コンバット

サクラ近衛将監

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第四章 学院生活(中等部編)

4ー32 よその国の内乱

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 ヴィオラでございます。
 夏休みも終盤、ロデアルで為すべきことが概ね終わりましたが、気がかりな情報をルテナがもたらしました。

 ライヒベルゼン王国の西方には三つの王国があります。
 北の方からレーベンシュタイン王国、リーベン王国、リットニア王国の三か国ですが、そのさらに西方にレインバルク帝国という大国が控えているのです。

 このレインバルク帝国の政情が非常に危ういのだそうです。
 現在の帝国皇帝には三人の男子が居るのですけれど、その皇太子の椅子をめぐって各派閥がこれまでも陰でかなり争っては居たのですけれど、現皇帝が病床に臥せり、決済ができないほどの重体に陥ったことからその争いが激化したようなのです。

 事前に皇太子をきちんと指名しておけばよかったのでしょうけれど、・・・・。
 いまだ左程の高齢ではなかった皇帝の判断の甘さがもたらしたものとも言えますね。

 これに乗じて地方豪族で力のある者が帝国に反旗を翻したり、さらに西方に住む蛮族達も(遊牧民であって必ずしも蛮族ではないのですけれど、帝国では中華主義のように周辺国の住民は蛮族と見做みなしているようです。)帝国へ越境して、時折へき地の住民といざこざを起こしているようで、中には村々を占拠している場合もあるようです。
 ルテナによれば、遊牧民達の保有する家畜の餌が天候不良で不足がちになったことから、国境を越えて帝国側に入り込んでそこの住民と紛争になり、農地や牧草地をめぐるいざこざが広範囲で起きているようです。

 遊牧民にとっては自ら保有する家畜が家族の生活を支える命の綱であり、それを守るためには越境もやむなしという考えなのです。
 おりしも大規模な内紛が起きているために、外患に向ける戦力が足らず、帝国全体の視点からすれば蛮族の侵攻は日に日に深まっているようですね。

 また、国内で騒乱が起きれば、農民が丹精込めた畑地が踏み荒らされ、食糧が得られなくなります。
 自分たちのために残していたわずかの食糧さえも、軍によって強制的に徴発されてしまうので多くの村々で農民が飢餓状態に陥っているようです。

 いずれにしろ帝国が、前世中国の五胡十六国ごこじゅうろっこく時代のような騒乱の時代に入ってしまったので、隣接するライヒベルゼン王国の西方三国も殺気立っているようです。
 安住の場所が帝国にはないわけですから、戦争難民が周辺国に足を向けるのは当然のことですね。

 このためにレーベンシュタイン王国、リーベン王国、リットニア王国の各国境では大多数の難民があふれているようです。
 他国のこととは言え、大勢の人々が飢餓きがにあえいでいるよう様子なので何とかしてはあげたいのですが、私(ヴィオラ)の地下農場でもさすがに数十万人規模の難民を養えるほどの食糧はありません。

 万が一のために備蓄してある食糧を放出すれば一時的には何とかできますが、持って精々十日から二十日でしょうか。
 おそらくそれ以上は無理でしょうし、輸送手段が本来は問題になります。

 農場内の時間を早めれば生産量を増やせる?
 でも、仮にそれを行って転移魔法で食糧を供給したなら、今度は避難民そのものが帝国軍によって狙われるでしょうね。

 多くの農民が難民となっていますから、帝国の東方域では慢性的に食糧不足になっているはずなのです。
 そもそもレーベンシュタイン王国、リーベン王国、リットニア王国の三か国も多数の難民を受け入れる余裕があるわけではありませんから、国境での審査を厳しくして入国を制限している状況なのですが、それでも人道的配慮ということで二日に一度程度の炊き出しをしているようですけれど、絶対的に総量で不足しているのです。

 今のところ、参加国の緩衝地帯があるためにライヒベルゼン王国にまで難民が押し寄せているようなことはありませんけれど、海岸国であるゼラート王国(ライヒベルゼン王国の北西方向にあり、ライヒベルゼン王国に塩を輸出してくれている国)には船を使った難民も少なからず漂着しているようです。
 ゼラート王国の場合は、帝国とも国境を接してはいるのですが、間に人の住めない広大な不毛の荒れ地が有って、交易はもっぱら海上路で行われているのです。

 この段階では、私(ヴィオラ)の出る幕は余りありません。
 まぁ、私(ヴィオラ)が帝国の派閥のどこかにくみして帝国を安定させるという方法も無いわけではありませんが、いずれも自分こそが正義と信じている確信犯ばかりですからねぇ。

 そこに介入すると絶対に多数の人を殺すことに加担せざるを得なくなります。
 それは嫌ですから、現状では私(ヴィオラ)は動きません。

 私(ヴィオラ)が出て行って力で関係者すべてを押さえつけるという手法も取れなくはないですが、そんなことをすれば私(ヴィオラ)が帝国の女帝になってしまいそうです。
 私(ヴィオラ)は、今のところライヒベルゼン王国を離れるつもりはございません。

 飽くまで予想ではありますけれど、レインバルク帝国は六つもしくは八つぐらいの国に分かれる可能性が大ですね。
 どの勢力も帝国全土をまとめられるほどの軍備を持っていないからであり、どこかの派閥と全力で戦えば、周辺の敵対派閥から狙われるとわかっているのでどうしても力は分散せざるを得ないのです。

 この騒乱は、きっと長引くのでしょうね。
 前世の中国大陸での五胡十六国時代は、百三十年ほども続きました。

 国土が広ければ広いほど、騒乱も長引くものなのです。
 今後ともレインバル帝国の内紛の状況は、継続して監視することにいたしましょう。

 場合によっては、禁忌とされる勇者召喚を為そうとする不届き者が現れるかもしれません。
 帝国に召喚魔方陣が伝えられているかどうかはわかりませんが、おぼれる者はわらをもつかむということわざの通り、追いつめられると人は禁忌であると知りつつも手を出すようなごうを持っているんです。

 タバコをやめられない大人。
 アル中になって肝臓が悪くなっているとわかっていながら酒に溺れる大人。

 単に自己中で身勝手なだけなんですけれどね。
 帝国の内紛も似たようなものなんです。

 私(ヴィオラ)には、権力者と呼ばれる男の勝手な意地っ張りにしか見えません。
 レインバルク王国騒乱の話は、私が王都に戻るころになって市井にも噂として伝わってきていました。

 勿論、王家の草の連中は早い段階で情報を仕入れ、王宮に報告していたようですよ。
 因みにこの紛争はずっとずっと続き、皇帝の息子である三人はそれぞれ自らが正しい帝国の継承者だと自称し、自らの名を冠した国を立ち上げました。

 パイル・レインバルク王国、エルマー・レインバルク王国、ダニエル・レインバルク王国の三か国です。
 このほかに地方貴族が立ち上げた公国が三つ、辺境伯国が一つできまして、それぞれに覇を唱えていますから騒乱は続くことになるでしょうねぇ。

 七つもの国がこのあと百年以上にわたって戦いに明け暮れるのは別の話ですので、ここでは説明を割愛いたします。
 ライヒベルゼン王国では、当該内紛に加担はしないものの、帝国と隣り合っているレーベンシュタイン王国、リーベン王国、リットニア王国、それにゼラート王国に対しては避難民救済のための食糧援助を多少しただけでお茶を濁したようです。

 因みに帝国の各分派からは、レーベンシュタイン王国、リーベン王国、リットニア王国に対しては軍事的支援の話が舞い込んできていたようですが、いずれに王国も先が読めないだけに軍事的支援は拒否したようです。
 この対応の方が賢いですよね。

 流石にライヒベルゼン王国へ軍事支援を求める話は来なかったようですよ。

 ◇◇◇◇

 外国の騒乱はさておいて、王都の私(ヴィオラ)は変わらぬ日常の生活を続けています。
 取り敢えず新開発のニスについては、レイノルズ様に委託して、マーガレット様に送付してもらうようにいたしました。

 私(ヴィオラ)がマーガレット様に直接送っても良いとは思うのですけれど、婚約者であるレイノルズ様との接点を設けるためにわざとレイノルズ様を挟むようにしています。
 時機を見て、もう少ししたなら、螺鈿工芸と蒔絵工芸の品も、ブルボン家の漆工芸家への託送をレイノルズ様にお願いする予定です。

 私が試しに造った螺鈿と蒔絵を、ブルボン家の漆工芸家の皆様がどれほど発展させてくれるかが楽しみですね。
 私がお嫁入する頃には、きっとブルボン家の名産として花開いているのじゃないかと期待しているのですが、これは甘いでしょうか?

 因みに、レイノルズ様との逢引きは月に一度と決めていますおります。
 レイノルズ様も中央騎士団の一員ですから左程自由が利くわけではありません。

 中央騎士団は王都近郊での警備が主たる業務ですので滅多なことで命を危険にさらす心配はないのですけれど、念のため護符のような式神を配置してレイノルズ様の身体を守るようにはしているのですよ。
 愛情?

 うーん、私(ヴィオラ)には、まだ男女の愛情というものがよくわかっていないと思いますよ。
 前世では初恋すらもなかった私です。

 発症前に友人は居ましたけれど、男子のお友達は少なかったですね。
 発症してからは同じ病棟の男友達というか知り合いは居ましたけれど、早々と亡くなっていましたし・・・・。

 正直なところ男女間の愛情ってどのようにすべきなのかもよくわからないんです。
 前世で目が見えている間にメロドラマやラブロマンスの小説や動画も見ましたけれど、なんとなくピンと来ていませんでした。

 でも、レイノルズ様と月に一度の逢瀬で何となく家族に似たような親しみとなごみが生じていることを感じています。
 きっと、私も思春期に達しているんでしょうねぇ。
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