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第四章 東への旅
4ー1 マイジロン大陸東部への道筋
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秋季8ビセットの10日、マルコ、カラガンダ翁、ステラ媼の三人が乗った二頭曳きの馬車は、ニオルカンから東へ遠く離れたマイジロン大陸東方域に当たるロワイと呼ばれる野営地近傍に出現した。
ロワイは単なる野営に適した平地であって、宿坊などの設備は無く、水源もない。
然しながら、街道よりも少し高台になっているために、雨季に雨除けでここで休憩を取る旅人や商人が多いのだ。
マルコは姿を消したまま馬車ごと街道筋の上空に転移し、周囲を確認した上で人気のない場所に降り立ったのだ。
馬車は何事もなかったように緩やかな下り坂の道を進み始め、やがてロワイの野営地に到着した。
ニオルカンを発ったのは朝方だが、大陸西端から東方域へと一気に転移したので経度線をかなり超えたようで、太陽の高度から見て少なくとも南中時を過ぎていそうである。
そのまま東へ向けて旅を続けることもできたが、周囲に合わせてお昼休憩とするため、ロワイの野営地に入っていった。
ここからニオルカンへは、1年近く旅をしなければ到達できないというそんな遠隔地なのであった。
馬車の中の台所で食事を作るのはステラとマルコであり、その間、カラガンダ翁は外に設置した折り畳みのテーブルセットに座って、嗜好品のハルファを嗜んでいる。
ハルファは強壮剤が含まれと言われている広葉樹の葉をすりおろして得られるガム状の食品であり、食べても害はないが、通常は食べずに噛むだけで吐き出すものだ。
独特の苦みのある甘味が癖になる。
但し、習慣性は無く身体に悪影響は無いとされている。
南中時前後に旅路途上にある隊商は、概ね昼食のための休憩をすることが多い。
家に居るときなどは二食で済ます者も多いのだが、身体を動かす仕事に就く者は、お昼にもエネルギー源を入れないと夕刻まで持たないのである。
従って、休憩がてら軽食を食べるのが隊商の一般的な姿である。
お昼の用意ができて、ステラに呼ばれたのでカラガンダ翁は馬車の中に入った。
外見から見ると6人から8人が乗れるようなスペースしかないはずの馬車は、奥の扉を開けると、そこはもう別世界である。
ニオルカンの屋敷の居間を模した広い空間に食堂等生活に必要な設備が様々についている。
テーブルの上には、ステラの料理とマルコの料理が混在していた。
ステラの料理は、長年の経験で作った料理であって、カラガンダ翁も良く知っているが、マルコの料理はカラガンダ翁もステラ媼も初めて出会う料理だ。
マルコの料理の腕はカラガンダ翁も良く知っているが、ニオルカンの屋敷では専属の料理人がいるために、遠慮してマルコがキッチンに立つことは無かった。
その意味ではステラ媼も同じだが、ほんの二十年ほど前までは料理人に交じってステラ媼が食事を造っていたのだ。
ただ、最近は長男坊の嫁が台所に入るため、ステラ媼も遠慮して嫁と料理人に任せるようになっていたのだ。
どちらの料理も美味かった。
久しぶりに食べたステラ媼の手料理であり、また見慣れぬマルコの料理であったが、十分にその味を楽しめた。
この分ならば、この旅の間中美味しい料理の数々が食べられそうだと頬が緩むカラガンダ翁であった。
十分な時間を取った食事が終わると、再び馬車を動かして野営地を出て街道を東に向けて走る。
マルコとモンテネグロ老夫婦の旅は始まったばかりなのだ。
当面の目標は、マイジロン大陸東岸にある商港アルビラである。
アルビラにはモンテネグロ商会の支店があるので、そこに顔を出すつもりではあるが、あまりに早いと色々と疑われるので、これまでの商いの旅ではできなかった観光地巡りをしながらアルビラを目指す予定である。
マルコが10歳になれば、少なくとも冒険者ギルドへの登録が可能である。
冒険者として登録したからと言って必ずしも一人前とは見做されないが、少なくとも身分証明書の代わりになるカードは学級してもらえるのである。
10歳から独り立ちしている孤児なども多数いるから、当座は冒険者としての地位を得ても良いだろう。
そうして12歳になれば、商業ギルドを含めて種々のギルドに登録ができる最低資格に達する。
尤も、錬金術師、薬師などのギルドは適性が無いと登録すらできないが、マルコについては間違いなく錬金術の適性は大ありなはずで、玄人裸足の腕前であることはカラガンダ翁も承知している。
12歳まで後三年ほど、マルコが12歳になったなら儂らがついていなくても一人で生きて行けるだろうなと密かに思っているカラガンダ翁である。
それまで、あるいはその後もステラと一緒に見守って行きたいと思っているカラガンダ翁であった。
夕刻には野営地ロノブルに到着、馬車に宿泊しながら休むのである。
マルコの話では、馬車と馬には結界が張られており、屈強な冒険者や兵士でも結界を破れないという。
無論、そんな無法者が現れれば、マルコがすぐにも対処するそうだ。
覚醒して間もなく、緒戦で亜種を含むワイバーン五匹を瞬殺したマルコである。
まともに戦えば多少の軍隊であっても負けは無い。
ましてやスタンピードを壊滅させた大魔法の類が使われれば、各国の王都でさえ存続が怪しいものだと思っている。
ある意味では空恐ろしい力を持っているマルコであるが、性格は優しく素直な良い子である。
リーベンで養子になったことを恩義に感じて、カラガンダ翁を何度も救い、また商売の手助けもしてくれた。
親が無くても子は育つというが、マルコは本当に良い子に育ってくれた。
その夜、モンテネグロ夫妻とマルコでこれからの旅路を相談した。
カラガンダ翁は、この際だからアルビラに行くのに少し遠回りであるけれど、南廻りの道筋を言ってはどうかと提案した。
商用の主要街道は、ひたすら短い期間で西へ行く道であるが、南廻りで行けば、マイジロン大陸東方の観光地を色々と回ることができるのだ。
長年連れ添ったステラも商用の主要街道は知っていても、南廻りの道は知らない。
勿論、カラガンダ翁も噂話で聞いているだけで、自ら当該南の地域を旅行したことはない。
必ずしも安全な道ではないことは百も承知である。
然しながらマルコがいる限り何も心配はないと思っている。
南廻りを選ぶと、概ね1年近くの時間も稼げるだろう。
アルビラ到着時にはマルコも十歳になっているであろうから、冒険者ギルドへの登録を済ませて証明書だけは入手しておきたいのだ。
アルビラからは、モンテネグロ商会の支店を頼って、リーベン行きの船に便乗させてもらうつもりであった。
南廻りの旅路についてはステラもマルコも賛成した。
ところが、海路についてはマルコが別の提案をしたのである。
アルビラでは、船を造り、その船で旅をしたいというのである。
「マルコよ。
ひょっとして、馬車と同じで、とんでもない船を造るのかな?」
「はい、この馬車と同じく外敵から守れる船にしたいと存じます。
勿論この馬車に備えてある設備は当然のように設けますけれど、・・・。
いけませんか?」
「しかし、どこで船などを造るつもりじゃ。
船を造るには造船所が必要ぞ。」
「記憶にある海からアルビラの港に入る手前の右手側、多分北側かと存じますけれど、砂浜があったように記憶しています。
あの場に少し入り江を掘り、そこで船を造りたいと存じます。
大きさは長さが20尋ほど、幅が4尋程度になるかと存じます。
設計さえ済ませておけば、三日もあれば完成できますので、左程待つことも無いと存じます。
材料については、この旅の間に途中で貯めこんでまいるつもりです。」
「うーん、それは、まぁ、・・・。
マルコの造るモノは特上品だからのぉ。
出来上がれば、モンテネグロ商会の持ち船がきっと霞むことじゃろう。
それにしても20尋の大きさの船とは、外洋を渡る船としてはやや小振りなものの、個人が遊興に使う船や、漂浪の海人が住まう船としてはかなり大きいな。
船乗りなしで大丈夫か?」
「船の場合、夜間も走りますので、目は多い方が宜しいでしょうね。
そのため、馬車と同様にゴーレムの船員を造ります。
そうすれば、船旅も問題なく快適に過ごせると存じます。」
「なんと、人までゴーレムで作り出せるか・・・。
マルコよ。
其方、ひょっとして神の生まれ変わりか、何かか?」
「義父様もご存じの通り、単なるハーフエルフであって、多少魔法が得意な子に過ぎません。」
この夜の話し合いで今後の旅の大筋が決まった。
次の日から、概ね野営地を一つ飛びで南廻りの旅路を行く馬車があった。
二頭曳きの馬車は、ゴーレム馬が疲れを見せることなく順調に進んで行く。
通常の隊商は荷を抱えていることもあって左程早い速力は出ない。
そのため、多少の例外はあるものの、野営地ごとに止まって行くのが普通であった。
メインの商用路から外れた脇往還とでも言うべき南廻りの街道は、行き交う隊商も少ない。
たまに見かける単体の馬車は観光地巡りの金持ちと相場が決まっており、それを狙う盗賊・山賊も多いのだ。
但し、主要街道のように悪人どもも大集団で群れては居ない。
大集団は強いがその分獲物が少ないと盗賊稼業もやっては行けないのである。
従って、小規模の商人などを襲う脇往還の山賊・盗賊は左程の陣容は揃えていない。
そうして護衛もついていない簡単な獲物と侮ってマルコ達の馬車を襲撃した盗賊・山賊は、その全てが壊滅していた。
襲撃を企てた山賊・盗賊の類で、二頭曳の馬車まで50尋以下に近づける者は居なかった。
襲撃の意図がある者達については、接近してきた時点で瞬時に首が宙を舞っていたのだ。
南廻りの旅路を取ってから、概ね二日に一度程度は5人から10人前後の盗賊・山賊に出会ったのだが、ほとんどの場合はカラガンダ翁やステラ媼の知らないうちに始末がついていたのだった。
観光地ファイベルンドに着いて、紅葉のパノラマが見事なアンダレッド丘に登り、眼下に色づく山野を見たときは流石にステラが歓声を上げて喜んだ。
その夜は久方ぶりにファイベルンドの宿場に泊まり、食事を楽しんだ。
ファイベルンドの宿場に着いたのは8ビセットの25日で、ニオルカンを出立して既に16日目になっていた。
◇◇◇◇
ニオルカンでマルコの帰還を待っているパッサード侯爵の使いウィルモスは、多少焦り始めていた。
三日と空けずにモンテネグロ商会を訪れて、カラガンダ老やマルコの動静を聞くのだが、毎回同じ答えしか返ってこないのである。
曰く、
「会長とは連絡が取れているわけではありません。
出立の際に、第一学院の始業式に間に合うように戻るとしか聞いていませんので、今現在はどこにいるかも定かではありません。
事前のお約束があるならともかく、戻るまでお待ちくださいと言うしかございません。」
であり、取り付く島もない。
取り敢えずニオルカンについて五日目には、現状を知らせる書簡を王都に向けて出しているのだが、向こうに着くまで概ね一月はかかる。
王都から何らかの別の指示があったにしても、二か月ほど先にならないとわからないことから役には立たないだろう。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
8月14日より、
「浮世離れの探偵さん ~ しがない男の人助けストーリー」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/792488792/836789252
を、また8月15日より、
「仮想戦記:蒼穹のレブナント ~ 如何にして空襲を免れるか」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/792488792/812730078
を投稿しております。
よろしければ是非ご一読ください。
By サクラ近衛将監
ロワイは単なる野営に適した平地であって、宿坊などの設備は無く、水源もない。
然しながら、街道よりも少し高台になっているために、雨季に雨除けでここで休憩を取る旅人や商人が多いのだ。
マルコは姿を消したまま馬車ごと街道筋の上空に転移し、周囲を確認した上で人気のない場所に降り立ったのだ。
馬車は何事もなかったように緩やかな下り坂の道を進み始め、やがてロワイの野営地に到着した。
ニオルカンを発ったのは朝方だが、大陸西端から東方域へと一気に転移したので経度線をかなり超えたようで、太陽の高度から見て少なくとも南中時を過ぎていそうである。
そのまま東へ向けて旅を続けることもできたが、周囲に合わせてお昼休憩とするため、ロワイの野営地に入っていった。
ここからニオルカンへは、1年近く旅をしなければ到達できないというそんな遠隔地なのであった。
馬車の中の台所で食事を作るのはステラとマルコであり、その間、カラガンダ翁は外に設置した折り畳みのテーブルセットに座って、嗜好品のハルファを嗜んでいる。
ハルファは強壮剤が含まれと言われている広葉樹の葉をすりおろして得られるガム状の食品であり、食べても害はないが、通常は食べずに噛むだけで吐き出すものだ。
独特の苦みのある甘味が癖になる。
但し、習慣性は無く身体に悪影響は無いとされている。
南中時前後に旅路途上にある隊商は、概ね昼食のための休憩をすることが多い。
家に居るときなどは二食で済ます者も多いのだが、身体を動かす仕事に就く者は、お昼にもエネルギー源を入れないと夕刻まで持たないのである。
従って、休憩がてら軽食を食べるのが隊商の一般的な姿である。
お昼の用意ができて、ステラに呼ばれたのでカラガンダ翁は馬車の中に入った。
外見から見ると6人から8人が乗れるようなスペースしかないはずの馬車は、奥の扉を開けると、そこはもう別世界である。
ニオルカンの屋敷の居間を模した広い空間に食堂等生活に必要な設備が様々についている。
テーブルの上には、ステラの料理とマルコの料理が混在していた。
ステラの料理は、長年の経験で作った料理であって、カラガンダ翁も良く知っているが、マルコの料理はカラガンダ翁もステラ媼も初めて出会う料理だ。
マルコの料理の腕はカラガンダ翁も良く知っているが、ニオルカンの屋敷では専属の料理人がいるために、遠慮してマルコがキッチンに立つことは無かった。
その意味ではステラ媼も同じだが、ほんの二十年ほど前までは料理人に交じってステラ媼が食事を造っていたのだ。
ただ、最近は長男坊の嫁が台所に入るため、ステラ媼も遠慮して嫁と料理人に任せるようになっていたのだ。
どちらの料理も美味かった。
久しぶりに食べたステラ媼の手料理であり、また見慣れぬマルコの料理であったが、十分にその味を楽しめた。
この分ならば、この旅の間中美味しい料理の数々が食べられそうだと頬が緩むカラガンダ翁であった。
十分な時間を取った食事が終わると、再び馬車を動かして野営地を出て街道を東に向けて走る。
マルコとモンテネグロ老夫婦の旅は始まったばかりなのだ。
当面の目標は、マイジロン大陸東岸にある商港アルビラである。
アルビラにはモンテネグロ商会の支店があるので、そこに顔を出すつもりではあるが、あまりに早いと色々と疑われるので、これまでの商いの旅ではできなかった観光地巡りをしながらアルビラを目指す予定である。
マルコが10歳になれば、少なくとも冒険者ギルドへの登録が可能である。
冒険者として登録したからと言って必ずしも一人前とは見做されないが、少なくとも身分証明書の代わりになるカードは学級してもらえるのである。
10歳から独り立ちしている孤児なども多数いるから、当座は冒険者としての地位を得ても良いだろう。
そうして12歳になれば、商業ギルドを含めて種々のギルドに登録ができる最低資格に達する。
尤も、錬金術師、薬師などのギルドは適性が無いと登録すらできないが、マルコについては間違いなく錬金術の適性は大ありなはずで、玄人裸足の腕前であることはカラガンダ翁も承知している。
12歳まで後三年ほど、マルコが12歳になったなら儂らがついていなくても一人で生きて行けるだろうなと密かに思っているカラガンダ翁である。
それまで、あるいはその後もステラと一緒に見守って行きたいと思っているカラガンダ翁であった。
夕刻には野営地ロノブルに到着、馬車に宿泊しながら休むのである。
マルコの話では、馬車と馬には結界が張られており、屈強な冒険者や兵士でも結界を破れないという。
無論、そんな無法者が現れれば、マルコがすぐにも対処するそうだ。
覚醒して間もなく、緒戦で亜種を含むワイバーン五匹を瞬殺したマルコである。
まともに戦えば多少の軍隊であっても負けは無い。
ましてやスタンピードを壊滅させた大魔法の類が使われれば、各国の王都でさえ存続が怪しいものだと思っている。
ある意味では空恐ろしい力を持っているマルコであるが、性格は優しく素直な良い子である。
リーベンで養子になったことを恩義に感じて、カラガンダ翁を何度も救い、また商売の手助けもしてくれた。
親が無くても子は育つというが、マルコは本当に良い子に育ってくれた。
その夜、モンテネグロ夫妻とマルコでこれからの旅路を相談した。
カラガンダ翁は、この際だからアルビラに行くのに少し遠回りであるけれど、南廻りの道筋を言ってはどうかと提案した。
商用の主要街道は、ひたすら短い期間で西へ行く道であるが、南廻りで行けば、マイジロン大陸東方の観光地を色々と回ることができるのだ。
長年連れ添ったステラも商用の主要街道は知っていても、南廻りの道は知らない。
勿論、カラガンダ翁も噂話で聞いているだけで、自ら当該南の地域を旅行したことはない。
必ずしも安全な道ではないことは百も承知である。
然しながらマルコがいる限り何も心配はないと思っている。
南廻りを選ぶと、概ね1年近くの時間も稼げるだろう。
アルビラ到着時にはマルコも十歳になっているであろうから、冒険者ギルドへの登録を済ませて証明書だけは入手しておきたいのだ。
アルビラからは、モンテネグロ商会の支店を頼って、リーベン行きの船に便乗させてもらうつもりであった。
南廻りの旅路についてはステラもマルコも賛成した。
ところが、海路についてはマルコが別の提案をしたのである。
アルビラでは、船を造り、その船で旅をしたいというのである。
「マルコよ。
ひょっとして、馬車と同じで、とんでもない船を造るのかな?」
「はい、この馬車と同じく外敵から守れる船にしたいと存じます。
勿論この馬車に備えてある設備は当然のように設けますけれど、・・・。
いけませんか?」
「しかし、どこで船などを造るつもりじゃ。
船を造るには造船所が必要ぞ。」
「記憶にある海からアルビラの港に入る手前の右手側、多分北側かと存じますけれど、砂浜があったように記憶しています。
あの場に少し入り江を掘り、そこで船を造りたいと存じます。
大きさは長さが20尋ほど、幅が4尋程度になるかと存じます。
設計さえ済ませておけば、三日もあれば完成できますので、左程待つことも無いと存じます。
材料については、この旅の間に途中で貯めこんでまいるつもりです。」
「うーん、それは、まぁ、・・・。
マルコの造るモノは特上品だからのぉ。
出来上がれば、モンテネグロ商会の持ち船がきっと霞むことじゃろう。
それにしても20尋の大きさの船とは、外洋を渡る船としてはやや小振りなものの、個人が遊興に使う船や、漂浪の海人が住まう船としてはかなり大きいな。
船乗りなしで大丈夫か?」
「船の場合、夜間も走りますので、目は多い方が宜しいでしょうね。
そのため、馬車と同様にゴーレムの船員を造ります。
そうすれば、船旅も問題なく快適に過ごせると存じます。」
「なんと、人までゴーレムで作り出せるか・・・。
マルコよ。
其方、ひょっとして神の生まれ変わりか、何かか?」
「義父様もご存じの通り、単なるハーフエルフであって、多少魔法が得意な子に過ぎません。」
この夜の話し合いで今後の旅の大筋が決まった。
次の日から、概ね野営地を一つ飛びで南廻りの旅路を行く馬車があった。
二頭曳きの馬車は、ゴーレム馬が疲れを見せることなく順調に進んで行く。
通常の隊商は荷を抱えていることもあって左程早い速力は出ない。
そのため、多少の例外はあるものの、野営地ごとに止まって行くのが普通であった。
メインの商用路から外れた脇往還とでも言うべき南廻りの街道は、行き交う隊商も少ない。
たまに見かける単体の馬車は観光地巡りの金持ちと相場が決まっており、それを狙う盗賊・山賊も多いのだ。
但し、主要街道のように悪人どもも大集団で群れては居ない。
大集団は強いがその分獲物が少ないと盗賊稼業もやっては行けないのである。
従って、小規模の商人などを襲う脇往還の山賊・盗賊は左程の陣容は揃えていない。
そうして護衛もついていない簡単な獲物と侮ってマルコ達の馬車を襲撃した盗賊・山賊は、その全てが壊滅していた。
襲撃を企てた山賊・盗賊の類で、二頭曳の馬車まで50尋以下に近づける者は居なかった。
襲撃の意図がある者達については、接近してきた時点で瞬時に首が宙を舞っていたのだ。
南廻りの旅路を取ってから、概ね二日に一度程度は5人から10人前後の盗賊・山賊に出会ったのだが、ほとんどの場合はカラガンダ翁やステラ媼の知らないうちに始末がついていたのだった。
観光地ファイベルンドに着いて、紅葉のパノラマが見事なアンダレッド丘に登り、眼下に色づく山野を見たときは流石にステラが歓声を上げて喜んだ。
その夜は久方ぶりにファイベルンドの宿場に泊まり、食事を楽しんだ。
ファイベルンドの宿場に着いたのは8ビセットの25日で、ニオルカンを出立して既に16日目になっていた。
◇◇◇◇
ニオルカンでマルコの帰還を待っているパッサード侯爵の使いウィルモスは、多少焦り始めていた。
三日と空けずにモンテネグロ商会を訪れて、カラガンダ老やマルコの動静を聞くのだが、毎回同じ答えしか返ってこないのである。
曰く、
「会長とは連絡が取れているわけではありません。
出立の際に、第一学院の始業式に間に合うように戻るとしか聞いていませんので、今現在はどこにいるかも定かではありません。
事前のお約束があるならともかく、戻るまでお待ちくださいと言うしかございません。」
であり、取り付く島もない。
取り敢えずニオルカンについて五日目には、現状を知らせる書簡を王都に向けて出しているのだが、向こうに着くまで概ね一月はかかる。
王都から何らかの別の指示があったにしても、二か月ほど先にならないとわからないことから役には立たないだろう。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
8月14日より、
「浮世離れの探偵さん ~ しがない男の人助けストーリー」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/792488792/836789252
を、また8月15日より、
「仮想戦記:蒼穹のレブナント ~ 如何にして空襲を免れるか」
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By サクラ近衛将監
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