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「完売です。申し訳ございません」
王都の貴族街の店舗にて、店員が頭を下げた。
「酷いわ。数量が少なすぎよ」
「今回の記念品はあえて少なく生産しました。量産しては特別感が薄れてしまいますので」
「あなた、」
「ローズ様、それ以上は」
「だって」
「あの方はセルヴィー伯爵令嬢です」
「え?…あっ!!」
今日はお店の制服を着て店に立っていた。私の顔が大半のクレームを弾くから。
「申し訳ございません」ニッコリ
「あ、あまりにも素敵だったからつい興奮してしまいましたわ。気分を害さないでいただきたいわ」
「我が店への愛と思っております」
「また寄らせていただきますわ」
「ありがとうございました」
もう既に外に人を立たせて閉店の札を出している。店内は今のお客様が最後だった。彼女達の前のお客様が残りの商品3つを買い上げ完売してしまった。
「クリスティーナ様、早くジオ公爵邸に向かってください」
「大丈夫よ」
「大丈夫ではありません。お願いします、私達が叱られます」
「叱られるわけないじゃない」
従業員が手を合わせて懇願するので仕方なく後は任せてジオ邸に向かった。
「遅い、迎えにいくところだったんだぞ」
「遅いわよ」
「お疲れ様」
公爵様だけね。労ってくださるのは。
「ほら、時間がないの。まったく…普通は早朝から支度をするのよ?」
「大袈裟ですわ」
「大袈裟じゃないの。湯浴みの時間がないじゃないの。ベル、早く連れて行ってマッサージを始めて」
「かしこまりました。さあ、お嬢様、どうぞこちらへ」
公爵家の侍女に連行されて私専用の部屋に行くとメイド達が待ち構えていた。
手際良くマッサージを分担して始め、その後は軽く軽食を口にして歯を磨き、メイクを始めた。
本来なら私は出席できない建国祭。だけどヒューゴ様のパートナーとして王妃様から招待状が届いてしまった。公爵夫人からは“断れないわよ?”と言われて渋々。無駄な抵抗と知りつつも朝から店で売り子に扮し、奇跡という名の邪魔が入ってくれたら行かなくて済むと思っていた。
完売が早すぎる。
建国祭記念品は予約品の他に当日販売品を用意した。各種メイクブラシの柄を記念品仕様にしてみた。購入した商品を入れる袋もリボンも在庫限りで特別なものにした。一定の金額を超えると布製の手提げカバンに商品を入れて渡した。庶民が買い物に出て買った物を入れる程度のもので、丈夫な布を選びセルヴィー領の刺繍部隊が淵に刺繍をした。
予約品以外のことは全てシークレット。当日もお客様に勧めたり説明もしなかった。だけど、店の中の物が全て完売してしまった。開店1時間ちょっとで店を閉めることになるなんて。もう諦めてパーティの支度に向かうしかなかった。
「目立たないようにお願いね。できることなら存在感のない顔にして欲しいわ。王宮給仕か何かに見えたら最高よ。特別手当を出すわ」
「クリスティーナ?」
「こ、公爵夫人っ」
「馬鹿なことを言わないの。ヒューゴに給仕をエスコートさせるつもりなの?」
「会場の壁の色かカーテンの色をご存知ですか?」
「肌をえんじ色に塗るつもり?それともクリーム色に蔦と花を描く?」
「イタタタタッ お腹が痛いかもしれません」
「会場には医者が何人かいるから大丈夫よ。車椅子を用意してでも連れて行くわ」
「……夢に出て来そうなほど世界一派手にお願い」
「「え!?」」
「そんなことをするメイドはクビよ」
「いつも通りでお願いします」
何で見張っているのかしら。現地集合にしたいと言い張れば良かったわ。
ドレスは4人で揃えたものだ。色や材料は一緒だけどちょっとデザインが違う。いかにもな家族が仕上がった。
「綺麗だよ、クリスティーナ」
「胃酸が出そうでなによりです」
「胃酸を吐きたかったらすぐに言うんだぞ」
そうじゃない
「欲しい言葉とは程遠いです」
ヒューゴ様に抱き付いた。
「じゃあ、」
「待ちなさい。ヒューゴ 駄目よ、やっぱり留守番してイチャイチャしようなんて言ったら駄目。
行くの、絶対行くの。ほら、先に馬車に乗りなさい」
「ヒュー?」
身体を押し付けて…主に胸を押し付けながらヒューゴ様を見上げた。
「は、母上…留守番を」
「駄目です!!クリスティーナ、いらっしゃい!」
「嫌ですぅ~」
「会場には伯爵夫妻もみえるのよ。洗いざらい話してもいいの?」
「どの辺りの話ですか?それ次第で、」
「行くぞ」
うっ…公爵様が馬車までエスコートをくださったらもう乗るしかない。
ゴトゴトゴトゴト
「もう…幼い娘をもった気分だわ」
「そこがいいんですよ」
「はいはい、分かったわよ」
よし、今日はヒューゴ様を味方に付けよう。
王都の貴族街の店舗にて、店員が頭を下げた。
「酷いわ。数量が少なすぎよ」
「今回の記念品はあえて少なく生産しました。量産しては特別感が薄れてしまいますので」
「あなた、」
「ローズ様、それ以上は」
「だって」
「あの方はセルヴィー伯爵令嬢です」
「え?…あっ!!」
今日はお店の制服を着て店に立っていた。私の顔が大半のクレームを弾くから。
「申し訳ございません」ニッコリ
「あ、あまりにも素敵だったからつい興奮してしまいましたわ。気分を害さないでいただきたいわ」
「我が店への愛と思っております」
「また寄らせていただきますわ」
「ありがとうございました」
もう既に外に人を立たせて閉店の札を出している。店内は今のお客様が最後だった。彼女達の前のお客様が残りの商品3つを買い上げ完売してしまった。
「クリスティーナ様、早くジオ公爵邸に向かってください」
「大丈夫よ」
「大丈夫ではありません。お願いします、私達が叱られます」
「叱られるわけないじゃない」
従業員が手を合わせて懇願するので仕方なく後は任せてジオ邸に向かった。
「遅い、迎えにいくところだったんだぞ」
「遅いわよ」
「お疲れ様」
公爵様だけね。労ってくださるのは。
「ほら、時間がないの。まったく…普通は早朝から支度をするのよ?」
「大袈裟ですわ」
「大袈裟じゃないの。湯浴みの時間がないじゃないの。ベル、早く連れて行ってマッサージを始めて」
「かしこまりました。さあ、お嬢様、どうぞこちらへ」
公爵家の侍女に連行されて私専用の部屋に行くとメイド達が待ち構えていた。
手際良くマッサージを分担して始め、その後は軽く軽食を口にして歯を磨き、メイクを始めた。
本来なら私は出席できない建国祭。だけどヒューゴ様のパートナーとして王妃様から招待状が届いてしまった。公爵夫人からは“断れないわよ?”と言われて渋々。無駄な抵抗と知りつつも朝から店で売り子に扮し、奇跡という名の邪魔が入ってくれたら行かなくて済むと思っていた。
完売が早すぎる。
建国祭記念品は予約品の他に当日販売品を用意した。各種メイクブラシの柄を記念品仕様にしてみた。購入した商品を入れる袋もリボンも在庫限りで特別なものにした。一定の金額を超えると布製の手提げカバンに商品を入れて渡した。庶民が買い物に出て買った物を入れる程度のもので、丈夫な布を選びセルヴィー領の刺繍部隊が淵に刺繍をした。
予約品以外のことは全てシークレット。当日もお客様に勧めたり説明もしなかった。だけど、店の中の物が全て完売してしまった。開店1時間ちょっとで店を閉めることになるなんて。もう諦めてパーティの支度に向かうしかなかった。
「目立たないようにお願いね。できることなら存在感のない顔にして欲しいわ。王宮給仕か何かに見えたら最高よ。特別手当を出すわ」
「クリスティーナ?」
「こ、公爵夫人っ」
「馬鹿なことを言わないの。ヒューゴに給仕をエスコートさせるつもりなの?」
「会場の壁の色かカーテンの色をご存知ですか?」
「肌をえんじ色に塗るつもり?それともクリーム色に蔦と花を描く?」
「イタタタタッ お腹が痛いかもしれません」
「会場には医者が何人かいるから大丈夫よ。車椅子を用意してでも連れて行くわ」
「……夢に出て来そうなほど世界一派手にお願い」
「「え!?」」
「そんなことをするメイドはクビよ」
「いつも通りでお願いします」
何で見張っているのかしら。現地集合にしたいと言い張れば良かったわ。
ドレスは4人で揃えたものだ。色や材料は一緒だけどちょっとデザインが違う。いかにもな家族が仕上がった。
「綺麗だよ、クリスティーナ」
「胃酸が出そうでなによりです」
「胃酸を吐きたかったらすぐに言うんだぞ」
そうじゃない
「欲しい言葉とは程遠いです」
ヒューゴ様に抱き付いた。
「じゃあ、」
「待ちなさい。ヒューゴ 駄目よ、やっぱり留守番してイチャイチャしようなんて言ったら駄目。
行くの、絶対行くの。ほら、先に馬車に乗りなさい」
「ヒュー?」
身体を押し付けて…主に胸を押し付けながらヒューゴ様を見上げた。
「は、母上…留守番を」
「駄目です!!クリスティーナ、いらっしゃい!」
「嫌ですぅ~」
「会場には伯爵夫妻もみえるのよ。洗いざらい話してもいいの?」
「どの辺りの話ですか?それ次第で、」
「行くぞ」
うっ…公爵様が馬車までエスコートをくださったらもう乗るしかない。
ゴトゴトゴトゴト
「もう…幼い娘をもった気分だわ」
「そこがいいんですよ」
「はいはい、分かったわよ」
よし、今日はヒューゴ様を味方に付けよう。
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