笑顔で冷遇する婚約者に疲れてしまいました

ユユ

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建国記念日

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馬車の列が続く中、ジオ家の馬車は別の門へ向かった。

「あれ?」

「王妃様と姉妹なのに並ぶわけがないでしょう」

「そうでした」

公爵夫人は王妃様と姉妹だものね。


門を通過して中を馬車で移動して違う入り口に到着した。そのときに見慣れた馬車が視界に入った。

「え?うちの馬車!?」

ジオ家うちからセルヴィー家にも別門こっちを使わせて欲しいとお願いしたら陛下も同意だった。があるだろう?」

サブマ草ね。

「接触があったのですか?」

「是非成功させろって仰っていたよ」

「燃やそうかしら……… あ」

口に出したつもりはなかったのに声に出していたみたいで3人がじっと私を見つめた。

「陛下は応援してくださっただけだ」

「そうよ、狙ってなんかいないわ。ただちょっとだけ融通して欲しいって」

「…セルヴィーの馬車に乗って帰ります」

「待ちなさい。ここでしっかりジオ家が後ろ盾どころか一心同体だと主張した方がいい」

「そうよ。だからこの衣装を作らせたのよ」

ヒューゴ様は黙々と背中に添えた手に力を入れて私を歩かせた。

着いた控室でお父様達と合流した。私はヒューゴ様に頬を突かれ頭にキスをされている間、親同士は仲良く話をしている。

「こら、ヒューゴ。せっかく伯爵がいらっしゃるんだぞ」

「いいのです。怪我をさせることなくしっかり娘の面倒を見てくだされば」

「「「………」」」

お父様、無防備なジオ家の皆様にその台詞は凶器と同じですよ。

「跡形もなくとも怖かったでしょうに」

「「「………」」」

お母様まで。

「義父上、義母上、償いは一生をかけてします。俺が持っている全てを捧げてもいい。俺はクリスティーナ・セルヴィーしか欲しくないんです。この命が尽きるまで彼女から離れません」

壮大なストーカー宣言とも取れる彼の言葉に胸が温かくなる。

「ジオ家にはクリスティーナ以外の令嬢の方がいいでしょうに」

「クリスティーナ以上に愛らしくて価値のある令嬢はいませんよ」

「恥ずかしいから止めてください」

「どうぞこちらでございます」

次々と王族関係者が控室に入室し、私達は笑顔を作って挨拶を始めた。
ウィロウ侯爵夫妻とエルザも来たのでホッとした。

外国籍の王族関係者は別室らしい。
モルゾン公爵家とゼオロエン侯爵家はまた別の控室にいるらしい。

「やっぱり嫌だわ。会場に行ったら挨拶のし過ぎで舌も足も背中も攣りそうだわ」

「大丈夫よ。ジオ公子がいればカーテシーなんか王族だけにすればいいんだから」

「そんなわけないじゃない」


……そんなわけがあった。さすがエルザね。
皆様 “未来の次期公爵夫人”として私に挨拶をしていく。公爵も夫人も“うちの嫁”っぽく扱うし、ヒューゴ様が若干威圧気味だし。

「ヒューゴ」

「これはベルナルド殿下、お久しぶりです」

「もしかして彼女がリュシェルを負かした令嬢かな?」

「彼女はセルヴィー伯爵家のクリスティーナです。
ティナ。こちらの方はリュシェル王女殿下の異母弟のベルナルド王子殿下だよ。歳は王女殿下と同じなんだ」

「セルヴィー!?私はラッキーだな。セルヴィー家のご令嬢と会えるだなんて」

「クリスティーナ・セルヴィーと申します。王子殿下にお会いできて光栄に存じます」

「堅苦しくしなくていい。クリスティーナと呼んでもいいかい?」

「はい」

「じっくり話がしたい…って止めろよヒューゴ。私はフィリップとは違うぞ」

殿下は手のひらを向け胸の位置まで上げた。ヒューゴ様を見ると私に微笑んだ。

「私には射殺すような視線を向けたのに彼女にはソレか。ヒューゴがなぁ……あのヒューゴが……」

「殿下、おひとりで?」

「そうだよ。アリーシャはまだ学生だからね。ひとりの方が気が楽だよ。お陰でクリスティーナにダンスを申し込める」

そう言いながら私にハンドキスをしようとしたけどヒューゴ様が私の手の上にサッと手を重ねた。

「チュッ どうか私と…オエッ、ヒューゴ!」

殿下は自分がヒューゴ様の手にキスをしたことに気が付いて怒っている。

「ティナは俺の恋人ですよ」

「ダンスは普通だろう。デートに誘ったんじゃないぞ」

「駄目です」

「心の狭い男だなぁ」

「俺の心はティナにだけ開かれていますから、さぞ狭いでしょうね」

「ふふっ 兄弟みたいに仲がよろしいのですね」

「…なんか分かった。確かにリュシェルじゃなくてクリスティーナだな」

「分からなくていいです。もっと距離を置いてください」

「嫌だね」

「は?」

ヒューゴ様!?王子殿下相手に何て態度なの!

「ヒューゴ様。私の隣に立つのならもっとちゃんとしてください」

「……ベルナルド殿下、失礼いたしました」

うんうん、そうそう。

「へえ、本当にいいなぁ」

「ティナ、環境が悪いからあっちに行こう。王族なら他にもいるからな。ほら、あの髪の長い金髪は王太子だ。あっちは、」

「いや…別に知り合いたいわけじゃないですから結構です」

「2人とも?なんか失礼だと思うぞ?」

「俺にはよく分かりません」

「?」

失礼だったかしら。

「クリスティーナ、あの羽毛布団だけど本当はあるんでしょ?融通在庫」

「ありません」

「5年待ちなんだよ。頼むよ」

「5年で済むことを祈っております」

「まさかヒューゴは違うよな?」

「王都のジオ邸には3枚あります。父、母、俺とティナ用」

「ヒューゴ様っ」

「やっぱりそうだよね。そうかそうか…まあ仕方ない。クリスティーナ、その布団を持って今夜私の客室へ…悪かったよヒューゴ」

彼を見上げると作り笑顔になっていた。


レオナルド殿下が別の出席者につかまった。今のうちにと離れると、後ろから声をかけられた。

「ヒューゴくん」

「お久しぶりです、デュエル殿下」

「……こちらは?」

「パートナーのクリスティーナ・セルヴィーです」

「デュエル殿下にご挨拶を申し上げます」

「セルヴィー…聞いた名だ……絹か」

「彼女はセルヴィー伯爵家の長女です」

「うちの娘との婚約を断っておいて伯爵家の娘と?
多少儲かっているみたいだがそれだけではないか。王子妃でも輩出したのか?」

「いいえ」

「王族を嫁に迎えたことがあるとか?」

「いいえ」

「ハッ、まるで商家のような家門に拘る必要はないだろう?」

「アナベル様とのことは彼女は関係ありません。彼女と出会う前にお断りした話です」

「つまり娘に問題があるというのか」

「問題はありませんが特に何もないだけです」

「無礼な!」

「付け加えるとデュエル殿下は問題です。各国の国賓が出席する他国の大きな祝いの場で絡むのですから。普通なら娘が縁談を断られた話などこの場でしないでしょう?アナベル様が知ったら部屋から出てきませんよ?
もしアナベル様と結婚していたらデュエル殿下のその振る舞いはジオ家に影響したかもしれません。お断りして正解でした」

「なっ!」

「デュエル殿下は貴国の国王陛下の末弟。つまり陛下の代理を預かったも同じ。本当にその振る舞いでよろしいのですか?それにクリスティーナは王妃様が直接招待した貴賓。王妃様の顔に泥を塗っていることが分からないようですね」

「もういい!」

デュエル殿下は顔を真っ赤にして去ってしまった。

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