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第五章 サザンポール亜大陸にて
5ー15 噴火?
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馬車に乗って、アブレンス宿の湯元である源泉を見に行きました。
この地の源泉は、非常に高い温度の湯が沸き出ているために、様々な工夫を凝らして湯温を下げているのです。
その一つが水車です。
湯の川の水流で桶のついた水車を回し、湯を高所に上げてそこから流路に流す際に空気と触れ合って温度を下げる工夫をしています。
さらには、大きな風洞の中に熱湯を滴下させる仕組みがあり、自然通風で温度を下げるようです。
また、源泉自体が小高い丘の中腹に在るものですから、そこから長い樋(とい)を使って流路をスイッチバックのように折り返させつつ、流れの変わる場所で一尋ほどの段差を設けて、小さな人口滝を生じさせ、同じく空気と触れ合うことで湯温を下げる仕組みを作っているようです。
この段差は小さいのですが、湯が滝のように落ちているために、あちらこちらで盛大な湯気が上がっていますね。
源泉地とそれらの仕組みが一望にできる展望台にて、カラガンダ義父様がいみじくも言いました。
「おぉ、これは壮観じゃなぁ。
温泉地に来たという歓びの感慨そのものじゃ。」
それにステラ義母様が応えます。
「ほんに、まぁ、めったに見られない景観です。
これまでいくつかの温泉地に行ったこともありますけれど、これほどまでに湯気が噴出する場所は初めてです。」
日本人金谷の記憶では、源泉温度の高い草津温泉で『湯ゴネ』という湯温を下げる作業の様子を観光目玉にしていたはずですが、この源泉では手間をかけてもなかなか温度が下がらないようで、結局は長い石の水路を通すことで離れた場所の温泉郷にまで湯を送り届けているようです。
従って、この源泉には宿がありません。
ここで温泉宿を作っても熱すぎて湯には浸かれないからです。
源泉地帯は大量の湯気の影響で湿気が多く、熱帯のジャングルさながらの環境ですね。
因みにこの近辺にはあまり魔物は居ないそうです。
おそらくは魔物のえさになりそうな動物が居ないからでしょう。
但し、マルコは少し違和感を感じました。
大地から微細な振動が伝わってきているのです。
最初は噴気する温泉による振動かと思いましたが違いますね。
地震大国であり、多くの火山を抱えていた日本に住んでいた金谷の記憶が、火山噴火の前兆である微震ではないかと警鐘を鳴らしました。
生憎と地震も火山の噴火も予知は非常に難しいのです。
この地の火山は、この源泉のあるガルンハルナから北東方向に百里(約72キロ)ほど離れたところにあるアーガパハ山が有名です。
この山は百年以上も前に噴火し、周辺域に大きな被害をもたらしたことで知られています。
マルコがケサンドラスの図書館で見た歴史書には、131年前の噴火によりふもとの集落二つが全滅し、およそ千人の犠牲者が出たとありました。
但し、当該書籍には、詳細な記録がなく、どのような噴火であったのかは不明だったのです。
火山の噴火による被害は、いくつかのパターンがありますけれど、粘性の低い溶岩であれば、火口から溢れ出た溶岩流はすべての物を焼き尽くすことになり、大地には冷えた溶岩が痕跡を残します。
一方で粘性の高い溶岩の火山では、溶岩ドームを形成します。
富士山や伊豆大島、ハワイのキラウエアなどは前者に該当し、有珠山(昭和新山)、雲仙普賢岳等は後者に属したはずです。
少し気になったので、念のためにベランドル温泉郷に被害が無かったのか調べることにしました。
ベランドル温泉郷には、エルマ宿、アブレンス宿、ペルトラ宿の三つの宿場町があります。
既にその二つ目の宿場町に来ており、残すところはベルトラ宿だけなのですが、アブレンス宿にはまだ三泊ほどする予定なのです。
マルコは宿であるベンホマタンに戻ると、女将さんに話を聞き、それから翌日には宿場町の村長のところを訪ねました。
宿の女将は、百年以上も前の噴火の詳細はさすがに知りませんでしたが、それでも昔アーガパハ山が噴火してベランドル温泉郷に大きな被害を与えたことは伝承として知っていました。
そうしてもしかすると村長のところには古い記録があるかもしれないと教えてくれたのです。
村長は成人もしていないマルコが昔の話を聞きに訪ねて来たのでずいぶんと驚いていましたが、それでも宿場町に残っていた記録を見せてくれました。
それによるとアーガパハ山の噴火により全滅したふもとの町というのは、このアブレンス宿とペルトラ宿の二つだったようです。
当然のことながら宿場町に生存者はいなかったわけですけれど、のちに王都や領都から調査団が来て被害状況を調べ、記録として残したものの写しのようです。
それによると火山の噴火が有って火山性地震と大規模な噴煙が上がったものの、溶岩流による被害はなかったとあります。
調査結果によれば、二つの宿場町の住民は全員が亡くなっており、一部の住民の遺体には表皮の一部にやけどのようなものが認められたようです。
そのほとんどがベッドの上でなくなっており、一部の者は戸外の道端で倒れたまま亡くなっていました。
外傷はほとんどないために、あるいは悪魔による災害かもと記されているところが、異質ですね。
千人以上もの人が外傷もなく死んでいるというのは確かに異常なことですが、火山の噴火に際しては炭酸ガスや硫化ガスが噴出することが有るのです。
外見上で見る限り、アーガパハ山は溶岩ドームを形成しているので粘性の高い溶岩なのだと思います。
金谷の記憶では雲仙普賢岳での噴火では、山体の一部崩壊とともに内部にたまっていた非常に高温のガスが一気にふもとに流れ落ち、火砕流となって山林を焼き払い、観測していた者など数十名が犠牲になりました。
一方で、アフリカのカメルーンでは湖から火山性ガスが噴出し、幾多の村を全滅させたとの記録もあります。
必ずしも高温の火砕流でなくとも、噴火により貯められていたガスが噴出する可能性があるわけです。
因みにドローンで観測したところ、山頂部のカルデラには小さな湖があり、仮にそこにガスが噴出したなら、カルデラの一番低い場所から溢れ出てふもとを有毒ガスが覆うことになります。
カルデラ地形から、仮にあふれ出すとしたなら、山の南西方向であり、その流路とみられる谷合は、ベルトラ宿とアブレンス宿になりそうです。
そうして二つの宿場街よりも遠方のエルマ宿については、谷間の高台部に宿場町があるので、噴出量によっては被害を受けない可能性もあるのです。
単なる火山活動の一環で地震が何度か起きている程度なら良いのですけれど、仮に火山活動が活発になった予兆ならば要注意です。
溶岩ドーム型の火山が噴火を起こしても、降灰などでの被害が多少あっても大規模な災害には至らない場合が多いのですが、火砕流は別です。
千度にも達する高温ガスが火砕流となって、猛烈なスピードで宿場町を襲えば生存者はいないでしょうし、百三十余年前のように低温であっても不可視のガスが宿場町を襲えば、生き残ることが難しいでしょう。
人は酸素のないところではほんの一呼吸で意識を失います。
周囲が炭酸ガスと亜硫酸ガスで覆われれば、これら二つのガスは重いですから酸素の下に潜り込み、人や生物に死をもたらします。
さて、そういった推察はできますけれど、今現在その危険性があるかというと、ものすごく難しいですね。
先ほども言ったように、そもそも火山の噴火予知は金谷の時代でも難しかったのです。
21世紀の科学者の知恵や、大魔導士の知識をもってしても、噴火がいつ起きるかなどは予見できそうにありません。
危険度が高まった時に警報を与えることができるかというとこれも難しいですよね。
少なくとも成人してもいないマルコの言うことをまともに聞いてくれるものは非常に少ないでしょう。
少なくとも義父様と義母様は真摯に受け止めてくれるとは思いますけれど、アブレンス宿の村長や宿の女将に話しても信じてもらえそうにはありません。
兆候は、マルコが源泉を訪れた際に感じた小さな揺れだけなのです。
しかもおそらくは震度で言うと1以下の震度計には揺れが表示されるけれど、有感地震ではない可能性が高いのです。
土属性魔法に通じているマルコだからこそ感じた微細振動なのです。
困ったことにそれに気づいてしまったために観測を強化していると、人の身体にほとんど感じないような微細振動が群発しているのです。
当該微細振動が高周波振動からやや低周波振動に変わりつつあるので、あるいは噴火が近いのかもしれません。
金谷も火山学者ではなかったので、マルコもお手上げなのです。
但し、その危険性は高いと判断しました。
マルコが優先すべきは義父様と義母様の安全です。
ベランドル温泉郷の安全もできれば担保したいところですけれど、マルコが避難するように言っても聞き入れてはもらえないでしょう。
マルコは夕食後、義父様と義母様に危険性を打ち明け、念のために明日にはアブレンス宿を発つべきだと進言しました。
カラガンダ義父様とステラ母様は一も二もなくマルコの進言を了承してくれました。
予定ではもう少しアブレンス宿に留まる予定でしたが、急用ができたと言って宿を出たのです。
取敢えずの目的地はベランドル温泉郷への分岐点にあるターラの集落です。
そこからさらに街道に沿って東に行くと、大きな宿場町に行きあたりますが、そこまではおよそ三日の工程になるでしょう。
本来であれば、エルマ宿で一泊するべきなのでしょうが、敢えて野宿にしました。
火山の噴火があった場合に、宿に居ないほうが色々と対応がしやすいからです。
幸いにしてマルコの改造馬車と亜空間の居住区が有れば、どこで居ても生活に支障はありません。
マルコはアブレンス宿を出てからも、アーガパハ山にドローンを置いて監視を続けています。
三日目の午前中にはバラルシャハという比較的大きな宿場町に到着しましたが、この町の宿に宿泊中、ついにアーガパハ山に噴煙が立ち上りました。
噴火の規模はさほど大きくはありませんが、噴煙の合間から山頂部のカルデラ湖が沸騰しているのが見えます。
おそらくは火山性ガスが湖の中に大量に吐き出されているのだと思います。
次の段階で起こるのはカルデラ地形で一番低い場所からそれらのガスが漏れだすことでしょう。
マルコはふもとの集落であるベランドル温泉郷に被害が及ぶことを潔しとしませんでした。
そのためになすべきことは?
マルコが選んだのはカルデラ地形の一部を変えることでした。
カルデラの南西部が低いので火山性ガスがベランドル温泉郷方面に向かうことになるのであり、ほかに流路が有れば、ガスはそちらに向かいます。
ですから人気のない北側の谷合に向かってガスが流れ出るように、カルデラ地形の北側の稜線を破壊して、新たな流路を作ったのです。
この方向であれば、500里(ケブーツ)先まで人家が無いことを確認しているのです。
マルコの思惑通り、不可視の火山性ガスは北側斜面を下ってふもとの原生林に吸い込まれてゆきました。
この結果としてアーガパハ山の北側斜面から延びる緩やかな原生林は一月後には枯れ木の残骸となりましたが、少なくともベランドル温泉郷の危機は避けられたのです。
この地の源泉は、非常に高い温度の湯が沸き出ているために、様々な工夫を凝らして湯温を下げているのです。
その一つが水車です。
湯の川の水流で桶のついた水車を回し、湯を高所に上げてそこから流路に流す際に空気と触れ合って温度を下げる工夫をしています。
さらには、大きな風洞の中に熱湯を滴下させる仕組みがあり、自然通風で温度を下げるようです。
また、源泉自体が小高い丘の中腹に在るものですから、そこから長い樋(とい)を使って流路をスイッチバックのように折り返させつつ、流れの変わる場所で一尋ほどの段差を設けて、小さな人口滝を生じさせ、同じく空気と触れ合うことで湯温を下げる仕組みを作っているようです。
この段差は小さいのですが、湯が滝のように落ちているために、あちらこちらで盛大な湯気が上がっていますね。
源泉地とそれらの仕組みが一望にできる展望台にて、カラガンダ義父様がいみじくも言いました。
「おぉ、これは壮観じゃなぁ。
温泉地に来たという歓びの感慨そのものじゃ。」
それにステラ義母様が応えます。
「ほんに、まぁ、めったに見られない景観です。
これまでいくつかの温泉地に行ったこともありますけれど、これほどまでに湯気が噴出する場所は初めてです。」
日本人金谷の記憶では、源泉温度の高い草津温泉で『湯ゴネ』という湯温を下げる作業の様子を観光目玉にしていたはずですが、この源泉では手間をかけてもなかなか温度が下がらないようで、結局は長い石の水路を通すことで離れた場所の温泉郷にまで湯を送り届けているようです。
従って、この源泉には宿がありません。
ここで温泉宿を作っても熱すぎて湯には浸かれないからです。
源泉地帯は大量の湯気の影響で湿気が多く、熱帯のジャングルさながらの環境ですね。
因みにこの近辺にはあまり魔物は居ないそうです。
おそらくは魔物のえさになりそうな動物が居ないからでしょう。
但し、マルコは少し違和感を感じました。
大地から微細な振動が伝わってきているのです。
最初は噴気する温泉による振動かと思いましたが違いますね。
地震大国であり、多くの火山を抱えていた日本に住んでいた金谷の記憶が、火山噴火の前兆である微震ではないかと警鐘を鳴らしました。
生憎と地震も火山の噴火も予知は非常に難しいのです。
この地の火山は、この源泉のあるガルンハルナから北東方向に百里(約72キロ)ほど離れたところにあるアーガパハ山が有名です。
この山は百年以上も前に噴火し、周辺域に大きな被害をもたらしたことで知られています。
マルコがケサンドラスの図書館で見た歴史書には、131年前の噴火によりふもとの集落二つが全滅し、およそ千人の犠牲者が出たとありました。
但し、当該書籍には、詳細な記録がなく、どのような噴火であったのかは不明だったのです。
火山の噴火による被害は、いくつかのパターンがありますけれど、粘性の低い溶岩であれば、火口から溢れ出た溶岩流はすべての物を焼き尽くすことになり、大地には冷えた溶岩が痕跡を残します。
一方で粘性の高い溶岩の火山では、溶岩ドームを形成します。
富士山や伊豆大島、ハワイのキラウエアなどは前者に該当し、有珠山(昭和新山)、雲仙普賢岳等は後者に属したはずです。
少し気になったので、念のためにベランドル温泉郷に被害が無かったのか調べることにしました。
ベランドル温泉郷には、エルマ宿、アブレンス宿、ペルトラ宿の三つの宿場町があります。
既にその二つ目の宿場町に来ており、残すところはベルトラ宿だけなのですが、アブレンス宿にはまだ三泊ほどする予定なのです。
マルコは宿であるベンホマタンに戻ると、女将さんに話を聞き、それから翌日には宿場町の村長のところを訪ねました。
宿の女将は、百年以上も前の噴火の詳細はさすがに知りませんでしたが、それでも昔アーガパハ山が噴火してベランドル温泉郷に大きな被害を与えたことは伝承として知っていました。
そうしてもしかすると村長のところには古い記録があるかもしれないと教えてくれたのです。
村長は成人もしていないマルコが昔の話を聞きに訪ねて来たのでずいぶんと驚いていましたが、それでも宿場町に残っていた記録を見せてくれました。
それによるとアーガパハ山の噴火により全滅したふもとの町というのは、このアブレンス宿とペルトラ宿の二つだったようです。
当然のことながら宿場町に生存者はいなかったわけですけれど、のちに王都や領都から調査団が来て被害状況を調べ、記録として残したものの写しのようです。
それによると火山の噴火が有って火山性地震と大規模な噴煙が上がったものの、溶岩流による被害はなかったとあります。
調査結果によれば、二つの宿場町の住民は全員が亡くなっており、一部の住民の遺体には表皮の一部にやけどのようなものが認められたようです。
そのほとんどがベッドの上でなくなっており、一部の者は戸外の道端で倒れたまま亡くなっていました。
外傷はほとんどないために、あるいは悪魔による災害かもと記されているところが、異質ですね。
千人以上もの人が外傷もなく死んでいるというのは確かに異常なことですが、火山の噴火に際しては炭酸ガスや硫化ガスが噴出することが有るのです。
外見上で見る限り、アーガパハ山は溶岩ドームを形成しているので粘性の高い溶岩なのだと思います。
金谷の記憶では雲仙普賢岳での噴火では、山体の一部崩壊とともに内部にたまっていた非常に高温のガスが一気にふもとに流れ落ち、火砕流となって山林を焼き払い、観測していた者など数十名が犠牲になりました。
一方で、アフリカのカメルーンでは湖から火山性ガスが噴出し、幾多の村を全滅させたとの記録もあります。
必ずしも高温の火砕流でなくとも、噴火により貯められていたガスが噴出する可能性があるわけです。
因みにドローンで観測したところ、山頂部のカルデラには小さな湖があり、仮にそこにガスが噴出したなら、カルデラの一番低い場所から溢れ出てふもとを有毒ガスが覆うことになります。
カルデラ地形から、仮にあふれ出すとしたなら、山の南西方向であり、その流路とみられる谷合は、ベルトラ宿とアブレンス宿になりそうです。
そうして二つの宿場街よりも遠方のエルマ宿については、谷間の高台部に宿場町があるので、噴出量によっては被害を受けない可能性もあるのです。
単なる火山活動の一環で地震が何度か起きている程度なら良いのですけれど、仮に火山活動が活発になった予兆ならば要注意です。
溶岩ドーム型の火山が噴火を起こしても、降灰などでの被害が多少あっても大規模な災害には至らない場合が多いのですが、火砕流は別です。
千度にも達する高温ガスが火砕流となって、猛烈なスピードで宿場町を襲えば生存者はいないでしょうし、百三十余年前のように低温であっても不可視のガスが宿場町を襲えば、生き残ることが難しいでしょう。
人は酸素のないところではほんの一呼吸で意識を失います。
周囲が炭酸ガスと亜硫酸ガスで覆われれば、これら二つのガスは重いですから酸素の下に潜り込み、人や生物に死をもたらします。
さて、そういった推察はできますけれど、今現在その危険性があるかというと、ものすごく難しいですね。
先ほども言ったように、そもそも火山の噴火予知は金谷の時代でも難しかったのです。
21世紀の科学者の知恵や、大魔導士の知識をもってしても、噴火がいつ起きるかなどは予見できそうにありません。
危険度が高まった時に警報を与えることができるかというとこれも難しいですよね。
少なくとも成人してもいないマルコの言うことをまともに聞いてくれるものは非常に少ないでしょう。
少なくとも義父様と義母様は真摯に受け止めてくれるとは思いますけれど、アブレンス宿の村長や宿の女将に話しても信じてもらえそうにはありません。
兆候は、マルコが源泉を訪れた際に感じた小さな揺れだけなのです。
しかもおそらくは震度で言うと1以下の震度計には揺れが表示されるけれど、有感地震ではない可能性が高いのです。
土属性魔法に通じているマルコだからこそ感じた微細振動なのです。
困ったことにそれに気づいてしまったために観測を強化していると、人の身体にほとんど感じないような微細振動が群発しているのです。
当該微細振動が高周波振動からやや低周波振動に変わりつつあるので、あるいは噴火が近いのかもしれません。
金谷も火山学者ではなかったので、マルコもお手上げなのです。
但し、その危険性は高いと判断しました。
マルコが優先すべきは義父様と義母様の安全です。
ベランドル温泉郷の安全もできれば担保したいところですけれど、マルコが避難するように言っても聞き入れてはもらえないでしょう。
マルコは夕食後、義父様と義母様に危険性を打ち明け、念のために明日にはアブレンス宿を発つべきだと進言しました。
カラガンダ義父様とステラ母様は一も二もなくマルコの進言を了承してくれました。
予定ではもう少しアブレンス宿に留まる予定でしたが、急用ができたと言って宿を出たのです。
取敢えずの目的地はベランドル温泉郷への分岐点にあるターラの集落です。
そこからさらに街道に沿って東に行くと、大きな宿場町に行きあたりますが、そこまではおよそ三日の工程になるでしょう。
本来であれば、エルマ宿で一泊するべきなのでしょうが、敢えて野宿にしました。
火山の噴火があった場合に、宿に居ないほうが色々と対応がしやすいからです。
幸いにしてマルコの改造馬車と亜空間の居住区が有れば、どこで居ても生活に支障はありません。
マルコはアブレンス宿を出てからも、アーガパハ山にドローンを置いて監視を続けています。
三日目の午前中にはバラルシャハという比較的大きな宿場町に到着しましたが、この町の宿に宿泊中、ついにアーガパハ山に噴煙が立ち上りました。
噴火の規模はさほど大きくはありませんが、噴煙の合間から山頂部のカルデラ湖が沸騰しているのが見えます。
おそらくは火山性ガスが湖の中に大量に吐き出されているのだと思います。
次の段階で起こるのはカルデラ地形で一番低い場所からそれらのガスが漏れだすことでしょう。
マルコはふもとの集落であるベランドル温泉郷に被害が及ぶことを潔しとしませんでした。
そのためになすべきことは?
マルコが選んだのはカルデラ地形の一部を変えることでした。
カルデラの南西部が低いので火山性ガスがベランドル温泉郷方面に向かうことになるのであり、ほかに流路が有れば、ガスはそちらに向かいます。
ですから人気のない北側の谷合に向かってガスが流れ出るように、カルデラ地形の北側の稜線を破壊して、新たな流路を作ったのです。
この方向であれば、500里(ケブーツ)先まで人家が無いことを確認しているのです。
マルコの思惑通り、不可視の火山性ガスは北側斜面を下ってふもとの原生林に吸い込まれてゆきました。
この結果としてアーガパハ山の北側斜面から延びる緩やかな原生林は一月後には枯れ木の残骸となりましたが、少なくともベランドル温泉郷の危機は避けられたのです。
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