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第二章 ハンターとして
2ー7 クラウディア
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私は、クラウディア。
ブキャナン・ディル・フォン・ダイノス侯爵が私のお父様。
産みのお母様であるクリスディア・メレ・フォン・ダイノスは、私が5歳の頃に病気で亡くなったのです。
その後、お父様が側室として迎え入れた継母エルメリンダは、正直なところ、私はあまり好きにはなれない方でした。
お父様とその方との間に、私の義妹と義弟が生まれました。
本来ならば、義弟が嫡子とされるところなのでしょうけれど、なぜかお父様はエルメリンダを正室とせず、また義弟のカルスフォンについても嫡子としては認めていらっしゃらなかったのでした。
事情は良くわかりませんが、お父様としては古き慣例に従って、カルスフォンが成人するまで待つつもりだったようです。
エルメリンダお義母様は子爵家から嫁いでこられた方なのですけれど、実は子爵が平民の妾に産ませた庶子だったようです。
その所為かどうか、お父様は彼女を正室にせずに側室のままに据え置いたのです。
正室になれば、お母様の正式な名前のように「メレ」という言葉が入るのですけれど、側室の場合は「ド・エステ」の言葉が入ります。
お義母様の場合、エルメリンダ・ド・エステ・フォン・ダイノスが正式名称となるのです。
そうしてそのことがある意味で悲劇を生みました。
エルメリンダお義母様が正室になれない恨みを、私に向けて来たようなのです。
そうした考えが子供たちにも伝わり、義妹であるジリオーラと義弟であるカルスフォンが私に敵意を持つようになったのです。
私が居るとカルスフォンが嫡子として認められないのではないかという根拠のない不安を抱いたエルメリンダが、伝手を頼って手に入れた呪い用の魔道具を私の寝台に仕掛けたのです。
一つの魔道具には一人の呪いしかかけられないので、エルメリンダは、娘と息子の手を借りて更に二つの魔道具を仕掛けたのです。
私も後で家庭教師の魔法師に教えられましたが、呪い用の魔道具を使うに当たっては、特別な属性の魔力が必要なわけではないようです。
呪いをかける相手を特定するために、思いを込めて魔力を流すだけなのです。
稀に呪う相手を絞り切れずに、魔道具がまともに発動せずに魔力を流したものに薄くなった呪が返されることもあるそうですが、反呪と異なり、かけた呪が倍々に大きくなることはありませんので少々痛い思いをする程度で終わるそうです。
生憎なことに、義母、義妹、義弟の掛けた呪は見事に発動したのでした。
義妹ジリオーラが呪いをかけた魔道具は、子爵家からエルメリンダに付いてきた少年従者の手により私の寝室の天井裏に設置されました。
もう一つの魔道具は小さな針様のものであり、小賢しいことに何の変哲もない木の棒に仕込まれ、義弟カルスフォンの手により私の背後から肩を小突いたのです。
その時に一瞬びりっとした痛みを感じましたけれど、怪我をするような力で小突いたわけではなかったので単なる悪ふざけと見做されて注意だけで終わってしまいました。
この一瞬の間に私の肩には極々細く短い針状の魔道具が打ち込まれていたのです。
呪いの発動は、その三日後からでした。
その時から、私は食事をしても吐いてしまい、満足に食事ができなくなってしまったのです。
当初は食あたりなどが懸念され、治癒師を招いて治癒に当たってもらったのですが、一向に症状は改善せず、日を置くに従って悪化しました。
ついには動くこともままならず、ベッドに寝ているだけの状態になりました。
十分な栄養と水分の補給ができないことから、肌がひび割れ、そこから内出血を引き起こすとともに至る所で肌が黒ずんで腐敗を始めたのです。
教会にお願いして高名な聖職者による治癒をお願いしたのですが、全く効き目が無かったのです。
私は知りませんでしたけれど、その聖職者の方からは保って四日から五日の命と言われたそうにございます。
お父様は私の死を覚悟しつつも諦めず、たまたま市井の治癒師がエリアヒールの使い手と知って、その方に治癒を試してもらおうとしたようです。
当初は使いに出した者が侯爵家の権力を嵩に着た行動を為したために、お父様が考えていた招請ができず治癒診療そのものが断られたようですが、お父様が直々にその方にお会いして、治癒をお願いされたのだそうです。
教会の聖職者には大金貨でのお布施をしたそうですけれど、その方は大銅貨一枚で私の治癒を引き受けてくださったそうです。
その結果、今、私は生きています。
代わりに義母、義妹、義弟の三人が亡くなりました。
呪を解呪することによって呪いをかけた者へ降りかかる反呪が引き起こされ、私が受けた呪の倍以上の力で一瞬のうちに返されたのです。
三人はとても苦しんで死んだと聞いております。
その亡骸は、荒野に人知れず埋められたとも聞いています。
私に呪を掛けた三人に同情するつもりはございません。
私を呪から救ってくださったのは、リックさんと申される冒険者であり、治癒魔法の使い手でもあるのだそうです。
スラム街に近い教会で診療所を開設し、大銅貨一枚で誰にでも治癒をしているのだとか。
そうして驚いたことにリック様は私と同い年の方なのですヨ。
詳しくは教えていただけませんでしたけれど、リック様は両親のいない孤児なのだそうです。
五日に一度、邸に来られて私の容態を確認し、食事や運動の仕方などについて指示をされて行きます。
その際にはほんのわずかの時間なのですけれど、リック様が私の方に手を差し伸べられて光のシャワーを浴びせてくれるのです。
これを受けるとすごく爽やかな気持ちになれますし、身体が生き返ったような心地になります。
リック様によれば「ヒール」とは異なる「リバフ」という治癒魔法なのだそうです。
この「リバフ」をすることにより、衰えている筋肉を緩やかに再生することができるのだそうです。
リック様は私と同い年でありながら、とても教養がおありです。
メイド長のメリンダに確認しましたけれど、平民の子供が教育を受ける事例は非常に少ないのだそうで、まして親のいない孤児であれば教育を受けること自体がほとんど不可能だと言っていました。
孤児院で相応の読み書きを教えてもらえる場合もあるらしいのですけれど、そもそも孤児院自体にそのような余裕のある所は非常に少ないそうです。
メリンダもリック様の持つ様々な知識の豊富さに驚いていたようです。
お父様も勿論そのことに気づいていらっしゃるのですけれど、それよりも私の命を救ってくれた恩人として絶大な信頼を置かれているようです。
お父様が手ずから家紋の入った袱紗を与えるなど、余程のことでない限りいたしません。
家紋の入った物を与えるということは、その人物の保証を侯爵家が行っていることと同義であり、お父様の抱えている古くからの騎士にでさえ、これまで与えたことはありませんでしたから・・・。
まぁ、そうは言いながらも家紋がわかるような簡易の紋章をつけた武具が与えられてはいるのですけれどね。
袱紗に付けた家紋と武具の簡易の紋章では、その価値がまるで違うのです。
リック様は、少なくともお父様が信頼に足る人物と認めたお方なのです。
但し、残念なことにリック様は平民でございます。
私がどれほど好意を抱こうとも私の伴侶にはできません。
貴族とはそういうものと割り切ってはいるものの、悲しい現実ですよね。
何とかならないのかしらねぇ。
ブキャナン・ディル・フォン・ダイノス侯爵が私のお父様。
産みのお母様であるクリスディア・メレ・フォン・ダイノスは、私が5歳の頃に病気で亡くなったのです。
その後、お父様が側室として迎え入れた継母エルメリンダは、正直なところ、私はあまり好きにはなれない方でした。
お父様とその方との間に、私の義妹と義弟が生まれました。
本来ならば、義弟が嫡子とされるところなのでしょうけれど、なぜかお父様はエルメリンダを正室とせず、また義弟のカルスフォンについても嫡子としては認めていらっしゃらなかったのでした。
事情は良くわかりませんが、お父様としては古き慣例に従って、カルスフォンが成人するまで待つつもりだったようです。
エルメリンダお義母様は子爵家から嫁いでこられた方なのですけれど、実は子爵が平民の妾に産ませた庶子だったようです。
その所為かどうか、お父様は彼女を正室にせずに側室のままに据え置いたのです。
正室になれば、お母様の正式な名前のように「メレ」という言葉が入るのですけれど、側室の場合は「ド・エステ」の言葉が入ります。
お義母様の場合、エルメリンダ・ド・エステ・フォン・ダイノスが正式名称となるのです。
そうしてそのことがある意味で悲劇を生みました。
エルメリンダお義母様が正室になれない恨みを、私に向けて来たようなのです。
そうした考えが子供たちにも伝わり、義妹であるジリオーラと義弟であるカルスフォンが私に敵意を持つようになったのです。
私が居るとカルスフォンが嫡子として認められないのではないかという根拠のない不安を抱いたエルメリンダが、伝手を頼って手に入れた呪い用の魔道具を私の寝台に仕掛けたのです。
一つの魔道具には一人の呪いしかかけられないので、エルメリンダは、娘と息子の手を借りて更に二つの魔道具を仕掛けたのです。
私も後で家庭教師の魔法師に教えられましたが、呪い用の魔道具を使うに当たっては、特別な属性の魔力が必要なわけではないようです。
呪いをかける相手を特定するために、思いを込めて魔力を流すだけなのです。
稀に呪う相手を絞り切れずに、魔道具がまともに発動せずに魔力を流したものに薄くなった呪が返されることもあるそうですが、反呪と異なり、かけた呪が倍々に大きくなることはありませんので少々痛い思いをする程度で終わるそうです。
生憎なことに、義母、義妹、義弟の掛けた呪は見事に発動したのでした。
義妹ジリオーラが呪いをかけた魔道具は、子爵家からエルメリンダに付いてきた少年従者の手により私の寝室の天井裏に設置されました。
もう一つの魔道具は小さな針様のものであり、小賢しいことに何の変哲もない木の棒に仕込まれ、義弟カルスフォンの手により私の背後から肩を小突いたのです。
その時に一瞬びりっとした痛みを感じましたけれど、怪我をするような力で小突いたわけではなかったので単なる悪ふざけと見做されて注意だけで終わってしまいました。
この一瞬の間に私の肩には極々細く短い針状の魔道具が打ち込まれていたのです。
呪いの発動は、その三日後からでした。
その時から、私は食事をしても吐いてしまい、満足に食事ができなくなってしまったのです。
当初は食あたりなどが懸念され、治癒師を招いて治癒に当たってもらったのですが、一向に症状は改善せず、日を置くに従って悪化しました。
ついには動くこともままならず、ベッドに寝ているだけの状態になりました。
十分な栄養と水分の補給ができないことから、肌がひび割れ、そこから内出血を引き起こすとともに至る所で肌が黒ずんで腐敗を始めたのです。
教会にお願いして高名な聖職者による治癒をお願いしたのですが、全く効き目が無かったのです。
私は知りませんでしたけれど、その聖職者の方からは保って四日から五日の命と言われたそうにございます。
お父様は私の死を覚悟しつつも諦めず、たまたま市井の治癒師がエリアヒールの使い手と知って、その方に治癒を試してもらおうとしたようです。
当初は使いに出した者が侯爵家の権力を嵩に着た行動を為したために、お父様が考えていた招請ができず治癒診療そのものが断られたようですが、お父様が直々にその方にお会いして、治癒をお願いされたのだそうです。
教会の聖職者には大金貨でのお布施をしたそうですけれど、その方は大銅貨一枚で私の治癒を引き受けてくださったそうです。
その結果、今、私は生きています。
代わりに義母、義妹、義弟の三人が亡くなりました。
呪を解呪することによって呪いをかけた者へ降りかかる反呪が引き起こされ、私が受けた呪の倍以上の力で一瞬のうちに返されたのです。
三人はとても苦しんで死んだと聞いております。
その亡骸は、荒野に人知れず埋められたとも聞いています。
私に呪を掛けた三人に同情するつもりはございません。
私を呪から救ってくださったのは、リックさんと申される冒険者であり、治癒魔法の使い手でもあるのだそうです。
スラム街に近い教会で診療所を開設し、大銅貨一枚で誰にでも治癒をしているのだとか。
そうして驚いたことにリック様は私と同い年の方なのですヨ。
詳しくは教えていただけませんでしたけれど、リック様は両親のいない孤児なのだそうです。
五日に一度、邸に来られて私の容態を確認し、食事や運動の仕方などについて指示をされて行きます。
その際にはほんのわずかの時間なのですけれど、リック様が私の方に手を差し伸べられて光のシャワーを浴びせてくれるのです。
これを受けるとすごく爽やかな気持ちになれますし、身体が生き返ったような心地になります。
リック様によれば「ヒール」とは異なる「リバフ」という治癒魔法なのだそうです。
この「リバフ」をすることにより、衰えている筋肉を緩やかに再生することができるのだそうです。
リック様は私と同い年でありながら、とても教養がおありです。
メイド長のメリンダに確認しましたけれど、平民の子供が教育を受ける事例は非常に少ないのだそうで、まして親のいない孤児であれば教育を受けること自体がほとんど不可能だと言っていました。
孤児院で相応の読み書きを教えてもらえる場合もあるらしいのですけれど、そもそも孤児院自体にそのような余裕のある所は非常に少ないそうです。
メリンダもリック様の持つ様々な知識の豊富さに驚いていたようです。
お父様も勿論そのことに気づいていらっしゃるのですけれど、それよりも私の命を救ってくれた恩人として絶大な信頼を置かれているようです。
お父様が手ずから家紋の入った袱紗を与えるなど、余程のことでない限りいたしません。
家紋の入った物を与えるということは、その人物の保証を侯爵家が行っていることと同義であり、お父様の抱えている古くからの騎士にでさえ、これまで与えたことはありませんでしたから・・・。
まぁ、そうは言いながらも家紋がわかるような簡易の紋章をつけた武具が与えられてはいるのですけれどね。
袱紗に付けた家紋と武具の簡易の紋章では、その価値がまるで違うのです。
リック様は、少なくともお父様が信頼に足る人物と認めたお方なのです。
但し、残念なことにリック様は平民でございます。
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