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第三章 ニオルカンのマルコ
3ー8 カラガンダ老と学院長
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マルコと学院長の面談があった二日後、カラガンダ老は魔法学院長と面談をしていた。
当初、学院長がカラガンダ老の自宅を訪れるとしていたのだが、カラガンダ老から使いを出して、逆にカラガンダ老が学院長の元へ訪れることにしたのだった。
用件は、多分、学院長の事情聴取であろう。
マルコから聞いた限りでは、恐らくはマルコの出自や魔法の由来を確認したいのだろう。
しかしながらカラガンダが知っているマルコの出自や能力全てを、学院長に知らしめるわけには行かない。
学院長は王宮魔法師団所縁の人物であり、王家や力ある貴族とも親しいはずだ。
マルコに相応の能力があると知れば、学院長若しくはその知人の貴族等が囲い込みに走るのは間違いない。
仮に学院長がそう思わずとも、それを知った者が動くのが当たり前なのだ。
うっかりすれば知らぬ間に骨までしゃぶられるのが貴族社会の常であり、同時にその権力に取り込まれないよう様々に工夫して生き抜くのが商人達でもある。
マルコから学院長に話をした部分については、肯定するしかないが、それ以外はほとんど知らぬ存ぜぬで押し通すことにした。
正直なところ、マルコが辿った道筋とその冒険については、マルコから聞いているけれど、そのまま話してもますます疑念が増えるだけだ。
従って、私が知っているリーベンから以降の話だけを虚実を交えて話すぐらいしかできないだろうな。
まぁ、旅の中で特筆すべきはマルコの料理の腕だっただろうか。
◇◇◇◇
学院長とは初めて会った。
儂より歳若ではあるが、知性に溢れた顔をしている御仁じゃから、中々に騙すのは一苦労する手合いじゃな。
このような場合は騙そうとするのではなく自然体で構え、できる話を色々とくっちゃベるのが一番良い方法じゃ。
そもそも儂では魔法のことなんぞほとんどわからぬのじゃから、訊かれても答えられんことが多い。
じゃから、儂も訪ねたことのない他の大陸で魔法師に教えてもらったとマルコが言うなら、そう聞いておるとしか言えんのじゃ。
ひとしきり相手の力量を確かめる様な手探りのような問答から始まるのが貴族たちの習性じゃ。
目の前にいる学院長も同様な手法で話しかけてきたが、見かけによらず中々に鋭い男じゃな。
カラガンダ老がこれまで出会った老獪な貴族の中でも十指に入る人物と見た。
これは迂闊には話ができない人物じゃ。
カラガンダ老は細心の注意を傾注するようにしたが、最高クラスの警戒ではない。
最高難易度の人物は、そうとは思わせずに不意を突いて来る人物だ。
カラガンダ老もそういった人物はこれまでに三人しか出会ったことが無く、そのうち二人は既に亡くなっている。
「世間話はこれぐらいとして、今日わざわざお越しいただいたのはほかでもなく、カラガンダ様の養子となっているマルコのことです。
或いはマルコから聞いてご承知かも知れませぬが、我が学院で不祥事がございました。
子供たちが怪我をしたというわけでは無いのですが、学院の教育方針がいつからか大きく誤っておりました。
生憎と私はここに来たばかりでして、承知していなかったことなのですが、子供達を導く者がそれとは知らずに、してはならないことを子供達に扇動し、強要していたようです。
そもそもがこの地の風習なのかもしれませぬが、公爵家お抱えの貴族達が我が子可愛さに幼少のみぎりから魔法の行使を促しておりました。
カラガンダ殿は、魔法を使う方には非ずしてご承知ないかもしれませぬが、少なくとも王都では学院に入る前の子供達にはできるだけ魔法の発動をさせないよう注意を払っています。
一部の優れた魔法師であって人に教えを為すことが得意な者ならばいざ知らず、陪臣の貴族は左程の魔法能力を持ちませぬし、さしたる指導能力もありません。
そうした道理を知らぬ者が、子弟に対して、その適性をも見極めずに魔法の練習をさせれば、場合によりその子弟の魔法能力が歪み、育たなくなります。
あたら才能のある者を知らずして埋もれさせることになるのです。
私がこの学院長に就任したのも、王都におられる公爵から、この公爵領の魔法師の力量が落ちているようなので、その原因を探り、向上させてほしいと直々の依頼があったからなのです。
そうして計らずも、マルコのお陰で若干の騒動が有って、その原因が掴めました。
全ては先代或いは先々代の学院長の怠慢な指示から来ているものでした。
この学院に務める教師たちもこの学院の卒業生であっただけに、その慣行が為してはならないものという意識が無かったのです。
当然のことながら今後は是正させますけれど、その矛盾に気づいたのは幼いマルコであり、マルコからは教師に対して抗議らしきものも為したようですが、教師はマルコを平民の子と蔑み、その言葉を無視したようです。
その結果として、教師が無茶な指示を出し、マルコがその無茶を実現させたのが騒動の始まりです。
マルコは、魔法では破壊できないはずの標的を教師の無茶と知りながら敢えて全てを破壊したのです。
ある意味で標的の破壊は、学院にとって大きな損失ではありますが、マルコの責任ではありません。
全ては挑発した教師の責任であり、そのような行為を許して来た歴代学院長の責任です。
但し、問題となるのは、公爵領の誉れある学院で本来あってはならない教育指導が為されてきたことであり、これは王宮にも報告せざるを得ない大きな問題なのです。
当然にその端緒となった事件としてマルコの能力も相応に王都へは報告を為さねばなりません。
既にマルコからの聞き取りで、出来ればマルコの能力その他については秘匿してほしいとの本人希望も聞いておりますが、生憎と私が勤めていたことのある王宮魔法師団は機微に聡い者の集団であり、しかも魔法師団の草と呼ばれる配下が王国内各地に潜んでおります。
結論から申しあげれば、私が報告せずとも王宮魔法師団にこの学院で起きた事件は大なり小なり既に報告されているか、或いはこれから為されると思われた方が宜しいでしょう。
特に此度のような教師に対して何らかの懲戒を伴うような事件については、その詳細が調べ上げられ報告がなされるでしょう。
私が口を閉ざしていても、持って二月、少なくとも王宮魔法師団に情報が流れ、国王陛下の側近には伝えられることになります。
余程のぼんくらでもない限り、半年後には侯爵以上の国王陛下の直臣は、ここであった事の大半を承知しているでしょう。
その中には無論マルコの魔法能力も入ります。
マルコが破壊した標的は、王宮魔法師団の精鋭でもなかなかに破壊できぬ代物です。
それを学院に入ったばかりの平民の子が破壊したという事実は非常に重いのです。
恐らくはいずれの諸侯もマルコ獲得に動き出すでしょう。
最初に動くのは王宮魔法師団、次いで王家そのものも動くやもしれません。
後ろ盾のない平民であればこそ、我先にと諸侯も動くことになりますので、マルコの居場所がなくなる恐れもありますが・・・。
カラガンダ殿は如何いたしますかな?」
ふむ、いきなり超面倒な事態を想定してこちらに振ってきたか・・・。
幾らこの大陸での豪商とはいえ、できることは左程多くは無い。
この地の領主たる公爵に庇護をお願いするか、王宮魔法師団や王家を頼るかぐらいでしょうか?
「私も一介の平民の元商人に過ぎません。
もとより長男に商売の方は任せて引退した身です。
王家や諸侯に対抗する術などございませんが・・・。
学院長殿は如何するのが宜しき方法と考えておられましょうか?」
「おや、逆に振られましたか・・・。
左程の方策はございませぬが、少なくともマルコが学院に在学中は私の立場で諸侯からの抱え込みを防ぐことはできます。
なれど、王家から直接に命じられると対抗手段はございませぬ。
敢えて申し上げるならば、それを防ぐには国を出るしかありません。」
「いくら何でも幼いマルコが一人で国を出て行くのは無理かと存じます。
せめてギルドに登録できる10歳若しくは12歳になれば、独り立ちも可能でしょうが、それまではこの老骨が親として支えてやらねばなりませぬ。」
「フム、失礼ながらマルコは旅先で拾った養子と聞いております。
何故そこまで面倒を見られますか?
金持ちの道楽にしても度が過ぎるように思いますが・・・。」
「実のところ、マルコには旅の途中で何度も助けられています。
あの子は幼いながらもとても聡い子です。
我々のような大人では考えもつかないようなことを考えつき、実行できるだけの能力もございます。
あの子が居なければ、私は三度ほども命を失っていたかもしれません。」
抽象的な言い方だが、これだけでも我らの旅程を調べれば何があったのか類推できるかもしれない。
その危険を冒してまでの発言を私は敢えて行った。
当初の計画では魔法のことは何も知らないと主張する気でいたが、王宮魔法師団の草なる存在があるのでは、その嘘をつきとおすのも難しいだろう。
従って、学院長にそちらへの対応をも頼めないかという示唆で、大きな賭けに出たのだった。
この方法が上手く行かなければ何をしても上手くは行かないだろう。
最終的にマルコを連れて国外へ出るしかあるまい。
暫く沈黙のままにらみ合っていた。
「なるほど、・・・。
何ができるかはわかりませんが、マルコはこの学院の再建にとってもカギとなる人物と考えています。
彼は幼き者ながら魔法の何たるかを承知し、同級生の実情も良く把握しています。
既に上級生の方はそのほとんどが手遅れの状態なのですけれど、少なくとも以後の学院入学生には適切な教育ができるようにしたいと私は考えており、今ここにいる教師よりもマルコのような理解者が私には是非とも必要です。
そのために少なくともマルコが今後ともこの学院に居られるよう私も陰ながら動いてみましょう。」
◇◇◇◇
学院長との話し合いは有意義に終わったと言えるだろう。
少なくとも学院長はその力の及ぶ限りマルコを擁護してくれそうだ。
問題は学院長の権限を上回る存在が無理難題を吹っ掛けて来た時、学院長は庇えないことを正直に吐露している。
従ってカラガンダ老としては、この国を出るための方策も今の時点で整えておくべきだろう。
此処、ニオルカンは王国の西の端であって、大陸の端でもある。
これより西方に向かっても別の国はない。
もしかすると大陸があるやもしれぬが、未だ発見されていない未踏域なのだ。
従って、逃亡するならば東に向かうしかないのだが、陸路では王国の中を突っ切って行くことになるからダメだ。
ならば海路を使って北回りか・・・・。
船は大小さまざまなものを手配できるが、南回りは、大陸南部が未開蛮族の居住地であるため寄港もできないし、補給も難しい。
海路を進むには、やはり補給地が無いと続かないのだ。
そうして北回りは追手がかかりやすい場所でもある。
近場の寄港地は二か所、フラドリーとカサブラス。
いずれもニオルカンに次ぐ規模の大きな商港なのだが、実は軍港も兼ねた王家直轄の港なのだ。
万が一手配がかかった状態でこの二つの港に入港するには余程の度胸が必要だろう。
フム、或いはマルコならばなにがしかの脱出方法について知恵があるやもしれぬから、相談してみるか。
当初、学院長がカラガンダ老の自宅を訪れるとしていたのだが、カラガンダ老から使いを出して、逆にカラガンダ老が学院長の元へ訪れることにしたのだった。
用件は、多分、学院長の事情聴取であろう。
マルコから聞いた限りでは、恐らくはマルコの出自や魔法の由来を確認したいのだろう。
しかしながらカラガンダが知っているマルコの出自や能力全てを、学院長に知らしめるわけには行かない。
学院長は王宮魔法師団所縁の人物であり、王家や力ある貴族とも親しいはずだ。
マルコに相応の能力があると知れば、学院長若しくはその知人の貴族等が囲い込みに走るのは間違いない。
仮に学院長がそう思わずとも、それを知った者が動くのが当たり前なのだ。
うっかりすれば知らぬ間に骨までしゃぶられるのが貴族社会の常であり、同時にその権力に取り込まれないよう様々に工夫して生き抜くのが商人達でもある。
マルコから学院長に話をした部分については、肯定するしかないが、それ以外はほとんど知らぬ存ぜぬで押し通すことにした。
正直なところ、マルコが辿った道筋とその冒険については、マルコから聞いているけれど、そのまま話してもますます疑念が増えるだけだ。
従って、私が知っているリーベンから以降の話だけを虚実を交えて話すぐらいしかできないだろうな。
まぁ、旅の中で特筆すべきはマルコの料理の腕だっただろうか。
◇◇◇◇
学院長とは初めて会った。
儂より歳若ではあるが、知性に溢れた顔をしている御仁じゃから、中々に騙すのは一苦労する手合いじゃな。
このような場合は騙そうとするのではなく自然体で構え、できる話を色々とくっちゃベるのが一番良い方法じゃ。
そもそも儂では魔法のことなんぞほとんどわからぬのじゃから、訊かれても答えられんことが多い。
じゃから、儂も訪ねたことのない他の大陸で魔法師に教えてもらったとマルコが言うなら、そう聞いておるとしか言えんのじゃ。
ひとしきり相手の力量を確かめる様な手探りのような問答から始まるのが貴族たちの習性じゃ。
目の前にいる学院長も同様な手法で話しかけてきたが、見かけによらず中々に鋭い男じゃな。
カラガンダ老がこれまで出会った老獪な貴族の中でも十指に入る人物と見た。
これは迂闊には話ができない人物じゃ。
カラガンダ老は細心の注意を傾注するようにしたが、最高クラスの警戒ではない。
最高難易度の人物は、そうとは思わせずに不意を突いて来る人物だ。
カラガンダ老もそういった人物はこれまでに三人しか出会ったことが無く、そのうち二人は既に亡くなっている。
「世間話はこれぐらいとして、今日わざわざお越しいただいたのはほかでもなく、カラガンダ様の養子となっているマルコのことです。
或いはマルコから聞いてご承知かも知れませぬが、我が学院で不祥事がございました。
子供たちが怪我をしたというわけでは無いのですが、学院の教育方針がいつからか大きく誤っておりました。
生憎と私はここに来たばかりでして、承知していなかったことなのですが、子供達を導く者がそれとは知らずに、してはならないことを子供達に扇動し、強要していたようです。
そもそもがこの地の風習なのかもしれませぬが、公爵家お抱えの貴族達が我が子可愛さに幼少のみぎりから魔法の行使を促しておりました。
カラガンダ殿は、魔法を使う方には非ずしてご承知ないかもしれませぬが、少なくとも王都では学院に入る前の子供達にはできるだけ魔法の発動をさせないよう注意を払っています。
一部の優れた魔法師であって人に教えを為すことが得意な者ならばいざ知らず、陪臣の貴族は左程の魔法能力を持ちませぬし、さしたる指導能力もありません。
そうした道理を知らぬ者が、子弟に対して、その適性をも見極めずに魔法の練習をさせれば、場合によりその子弟の魔法能力が歪み、育たなくなります。
あたら才能のある者を知らずして埋もれさせることになるのです。
私がこの学院長に就任したのも、王都におられる公爵から、この公爵領の魔法師の力量が落ちているようなので、その原因を探り、向上させてほしいと直々の依頼があったからなのです。
そうして計らずも、マルコのお陰で若干の騒動が有って、その原因が掴めました。
全ては先代或いは先々代の学院長の怠慢な指示から来ているものでした。
この学院に務める教師たちもこの学院の卒業生であっただけに、その慣行が為してはならないものという意識が無かったのです。
当然のことながら今後は是正させますけれど、その矛盾に気づいたのは幼いマルコであり、マルコからは教師に対して抗議らしきものも為したようですが、教師はマルコを平民の子と蔑み、その言葉を無視したようです。
その結果として、教師が無茶な指示を出し、マルコがその無茶を実現させたのが騒動の始まりです。
マルコは、魔法では破壊できないはずの標的を教師の無茶と知りながら敢えて全てを破壊したのです。
ある意味で標的の破壊は、学院にとって大きな損失ではありますが、マルコの責任ではありません。
全ては挑発した教師の責任であり、そのような行為を許して来た歴代学院長の責任です。
但し、問題となるのは、公爵領の誉れある学院で本来あってはならない教育指導が為されてきたことであり、これは王宮にも報告せざるを得ない大きな問題なのです。
当然にその端緒となった事件としてマルコの能力も相応に王都へは報告を為さねばなりません。
既にマルコからの聞き取りで、出来ればマルコの能力その他については秘匿してほしいとの本人希望も聞いておりますが、生憎と私が勤めていたことのある王宮魔法師団は機微に聡い者の集団であり、しかも魔法師団の草と呼ばれる配下が王国内各地に潜んでおります。
結論から申しあげれば、私が報告せずとも王宮魔法師団にこの学院で起きた事件は大なり小なり既に報告されているか、或いはこれから為されると思われた方が宜しいでしょう。
特に此度のような教師に対して何らかの懲戒を伴うような事件については、その詳細が調べ上げられ報告がなされるでしょう。
私が口を閉ざしていても、持って二月、少なくとも王宮魔法師団に情報が流れ、国王陛下の側近には伝えられることになります。
余程のぼんくらでもない限り、半年後には侯爵以上の国王陛下の直臣は、ここであった事の大半を承知しているでしょう。
その中には無論マルコの魔法能力も入ります。
マルコが破壊した標的は、王宮魔法師団の精鋭でもなかなかに破壊できぬ代物です。
それを学院に入ったばかりの平民の子が破壊したという事実は非常に重いのです。
恐らくはいずれの諸侯もマルコ獲得に動き出すでしょう。
最初に動くのは王宮魔法師団、次いで王家そのものも動くやもしれません。
後ろ盾のない平民であればこそ、我先にと諸侯も動くことになりますので、マルコの居場所がなくなる恐れもありますが・・・。
カラガンダ殿は如何いたしますかな?」
ふむ、いきなり超面倒な事態を想定してこちらに振ってきたか・・・。
幾らこの大陸での豪商とはいえ、できることは左程多くは無い。
この地の領主たる公爵に庇護をお願いするか、王宮魔法師団や王家を頼るかぐらいでしょうか?
「私も一介の平民の元商人に過ぎません。
もとより長男に商売の方は任せて引退した身です。
王家や諸侯に対抗する術などございませんが・・・。
学院長殿は如何するのが宜しき方法と考えておられましょうか?」
「おや、逆に振られましたか・・・。
左程の方策はございませぬが、少なくともマルコが学院に在学中は私の立場で諸侯からの抱え込みを防ぐことはできます。
なれど、王家から直接に命じられると対抗手段はございませぬ。
敢えて申し上げるならば、それを防ぐには国を出るしかありません。」
「いくら何でも幼いマルコが一人で国を出て行くのは無理かと存じます。
せめてギルドに登録できる10歳若しくは12歳になれば、独り立ちも可能でしょうが、それまではこの老骨が親として支えてやらねばなりませぬ。」
「フム、失礼ながらマルコは旅先で拾った養子と聞いております。
何故そこまで面倒を見られますか?
金持ちの道楽にしても度が過ぎるように思いますが・・・。」
「実のところ、マルコには旅の途中で何度も助けられています。
あの子は幼いながらもとても聡い子です。
我々のような大人では考えもつかないようなことを考えつき、実行できるだけの能力もございます。
あの子が居なければ、私は三度ほども命を失っていたかもしれません。」
抽象的な言い方だが、これだけでも我らの旅程を調べれば何があったのか類推できるかもしれない。
その危険を冒してまでの発言を私は敢えて行った。
当初の計画では魔法のことは何も知らないと主張する気でいたが、王宮魔法師団の草なる存在があるのでは、その嘘をつきとおすのも難しいだろう。
従って、学院長にそちらへの対応をも頼めないかという示唆で、大きな賭けに出たのだった。
この方法が上手く行かなければ何をしても上手くは行かないだろう。
最終的にマルコを連れて国外へ出るしかあるまい。
暫く沈黙のままにらみ合っていた。
「なるほど、・・・。
何ができるかはわかりませんが、マルコはこの学院の再建にとってもカギとなる人物と考えています。
彼は幼き者ながら魔法の何たるかを承知し、同級生の実情も良く把握しています。
既に上級生の方はそのほとんどが手遅れの状態なのですけれど、少なくとも以後の学院入学生には適切な教育ができるようにしたいと私は考えており、今ここにいる教師よりもマルコのような理解者が私には是非とも必要です。
そのために少なくともマルコが今後ともこの学院に居られるよう私も陰ながら動いてみましょう。」
◇◇◇◇
学院長との話し合いは有意義に終わったと言えるだろう。
少なくとも学院長はその力の及ぶ限りマルコを擁護してくれそうだ。
問題は学院長の権限を上回る存在が無理難題を吹っ掛けて来た時、学院長は庇えないことを正直に吐露している。
従ってカラガンダ老としては、この国を出るための方策も今の時点で整えておくべきだろう。
此処、ニオルカンは王国の西の端であって、大陸の端でもある。
これより西方に向かっても別の国はない。
もしかすると大陸があるやもしれぬが、未だ発見されていない未踏域なのだ。
従って、逃亡するならば東に向かうしかないのだが、陸路では王国の中を突っ切って行くことになるからダメだ。
ならば海路を使って北回りか・・・・。
船は大小さまざまなものを手配できるが、南回りは、大陸南部が未開蛮族の居住地であるため寄港もできないし、補給も難しい。
海路を進むには、やはり補給地が無いと続かないのだ。
そうして北回りは追手がかかりやすい場所でもある。
近場の寄港地は二か所、フラドリーとカサブラス。
いずれもニオルカンに次ぐ規模の大きな商港なのだが、実は軍港も兼ねた王家直轄の港なのだ。
万が一手配がかかった状態でこの二つの港に入港するには余程の度胸が必要だろう。
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