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続編:シャルルと王女
ジオ領
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結局ジェルヴェと王女が同行することになったので明朝ではなく2日後の早朝の出発となった。
早朝に現れたパリサは長い髪を短く切り、後ろに一纏めにしていた。
『長い髪は手入れが大変ですから』
『よく似合っているよ。少年の服も君が着ると気品が出てくるね』
『褒め言葉ですよね?』
『もちろん』
そんなことを言いながら馬車に乗った。
ジェルヴェはずっと目を輝かせて食い入るように景色を見て、立ち寄った村町を少し見てまわり、王宮の自室とは雲泥の差の宿の部屋に喜んだ。
パリサは約束通り自分のことは自分でやり、積極的に手伝いを申し出た。
順調かと思えたが、道が荒くなると2人は馬車酔いに悩まされた。特にジェルヴェは体力を削っていくし明らかに負担がかかっているのが分かった。間の国で1週間休息を取りまた出発した。
やっと国境を越えて1年ぶりの母国の地を踏みしめたと思ったが、ジェルヴェは限界だった。今いるのが西の国境で、ヘインズ領は王都を抜けて東へ向かわなければならない。何処かで治療を始めないとまずいと思った。
悩んだ挙句…
「ラスパ副団長、トーリス先生、この先にジオ公爵領があります。そこに助けを求めましょう。僕はよく思われていないのですが、王族のルヴェとパリサがいるので拒否はしないと思います」
「ジオ…あのジオ家ですか」
ラスパ副団長はジオ公爵家を知っているみたいだ。
「ご存知なのですか?」
「軍事的な知識でしかありません。周辺諸国と戦争になったときに何処が出てくるのか知っておく必要がありますから」
「実は、元婚約者はジオ公子の恋人で、多分婚約していると思います」
「元ですか」
「僕が彼女を怒らせて破棄になったんです」
「分かりました。ベスパスからの要請として交渉しましょう」
やっとジオ領に入り少し進むと馬に乗った領兵に出会えた。ラスパ副団長が事情を説明すると、1人は公爵邸に走っていき、1人は先導してくれた。
「ルヴェ、もう少し頑張ってくれ」
「ごめん…でも悔いはないから…ありがとう」
「ルヴェ!まだ早い!諦めるな!」
「ごめん…シャルの弟くんの弔いに向かってるのに」
「ルヴェ!」
ジェルヴェを励ましながら公爵邸に到着すると、すぐに開門した。
玄関前に馬車を付けると公子が出てきた。
「早く中へ。今医者を呼びに行かせてるので少し待ってください」
「殿下の主治医の1人を連れています」
「医師のトーリスと申します」
「王子殿下についていてあげてください」
公子は執事や使用人達を動かして僕達を素早く受け入れてくれた。
ジェルヴェを部屋に運んでもらい、僕はパリサと挨拶をした。
「ご無沙汰しております。1年程前にベルパスの第四王女パリサと婚姻し、伯爵位をいただきシャルル・ルチアスとなりました。彼女は妻のパリサです」
「ジオ公子様、受け入れてくださりありがとうございます。突然ご迷惑をおかけしてしまい申し訳ございません」
「パリサ王女殿下、ルチアス伯爵、結婚おめでとうございます。非常時ですのでお気になさらずお休みください」
「弟が亡くなって弔いに行く途中でした。先程の病人は第三王子ジェルヴェです。彼は昔から病を患っていて心臓ではないかと言われております。本人の希望で無理についてきました。道中、息絶えても責は問わないという条件ですので、ジオ邸でもしもの事態になってもベスパスの干渉はありません」
「分かりました。まずは休憩を取ってください。食事をしてゆっくりしてください」
「感謝します」
夫婦だから同じ客室に案内された。
あのジオ公子が僕を丁寧に迎えるなんて。ベスパスの王族の力なのだろうなと感じた。
少し休み、食事を済ませた頃、話があると呼ばれ連れて行かれた。やっぱりクリスティーナがこの屋敷にいて近付くなとかそんなことを言われるのかと思っていたけど…ドアの向こうではジェルヴェを看病していた。
トーリス先生は首を横に振る。あぁ、ジェルヴェの最期か。
「伯爵、あなた方はヘインズ領に向かってください」
「せめて看取らせてください」
「病人と医者だけ預かります」
「ですが、」
「元々、ベスパス王とはそういう約束だったのでは?動けなくなったら置いて行けという話では?」
「でも、僕の義弟であり親友なんです!」
「置いて行くか連れて出発するか好きな方を選んでください」
「…僕がセルヴィー嬢を苦しめたからですか」
「これに関しては俺の温情です」
「温情?」
「クリスティーナが婚約に同意したのは伯爵が背中を押したからです。だから王子殿下を預かると言っているんです」
「どういう…」
「クリスティーナも同じことをいうはずです」
「っ!…分かりました」
ぐったりしているジェルヴェの手を握り、明日出発すると告げて部屋を出た。
客室に戻り王女に説明をして翌朝ジオ公爵領を後にした。
早朝に現れたパリサは長い髪を短く切り、後ろに一纏めにしていた。
『長い髪は手入れが大変ですから』
『よく似合っているよ。少年の服も君が着ると気品が出てくるね』
『褒め言葉ですよね?』
『もちろん』
そんなことを言いながら馬車に乗った。
ジェルヴェはずっと目を輝かせて食い入るように景色を見て、立ち寄った村町を少し見てまわり、王宮の自室とは雲泥の差の宿の部屋に喜んだ。
パリサは約束通り自分のことは自分でやり、積極的に手伝いを申し出た。
順調かと思えたが、道が荒くなると2人は馬車酔いに悩まされた。特にジェルヴェは体力を削っていくし明らかに負担がかかっているのが分かった。間の国で1週間休息を取りまた出発した。
やっと国境を越えて1年ぶりの母国の地を踏みしめたと思ったが、ジェルヴェは限界だった。今いるのが西の国境で、ヘインズ領は王都を抜けて東へ向かわなければならない。何処かで治療を始めないとまずいと思った。
悩んだ挙句…
「ラスパ副団長、トーリス先生、この先にジオ公爵領があります。そこに助けを求めましょう。僕はよく思われていないのですが、王族のルヴェとパリサがいるので拒否はしないと思います」
「ジオ…あのジオ家ですか」
ラスパ副団長はジオ公爵家を知っているみたいだ。
「ご存知なのですか?」
「軍事的な知識でしかありません。周辺諸国と戦争になったときに何処が出てくるのか知っておく必要がありますから」
「実は、元婚約者はジオ公子の恋人で、多分婚約していると思います」
「元ですか」
「僕が彼女を怒らせて破棄になったんです」
「分かりました。ベスパスからの要請として交渉しましょう」
やっとジオ領に入り少し進むと馬に乗った領兵に出会えた。ラスパ副団長が事情を説明すると、1人は公爵邸に走っていき、1人は先導してくれた。
「ルヴェ、もう少し頑張ってくれ」
「ごめん…でも悔いはないから…ありがとう」
「ルヴェ!まだ早い!諦めるな!」
「ごめん…シャルの弟くんの弔いに向かってるのに」
「ルヴェ!」
ジェルヴェを励ましながら公爵邸に到着すると、すぐに開門した。
玄関前に馬車を付けると公子が出てきた。
「早く中へ。今医者を呼びに行かせてるので少し待ってください」
「殿下の主治医の1人を連れています」
「医師のトーリスと申します」
「王子殿下についていてあげてください」
公子は執事や使用人達を動かして僕達を素早く受け入れてくれた。
ジェルヴェを部屋に運んでもらい、僕はパリサと挨拶をした。
「ご無沙汰しております。1年程前にベルパスの第四王女パリサと婚姻し、伯爵位をいただきシャルル・ルチアスとなりました。彼女は妻のパリサです」
「ジオ公子様、受け入れてくださりありがとうございます。突然ご迷惑をおかけしてしまい申し訳ございません」
「パリサ王女殿下、ルチアス伯爵、結婚おめでとうございます。非常時ですのでお気になさらずお休みください」
「弟が亡くなって弔いに行く途中でした。先程の病人は第三王子ジェルヴェです。彼は昔から病を患っていて心臓ではないかと言われております。本人の希望で無理についてきました。道中、息絶えても責は問わないという条件ですので、ジオ邸でもしもの事態になってもベスパスの干渉はありません」
「分かりました。まずは休憩を取ってください。食事をしてゆっくりしてください」
「感謝します」
夫婦だから同じ客室に案内された。
あのジオ公子が僕を丁寧に迎えるなんて。ベスパスの王族の力なのだろうなと感じた。
少し休み、食事を済ませた頃、話があると呼ばれ連れて行かれた。やっぱりクリスティーナがこの屋敷にいて近付くなとかそんなことを言われるのかと思っていたけど…ドアの向こうではジェルヴェを看病していた。
トーリス先生は首を横に振る。あぁ、ジェルヴェの最期か。
「伯爵、あなた方はヘインズ領に向かってください」
「せめて看取らせてください」
「病人と医者だけ預かります」
「ですが、」
「元々、ベスパス王とはそういう約束だったのでは?動けなくなったら置いて行けという話では?」
「でも、僕の義弟であり親友なんです!」
「置いて行くか連れて出発するか好きな方を選んでください」
「…僕がセルヴィー嬢を苦しめたからですか」
「これに関しては俺の温情です」
「温情?」
「クリスティーナが婚約に同意したのは伯爵が背中を押したからです。だから王子殿下を預かると言っているんです」
「どういう…」
「クリスティーナも同じことをいうはずです」
「っ!…分かりました」
ぐったりしているジェルヴェの手を握り、明日出発すると告げて部屋を出た。
客室に戻り王女に説明をして翌朝ジオ公爵領を後にした。
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