コンバット

サクラ近衛将監

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第三章 学院生活編

3ー11 古代遺跡

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 王立学院は、王都の中でも南門に近い位置にあります。
 これは王宮が王都のほぼ中央にあって、上級貴族の王都別邸が王宮の南方域にあるためじゃないかと思っています。

 つまりは王宮から南方方面が警備の厳重な地区になるため、王立学院もその恩恵を受けているわけです。
 因みに、王宮の西側は主に商業地区、北側は主に工芸地区、東側は主に王国軍の駐屯地や教会本部があるのです。

 ご多分に漏れず、王都にもスラム街は在りますけれど、王都を取り囲む城壁の北方外側にあります。
 風紀の余りよろしくないところで、犯罪の温床ともなりやすいので、黒騎士団が定期的に巡邏じゅんら警戒する場所になっていますね。

 何故そんなところにスラム街があるかというと、実はちた古代遺跡があるのです。
 この古代遺跡はライヒベルゼン王国が建国される前から在るもので、学者の話では千年以上も前の古代遺跡ではないかと言われているそうです。

 この遺跡では特殊な建材を使用しているために取り壊しが非常に難しく、そのために王都を建設する際にはその遺跡領域を外して王都が建設されたのだとか。
 時代の趨勢すうせいとともに王国が力を蓄え、周辺地域を治めるようになって王都も大きくなりましたけれど、生憎とこの遺跡は取り壊しが難しく建設ラッシュから外れた地域になっているのです。

 遺跡は階層構造になっており、表面はかなり朽ちているのですが部材の主要部は今でも丈夫であり、少々の力では壊せないために、住居を持たない難民や貧民にとっては雨や風をさえぎってくれるシェルターになっているのです。
 建国から50年ほどでここに貧民が住み着くようになり、その後の戦役で難民が発生したときのシェルターにもなりました。

 大きさは500m四方程度の方形状の建造物で二階建てとなっており、ワンフロアーは5m近い高さを有する空間になっています。
 壁側に多少の仕切りは在りますけれど、概ね大きな体育館の様な広い区画を持っています。

 二階もあるのですけれど、実はこの建造物に階段は無かったようです。
 スラムに住む住民が勝手に作った手作りの階段ならありますけれど、いまにも壊れそうな階段なんです。

 構造からすると倉庫のような感じですけれど、もしかして大型のエレベーターでもあったのかもしれません。
 それらしき穴が二階部分にあるのです。

 何でこんなことに興味を持ったのかと言えば、ルテナの情報からなんです。
 ライヒベルゼン王国が成立したのは二百年ほど前のことですけれど、この遺跡は時代をさかのぼること千三百年ほど前のアレバンド帝国の遺跡なんだそうです。

 このアレバンド帝国はおとぎ話に出て来る魔導帝国で非常に魔導が進んでいた帝国だったそうです。
 おとぎ話では、おごった帝国の行為に対して神が怒りの鉄槌てっついを下して帝国が消滅したという話なのですが、帝国が何をして神の怒りを買ったのかは伝えていないのです。

 そのアレバンド帝国の軍隊の駐屯地があったところが、王都の北側にあるスラム街の遺跡のようです。
 ルテナでも生憎と細かい情報が得られないのでこれ以上の情報は無いのですけれど、いにしえの魔導帝国の知識などが残っていれば色々と役に立つかもしれませんよね。

 千年以上経っても壊れない建造物なんてなかなかありませんよ。
 ですから夜になってからこそっと隠密と認識疎外をかけて私自身が調査に出かけたわけなんです。

 この遺跡に住んでいる人は、ヴィオラ(私)のセンサーで確認できる限り全部で9826人居るようです。
 乳飲み子から高齢者までいますので、おそらく月々で調べたら人口が増減していそうです。

 二階部分に住んでいる人は若い人が多いようですね。
 階段がもっと丈夫なら良いのでしょうけれど、はしごに毛が生えたような階段なので幼子や高齢者が利用するにはちょっと危ないんです。

 壁代わりに廃材を利用した木製のへいがあちらこちらに建てられて、勝手に内部を区分して自分たちの住む縄張りをしているようですね。
 直接来て良かったのは、隠れた地階があったことに気づいたことでしょうか。

 生憎と地階に至る通路が崩壊しているために、普通の人では入れません。
 でもヴィオラ(私)は、センサーで空間把握ができますので、大枠の状況がわかります。

 但し、やみくもに転移をしたりはしませんよ。
 最低でも200年以上、おそらくは千年以上もの間、誰にも知られることなく存在しているということは中の空気がどうなっているかわかりません。

 例えば密閉された空間で鉄製品なんかがあると、さびで腐食してしまうことが考えられます。
 錆というのは鉄が酸化して発生するもので、その分周囲の酸素が奪われていることがあるのです。

 風通しの良い場所なら空気の入れ替えもあるでしょうけれど、地下空間で出入り口が無いような密閉空間では酸素が無いことだって考えられます。
 前世で安奈先生に教えられたことですけれど、空気中の酸素濃度が16%に下がれば危険であり、10%だと死亡するのだそうです。

 それに何らかの化学反応で致死性ガスが発生している可能性だってありますよね。
 毒ガスじゃないですけれど一酸化炭素なんかだと簡単に死ねます。

 ですから当該未知の空間に行くには十分な準備が必要です。
 私が選んだのは宇宙服でした。

 正直なところ構造も良く知りませんが、空気ボンベ若しくは酸素ボンベを背負って密閉された衣服の中に納まっていれば多分大丈夫な気がします。
 図鑑やアニメで見た宇宙服を試行錯誤で造ってみました。

 メイン素材は炭素繊維を強化して織り上げた丈夫な布地ですが、柔軟性の高い金属箔との重層構造です。
 ヘルメットは、首周りを密閉性の高いねじ込み構造にしています。

 この宇宙服はヴィオラ(私)専用なので小さく作っていますが、一度造れば、成長に応じて大きなものに作り替えることもできるでしょう。
 表面が薄い青色を帯びた宇宙服は十日ほどで出来ました。

 専従で作れば、もっと短期間ででき上がったかもしれませんが、私も学院の生徒ですし、色々とやることも多いのです。
 暇を見つけてちょこちょこ作業をする程度では時間がかかっても仕方がありませんよね。

 こうしてヴィオラ(私)の密かな冒険が始まりました。
 宇宙服仕様の防護服は色々な付与魔法もつけていますから、二重三重に守られていますけれど万能という訳ではありません。

 例えば異次元に取り込む陥穽かんせいなんかがあれば戻って来れなくなる恐れだってあります。
 ですから一挙手一投足に十分な注意を払いながら調査を進めることにしました。

 活動時間は勿論、皆さんが寝静まった夜中ですよ。
 認識疎外をかけ、なおかつ隠密状態にして前回密かに尋ねた場所へ空間転移します。

 勿論一旦は空中に転移し、センサーで問題が無いかどうかを確認した上での遷移です。
 秘密の地下空間に特段の異常はなさそうなので、そこから空間転移で一気に地下空間へ遷移しました。

 内部は真っ暗ですけれど、私には灯りが無くても空間が把握できる能力がありますので、動くのに支障はありません。
 もっとも把握できるのは白黒の3D画像のようなものですから色までは分かりませんが、少なくとも鑑定を掛けながら進むので素材の種類は大枠でわかります。

 大枠というのは、知られていない物質や合金などでは、鑑定結果が虫食い状態になる場合があるんです。
 ルテナがみることのできるアカシックレコードでも、情報がうまくヒットしないとデータは得られませんし、鑑定はどちらかというとアカシックレコードの劣化版ですから余計に情報量は少ないんです。

 そのためにヴィオラ(私)の周囲には「?」マークがいっぱいです。
 そんな中でもある程度分かったのは、この地下空間が非常に大きな武器庫であったということです。

 どうしてわかったかというと、ヴィオラ(私)だから認識できたのかもしれませんが、戦車や航空機の残骸があったのです。
 例えば戦車の外殻なんかはそのまま残っていますが、キャタピラは腐食して完全に錆になっていました。

 この様子を見る限り、かなりの酸化が進んでいますので間違いなく低酸素状態にはなっているのでしょう。
 そのためなのでしょうか、この地下空間には生命の兆しが全くありません。

 例えば生命力の強いGに似た虫もこの世界にはたくさん居るんですけれど、そういった動く生命体が全く存在しない空間なんです。
 動くものがあればヴィオラ(私)にはわかります。

 色々調べて分かったことは、この武器庫で使えそうな武器は存在しません。
 然しながら、一方で、その構造や残された設計図と思われるような書簡から、当時のエネルギー原動力となったと思われる魔導炉の存在がわかりました。

 ヴィオラ(私)には、死語となってしまった古語でもわかるチートな言語能力がありますので、大昔の設計図や書簡でも文字等が残ってさえいれば解読できるのです。
 この滅亡した古代の帝国の知識が場合によってはよみがえらせることができるかもしれません。

 勿論、危ない武器の可能性もありますから無暗に復活はさせませんけれど、私の錬金術で再現できるものなら再現してみたいなと云う進取性の欲求が生じました。
 目の前に何となく謎があればそれを解き明かしてみたいというのは極々自然な感情ですよね。

 え?
 危ないって?

 ウーン、・・・。
 ヴィオラ(私)は、マッドサイエンティストにはなりませんよ。

 例えば、核兵器のようなものであれば間違いなく痕跡もなくなるほどに、この世から消滅させます。
 封印じゃ、いつか出てくる可能性もあって危ないですからね。

 ヴィオラ(私)自身がどちらかというと手に負えない超兵器になりつつあるのは何となく自覚していますけれど、ヴィオラ(私)のことはヴィオラ(私)が管理できます。
 でも武器は一旦生産されると、極端な話、誰でも使える可能性があるから危険なのです。

 ヴィオラ(私)の研究欲や進取性の欲求は別として、錬金術等で産み出したものを公開するか否かはよくよく考えてからにします。
 そもそもが帝国が滅亡して千年以上もの間、この世に出現しなくても済んだのですから、えて再現させる必要はほとんどないはずです。

 但し、隕石等自然災害がこの世界を襲って、生きとし生けるもの全てが絶滅の危機に瀕した場合、場合によりヴィオラ(私)の力でも改善できないような場合は、古代の超兵器を再現させる意味合いがあるのかもしれません。
 ヴィオラ(私)は少なくとも無暗には使ったりはしませんけれど、少なくとも必要とする時に知識が無ければできることもできなくなります。

 そんな理由で、一週間に一度は、深夜に研究調査に赴くヴィオラ(私)です。
 少しずつの研究時間ですのでいきなりの進展は望めません。

 念のため、知恵の神ワイアル様にも相談はしました。
 ワイアル様は微笑みながら言いました。

「其方に旺盛な知識欲があるのは承知しておる。
 このセリヴェル世界にとって悪しきモノが生まれる危険が生じたときには、其方に警告を与えよう。
 生憎と、いにしえのアレバンド帝国には我らの言葉を聞けるものが存在しなかった。
 それゆえ、彼らは自滅した。
 我ら神々が滅ぼしたような逸話いつわが残っているが、そのようなことはしていない。
 終末兵器とでも言うべきものの操作を誤り、帝都にあった研究所で崩壊が始まり、帝国全土が瓦解がかいしたのじゃ。
 そうしてそのような兵器につながる知識は其方が訪れた武器庫には存在しない。
 それでも非常に強力な武器がかつて存在したのは事実なので、再現に当たっては十分に注意をなさい。
 其方は我らの愛し子いとしごじゃ。
 其方の行動は我らが日々見ておるぞ。
 それを努々ゆめゆめ忘れるではないぞ。」

 ということでワイアル様のお墨付きもいただきました。
 なんだかヴィオラ(私)は監視対象になっているいたずらっ子みたいな存在なんでしょうか?

 でもワイアル様がヴィオラ(私)のことを愛し子って言ってくれたのが嬉しかった。
 一応の了解も得られましたので、ヴィオラ(私)の知識欲を満たすべく調査研究は少しずつ進めます。

 ヴィオラ(私)が王都に滞在する王立学院初等部、中等部在学中に調査研究ができればいいなと思っている程度なんです。
 そのうちにもしかすると人の目に触れたりして、遺跡の地下空間が人目にさらされるかもしれません。

 そうなれば、ヴィオラ(私)の調査研究は中止にするつもりでいます。
 でも、またまたヴィオラ(私)の秘密が増えそうですね。

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