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続編:シャルルと王女
多数決
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翌朝、食事が終わって1時間ほど経つと、陛下がルビー宮廷に来てくださった。憔悴したイリーナ妃を伴っているということは苦渋の決断をなさったようだ。
「この通りだ」
「陛下っ、お止めください!」
ソファに座りお茶の用意が済んでメイドが退室すると国王陛下が頭を下げた。
「実弟の弔いに行くというのにこんなことを頼むのは心苦しいのだが、ジェルヴェを連れて行ってはくれないだろうか」
「ううっ…」
イリーナ妃は堪えきれずに泣き出した。
「長い旅となるのにジェルヴェのような病人を同行させるのはシャルルにとって非常に足手纏いなのはよく分かっている。説得を試みたのだが諦めてくれなくてな。
もちろん道中で何が起きようとも責は問わぬ。乗せていけない状態になったら近くの村に置いて行って構わない。帰りに立ち寄って焼いて骨を持って帰ってくれたらいい。どうか…」
陛下は再び頭を下げた。
「承りました。お連れしましょう」
「感謝する。
馬車はジェルヴェ用に寝台馬車を別に用意させる。行き先はヘインズ領。早速支度をさせよう。明朝出発できるようにする。頼んだぞ」
「ジェルヴェ王子殿下と友人として義兄弟としての想い出を作って参ります」
「念のために医者を1人同行させる。ジェルヴェの主治医の見習いだがジェルヴェに関しては熟知しているし看病も当然できる。もう1人は応急医療と料理のできる兵士を就ける。ジェルヴェの侍従も同行させるから彼らに任せればいい」
それなら少しは安心だな。
「私も連れて行ってください」
黙って聞いていた王女が同行したいと願い出た。
「駄目だ。ジェルヴェという病人を伴わせるのに女のパリサを同行させてしまえばシャルルの負担が増えるだけだ」
「ですが、私はシャルル様の妻です。夫の実弟の弔いに同行しないなどヘインズ伯爵家に対して失礼ですわ」
「国内ならそう言えるが二つ先となると話は変わる。パリサは何もできないだろう。剣を持ち賊を追い払うこともできず、馬にも乗れず、料理をして野宿の助けをすることもできない。王女という存在があるだけで寄る町村も宿の選択も考慮しなくてはならなくなる。トイレ休憩も気を使う。足手纏いでしかない」
「虫を食べろと言われれば食べます。洗い物も馬の世話も手伝います。今から教わっておきます。どこでだってトイレを済ませます。野宿だって土の上で寝てみせます!」
「体調を崩したら?」
「途中の町で捨て置いてくださってかまいません」
「王女という立場ではそうもいかない。駄目だ」
「ジェルヴェの世話をします!」
「したこともないのにか?」
「お願いです…」
王女はソファから立ち上がり絨毯の上に座り額を付けるほど頭を下げた。
「おまえ達は父の胃に穴をあけるつもりか!!」
おまえ達というのは僕は入りませんよね?
「お願いです…」
イリーナ妃がチラチラと僕を見ている。だけど僕にはイリーナ妃が何を伝えようとしているのか分からない。
じっとイリーナ妃を見ると、陛下と王女に視線を往復させた後、僕を見てギュッと目を瞑った。手を合わせて祈りのポーズをしているみたいだ。
反対しろということか?連れて行けということかか?全く分からない。
陛下と王女が攻防を繰り広げる中、イリーナ妃は様々な合図を送るが依然として分からない。
「駄目だ!」
「お父様っ!」
イリーナ妃は陛下の死角で指を3つ立てた。
3人で行けということらしい。だが、王女は陛下のお気に入りなのに僕にどうしろと?
「陛下、ここは伯爵に決めていただくのはどうでしょうか」
イリーナ妃!?
イリーナ妃の言葉に陛下と王女が僕を見つめてそれぞれの気持ちで圧をかけ始めた。
だけど、僕は1人で犠牲になるつもりはない。
「では、お妃様も含めて家族で挙手で評決をとるのはいかがでしょう。奇数ですから必ず決着が付きます。あ、僕は含めず、代わりに団長に投票権を与えてください。兵士達に影響する話ですから」
イリーナ妃に動揺が現れた。自分の意思を公にしなければならなくなったからだろう。
「そうしよう。全員集めさせよう」
手を挙げなくて済んだ僕は得意の微笑みをイリーナ妃に向けた。
陛下が緊急招集をかけ、王妃やテサ妃、王太子と第二王子、ジェルヴェも集まった。陛下は経緯を説明した。
「そんな、無理でしょう」
「ん~」
「姉様も?」
「パリサには無理よ」
「各々の意見は口に出さず、挙手で示してくれ。では、パリサが同行することに反対の者は挙手を」
陛下、王妃、第二王子の挙手だけだった。
パリサの頬に赤みが差し満面の笑みを浮かべた。
「団長!?」
「その代わり、働いてもらいます。服は男物の質素な服を用意させます。自分で着替えて身支度をして洗濯もしてくださいね。髪も束ねてください」
「分かりました」
「出発が明朝なら支度を急ぎましょう。では、私は指示を出しに行きます。服は届けさせます」
「団長、どうして」
第二王子が団長の考えを聞いた。
「王女として良い経験ではありませんか。辛くとも危険が伴うとしても覚悟をなさっているのなら遠慮なくそのように扱うよう部下に言っておきます。では失礼」
王太子は席を立ち、僕に顔を向けた。
「悪いけど、2人をよろしく」
「かしこまりました」
反対多数で決まると思ったのは誤算だった。
「この通りだ」
「陛下っ、お止めください!」
ソファに座りお茶の用意が済んでメイドが退室すると国王陛下が頭を下げた。
「実弟の弔いに行くというのにこんなことを頼むのは心苦しいのだが、ジェルヴェを連れて行ってはくれないだろうか」
「ううっ…」
イリーナ妃は堪えきれずに泣き出した。
「長い旅となるのにジェルヴェのような病人を同行させるのはシャルルにとって非常に足手纏いなのはよく分かっている。説得を試みたのだが諦めてくれなくてな。
もちろん道中で何が起きようとも責は問わぬ。乗せていけない状態になったら近くの村に置いて行って構わない。帰りに立ち寄って焼いて骨を持って帰ってくれたらいい。どうか…」
陛下は再び頭を下げた。
「承りました。お連れしましょう」
「感謝する。
馬車はジェルヴェ用に寝台馬車を別に用意させる。行き先はヘインズ領。早速支度をさせよう。明朝出発できるようにする。頼んだぞ」
「ジェルヴェ王子殿下と友人として義兄弟としての想い出を作って参ります」
「念のために医者を1人同行させる。ジェルヴェの主治医の見習いだがジェルヴェに関しては熟知しているし看病も当然できる。もう1人は応急医療と料理のできる兵士を就ける。ジェルヴェの侍従も同行させるから彼らに任せればいい」
それなら少しは安心だな。
「私も連れて行ってください」
黙って聞いていた王女が同行したいと願い出た。
「駄目だ。ジェルヴェという病人を伴わせるのに女のパリサを同行させてしまえばシャルルの負担が増えるだけだ」
「ですが、私はシャルル様の妻です。夫の実弟の弔いに同行しないなどヘインズ伯爵家に対して失礼ですわ」
「国内ならそう言えるが二つ先となると話は変わる。パリサは何もできないだろう。剣を持ち賊を追い払うこともできず、馬にも乗れず、料理をして野宿の助けをすることもできない。王女という存在があるだけで寄る町村も宿の選択も考慮しなくてはならなくなる。トイレ休憩も気を使う。足手纏いでしかない」
「虫を食べろと言われれば食べます。洗い物も馬の世話も手伝います。今から教わっておきます。どこでだってトイレを済ませます。野宿だって土の上で寝てみせます!」
「体調を崩したら?」
「途中の町で捨て置いてくださってかまいません」
「王女という立場ではそうもいかない。駄目だ」
「ジェルヴェの世話をします!」
「したこともないのにか?」
「お願いです…」
王女はソファから立ち上がり絨毯の上に座り額を付けるほど頭を下げた。
「おまえ達は父の胃に穴をあけるつもりか!!」
おまえ達というのは僕は入りませんよね?
「お願いです…」
イリーナ妃がチラチラと僕を見ている。だけど僕にはイリーナ妃が何を伝えようとしているのか分からない。
じっとイリーナ妃を見ると、陛下と王女に視線を往復させた後、僕を見てギュッと目を瞑った。手を合わせて祈りのポーズをしているみたいだ。
反対しろということか?連れて行けということかか?全く分からない。
陛下と王女が攻防を繰り広げる中、イリーナ妃は様々な合図を送るが依然として分からない。
「駄目だ!」
「お父様っ!」
イリーナ妃は陛下の死角で指を3つ立てた。
3人で行けということらしい。だが、王女は陛下のお気に入りなのに僕にどうしろと?
「陛下、ここは伯爵に決めていただくのはどうでしょうか」
イリーナ妃!?
イリーナ妃の言葉に陛下と王女が僕を見つめてそれぞれの気持ちで圧をかけ始めた。
だけど、僕は1人で犠牲になるつもりはない。
「では、お妃様も含めて家族で挙手で評決をとるのはいかがでしょう。奇数ですから必ず決着が付きます。あ、僕は含めず、代わりに団長に投票権を与えてください。兵士達に影響する話ですから」
イリーナ妃に動揺が現れた。自分の意思を公にしなければならなくなったからだろう。
「そうしよう。全員集めさせよう」
手を挙げなくて済んだ僕は得意の微笑みをイリーナ妃に向けた。
陛下が緊急招集をかけ、王妃やテサ妃、王太子と第二王子、ジェルヴェも集まった。陛下は経緯を説明した。
「そんな、無理でしょう」
「ん~」
「姉様も?」
「パリサには無理よ」
「各々の意見は口に出さず、挙手で示してくれ。では、パリサが同行することに反対の者は挙手を」
陛下、王妃、第二王子の挙手だけだった。
パリサの頬に赤みが差し満面の笑みを浮かべた。
「団長!?」
「その代わり、働いてもらいます。服は男物の質素な服を用意させます。自分で着替えて身支度をして洗濯もしてくださいね。髪も束ねてください」
「分かりました」
「出発が明朝なら支度を急ぎましょう。では、私は指示を出しに行きます。服は届けさせます」
「団長、どうして」
第二王子が団長の考えを聞いた。
「王女として良い経験ではありませんか。辛くとも危険が伴うとしても覚悟をなさっているのなら遠慮なくそのように扱うよう部下に言っておきます。では失礼」
王太子は席を立ち、僕に顔を向けた。
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反対多数で決まると思ったのは誤算だった。
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