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再会後は友人で
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休みになり身支度をしている。今日はゼオロエン侯爵夫人のお茶会で粗相があってはいけない。とにかく清楚なイメージに仕上げてもらった。お泊まりの荷物は先に積んでもらい、購入した手袋を持って馬車に乗った。
到着すると使用人が荷物を下ろして客室へ運んでくれる。
「ティナ」
「ジネット。招待ありがとう」
「来てくれて嬉しいわ。
ティナ、実はハングベリー侯爵夫人も招待客みたいなの」
「大丈夫よ。ハングベリー侯爵夫人は感じのいい方だったもの」
会場へ行くと夫人が迎えてくださった。
「まあ、クリスティーナ。よく来てくれたわね」
「お招きいただきありがとうございます、ゼオロエン侯爵夫人」
「堅苦しいわね。イヴェットと呼んでちょうだい」
「はい、イヴェット様」
そこにハングベリー夫人が到着した。
「イヴェット様、ご招待ありがとうございます」
「お久しぶりですわ、パメラ様。あら、 アフレック様」
「ごきげんよう、ゼオロエン侯爵夫人。私は母を送って…セルヴィー嬢」
どうやらハングベリー夫人はご子息に送ってもらったらしい。親孝行ね。ご子息が私に気が付くと夫人も私を視界に入れた。
「イヴェット様、セルヴィー嬢とお話ししてもいいかしら」
「え? ええ、どうぞ」
「セルヴィー嬢、娘が失礼な言動を取ってしまい申し訳ありません」
「侯爵夫人、頭を上げてください」
「私達はセルヴィー嬢とお会いできて本当に嬉しかったのに、娘を我儘に育ててしまったばかりに」
「私からも謝ります。というか私自身もセルヴィー嬢に失礼をしました。勘違いが過ぎました、申し訳ありません」
「本当におふたりとも頭を上げてください」
「いいえ」
そこでイヴェット様が耳打ちをした。
「良かったら“許します”と言って差し上げて」
私はハングベリー夫人の手を取った。
「許しますわ、侯爵夫人」
「ありがとうございます」
「ご令息も許しますわ」
「ありがとうございます。どうか アフレックとお呼びください」
「私のこともパメラと呼んでください」
「パメラ様、 アフレック様お茶会を楽しみしょう。私のことはクリスティーナとお呼びください」
テーブルを見るとウィロウ侯爵夫人もいらっしゃった。イヴェット様が他の招待客に紹介してくださった。ホロウ侯爵夫人とイオナード侯爵夫人だった。
「その節はお見舞いをありがとうございました」
「もう傷は治ったのかしら」
「はい。少し傷跡は残りましたが大丈夫です」
「酷いことをするわね」
「でも天罰が降りたじゃない」
「あの、もしかして侯爵夫人限定のお茶会でしょうか」
「そうなのよ」
「私、お邪魔でしたね」
「そんなことを言ったら女性のお茶会に捩じ込んで座ってる私は居辛くなるよ」
「アフレック様は侯爵家のご令息ですから」
「クリスティーナ、元気がないと聞いたけどビクセン伯爵令嬢のせい?」
「そういうわけでは」
「当然よ。婚約者が他の令嬢を孕ませていたら憂鬱になるわよ」
「まあ、でもジオ公子が大事にしてくださるのでしょう?」
「…そうですね」
「失礼、ご夫人方。クリスティーナ様と花を見てきてもいいでしょうか」
「そうね、連れて行って差し上げて」
「ありがとうございます。
クリスティーナ様」
差し伸べられた手の上に手を重ね置いた。
その後は アフレック様はシャルル様のことにもヒューゴ様のことにも触れずに違う話題を出すなど気を遣ってくださった。
「私はずっと自由に世界を回れたらと妄想していたよ。誰かの旅行手記を読み挿絵を見て自分もそこにいる気になることしかできなかった。未だに国外へ出たことがないのだから夢に過ぎないのだろう」
いろいろ話しているうちに、 アフレック様は憧れる生き方を話し出した。
「ハングベリー侯爵家の跡継ぎには難しいですわね。気ままに世界を回るのは現実的ではありませんわ。貴族に生まれたからにはしがらみも義務もありますし、世話をされて生きてきた私達貴族は一人旅なんて無謀なことです。
まず襲われます。多少の防衛になるよう剣術などを身に付けなければなりません。相場を知らなければ余分に支払うことになりますし、野宿ができなければ宿を取らなくてはなりませんし、狩りや魚獲りやキノコなど山菜の採取ができて火を越しをして調理ができなければ飢えます。ときにはそれを売ってお金を貯めて穴の空いた靴を買い換えたり服を買ったりしなくてはなりません。旅の途中の怪我や病気は?森で薬草を採取して適切な摂取の仕方ができますか?言葉の壁も出てくるでしょう。
それらを補うのは結局お金です。宿代、食事代、服や必需品代、薬代や治療費、護衛代、馬も必要ですよ。途中で買い替えることもあるでしょう。馬も生き物ですから怪我をしたり病気もします。国によっては通訳が必要です。
そんな大金は裕福な両親からもらうしかありません。費用を出せる家は平民でも貴族でも 世界を巡る旅への出発を許しません」
「言われてみると働かずに旅だけなんて道楽だな。かなりの知識と知恵が必要になるし。それにあっという間に襲われて死にそうだ」
「うっかり毒キノコを食べそうですね。
世界とは言いませんが父は仕事で他国へ行くことが多いのですよ。最近は忙しくて機会をあまり作れないようですが」
「そうか、そういう手がまだあったのだな。仕事として行けばいいのか」
「はい。ただし結果を残さなくてはなりません」
「今度、セルヴィー伯爵が王都に来た際には紹介してくれないだろうか。外国へ行った話を聞きたい。どういう理由で行ってどういう結果になったのかも聞きたい」
「聞いてみますね。話せないことも多いと思いますが」
「もちろんだ。ありがとう。
クリスティーナ様、私を友人にしてくれないか?」
「…そうですね。では友人の入口から始めましょう。あのようなことは駄目ですよ?」
「承知した」
こうして新しい友人ができた。
到着すると使用人が荷物を下ろして客室へ運んでくれる。
「ティナ」
「ジネット。招待ありがとう」
「来てくれて嬉しいわ。
ティナ、実はハングベリー侯爵夫人も招待客みたいなの」
「大丈夫よ。ハングベリー侯爵夫人は感じのいい方だったもの」
会場へ行くと夫人が迎えてくださった。
「まあ、クリスティーナ。よく来てくれたわね」
「お招きいただきありがとうございます、ゼオロエン侯爵夫人」
「堅苦しいわね。イヴェットと呼んでちょうだい」
「はい、イヴェット様」
そこにハングベリー夫人が到着した。
「イヴェット様、ご招待ありがとうございます」
「お久しぶりですわ、パメラ様。あら、 アフレック様」
「ごきげんよう、ゼオロエン侯爵夫人。私は母を送って…セルヴィー嬢」
どうやらハングベリー夫人はご子息に送ってもらったらしい。親孝行ね。ご子息が私に気が付くと夫人も私を視界に入れた。
「イヴェット様、セルヴィー嬢とお話ししてもいいかしら」
「え? ええ、どうぞ」
「セルヴィー嬢、娘が失礼な言動を取ってしまい申し訳ありません」
「侯爵夫人、頭を上げてください」
「私達はセルヴィー嬢とお会いできて本当に嬉しかったのに、娘を我儘に育ててしまったばかりに」
「私からも謝ります。というか私自身もセルヴィー嬢に失礼をしました。勘違いが過ぎました、申し訳ありません」
「本当におふたりとも頭を上げてください」
「いいえ」
そこでイヴェット様が耳打ちをした。
「良かったら“許します”と言って差し上げて」
私はハングベリー夫人の手を取った。
「許しますわ、侯爵夫人」
「ありがとうございます」
「ご令息も許しますわ」
「ありがとうございます。どうか アフレックとお呼びください」
「私のこともパメラと呼んでください」
「パメラ様、 アフレック様お茶会を楽しみしょう。私のことはクリスティーナとお呼びください」
テーブルを見るとウィロウ侯爵夫人もいらっしゃった。イヴェット様が他の招待客に紹介してくださった。ホロウ侯爵夫人とイオナード侯爵夫人だった。
「その節はお見舞いをありがとうございました」
「もう傷は治ったのかしら」
「はい。少し傷跡は残りましたが大丈夫です」
「酷いことをするわね」
「でも天罰が降りたじゃない」
「あの、もしかして侯爵夫人限定のお茶会でしょうか」
「そうなのよ」
「私、お邪魔でしたね」
「そんなことを言ったら女性のお茶会に捩じ込んで座ってる私は居辛くなるよ」
「アフレック様は侯爵家のご令息ですから」
「クリスティーナ、元気がないと聞いたけどビクセン伯爵令嬢のせい?」
「そういうわけでは」
「当然よ。婚約者が他の令嬢を孕ませていたら憂鬱になるわよ」
「まあ、でもジオ公子が大事にしてくださるのでしょう?」
「…そうですね」
「失礼、ご夫人方。クリスティーナ様と花を見てきてもいいでしょうか」
「そうね、連れて行って差し上げて」
「ありがとうございます。
クリスティーナ様」
差し伸べられた手の上に手を重ね置いた。
その後は アフレック様はシャルル様のことにもヒューゴ様のことにも触れずに違う話題を出すなど気を遣ってくださった。
「私はずっと自由に世界を回れたらと妄想していたよ。誰かの旅行手記を読み挿絵を見て自分もそこにいる気になることしかできなかった。未だに国外へ出たことがないのだから夢に過ぎないのだろう」
いろいろ話しているうちに、 アフレック様は憧れる生き方を話し出した。
「ハングベリー侯爵家の跡継ぎには難しいですわね。気ままに世界を回るのは現実的ではありませんわ。貴族に生まれたからにはしがらみも義務もありますし、世話をされて生きてきた私達貴族は一人旅なんて無謀なことです。
まず襲われます。多少の防衛になるよう剣術などを身に付けなければなりません。相場を知らなければ余分に支払うことになりますし、野宿ができなければ宿を取らなくてはなりませんし、狩りや魚獲りやキノコなど山菜の採取ができて火を越しをして調理ができなければ飢えます。ときにはそれを売ってお金を貯めて穴の空いた靴を買い換えたり服を買ったりしなくてはなりません。旅の途中の怪我や病気は?森で薬草を採取して適切な摂取の仕方ができますか?言葉の壁も出てくるでしょう。
それらを補うのは結局お金です。宿代、食事代、服や必需品代、薬代や治療費、護衛代、馬も必要ですよ。途中で買い替えることもあるでしょう。馬も生き物ですから怪我をしたり病気もします。国によっては通訳が必要です。
そんな大金は裕福な両親からもらうしかありません。費用を出せる家は平民でも貴族でも 世界を巡る旅への出発を許しません」
「言われてみると働かずに旅だけなんて道楽だな。かなりの知識と知恵が必要になるし。それにあっという間に襲われて死にそうだ」
「うっかり毒キノコを食べそうですね。
世界とは言いませんが父は仕事で他国へ行くことが多いのですよ。最近は忙しくて機会をあまり作れないようですが」
「そうか、そういう手がまだあったのだな。仕事として行けばいいのか」
「はい。ただし結果を残さなくてはなりません」
「今度、セルヴィー伯爵が王都に来た際には紹介してくれないだろうか。外国へ行った話を聞きたい。どういう理由で行ってどういう結果になったのかも聞きたい」
「聞いてみますね。話せないことも多いと思いますが」
「もちろんだ。ありがとう。
クリスティーナ様、私を友人にしてくれないか?」
「…そうですね。では友人の入口から始めましょう。あのようなことは駄目ですよ?」
「承知した」
こうして新しい友人ができた。
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