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貴族街のロマンス
しおりを挟む「降ろしてください」
ヒューゴ様はそっと降ろしてくれたけど手を握って逃がさないと示していた。
「話をしよう」
「したくありません」
「怒っているのは分かったけど、避けないでぶつけたらいいだろう。何の解決にもならないぞ」
「何を解決したらいいのですか?」
「ティナ」
「もう関わりたくありません」
「ティナ」
「友人になれるわけもありません。お互いに家名で呼びましょう」
「クリスティーナ!俺が悪かった!だけど俺だって傷付くんだ!愛してる女から他の女と結婚しろなんて言われたら悲しいに決まってるじゃないか!」
「一時の感情にすぎません。時が経てばこれで良かったと思う日が来ますわ」
「俺が嫌いか?」
「……」
「泣くのは俺が傷付けたからか?」
「っ!!」
「いくつも歳上のくせに余裕がなくてごめん。許して欲しい。ティナに許してもらえるよう尽くすから」
「私達はいつか現実に目を向けなくてはならないのです。その時にもう一度嫌な思いをしなくて済むよう今離れるべきです」
「……クリスティーナ・セルヴィー!!愛してる!!」
「ちょ、ちょっと!!!」
「クリスティーナの全てを愛してる!!ずっと一緒にいてくれ!!愛してるんだ!!クリスティ、もごっ」
貴族街で跪いて大声で叫び出したヒューゴ様の口を塞いだ。彼の顔を胸に押し付けて黙らせた。
ヒューゴ様はそのままキツく私を抱きしめた。
彼の息の熱がじんわり胸に伝わる。彼から手を離したけど彼は私を抱きしめたままだ。
「ヒューゴ様っ、放してください」
「連れ帰ってめちゃくちゃに抱きたい!」
周囲には足を止めた通行人の人だかりが出来ていた。ヒューゴ様のセリフに子連れの親は“聞いちゃいけません”と言いながらその場を離れ、保守的な貴族は“破廉恥な”と言いながらその場を離れ、他の野次馬は興味津々に見守っていた。
「ご、誤解されます!離れてください!」
「誤解なんかない。俺はクリスティーナを愛してるんだ。クリスティーナの匂いが俺の身体を熱くする」
「ちょっと!変なこと言わないで!!」
「駄目だ、連れて帰る!」
「ひゃぁっ!」
抱き上げられてジオ家の馬車に近付いていく。
「降ろして!ヒューゴ様!!」
「馬車は帰したんだろう?」
「辻馬車で帰ります!」
「大人しくしないと観客の前でキスするぞ」
「っ!!」
ロック卿が馬車のドアを開けると馬車に乗せられた。そのままジオ邸に到着するまでキスが止むことはなく、到着してまた運ばれて、ヒューゴ様の部屋のベッドに降ろされると深いキスに支配されながら、まさぐる手にドレスを脱がされていく。
すっかり彼の指と舌に飼い慣らされいる身体はすぐに順応した。理性を飛ばされるのはあっという間だった。
「ごめん、ティナ。二度としない」
最後の一歩手前の行為を繰り返してひとまず落ち着いたヒューゴ様は私に腕枕をして抱きしめながら建国パーティでのことを謝っていた。
「当分離れて過ごしましょう。ヒューゴ様も忙しいはずです。私も予定がありますし、お父様達がしばらく王都にいますので一緒に過ごしたいのです」
振り回されるのは嫌だもの。
「俺は会いたい…というか離れたくない。義父上は思ったより厳しい人だな。アリ1匹入れないようにしているし、会わせてくれないし話も聞いてくれない。参ったよ。夜中に忍び込もうとしたら矢を放たれた。射抜かれなくて良かったよ。外したんじゃなくて手加減してくれたと信じたい」
「何をやっているんですか!」
「セルヴィー家の馬車の下にしがみ付いて侵入することも考えたよ。だけど改装中の店を見つけたと使用人が報告してくれたから店を張らせたんだ。借主がセルヴィーだということも調査で分かったからな。そして君ならオープン当日に現れる」
「はぁ…」
「エステルに見つかって、叱られたよ。“お姉様を虐めたら私が素敵な令息を見つけてお姉様に紹介するか、私がお嫁さんにもらうから”と言っていたな。あいつ、本当にやりそうだからな」
「エステル様が男の子だったらアプローチしたかもしれません」
「何でジオ家が駄目でモルゾン
家はいいんだ?」
「ジネットが嫁ぐからです」
「…なるほど」
「そろそろ帰らないと」
「まだ3時じゃないか」
「店は閉まっていて馬車もない私が行方知れずだとお父様達が心配します」
「うちにいると連絡を入れたから大丈夫だ」
「いつの間に!?」
「目で合図を送ればそのくらい気を利かせてやっておくだろう」
使用人は大変ね。その合図が違っていたら大変なことになるのに確認もできないなんて。
ヒューゴ様は私と離れず、屋敷に入ってから使用人に言葉を発したのは“飲み物と食事を”“誰も通すな”だけだった。
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