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店に来た令嬢
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今日は王都に3店舗目を出店する日。告知無し。
小さな店舗でお客様の年齢層を絞っている。
「クリスティーナ様、そろそろお時間です」
「オープンの札をかけて」
店員がドアの外の札をオープンに変えた途端に人が次々と入ろうとした。
「入場制限をかけて」
「は、はい!」
窓から外を覗き込むと列ができていた。
「アニー、完売もあり得るから品が薄くなったら外にいるお客様に完売予告を出して欲しいの。マニュアル通りにやって。問題が起これば私が対処するから」
「はい!」
看板も店名も子供向けと分かるようにしたのだけど大人が多い。でも娘や妹に買うかもしれないから“子供向けです”なんて言えない。
模様や入れ物の形などを子供向けにデザインして展開させたもので中身は敏感肌用の薬用化粧品だ。
口紅に用いる天然顔料と保湿に使う植物油と薬草のエキスなどを混ぜて、保湿をメインにしてほんのり色付く口紅を作った。新商品及び新分類となる。化粧品と薬の間をどう文字にして表すか悩んだけど文字ではなく花びらに雫が乗っている絵をブランドマークにすることにした。
口紅ではなく口潤と名付けて並べた。商品紹介の札には“口紅ではありません”と一番最初に明記した。
「いらっしゃいませ~、当店舗はお子様向けのお店となっております。お子様優先でお願いします」
そう呼びかけると何人か店から出て行った。外に並んでいる人達にも同じように声をかけると列から離脱する人がたくさんいた。
どんな小さな子もお客様。それを徹底させた。
「私は入っていいのかしら?」
「エステル様!?」
「お姉様ったらずるい!告知無しだなんて!」
「無しでも行列ですから」
「私も子供?」
「学園に通う前の歳から小さな子まで対象にしております」
「じゃあ、遠慮なく見せてもらうわ」
そう言って店内の小さなカゴを手に取り、どんどん商品を入れていく。動物やフルーツ、星やハートをモチーフにしているし細工も可愛くしているので、エステル様は目を輝かせて夢中になっている。
「エステル様、お店ごと購入なさるおつもりですか?」
侍女に2つカゴを持たせ、自身もカゴを持ってまだ商品を入れ続けている
「だって、中身同じなのにウサギとネコとリスに分かれてるし、このハンドクリームの缶なんてリンゴ 苺 チェリー レモン 梨 ブドウ ブルーベリー 杏 オレンジ 桃って10種類もあるのだもの。フットクリームは鳥が3種、ネコ2種、犬3種、ウサギにクマ。全部買えってことじゃない」
エステル様は愛らしい頬を膨らませた。
「エステル様に癒されます」
「あら?口紅ではありませんって?」
「私がつけているのが同じ物です」
「艶々で色がほんのり明るいわ」
「あくまでも唇の保湿を目的として作りました」
エステル様は無言で全てカゴに入れようとしたので止めた。
「あの、その商品はできれば他のお客様にも商品を知っていただきたいので…」
エステル様は渋々棚に戻して2つだけにした。
結局カゴ4つをいっぱいにしてお買い上げ。
うちは基本的にツケ払いはやらないのでモルゾン家の侍女が支払いを済ませた。
「これは?」
「蜜蝋を使った保湿剤です。熱に弱いので熱いものを口になさる場合には向きません」
「いい香り。蜂蜜の香りだわ」
「就寝前に荒れた肌に塗ってください」
「商品なの?」
「近いうちに店頭に並びます」
「未発売品ね!」
「内緒でお願いします」
「分かったわ。拷問されても漏らさないわ」
大袈裟ですよ、エステル様。それにやや手遅れです。エステル様の声が大きかったから、店内のお客様がエステル様の手元に集中してしまっています。
その後、店内に居合わせたお客様から未発売品について聞かれたけど、“高額ご購入のお客様用のおまけです”と言うと引き下がってもらえた。
早々に完売となり閉店支度をしているとドアをノックする音が聞こえた。貴族のご令嬢だった。私と同じか少し歳上か。
「本日は完売いたしました」
「クリスティーナ・セルヴィー様?」
「はい」
「私、サリー・フォステルトと申します。セルヴィー嬢にお話しがあります。10分いただけませんか」
金髪に青い瞳、大人しそうなご令嬢だった。
「閉店作業中ですがどうぞ」
「ありがとうございます」
普通なら近くのカフェにでも行くのだけど、10分と言ったから店内にした。お茶も出せないけど。
丸椅子を持ってきて勧めた。
「私、アフレック・ハングベリーの婚約者です」
「アフレックの…」
「セルヴィー嬢はヘインズ家のご令息と婚約していて、ジオ家の公子と交際なさっているとか」
「前者だけ肯定します」
「アフレック様をどうなさるおつもりですか?」
「はい?」
「一時的な恋愛を楽しまれているのか、それともアフレック様と結婚なさりたいのか」
「フォステルト嬢、私とアフレックは友人です。交流もゼオロエン家のご令嬢やウィロウ家のご令嬢が同席しております。ご心配なさっているような関係ではありません」
「誓えますか?」
「もちろん、誓えます」
「…不躾にごめんなさい」
「良ければフォステルト嬢もアフレック様といらしてください。明日|セルヴィー邸で内輪の昼食会をする予定です」
「招待してくださるのですか?」
「はい。10時から12時の間に集まることになっていますのでアフレックと一緒にどうぞ」
「ありがとうございます。それでは私は失礼します」
カラン カラン
危なかったぁ~。誤解されてた!
誤解を回避した後は後片付けをして、隠しておいた商品を並べた。
初日のわずかな時間で完売して入荷まで数日休みになると、新しい定員には間が空いて慣れるのが遅くなってしまう。だから少しでも連日開店できるように小出しで売る作戦を決行していた。
「屋敷から在庫を運ばせるから、今並べた商品は明日売り切って大丈夫よ。お疲れ様」
「「お疲れ様でした」」
エプロンを外して外に出ると少し離れたところに見慣れた馬車が停まっているのが見えた。セルヴィー家の馬車は帰してしまったので急いで辻馬車の集まる広場近くまで向かおうとしたら身体が宙に浮いた。
「クリスティーナ」
後ろから抱え上げたのはヒューゴ様だった。
小さな店舗でお客様の年齢層を絞っている。
「クリスティーナ様、そろそろお時間です」
「オープンの札をかけて」
店員がドアの外の札をオープンに変えた途端に人が次々と入ろうとした。
「入場制限をかけて」
「は、はい!」
窓から外を覗き込むと列ができていた。
「アニー、完売もあり得るから品が薄くなったら外にいるお客様に完売予告を出して欲しいの。マニュアル通りにやって。問題が起これば私が対処するから」
「はい!」
看板も店名も子供向けと分かるようにしたのだけど大人が多い。でも娘や妹に買うかもしれないから“子供向けです”なんて言えない。
模様や入れ物の形などを子供向けにデザインして展開させたもので中身は敏感肌用の薬用化粧品だ。
口紅に用いる天然顔料と保湿に使う植物油と薬草のエキスなどを混ぜて、保湿をメインにしてほんのり色付く口紅を作った。新商品及び新分類となる。化粧品と薬の間をどう文字にして表すか悩んだけど文字ではなく花びらに雫が乗っている絵をブランドマークにすることにした。
口紅ではなく口潤と名付けて並べた。商品紹介の札には“口紅ではありません”と一番最初に明記した。
「いらっしゃいませ~、当店舗はお子様向けのお店となっております。お子様優先でお願いします」
そう呼びかけると何人か店から出て行った。外に並んでいる人達にも同じように声をかけると列から離脱する人がたくさんいた。
どんな小さな子もお客様。それを徹底させた。
「私は入っていいのかしら?」
「エステル様!?」
「お姉様ったらずるい!告知無しだなんて!」
「無しでも行列ですから」
「私も子供?」
「学園に通う前の歳から小さな子まで対象にしております」
「じゃあ、遠慮なく見せてもらうわ」
そう言って店内の小さなカゴを手に取り、どんどん商品を入れていく。動物やフルーツ、星やハートをモチーフにしているし細工も可愛くしているので、エステル様は目を輝かせて夢中になっている。
「エステル様、お店ごと購入なさるおつもりですか?」
侍女に2つカゴを持たせ、自身もカゴを持ってまだ商品を入れ続けている
「だって、中身同じなのにウサギとネコとリスに分かれてるし、このハンドクリームの缶なんてリンゴ 苺 チェリー レモン 梨 ブドウ ブルーベリー 杏 オレンジ 桃って10種類もあるのだもの。フットクリームは鳥が3種、ネコ2種、犬3種、ウサギにクマ。全部買えってことじゃない」
エステル様は愛らしい頬を膨らませた。
「エステル様に癒されます」
「あら?口紅ではありませんって?」
「私がつけているのが同じ物です」
「艶々で色がほんのり明るいわ」
「あくまでも唇の保湿を目的として作りました」
エステル様は無言で全てカゴに入れようとしたので止めた。
「あの、その商品はできれば他のお客様にも商品を知っていただきたいので…」
エステル様は渋々棚に戻して2つだけにした。
結局カゴ4つをいっぱいにしてお買い上げ。
うちは基本的にツケ払いはやらないのでモルゾン家の侍女が支払いを済ませた。
「これは?」
「蜜蝋を使った保湿剤です。熱に弱いので熱いものを口になさる場合には向きません」
「いい香り。蜂蜜の香りだわ」
「就寝前に荒れた肌に塗ってください」
「商品なの?」
「近いうちに店頭に並びます」
「未発売品ね!」
「内緒でお願いします」
「分かったわ。拷問されても漏らさないわ」
大袈裟ですよ、エステル様。それにやや手遅れです。エステル様の声が大きかったから、店内のお客様がエステル様の手元に集中してしまっています。
その後、店内に居合わせたお客様から未発売品について聞かれたけど、“高額ご購入のお客様用のおまけです”と言うと引き下がってもらえた。
早々に完売となり閉店支度をしているとドアをノックする音が聞こえた。貴族のご令嬢だった。私と同じか少し歳上か。
「本日は完売いたしました」
「クリスティーナ・セルヴィー様?」
「はい」
「私、サリー・フォステルトと申します。セルヴィー嬢にお話しがあります。10分いただけませんか」
金髪に青い瞳、大人しそうなご令嬢だった。
「閉店作業中ですがどうぞ」
「ありがとうございます」
普通なら近くのカフェにでも行くのだけど、10分と言ったから店内にした。お茶も出せないけど。
丸椅子を持ってきて勧めた。
「私、アフレック・ハングベリーの婚約者です」
「アフレックの…」
「セルヴィー嬢はヘインズ家のご令息と婚約していて、ジオ家の公子と交際なさっているとか」
「前者だけ肯定します」
「アフレック様をどうなさるおつもりですか?」
「はい?」
「一時的な恋愛を楽しまれているのか、それともアフレック様と結婚なさりたいのか」
「フォステルト嬢、私とアフレックは友人です。交流もゼオロエン家のご令嬢やウィロウ家のご令嬢が同席しております。ご心配なさっているような関係ではありません」
「誓えますか?」
「もちろん、誓えます」
「…不躾にごめんなさい」
「良ければフォステルト嬢もアフレック様といらしてください。明日|セルヴィー邸で内輪の昼食会をする予定です」
「招待してくださるのですか?」
「はい。10時から12時の間に集まることになっていますのでアフレックと一緒にどうぞ」
「ありがとうございます。それでは私は失礼します」
カラン カラン
危なかったぁ~。誤解されてた!
誤解を回避した後は後片付けをして、隠しておいた商品を並べた。
初日のわずかな時間で完売して入荷まで数日休みになると、新しい定員には間が空いて慣れるのが遅くなってしまう。だから少しでも連日開店できるように小出しで売る作戦を決行していた。
「屋敷から在庫を運ばせるから、今並べた商品は明日売り切って大丈夫よ。お疲れ様」
「「お疲れ様でした」」
エプロンを外して外に出ると少し離れたところに見慣れた馬車が停まっているのが見えた。セルヴィー家の馬車は帰してしまったので急いで辻馬車の集まる広場近くまで向かおうとしたら身体が宙に浮いた。
「クリスティーナ」
後ろから抱え上げたのはヒューゴ様だった。
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