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第四章 学院生活(中等部編)
4ー33 アルバンド帝国の遺産 その一
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ハーイ、ヴィオラで~す。
ロデアルから王都に戻って、いつものように学院生活を続けておりましたけれど、定例の祈祷所でのお祈りの際に知の神であるワイアル様から連絡がございました。
これは、非常に珍しいことなのです。
判断に迷うような時に、私(ヴィオラ)から色々と神々に相談することはあっても、神々から連絡をいただくことは非常に稀なのです。
レーベリア王国での召喚勇者の際も、暗黒大陸のエンシェントドラゴンが瘴気に侵された時も、私(ヴィオラ)が異変を察知して神々にご相談したわけで、神様から積極的に連絡をいただいたわけではありません。
まぁ、王都やロデアルの教会、それに私(ヴィオラ)が造った祈禱所に行けば、いつでもご相談には乗っていただけるのですけれど・・・・。
ワイアル様から告げられた内容は、古のアレバンド帝国の遺産に関わる話でございました。
以前にもご説明したように思いますけれど、アレバンド帝国は1200年も前にワオデュール大陸の覇者であった魔導帝国です。
このためアレバンド帝国の遺跡は、ワオデュール大陸のあちらこちらに散在しているのですけれど、今回はワオデュール大陸中央部のくびれ部分に版図を広げているレインバルク帝国の西部域の山間部で新たに発見された遺跡の情報でございました。
以前、私(ヴィオラ)がライヒベルゼン王国の王都であるレリーダ近傍にあるスラム街を調査した際に、そこがアルバンド帝国の古代遺跡であることと、また更にその地下に朽ちた兵器群を発見したことから、ワイアル様にご相談して、古代文明の調査研究の許可をいただきましたけれど、その際、「セリヴェル世界にとって悪しきモノが生まれる危険が生じた時には、其方に警告を与えよう。」というお話がワイアル様からございました。
今回は、まさしくその話でございました。
おそらくは魔導砲と呼ぶべき危険な武器が、ほぼ完全な状態でアルバンド帝国軍の武器庫と思われる遺跡から発見されたのでした。
この魔導砲製造のための素材が非常に特殊なものであるために、レインバルク帝国でもすぐに複製をできるような代物ではなさそうなのですけれど、代替品による製造については魔導砲の作動原理が分かれば、それなりのものが造れそうだということなのです。
この武器が使えるようになって大量生産されるようになると、ワオデュール大陸の勢力図が一気に書き換えられてしまうでしょう。
何しろ数百キロも彼方から狙った標的に魔導砲弾を正確に撃ち込めるような武器ですし、その威力も半端なものではありません。
おそらくアルバンド帝国製の魔導砲弾ならば、第二次大戦中に英国が開発した10トン(正確には9.9トン)爆弾程度の破壊力があるものなのです。
貯蔵されていた魔導砲弾のほとんどが腐食のために使えないのですけれど、五発ほどがいまだ使用可能な状態で残されていたことから、目下レインバルク帝国の魔導師団で解析がなされているところなのだそうです。
ワイアル様の話では直ちに実戦で使えるような複製物ができるとは思えないけれど、戦争の姿を一変するような武器であるので、私(ヴィオラ)に警告を与えてくれたようです。
正直なところ、そんな武器が出現しても、私(ヴィオラ)であれば何とか対応はできるのじゃないかと思いますけれど、大量破壊兵器が出現し、戦争に使われるのは困りますよね。
ヤクザの縄張り争いよろしく軍人同士が勝手に生身の身体で闘うのは放置しても良いのでしょうけれど、その戦いの被害が庶民や非戦闘員に及ぶとなれば別問題です。
今回発見された武器は、狙いは正確であっても、例えば軍事目標として王都や王宮を狙ったような場合、周囲にいる無辜の人々の生死にかかわらず攻撃を仕掛ける可能性がある以上問題がありますよね。
剣と槍と弓矢ぐらいの武器ならば、その被害もたかが知れていますけれど、前世の平和な世界で一時は生まれ育った私(ヴィオラ)としては、やっぱり大量殺戮兵器は受け入れられません。
今回出現したのがアレバンド帝国の大いなる負の遺産であるにしても、既に出現したものを無かったことにはできないのでしょうね。
特に、その構造などがある程度解析された時点では、その情報が拡散されるのを防ぐのは非常に難しいことになるでしょう。
レインバルク帝国での解析の進行状況を調べ、その上でどうすべきかの対策を検討したいと思います。
場合によっては、強硬手段として遺産である武器を破壊し、若しくは封印することも考えねばなりません。
◇◇◇◇
レインバルク帝国の魔導師団の副団長であるエステバン第二王子は、魔導師団の魔導具開発局長であるカルロスと相談をしていた。
「カルロスよ。
では例の遺跡から出た古代魔導具は、攻撃用兵器として開発された形跡があるということなのだな?」
「はい、別に発見された魔導薬の詰まった金属塊を遠くへと飛ばすための魔導具と考えられます。
その金属塊の威力については、いまだ判明してはおりませんが、非常に硬い金属で作られた箱に厳重に収められておりましたものであり、それ単体でかなりの被害を与えることが予見されます。
残念ながらすでに内容液が漏れていて使用できないと思われるものが195個、かろうじて使えるのではないかと思われる金属塊が5個のみでございましたので、遺跡近傍にあるバイディオン砂漠でそのうちの一発を実験で使ってみようと思います。
生憎とこの金属塊を発射するものと思われる大きな魔導具の操作方法がいまだわかっておらず、また、金属塊をどのように使うのかが判明してはいませんが、腐食半ばの金属塊を調査した結果、金属塊先端の突起物に衝撃を与えるとその先端が破裂、さらに内容液の魔導液があれば、それが更なる大規模な破裂を引き起こして周囲に被害を与えるものではないかと推測しております。」
「ほう、実際に破裂させたのか?」
「調査に当たった者が誤ってその先端の突起物に衝撃を与えたがために破裂したのでございます。
これがために当該金属塊を調べていた実験棟一つが吹き飛びましてございます。
過ちを犯した者は勿論立ち会った数人は即死、隣の部屋から様子を見ていた主任魔導師が重傷を負いながらも生き残っていたので、何故に破裂をしたのかがわかりました。
被害状況から推測するに爆裂魔法と同等かそれ以上の破壊力があるものと思われます。
しかも、その破裂は先端の突起物のみによるものであり、魔導液自体は腐食孔から漏れて変質していたたがめに今回破裂はしておりません。
飽くまで私の推測ながら、仮に内容物の魔導液がそのまま変質せずに残っておれば、更なる大規模な破裂が生じて生存者はいなかったのではないかと思われます。」
「ふむ、・・・・
で、腐食していない金属塊を使って実験をするということか・・・。
如何様にして実験をいたすのじゃ。
無暗に人の命を危険に晒すでないぞ。
魔導師団の団員が減れば、それだけ帝国は弱体になる。」
「はい、殿下のご懸念については、私どもが重々承知しております。
要は、金属塊の先端にある突起物にに大きな衝撃を与えればよいわけでございますので、バイディオン砂漠に長大なスロープの溝を作り、そのスロープ頂上から岩もしくは丸い銅の塊を転がして金属塊先端に衝突させるような算段をしております。
スロープの長さは百尋ほどを予定しており、そこを岩もしくは銅の塊が転がっている間に、操作員や研究者が安全な場所に退避しておけば、誰も被害を受けないかと存じます。」
「うむ、わかった。
もう一つの投射装置と思われる方は如何じゃ?」
「おそらくは仕組みとしては攻城兵器のバリスタに似たような代物かと思われます。
バリスタの場合、木材等を引っ張った際の反力を利用して矢を飛ばす力を得ます。
また、投石器の場合は大きな石を大型の錘を上から下へ移動させることにより、大岩を遠くへ飛ばす仕組みとなっております。
このアーティファクトの場合、投射する金属塊の重さが戦士20名分ほどにも相当しますので、あの筒形の機器で如何にすれば前方へ投射できるのかが今もって不明にございます。
筒の内径と金属塊の外径がほぼ同じことから、あの筒の中に金属塊を入れて、なにがしかの操作をすれば金属塊が前方へ飛翔するものと推測されておりますが、何せ一切の書面も無い状態故、解析に苦労しております。
試行錯誤で少しずつ解析を進めるほかないかと存じます。」
「ふむ、それが分かれば兵器として使用できるということだな。
仮に、魔導師団による遠距離攻撃に勝る性能を有しておるならば、我が帝国軍の秘密兵器となるに違いない。
なんとしてもその秘密を解き明かし、その複製を作って我が帝国軍の増強を図ることが肝要じゃ。」
「は、殿下の仰せの通り、このアーティファクトが画期的な兵器になることが予想されますので、私としてもなんとしてもこの解明を急ぎたいと存じます。」
「ふむ、頼むぞ。
東も西も各国が反帝国の一枚岩となっている現状では、いかな帝国軍といえど領土拡張はなかなかに難しくなっているからのぉ。
その停滞を打破する秘密兵器が何としても必要なのじゃ。」
第二王子は、帝位継承権の第二位でありながら、腹違いの兄を抑えて皇帝に成り上がろうとしている野心家でもあった。
従って、この新たには発見されたアーティファクトが兵器として利用できるとわかれば、自らの宮廷内での評価が大いに上がると期待しているのであった。
ロデアルから王都に戻って、いつものように学院生活を続けておりましたけれど、定例の祈祷所でのお祈りの際に知の神であるワイアル様から連絡がございました。
これは、非常に珍しいことなのです。
判断に迷うような時に、私(ヴィオラ)から色々と神々に相談することはあっても、神々から連絡をいただくことは非常に稀なのです。
レーベリア王国での召喚勇者の際も、暗黒大陸のエンシェントドラゴンが瘴気に侵された時も、私(ヴィオラ)が異変を察知して神々にご相談したわけで、神様から積極的に連絡をいただいたわけではありません。
まぁ、王都やロデアルの教会、それに私(ヴィオラ)が造った祈禱所に行けば、いつでもご相談には乗っていただけるのですけれど・・・・。
ワイアル様から告げられた内容は、古のアレバンド帝国の遺産に関わる話でございました。
以前にもご説明したように思いますけれど、アレバンド帝国は1200年も前にワオデュール大陸の覇者であった魔導帝国です。
このためアレバンド帝国の遺跡は、ワオデュール大陸のあちらこちらに散在しているのですけれど、今回はワオデュール大陸中央部のくびれ部分に版図を広げているレインバルク帝国の西部域の山間部で新たに発見された遺跡の情報でございました。
以前、私(ヴィオラ)がライヒベルゼン王国の王都であるレリーダ近傍にあるスラム街を調査した際に、そこがアルバンド帝国の古代遺跡であることと、また更にその地下に朽ちた兵器群を発見したことから、ワイアル様にご相談して、古代文明の調査研究の許可をいただきましたけれど、その際、「セリヴェル世界にとって悪しきモノが生まれる危険が生じた時には、其方に警告を与えよう。」というお話がワイアル様からございました。
今回は、まさしくその話でございました。
おそらくは魔導砲と呼ぶべき危険な武器が、ほぼ完全な状態でアルバンド帝国軍の武器庫と思われる遺跡から発見されたのでした。
この魔導砲製造のための素材が非常に特殊なものであるために、レインバルク帝国でもすぐに複製をできるような代物ではなさそうなのですけれど、代替品による製造については魔導砲の作動原理が分かれば、それなりのものが造れそうだということなのです。
この武器が使えるようになって大量生産されるようになると、ワオデュール大陸の勢力図が一気に書き換えられてしまうでしょう。
何しろ数百キロも彼方から狙った標的に魔導砲弾を正確に撃ち込めるような武器ですし、その威力も半端なものではありません。
おそらくアルバンド帝国製の魔導砲弾ならば、第二次大戦中に英国が開発した10トン(正確には9.9トン)爆弾程度の破壊力があるものなのです。
貯蔵されていた魔導砲弾のほとんどが腐食のために使えないのですけれど、五発ほどがいまだ使用可能な状態で残されていたことから、目下レインバルク帝国の魔導師団で解析がなされているところなのだそうです。
ワイアル様の話では直ちに実戦で使えるような複製物ができるとは思えないけれど、戦争の姿を一変するような武器であるので、私(ヴィオラ)に警告を与えてくれたようです。
正直なところ、そんな武器が出現しても、私(ヴィオラ)であれば何とか対応はできるのじゃないかと思いますけれど、大量破壊兵器が出現し、戦争に使われるのは困りますよね。
ヤクザの縄張り争いよろしく軍人同士が勝手に生身の身体で闘うのは放置しても良いのでしょうけれど、その戦いの被害が庶民や非戦闘員に及ぶとなれば別問題です。
今回発見された武器は、狙いは正確であっても、例えば軍事目標として王都や王宮を狙ったような場合、周囲にいる無辜の人々の生死にかかわらず攻撃を仕掛ける可能性がある以上問題がありますよね。
剣と槍と弓矢ぐらいの武器ならば、その被害もたかが知れていますけれど、前世の平和な世界で一時は生まれ育った私(ヴィオラ)としては、やっぱり大量殺戮兵器は受け入れられません。
今回出現したのがアレバンド帝国の大いなる負の遺産であるにしても、既に出現したものを無かったことにはできないのでしょうね。
特に、その構造などがある程度解析された時点では、その情報が拡散されるのを防ぐのは非常に難しいことになるでしょう。
レインバルク帝国での解析の進行状況を調べ、その上でどうすべきかの対策を検討したいと思います。
場合によっては、強硬手段として遺産である武器を破壊し、若しくは封印することも考えねばなりません。
◇◇◇◇
レインバルク帝国の魔導師団の副団長であるエステバン第二王子は、魔導師団の魔導具開発局長であるカルロスと相談をしていた。
「カルロスよ。
では例の遺跡から出た古代魔導具は、攻撃用兵器として開発された形跡があるということなのだな?」
「はい、別に発見された魔導薬の詰まった金属塊を遠くへと飛ばすための魔導具と考えられます。
その金属塊の威力については、いまだ判明してはおりませんが、非常に硬い金属で作られた箱に厳重に収められておりましたものであり、それ単体でかなりの被害を与えることが予見されます。
残念ながらすでに内容液が漏れていて使用できないと思われるものが195個、かろうじて使えるのではないかと思われる金属塊が5個のみでございましたので、遺跡近傍にあるバイディオン砂漠でそのうちの一発を実験で使ってみようと思います。
生憎とこの金属塊を発射するものと思われる大きな魔導具の操作方法がいまだわかっておらず、また、金属塊をどのように使うのかが判明してはいませんが、腐食半ばの金属塊を調査した結果、金属塊先端の突起物に衝撃を与えるとその先端が破裂、さらに内容液の魔導液があれば、それが更なる大規模な破裂を引き起こして周囲に被害を与えるものではないかと推測しております。」
「ほう、実際に破裂させたのか?」
「調査に当たった者が誤ってその先端の突起物に衝撃を与えたがために破裂したのでございます。
これがために当該金属塊を調べていた実験棟一つが吹き飛びましてございます。
過ちを犯した者は勿論立ち会った数人は即死、隣の部屋から様子を見ていた主任魔導師が重傷を負いながらも生き残っていたので、何故に破裂をしたのかがわかりました。
被害状況から推測するに爆裂魔法と同等かそれ以上の破壊力があるものと思われます。
しかも、その破裂は先端の突起物のみによるものであり、魔導液自体は腐食孔から漏れて変質していたたがめに今回破裂はしておりません。
飽くまで私の推測ながら、仮に内容物の魔導液がそのまま変質せずに残っておれば、更なる大規模な破裂が生じて生存者はいなかったのではないかと思われます。」
「ふむ、・・・・
で、腐食していない金属塊を使って実験をするということか・・・。
如何様にして実験をいたすのじゃ。
無暗に人の命を危険に晒すでないぞ。
魔導師団の団員が減れば、それだけ帝国は弱体になる。」
「はい、殿下のご懸念については、私どもが重々承知しております。
要は、金属塊の先端にある突起物にに大きな衝撃を与えればよいわけでございますので、バイディオン砂漠に長大なスロープの溝を作り、そのスロープ頂上から岩もしくは丸い銅の塊を転がして金属塊先端に衝突させるような算段をしております。
スロープの長さは百尋ほどを予定しており、そこを岩もしくは銅の塊が転がっている間に、操作員や研究者が安全な場所に退避しておけば、誰も被害を受けないかと存じます。」
「うむ、わかった。
もう一つの投射装置と思われる方は如何じゃ?」
「おそらくは仕組みとしては攻城兵器のバリスタに似たような代物かと思われます。
バリスタの場合、木材等を引っ張った際の反力を利用して矢を飛ばす力を得ます。
また、投石器の場合は大きな石を大型の錘を上から下へ移動させることにより、大岩を遠くへ飛ばす仕組みとなっております。
このアーティファクトの場合、投射する金属塊の重さが戦士20名分ほどにも相当しますので、あの筒形の機器で如何にすれば前方へ投射できるのかが今もって不明にございます。
筒の内径と金属塊の外径がほぼ同じことから、あの筒の中に金属塊を入れて、なにがしかの操作をすれば金属塊が前方へ飛翔するものと推測されておりますが、何せ一切の書面も無い状態故、解析に苦労しております。
試行錯誤で少しずつ解析を進めるほかないかと存じます。」
「ふむ、それが分かれば兵器として使用できるということだな。
仮に、魔導師団による遠距離攻撃に勝る性能を有しておるならば、我が帝国軍の秘密兵器となるに違いない。
なんとしてもその秘密を解き明かし、その複製を作って我が帝国軍の増強を図ることが肝要じゃ。」
「は、殿下の仰せの通り、このアーティファクトが画期的な兵器になることが予想されますので、私としてもなんとしてもこの解明を急ぎたいと存じます。」
「ふむ、頼むぞ。
東も西も各国が反帝国の一枚岩となっている現状では、いかな帝国軍といえど領土拡張はなかなかに難しくなっているからのぉ。
その停滞を打破する秘密兵器が何としても必要なのじゃ。」
第二王子は、帝位継承権の第二位でありながら、腹違いの兄を抑えて皇帝に成り上がろうとしている野心家でもあった。
従って、この新たには発見されたアーティファクトが兵器として利用できるとわかれば、自らの宮廷内での評価が大いに上がると期待しているのであった。
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