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続編:シャルルと王女
癒えぬ心
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ジェルヴェ王子と面会をした日の夕方、陛下が僕の部屋を訪れた。
「ジェルヴェと会ったそうだな」
「はい。お会いしました」
「シャルル、そなたには1年間の養生を言い渡す」
「はい?」
「パリサを含めて誰にもそなたに何かの役割を強制させない。ベスパスのことはゆっくり知ればいいし出かけたいなら出かければいいしパーティに出るなら出ていい。ゆっくりするといい」
「それはどういう」
「ジェルヴェの願いだ。そなたには心を癒す時間が必要だと頼み込んできた。ジェルヴェが頼み事をするのは9歳辺りが最後だった。久しぶりの願いを叶えてやれない父親にはなりたくない」
この時、本心を話す決心をした。
「正直にお話しします。
僕は元婚約者を愛していました。気持ちに気が付くのが遅くて、僕が愚かだったために見限られました。未だに消化しきれておりません。
ですがパリサ王女殿下の夫となりましたので、殿下の夫として生きていく覚悟をしております。当然恋愛結婚ではありませんので今は愛はありませんが、いつか家族愛が芽生えることを願っております」
「パリサは子ども達の中で唯一私に似た子で、誰よりも可愛い。だからパリサには笑顔でいて欲しかった。私は婚姻の進め方を誤ったようだ。だがパリサがそなたを好きなのは間違いない。大事にするはずだ。それにジェルヴェの貴重な友人だ。心の傷を修復して元気になってもらいたい」
「寛大なご配慮をいただきありがとうございます」
「まあ、食事には顔を出してくれ」
「はい」
ジェルヴェ王子の影響力に驚いたが、王子の優しさと気遣いが嬉しかった。もっと願い出たいことはあるだろうに僕のために使ってくれたのだ。
夕食に呼ばれ、陛下達の居住区の食堂へ王女と来ていた。そこにはジェルヴェ王子もいた。彼がいるのは珍しいことらしい。
「食事の前に皆に話しておきたいことがある。
1年後までシャルルには養生期間を設ける。のんびり馴染んでもらうだけにする。仕事を申し付けたり何かに付き合わせたりしないように。教育係は付けるが王宮で暮らすための知識に限る。礼儀作法やルール程度だな。シャルルが自ら望む外出や社交は許可する。
パリサ、婚姻はしたがシャルルには時間が必要だ。行動を別にするように」
「お父様っ」
「シャルルにはジェルヴェの話し相手になってもらう。ジェルヴェならシャルルに無理をさせることはできないし、良き友となり国にそして王宮に慣れるよう助言もできる。2人は気が合うようだからな」
「シャルル義兄上、よろしくお願いします」
「喜んで承ります、ジェルヴェ王子殿下」
「もっと気さくにお願いします。家族とは別に友人になったのですから敬語も敬称などいりません。私は歳下ですから」
ジェルヴェ王子はもっと親しくしたいみたいだ。
「良かったわね、ジェルヴェ」
「はい、王妃殿下」
「良かったな」
「ちゃんと安静にしながらにしろよ」
「はい、兄上」
王妃や兄王子達が賛成しているが、王女の表情は浮かない。
夕食後、ルビー宮に戻る際に王女に先に戻るよう促した。
「え?シャルル様は?」
「僕はジェルヴェ殿下を部屋まで送ってから部屋に戻ります。パリサ様はゆっくり休んでください」
「…はい」
王女が退室したので王子の車椅子に触れた。
「僕が押すよ」
「いいのですか?」
「僕がそうしたいんだ」
「ではお願いします」
「ジェルヴェも敬語なんか使わなくていいよ」
「いいのですか?」
「友人だからね」
「そうだね、そうする」
車椅子をゆっくり押した。
もちろん彼は歩けるけど、王宮内は広いから負担になる。それにもし立ち眩みなど起こした場合、体を打ち付けてしまう。車椅子に座っていればそんなことにはならないから車椅子を使うらしい。
食堂を出て話をしながらゆっくり送り届けた。
ルビー宮に戻るときに少し寄り道をした。夜の庭園のベンチに座り空を見上げた。
「クリスティーナ」
遠く離れていても雲さえ出ていなければ星空だけは大差ないはずだ。彼女も今頃夜空を見ているかもしれない。あんなに時間があったのに一緒に夜空の星を眺めることなどなかった。愚かな僕は彼女の視線の先を共有しなかった。僕を見つめていたクリスティーナの視線は、僕が嫌がったせいで他所に向いた。その視線の先にまるで興味がなかった。今ならクリスティーナの目に留まった石コロや枯葉さえ気になって仕方ないだろう。
ここからルビー宮の明かりが見える。
本当ならクリスティーナと結婚して一緒に寝ていたはずだ。彼女の寝息と寝顔に幸せを感じたはずだ。クリスティーナからはいつも優しい香りがしていた。クリスティーナの店の商品なのだろう、きっと僕もあの香りを纏っていたはずだ。
「シャルル様」
ダオスに見つかってしまった。
「少し空気を吸いに出たんだ。部屋に戻るよ」
仕方なくルビー宮に戻り、寝る支度を始めた。
「あの、伯爵様、今夜はどちらをお使いでしょうか」
閨事の有無を聞いているのだな。
「当分は大人しく自室で眠るよ。みんなも疲れただろう、早く寝て体を休めてくれ」
「ありがとうございます」
メイドは洗濯物を回収して退室した。
「ジェルヴェと会ったそうだな」
「はい。お会いしました」
「シャルル、そなたには1年間の養生を言い渡す」
「はい?」
「パリサを含めて誰にもそなたに何かの役割を強制させない。ベスパスのことはゆっくり知ればいいし出かけたいなら出かければいいしパーティに出るなら出ていい。ゆっくりするといい」
「それはどういう」
「ジェルヴェの願いだ。そなたには心を癒す時間が必要だと頼み込んできた。ジェルヴェが頼み事をするのは9歳辺りが最後だった。久しぶりの願いを叶えてやれない父親にはなりたくない」
この時、本心を話す決心をした。
「正直にお話しします。
僕は元婚約者を愛していました。気持ちに気が付くのが遅くて、僕が愚かだったために見限られました。未だに消化しきれておりません。
ですがパリサ王女殿下の夫となりましたので、殿下の夫として生きていく覚悟をしております。当然恋愛結婚ではありませんので今は愛はありませんが、いつか家族愛が芽生えることを願っております」
「パリサは子ども達の中で唯一私に似た子で、誰よりも可愛い。だからパリサには笑顔でいて欲しかった。私は婚姻の進め方を誤ったようだ。だがパリサがそなたを好きなのは間違いない。大事にするはずだ。それにジェルヴェの貴重な友人だ。心の傷を修復して元気になってもらいたい」
「寛大なご配慮をいただきありがとうございます」
「まあ、食事には顔を出してくれ」
「はい」
ジェルヴェ王子の影響力に驚いたが、王子の優しさと気遣いが嬉しかった。もっと願い出たいことはあるだろうに僕のために使ってくれたのだ。
夕食に呼ばれ、陛下達の居住区の食堂へ王女と来ていた。そこにはジェルヴェ王子もいた。彼がいるのは珍しいことらしい。
「食事の前に皆に話しておきたいことがある。
1年後までシャルルには養生期間を設ける。のんびり馴染んでもらうだけにする。仕事を申し付けたり何かに付き合わせたりしないように。教育係は付けるが王宮で暮らすための知識に限る。礼儀作法やルール程度だな。シャルルが自ら望む外出や社交は許可する。
パリサ、婚姻はしたがシャルルには時間が必要だ。行動を別にするように」
「お父様っ」
「シャルルにはジェルヴェの話し相手になってもらう。ジェルヴェならシャルルに無理をさせることはできないし、良き友となり国にそして王宮に慣れるよう助言もできる。2人は気が合うようだからな」
「シャルル義兄上、よろしくお願いします」
「喜んで承ります、ジェルヴェ王子殿下」
「もっと気さくにお願いします。家族とは別に友人になったのですから敬語も敬称などいりません。私は歳下ですから」
ジェルヴェ王子はもっと親しくしたいみたいだ。
「良かったわね、ジェルヴェ」
「はい、王妃殿下」
「良かったな」
「ちゃんと安静にしながらにしろよ」
「はい、兄上」
王妃や兄王子達が賛成しているが、王女の表情は浮かない。
夕食後、ルビー宮に戻る際に王女に先に戻るよう促した。
「え?シャルル様は?」
「僕はジェルヴェ殿下を部屋まで送ってから部屋に戻ります。パリサ様はゆっくり休んでください」
「…はい」
王女が退室したので王子の車椅子に触れた。
「僕が押すよ」
「いいのですか?」
「僕がそうしたいんだ」
「ではお願いします」
「ジェルヴェも敬語なんか使わなくていいよ」
「いいのですか?」
「友人だからね」
「そうだね、そうする」
車椅子をゆっくり押した。
もちろん彼は歩けるけど、王宮内は広いから負担になる。それにもし立ち眩みなど起こした場合、体を打ち付けてしまう。車椅子に座っていればそんなことにはならないから車椅子を使うらしい。
食堂を出て話をしながらゆっくり送り届けた。
ルビー宮に戻るときに少し寄り道をした。夜の庭園のベンチに座り空を見上げた。
「クリスティーナ」
遠く離れていても雲さえ出ていなければ星空だけは大差ないはずだ。彼女も今頃夜空を見ているかもしれない。あんなに時間があったのに一緒に夜空の星を眺めることなどなかった。愚かな僕は彼女の視線の先を共有しなかった。僕を見つめていたクリスティーナの視線は、僕が嫌がったせいで他所に向いた。その視線の先にまるで興味がなかった。今ならクリスティーナの目に留まった石コロや枯葉さえ気になって仕方ないだろう。
ここからルビー宮の明かりが見える。
本当ならクリスティーナと結婚して一緒に寝ていたはずだ。彼女の寝息と寝顔に幸せを感じたはずだ。クリスティーナからはいつも優しい香りがしていた。クリスティーナの店の商品なのだろう、きっと僕もあの香りを纏っていたはずだ。
「シャルル様」
ダオスに見つかってしまった。
「少し空気を吸いに出たんだ。部屋に戻るよ」
仕方なくルビー宮に戻り、寝る支度を始めた。
「あの、伯爵様、今夜はどちらをお使いでしょうか」
閨事の有無を聞いているのだな。
「当分は大人しく自室で眠るよ。みんなも疲れただろう、早く寝て体を休めてくれ」
「ありがとうございます」
メイドは洗濯物を回収して退室した。
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