笑顔で冷遇する婚約者に疲れてしまいました

ユユ

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続編:シャルルと王女

失脚

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【 サフィリアの視点 】


ジェルヴェ殿下の部屋に連れてこられたが、隣の部屋に案内された。応接間のような空間になっていた。
ジェルヴェ殿下は車椅子に乗り伯爵と一緒に現れた。またこの男と顔を合わせるだなんて。

「兄上、義姉上、どうなさったのですか?」

「体調は大丈夫か?」

「はい、大丈夫です」

「パーティでの一件だが、ジェルヴェならパリサを傷付けた貴族達をどうする?」

「私に聞くということは法に照らし合わせるとか、何かを考慮するとかしなくていいということですね?」

「そうだ」

「処刑ですかね」

はぁ!?

「う~ん、国境の慰安所?」

何てことを!!

「5つの爵位の没収?」

子供過ぎたわ!程度というものがまるで分かっていないじゃない!あなたが提案するのは謹慎1ヶ月程度がちょうどいいのよ!

「ジェルヴェ、ちょっと重いかな」

「そうですか…では、舌を切り落とすか歯を全部抜くか喉を焼いては?」

「ジェルヴェ?」

「最近、判例を読み始めたんです」

何で子供にそんなものを渡すのよ!

「そうか、他に処罰の候補はあるか?」

「では、次の姉様のバースデーパーティまで、5人を下女にしてこき使いましょうか?水汲み係もいいですね。上階への風呂の準備もさせてはどうですか?足腰が鍛えられていい運動になるでしょう。水を汲んでは運ぶ毎日ですが、歯も舌も声帯も無事ですし首も落とされていませんから、かなりの温情でしょう。妊娠で役目を逃れようとしたら平民の仲間入りをさせてあげればいいと思います」

「早々に歩けなくなりそうだな」

「水汲みができなくなったら兵舎の洗濯係をさせればいいですよ。あ、5人だけ色の違うエプロンを与えてください。遠くからでも見つけて用事を与えられるように」

「よし、決まりだ。サフィリア、5人に処罰の内容と明朝投降するよう手紙を書け。手紙は午前中には出したい」

「1年もですか!?」

「何を仰っているのです?不敬罪ですよ?」

「その通り。
ジェルヴェ、邪魔をしたな。またティータイムで会おう」

「はい、兄上」

「シャルル、よくやった」

「当然のことをしたまでです」

え?まさかパーティで伯爵がわざと2人に聞かせたの!?

「サフィリア、行くぞ。5人分の手紙を急いで書け」

「っ!」



【 王太子ゼブランの視点 】

シャルルが面会を求めて来たのはパリサのバースデーパーティの2日前だった。
彼は自身の過去を打ち明けた。当然知っていたが黙って聞いた。元婚約者への仕打ちの話を。

『僕は元婚約者を助けませんでした。でもパリサ王女殿下は助けられると思うんです。…駄目でも努力をしたいんです』

『パリサが?』

『社交で貴族派の同世代の令嬢や夫人に心ない言葉を浴びせられているようなのです。2日後のパーティで実態を確かめませんか』

『油断させて現場を押さえるということか?』

『僕だけで守れたら良かったのですが、対象の方々は王太子妃様と親しいと伺いましたので王太子殿下のご協力をいただけたらと思いまして』

『分かった。サフィリアは私が黙らせよう』

『ありがとうございます』


結果、当たりだった。サフィリアがけしかけて起きた事だった。

サフィリアは子供のジェルヴェなら大した罰は思いつかないと思っていたのだろう。それは間違いだ。ジェルヴェは裏切り者には冷酷だ。数年前、ジェルヴェの世話を焼いていたメイドの1人がジェルヴェの薬を盗んだことがあった。薬品庫には予備が十分あるから困ることはない。メイドは高価な薬を売ろうとジェルヴェのテーブルの上の薬入れを開けて手で掴みポケットに入れようとしていたところをジェルヴェに見つかった。ジェルヴェは隣の空き部屋に連れて行き、メイドにオイルランプを投げ付けて焼き殺した。今では改装をしてサロンのような応接間になっている。
ジェルヴェは兄弟の中で一番容赦がない。私もローランも同じことが起きたらジェルヴェのような行動は取らないだろう。

案の定、ジェルヴェはすぐに処刑を口にした。舌を切るとか歯を全部抜くとか。
シャルルが微笑んだままだったが、ジェルヴェは少し悩んだようだ。多分、シャルルに引かれたくないと我に返ったのだろう。


サフィリアに手紙を書けと言った矢先に陛下に呼び出された。サフィリアと一緒に来るようにとのことだった。そこにはパウロ侯爵夫妻がいた。

「パウロ侯爵家は離縁を受け入れるそうだ」

陛下の言葉に驚いたサフィリアは侯爵の側へ駆け寄った。

「お父様!?」

「貴族派が連名で抗議文を送って来たんだ。全てはサフィリア王太子妃の指示なのに、従ったら罰を受けるのは納得がいかないと。罰を受けるならパウロ侯爵家に制裁をすると言ってきている。おまえが退けば貴族派の別の令嬢を候補に上げるだけだ」

「何年かかると思っているのですか!」

「仕方がないだろう!貴族達にそっぽを向かれたら王家にとっておまえを王太子妃にしておく理由はないんだ!そもそも馬鹿なことをしなければ良かったんだ!妃選考や妃教育をもう一度やるなんて、時間も金もかかるんだぞ!次は明らかに最初から王太子妃の選考だとわかるから大混乱になるんだぞ!」

「本気なの!?本気で!?」

「もう署名をした。後はおまえの署名だけだ」

サフィリアを“王太子妃様”と呼ぶのを止めた侯爵は疲れ切った顔をしていた。

「い、嫌です」

「パウロ侯爵家は終わるぞ?それに離縁しなくとも正妃の座は明け渡すことになる。何処かの寂れた離宮に幽閉されたいのか?王国史には何て載るか…いや、無かったことにして載せないかもしれないな。
全てはおまえが王女殿下への不敬を教唆しなければよかったんだ」

「サフィリア、そなたは唯一任せられた慈善活動をしなかったようだな」

「陛下!?私は孤児院や修道院への訪問を怠っておりません!」

「そなたの言う慈善活動は、孤児院や修道院に到着しても馬車から降りず、侍女だけを向かわせて自分は本を読んで時間を潰す活動のことか?」

「っ!!」

「公務をしたくないのならその座をさっさと明け渡せば良かっただろう」

「調子が悪くて…」

「毎回か?
離縁を拒むのなら、5通の手紙を書いて貴族派を完全に敵に回すがいい。パウロ侯爵家を潰し、自身も教唆の罪を償うことになる。穏便な提案はこの時間が終われば無効だ」

陛下父上が茶を飲み干すまでがタイムリミットだろう。

ちょうどサフィリアの不妊について本格的な協議が始まる寸前だった。いろいろと気をつかったが結果的に授からなくて助かった。

サフィリアは泣く泣く署名をした。

「侯爵、早速連れ帰ってくれ。荷物は送らせる」

「え!?」

「署名しただろう。もうそなたは王太子妃ではなくパウロ侯爵令嬢だ。さっさと帰ってくれ。ストラス家を含む5家には厳重注意だけで済まそう」

つまり処罰はサフィリア1人で背負ったことになる。パウロ家の風当たりも少しはマシになるかもしれない。





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