど、大丈夫ですか?」
父「っ!」
僕「ユーグ、本当にクリスティーナとは何もないんだな?」
ユ「彼女とは友人になっただけだ。それに公子がいるのにどうこうなれるわけがない」
僕「……」
父「ジオ公子とクリスティーナはそんなに仲が良いのか」
ユ「ええ。クリスティーナ様は公子に心を開いていますし、公子は彼女を溺愛していますよ。クリスティーナ様はとても魅力的な女性ですから当然でしょう」
父「はぁ…」
メルト邸から戻った後は、クリスティーナとの関係を修復しろと叱責を受けた。
クリスティーナはまだいくつかパーティや夜会に誘われていたはず。僕を誘えばエスコートするし話もできる。だが彼女からは一切誘うことはしない。僕がそうするように最初に言ったから。
僕を見つめるクリスティーナの眼差しに鬱陶しさを覚えて見るなと言った。今では彼女の瞳にはあの頃のような熱を感じないし見もしない。
代わりにジオ公子を見つめているとでも言うのだろうか。
彼女は思ったより仕事を重視する人だと知った。最近まで貴族令嬢の暇つぶしか好奇心を満たすために、セルヴィー家が彼女を少し関わらせているのだと思っていた。だけどあの気迫はそうではない。
王都に出ている店2件はかなりの人気店で、今では新商品の発売は店頭に並んだその日中に完売して入荷待ちとなると令嬢達が話していた。母上も“クリスティーナに気を利かせて持って来させるように言いなさい”などと僕に言っていた。だがそんな物乞いみたいな真似を彼女にするのは嫌だったので、婚約したての頃は彼女が“夫人にどうですか”と言っていたのを断った。煩わしい関係になるきっかけを与えたくなかったから。
もし、受け入れていたらそれをきっかけにして 屋敷に訪ねてきていたはずだ。だがやはり屋敷に来られたら鬱陶しかったはずだ。
今はもう彼女を鬱陶しいなどと感じない。
その瞳に映り込みたいと思うし、笑顔を見せて欲しと思っている。以前は僕の瞳の色のドレスを着ることに苛立ちが募った。今ではせめて青い宝石でもリボンでもいいから身に付けて欲しいと思っている。
ダンスのとき、彼女はギリギリまで距離を置いた。
それは今まで僕がとっていた距離だ。なのに今はその距離に不満だし胸を針で刺されたような痛みを感じた。だから引き寄せた。
クリスティーナを抱きしめたらどんな感じだろうか。他の令嬢達のように何も感じないのだろうか。令嬢達を抱きしめるのは寝るための通過儀礼に過ぎない。キスでさえも。
クリスティーナとキスをしたらはっきりと分かるだろうか。
長期休暇は残りわずか。クリスティーナに一緒に過ごさないかと手紙を出した。
だけど招待も残っているし勉強もしなくてはならないと返事が返ってきた。
僕が真面目に勉強をしていたらクリスティーナの隣に座って教えただろうけど、クリスティーナは学年の優秀な生徒が集まるクラスにいるし、僕は成績が良くなかったから、教えると言って隣に座ってもいざ問題を見たら解けない可能性もある。そんな恥ずかしい事態は避けたい。
「こちらの箱と一緒にお手紙が届きました」
執事が持ってきた手紙を先に受け取り 封筒の裏を見た。
“アマリア・ビクセン”
「箱を開けてくれ」
開けると、一番上にハンカチが3枚乗っていてあまり上手くない刺繍がなされていた。
ハンカチの下には紙が敷いてあり、取り除かせるとクッキーが敷き詰められていた。
封筒を開けて手紙を読んだ。
“愛するシャルル様
いかがお過ごしでしょうか。
一昨日のお手紙のお返事をいただけず
寂しい思いをしております。
あの夜、激しく私を抱いてくださったこと
とても嬉しく思っております。
シャルル様に純潔を捧げることができて
本当に幸せです。
次はもっとシャルル様の熱い思いを
受け止めることができると思います。
早くお会いしたいです。
シャルル様を思いハンカチに刺繍をしました。
クッキーも私の手作りです。
私のことを思い浮かべながら
お召し上がりください。
愛を込めて
あなたのアマリアより”
グシャ
どうしたらこのような勘違いができるんだ!?
血の気が引くような寒気と鳥肌に襲われた。
“僕は君を愛していない。
一夜の過ちだ。
二度と関わらないでくれ”
そう返事を出したのに また数日後、愛の言葉とともに手作りのクッキーが送られてきた。
捨てずに送り返して、以降は受取拒否をすることにした。
2,848
あなたにおすすめの小説
「君は地味な裏方だ」と愛人を優遇するサイコパス気質の夫。〜私が去った後、商会の技術が全て私の手によるものだと気づいても、もう手遅れです〜
水上
恋愛
「君は地味だから裏方に徹しろ」
効率主義のサイコパス気質な夫は、妻であるクララの磨いた硝子を愛人の手柄にし、クララを工房に幽閉した。
彼女は感情を捨て、機械のように振る舞う。
だが、クララの成果を奪い取り、夫が愛人を壇上に上げた夜、クララの心は完全に凍りついた。
彼に残した書き置きは一通のみ。
クララが去った後、商会の製品はただの石ころに戻り、夫の計算は音を立てて狂い始める。
これは、深い絶望と、遅すぎた後悔の物語。
一年だけの夫婦でも私は幸せでした。
クロユキ
恋愛
騎士のブライドと結婚をしたフローズンは夫がまだ婚約者だった姉を今でも想っている事を知っていた。
フローズンとブライドは政略結婚で結婚式当日にブライドの婚約者だった姉が姿を消してしまった。
フローズンは姉が戻るまでの一年の夫婦の生活が始まった。
更新が不定期です。誤字脱字がありますが宜しくお願いします。
初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結保証】
星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。
だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。
しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。
王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。
そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。
地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。
⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。
「最高の縁談なのでしょう?なら、かわってあげたら喜んでくれますよね!」
みっちぇる。
恋愛
侯爵令嬢のリコリスは20歳。立派な嫁きおくれである。
というのも、義母がなかなかデビューさせてくれないのだ。
なにか意図を感じつつも、周りは義母の味方ばかり。
そん中、急にデビュタントの許可と婚約を告げられる。
何か裏がある――
相手の家がどういうものかを知り、何とかしようとするリコリス。
でも、非力なリコリスには何も手段がない。
しかし、そんな彼女にも救いの手が……?
結婚初夜、「何故彼女が死んでお前が生きているんだ」と夫に言われました
ましゅぺちーの
恋愛
侯爵令嬢のアリサは婚約者だった王太子テオドールと結婚した。
ちょうどその半年前、アリサの腹違いの妹のシアは不慮の事故で帰らぬ人となっていた。
王太子が婚約者の妹のシアを愛していたのは周知の事実だった。
そんな彼は、結婚初夜、アリサに冷たく言い放った。
「何故彼女が死んでお前が生きているんだ」と。
婚約破棄の代償
nanahi
恋愛
「あの子を放って置けないんだ。ごめん。婚約はなかったことにしてほしい」
ある日突然、侯爵令嬢エバンジェリンは婚約者アダムスに一方的に婚約破棄される。破局に追い込んだのは婚約者の幼馴染メアリという平民の儚げな娘だった。
エバンジェリンを差し置いてアダムスとメアリはひと時の幸せに酔うが、婚約破棄の代償は想像以上に大きかった。
遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。
沼野 花
恋愛
私は、夫にも子供にも選ばれなかった。
その事実だけを抱え、離縁を突きつけ、家を出た。
そこで待っていたのは、最悪の出来事――
けれど同時に、人生の扉がひらく瞬間でもあった。
夫は愛人と共に好きに生きればいい。
今さら「本当に愛していたのは君だ」と言われても、裏切ったあなたを許すことはできない。
でも、子供たちの心だけは、必ず取り戻す。
妻にも母にもなれなかった伯爵夫人イネス。
過去を悔いながらも、愛を手に入れることを決めた彼女が辿り着いた先には――
三年の想いは小瓶の中に
月山 歩
恋愛
結婚三周年の記念日だと、邸の者達がお膳立てしてくれた二人だけのお祝いなのに、その中心で一人夫が帰らない現実を受け入れる。もう彼を諦める潮時かもしれない。だったらこれからは自分の人生を大切にしよう。アレシアは離縁も覚悟し、邸を出る。
※こちらの作品は契約上、内容の変更は不可であることを、ご理解ください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる